- 1 - 在宅患者紹介ビジネス、厚労省が療担規則等見直し提案 中医協へ

第 66 号
週刊介護情報
平 成 25 年 11 月 1 日 (金 曜 日 )
第 66 号 平成 25 年 11 月 1 日(金曜日)
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◆ 在宅患者紹介ビジネス、厚労省が療担規則等見直し提案
中医協へ過剰診療等を防ぐために「紹介料提供等禁止」
◆ 自己負担、難病重症者 2 割負担、所得に応じ上限 6 分類に
新助成制度 15 年導入へ 対象疾患は現行の 56→300 以上と増
◆ 難病―「特定疾患医療受給者証」所持者数 81 万 653 人
厚労省 24 年度「衛生行政報告例の概況」を公表
◆在宅患者紹介ビジネス、厚労省が療担規則等見直し提案
中医協へ過剰診療等を防ぐために「紹介料提供等禁止」
――中央社会保険医療協議会総会
中央社会保険医療協議会総会(中医協、会長=森田朗・学習院大学法学部教授)が 10 月
30 日に開催された。同会では 23 日に引き続き、高齢者介護施設の入居者などを、在宅医療を提
供する医療機関に紹介する「患者紹介ビジネス」問題への対応について議論し、厚労省が療担規
則等見直し提案を行い、「紹介料の提供禁止」に向け具体策を話し合った。
具体的には厚労省は中医協総会に対して、保険医療機関が、患者の紹介に対し紹介料を支
払うことが現行制度上は違法と言えないため、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(療養
担当規則)を改正し、2014 年 4 月から紹介料などの経済上の利益の提供を禁止することを提案し
た。厚労省は患者による医療機関の選択(フリーアクセス)を妨げない限り、違法とはいえないとの見
解をとっていた。
在宅医療に関しては、10 月 23 日の会合でも議論になった。この時は、審議時間が足りなくなっ
て、(1)在宅医療における薬剤師の役割、(2)在宅歯科医療、(3)在宅医療における患者紹介
等の事例、(4)在宅医療を専門に行う保険医療機関――の 4 テーマが持越しとなっていた。
(1)の「在宅医療における薬剤師の役割」に関して、結論から言えば、在宅対応薬局の情報提
供は「誘導」とせず、薬局の 24 時間対応は「単独」を原則に―と提示した。
これを詳しく見ると厚労省は、▽処方せん交付にあわせて患者に保険薬局の地図を配る際に、
在宅患者訪問薬剤管理指導を行う保険薬局の情報を提供すること等については、「特定の保険
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薬局への誘導の禁止」に反しないことを明らかにする、▽医師(病院・診療所)以外に、訪問看護
師(訪問看護ステーション)やケアマネジャーへの情報提供についても規定する―などの論点を提示
している。
(3)の「在宅医療における患者紹介等の事例」は中医協総会の論議の中心となっていて、 23 日
に全国の施設等で 20 数件の「紹介ビジネス行為」があった旨の報告が厚労省に上がっていた。
厚労省は「患者のフリーアクセス(どこの医療機関から訪問診療を受けたいかなどの自由)を奪う
などしなければ、即座に違法ということはできない」としていたが、患者のフリーアクセスを邪魔する危
険性からこれ以上の「看過」はできず、厚労省は、次のような対応をとって是正してはどうかと提案し
た。
� 【在宅時医学総合管理料】【特定施設入居時等医学総合管理料】について、訪問診療料と
�
�
同様に、同一建物かどうかに応じた評価体系とする
【在宅患者訪問診療料】について、過剰診療等を防ぐために、患者等への説明と同意を含め、
診療内容の記載などを求め、診療内容による整理を行う
療養担当規則の改正等により、保険医療機関が、患者の紹介を行う者に対して、患者の紹介
を受ける対償として、紹介料等の経済上の利益を提供することを禁止する――という内容。
多くの委員からは「医療機関だけではなく、誘導する業者も別途法律で縛るなど双方向の対策
が必要である」との意見が出されている。
ここまでの経緯は、厚労省が 10 月 23 日、「過剰な診療などのおそれがある不適切な訪問診療
が全国 20 施設で行われていた」との調査結果を公表した。
この「患者紹介ビジネス」の常態化を防ぐため、厚労省は有料老人ホームなどの事業者が在宅
医療を受ける入所者を優先的に紹介する見返りに、医療機関から仲介代金を受け取る「患者紹
介ビジネス」を禁止する方向で中央社会保険医療協議会(中医協)へ報告、対応策に着手した。
紹介ビジネスは、業者が有料老人ホームなど高齢者施設の患者を医師にあっせんする手法。施
設を訪問診療した医師が診療報酬から業者へ紹介料を支払ったり、紹介料の一部が施設側に渡
ったりするケースもあるという。
この他、総会では、最近、都市部を中心に増えている「在宅医療を専門に行うクリニック」につい
て話し合った。「かかりつけ医による在宅医療を中心とすべき」とする診療側の意見と、「患者ニーズ
に応えるべき」とする支払側で「応需体制」を巡って意見が対立している。
厚労省は、在宅専門クリニックの外来応需体制について、(1)在宅医療を行うことの被保険者へ
の周知、(2)急変時に患者から相談を受ける連絡先の確保、( 3)患者が外来受診できる連携医
療機関の確保、(4)訪問診療を行う地域範囲の限定、などの要件を設けることを提案している。
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◆自己負担、難病重症者 2 割負担、所得に応じ上限 6 分類に
新助成制度 15 年導入へ 対象疾患は現行の 56→300 以上と増
――厚生労働省
厚生労働省は 10 月 29 日、厚生科学審議会・疾病対策部会の「難病対策委員会」を開催した。
この日は、厚労省側から同委員会に対して報告書の素案「難病対策の改革に向けた取組につい
て」が示され、これに基づいた議論を行った。 難病患者の支援制度の見直しを行う厚労省は、「難
病重症者2割負担、年収別・ 300 疾患に対象拡大」し、医療費の患者負担割合を、年収に応じた
月額の負担限度額を設けるなどとした素案を、同専門委員会に提示した。
11 月中にとりまとめて新法を作り、2015 年 1 月の施行を目指す。
医療費助成は現在、56 の病気を対象にし、重症な場合は全額公費で負担される。新たな制度
は、助成対象を約 300 の病気に拡大するが、重症者に限定する。
素案通りに決まれば、新たに難病指定される患者は、負担が軽くなる。だが、すでに助成を受けて
いる患者は、負担が増えることも想定される。同省は低所得者に配慮し、 3 年程度、経過措置を取
る考え。
素案では、月額の負担限度額を年収に合わせて 6 段階に分け、最も多い人は 4 万円超を負担す
る。生活保護を受けている人は負担を免除する。症状が軽い人でも、高額な医療が必要な場合は
助成の対象とする。
この結果、これまで各種団体などから「負担が重すぎる」と批判が強かったため、自己負担の上限
を引き下げる新・素案を同会に示したことで、大筋で了承された。
報告書(素案)の要旨は、収入に応じて負担を求める自己負担割合を現行の 3 割から 2 割に減
らした上で、所得に応じて患者を 6 グループに分類するなど、より細分化されたのが大きな特徴だ。こ
れまで医療費が全額支給されていた重症患者にも一定の負担を求める、というもの。
素案は、まず難病対策の基本理念を(1)難病の治療研究を進める、(2)疾患の克服を目指す、
(3)難病患者の社会参加を支援する――ことで、「難病にかかっても地域で尊厳をもって生きられる
共生社会の実現を目指す」ことに置くものと確認。そのうえで、国に対し「医療や研究開発の推進」
「福祉や雇用などの他施策との連携」を図るための基本方針を策定するよう求めている。
医療提供体制に関する項目では、「難病患者のデータベースを構築し、全国規模での研究を進
める」ことや、「充実した医療を提供するために、新たな『難病医療拠点病院』『難病医療地域基幹
病院』などを指定する」ことを掲げている。
拠点病院とは、都道府県が次のような医療提供体制を構築することとしている。 ▽『新・難病医
療拠点病院(総合型)(仮称)』を 3 次医療圏(主に都道府県を区域の単位とする)ごとに原則 1 ヵ
所、▽『新・難病医療拠点病院(領域型)(仮称)』を適切な数、▽『難病医療地域基幹病院(仮
称)』を 2 次医療圏(主に複数の市区町村を区域の単位とする)に 1 ヵ所程度、▽かかりつけ医等を
含むように『指定難病医療機関(仮称)』を幅広く指定する。
注目の患者負担については、難病の特性を踏まえて、現行の 3 割から 2 割に引下げるとともに、所
得に応じて負担限度額を設定することとしている。
厚労省が 10 月中旬に公表した素案の「たたき台」は、生活保護はゼロ、」▽市町村民税非課税
は 8 千円、▽年収約 370 万円までは1万 2 千円、▽同約 370 万円を超える世帯は 4 万 4400 円―
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―の 4 つに分類していたが、同委員会から「年収区分をもっと細分化すべきだ」との意見が出たことな
どがあって見直した。
具体的に見ていくと――。
患者の自己負担に月ごとの上限額を設定。夫婦 2 人世帯の場合、生活保護世帯はゼロ、▽市
町村民税非課税で年収約 80 万円までは 3 千円、▽非課税で年収約 80 万~約 160 万円は 6
千円、▽年収約 160 万~約 370 万円は 1 万 2 千円、▽年収約 370 万~約 570 万円は 2 万 4600
円、▽年収約 570 万円を超える世帯は 4 万 4400 円、とした。
すでに助成を受けている患者にはおおむね3年間の経過措置を設け、負担額が大きく増えないよう
配慮するとした。
軽症者は原則として助成対象外となるが、症状を抑えるために高額の医療を受けている患者は
助成する。具体的には、月ごとの医療費の負担が 2 万 4600 円を超える月が年間 3 カ月以上ある場
合、助成対象に含める。
◆難病―「特定疾患医療受給者証」所持者数 81 万 653 人
厚労省 24 年度「衛生行政報告例の概況」を公表
――厚生労働省
厚生労働省は 10 月 25 日、平成 24 年度の「衛生行政報告例の概況」を公表した。この調査
には、精神保健福祉、薬事、特定疾患(難病)などが報告されている。
順を追って「精神保健福祉」から見ると、平成 24 年度の「精神障害者申請通報届出数」は 2
万 1046 件(前年度比 3015 件、16.7%増)で、「措置入院患者数」は 1531 人(同 19 人、1.3%
増)であった。
「薬事」を見ると、平成 24 年度末現在の薬局数は、5 万 5797 ヵ所(前年度比 1017 ヵ所、
1.9%増)となっている。人口 10 万人あたりの薬局数は 43.8 で、都道府県別では、多い県は、佐賀
県が 62.2、山口県 57.4、広島県 56.8 の順。少ないのは、福井県が 32.5、京都府 34.8、奈良県が
35.2 の順となっている。
「特定疾患(難病)」を見ると、24 年度末現在の「特定疾患医療受給者証」所持者は 81 万
653 人で、男性が 34 万 7352 人(42.8%)、女性が 46 万 3301 人(57.2%)であった。人口 10 万
対では 635.7 で、疾患別では多い順から「潰瘍性大腸炎(112.7)」、「パーキンソン病関連疾患
(94.4)」などとなっている。
特定疾患とは、「原因不明、治療方法未確立であり、かつ後遺症を残すおそれが少なくない疾
病」のうち、診断基準が一応確立し、かつ難治度・重症度が高く患者数が比較的少ないもの。公
費負担措置により、原因究明、治療開発等が行われている(特定疾患治療研究事業)。「特定
疾患医療受給者」とは、研究事業の対象疾患に該当し、自治体の「認定審査会」で認定された
患者である。
「特定疾患登録者証」所持者(研究事業における認定審査の継続申請で「軽快者」とされた
患者、公費負担なし)は、6 万 1140 人で、男性が 2 万 4827 人(40.6%)、女性が 3 万 6313 人
(59.4%)であった。人口 10 万対では 47.9 で、疾患別では多い順から「特発性血小板減少性紫斑
病」9.7、「潰瘍性大腸炎」7.6、「サルコイドーシス」7.5 などとなっている。
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