資料3-2 第17回幹細胞・再生医学戦略作業部会 疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究 の現状と問題点 2015.05.15 葛原茂樹 1 事業目的 • 文部科学省と厚生労働省は協働して、iPS 細胞等研究の 成果を速やかに社会に還元することを目指す。 • 疾患特異的iPS 細胞を用いて、難病を対象に疾患発症機 構の解明、創薬研究や治療法の開発等を推進 • 文科省:疾患特異的iPS細胞樹立と目的細胞への分化誘 導、研究者育成の支援 • 厚労省:難病研究支援と樹立後の創薬等の研究支援 • 拠点研究者:iPS細胞樹立、研究者育成の実施 • 製薬企業も最初から参加 2 事業の5年間の達成目標 拠点と創薬・疾患研究機関との疾患特異的iPS細胞を用いた難治 性・希少性疾患に対する共同研究の中から、1つ以上の開発候補 品が同定されていること。 疾患特異的iPS細胞バンクの充実により、他の研究者に影響を与 えうる、疾患特異的iPS細胞を使用した創薬・疾患研究のgood practiceが創出されていること。 3 難治性疾患克服研究事業 要約 • 1960年代に大流行したスモンを解決したプロジェクト型のスモン研 究班の成功体験が雛形 • 1972年から長い伝統を持つ日本の難病克服事業 – 希少難治性疾患の原因・病態・治療研究 – 患者救済・医療費助成 – 2015年施行の難病法案で新しい展開 – 患者救済・医療費助成→ 社会福祉予算として法制 – 政策研究:疫学、ガイドラインなど→厚労省 – 実用化研究:大型研究班による原因・病態・治療の研究 ⇔ PD,POによる研究開発管理の実施(評価研究班) →AMEDに移行→ 治療法開発を出口とした研究推進 4 難病対策の改革について(提言) 平成25年1月25日 厚生科学審議会 疾病対策部会 難病対策委員会 (平成25年1月31日に疾病対策部会で了承) 改革の基本理念 難病対策の課題 難病の治療研究を進め、疾患の克服を目指すとともに、難病患者の社会参加を支援 し、難病にかかっても地域で尊厳を持って生きられる共生社会の実現を目指す。 改革の4つの原則 (1)難病の効果的な治療方法を見つけるための治療研究の推進に資すること。 (2)他制度との均衡を図りつつ、難病の特性に配慮すること。 (3)官民が協力して社会全体として難病患者に対する必要な支援が公平かつ公正 に行われること。 (4)将来にわたって持続可能で安定的な仕組みとすること。 ・ 原因の解明すら未確立の疾患でも研究 事業や医療費助成の対象に選定されて いないものがある(疾患間の不公平)。 ・ 医療費助成に係る都道府県の超過負担 が生じている。 ・ 難病に関する普及啓発が不十分なこと 等により国民の理解が必ずしも不十分。 ・ 難病患者の長期にわたる療養と社会 生活を支える総合的な対策が不十分。 改革の3つの柱 第1 効果的な治療方法の 開発と医療の質の向上 ・ 治療方法の開発に向けた難病研究の推 進(新たな研究分野の枠組み) ・ 難病患者データの精度の向上と有効活用、 国際協力の推進 (全国的な難病患者データの登録など) ・ 医療の質の向上 (治療ガイドラインの作成・周知など) ・ 医療体制の整備 (新・難病医療拠点病院(仮称)、難病医療 地域基幹病院(仮称)の指定など) 第2 公平・安定的な 医療費助成の仕組みの構築 ・ 患者データを収集し研究を推進する目的に 加え、医療費の負担が大きい患者を支援す る目的を併せ持つ医療費助成を実施 ・ 医療費助成の対象疾患の見直し ・ 対象患者の認定基準の見直し (症状の程度が重症度分類等で一定以上等で、 日常生活又は社会生活に支障あり) ・ 難病指定医(仮称)による診断 ・ 指定難病医療機関(仮称)による治療 ・ 患者負担の見直し (重症患者の特例の見直し、入院時の標準的な 食事療養及び生活療養に係る負担の導入など) 第3 国民の理解の促進と 社会参加のための施策の充実 ・ 難病に関する普及啓発 ・ 日常生活における相談・支援の充実 (難病相談・支援センターの機能強化など) ・ 福祉サービスの充実 (障害福祉サービスの利用) ・ 就労支援の充実 (ハローワークと難病相談・支援センターの 連携強化など) ・ 難病を持つ子ども等への支援の在り方 5 難病法案 H26年5月成立 H27年1月1日施行 • H27.1.1: 第一次指定110疾患疾病 (従来の56疾患からスモン、劇症肝炎、重症急性膵炎を除く53疾 患と新たに追加) • H27.5.1:厚生科学審議会疾病対策部会 196疾病追加 承認 計306疾患 6 疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究・創薬研究 厚労省難病研究班、文科省共同研究拠点、製薬企業で共同研究グループを形成 厚生労働省 難病研究班 (医療機関) 難病患者 体細胞の提供 共同研究拠点 体細胞の供与 「OO病に関する研究」 同意の取得及び体細胞の採取 神経細胞 治療 iPS細胞、分化 細胞の供与 筋肉細胞 小腸細胞 心筋細胞 研究成果の 疾患iPS細胞由来の分化細胞を用いた 還元 疾患研究、創薬研究の実施 連携 ・京都大学 ・慶應義塾大学 ・理化学研究所 ・大阪大学 iPS細胞の樹立 目的細胞への分化誘導 難病研究班への技術提供 iPS細胞の寄託 細胞バンク iPS細胞の寄託 樹立拠点(京都大学) 製薬企業 厚生労働省 文部科学省 7 研究組織上の問題 1. 理研・京大拠点 1. 主任研究者の交代: 理研・笹井博士から京大・井上教授へ 2. 循環器系 1. 拠点の整理:5拠点から阪大、京大を整理して、東大、慶大、 成育医療センターにまとめる 2. 主任研究者の移動等:小室教授が阪大から東大に移動 3. 過去の研究倫理上の問題が起こり、主任代行体制(森田准 教授) 早急に体制確立を要請 8 プロジェクト運営上の問題 1. 文科省の研究として疾患特異的iPS細胞を樹立して、共同研究施 設である厚労省研究班の研究者に引き継いで病態研究と創薬 シーズ開発研究を行うという流れ • 厚労省側に、樹立したiPS細胞を活用して研究を持続発展させ る受け皿が用意されていなかった(従来の実用化研究の枠外) 2. 現実的に、厚労省研究班の研究者でiPS細胞研究を自施設で実 施できるところは僅少:地方大学や病院では難しい • 当初の予定にはないが、共同研究拠点で研究を維持・発展す る方が遥かに現実的・効率的 9 難病の新規治療薬・医療器機開発に向けた取り組み 新たな相談領域 (薬事戦略相談) 治験相談 (現在実施中) 平成23年から実施 基礎研究 シーズ探索 開発初期段階 非臨床試験/治験実施に向けた シーズの改善・改良・評価法確立 治験 承認申請 難治性疾患実用化研究事業(仮称)により支援 例:疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究 例:小児拡張型心筋症に対する骨格筋芽細胞シートを用いた再生治療 例:ALSに対するHGF髄腔内投与 例:神経・筋難病疾患に対する下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01) 例:リンパ脈管筋腫症に対するシロリムス内服 連 横断研究分野(仮称) 希少・難治性疾患(難病)に対する遺伝子診断 例 ○先天性ミオパチーの疾患責任遺伝子KLHL40の発見 ○多系統萎縮症の原因遺伝子COQ2の発見 携 難病患者データベース 難病について全国規模の患者データベースを構築し 治療法の開発・実用化を目指す研究を推進 (一元的なデータの管理・データの質及び入力率の向上・ 経年的なデータの蓄積・データベースの国際連携) 10 10 Statin treatment rescues FGFR3 skeletal dysplasia phenotypes Akihiro Yamashita A, et al , Nature 513, 507–511 2014 京都大学 妻木 範行 教授 11 H27年度の課題 1. 2. 3. 4. 5. 6. これから2年間でどこまで何をやるかの整理と集中化 確立した疾患特異的iPS細胞の理研BRCへの寄託推進 その中から病態研究、創薬シーズに適したものを選定 iPS細胞を活用した病態・創薬研究費の確保 的を絞ったサイトビジット/ヒアリング 共同研究拠点から出ている意見も参考にして、外部評価 委員会の論点整理も必要であろう 12
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