シラバスPDF版 - 放送大学

事務局 開講
記載欄 年度
科目名(メディア)
2011年度
=
科目
区分
大学院科目
科目
コード
生活リスクマネジメント
8910600
履修
制限
(’11)=
〔主任講師(現職名): 奈良由美子(放送大学教授)
単位
数
無
2
(R)
〕
講義概要
生活の質を高めるうえで生活リスクを理解し低減することは不可欠である。このことは生活者自身はもちろん、地域、企業、行政
といったリスク管理主体を含めた社会全体の課題といえる。本科目では、リスクの様相の局面、リスクの認識の局面、そしてリスク
への対処の局面から、生活リスクマネジメントの理論と実践についての講義を行う。
授業の目標
リスクの増大化・複雑化する現代において、生活上のリスクを把握し管理することが社会的にも求められている。本科目では、喫
緊の課題ともいえる生活リスクマネジメントについて、知識の提供と実践能力の育成を行うことを目的とする。その際、生活者自
身はもちろん、地域、企業、行政といった立場の異なるリスク管理主体の協働までを射程に入れた検討を行いたい。
履修上の留意点
生活の総合性や現代的課題をまず理解するためにも「生活健康研究('09)」を履修していただきたい。また、複数の主体の協
働、そのなかでの生活者の課題については「生活知と科学知('09)」(学部科目)も履修しておくことが望ましい。
回
テ ー マ
内 容
執 筆 担 当放 送 担 当
講 師 名講 師 名
(所属・職名) (所属・職名)
科目全体の導入回として、この回では、現代社会にあってリ
スクを理解しこれを管理することの意義についての問題提
起を行う。その際に、生活あるいは生活者の視点からリスク 奈良由美子 奈良由美子
リスク研究へのいざな をとらえる本書の立場を示しておきたい。また、リスク研究に
(放送大学教 (放送大学教
1
い
ついての関連学問領域におけるアプローチを紹介する。
授)
授)
【キーワード】
リスク、生活、生活者、リスク研究、リスク社会、安全と安心
2 リスク概念
リスクの本質は不確実性にある。リスクとは何であるかを理
解するためには、リスクの特性と不確実性とのかかわり、ま
た不確実性から生じる評価の問題、認識の問題、さらには
対応の問題を理解することが必要となる。これらの内容を中
心に、リスクの定義、リスクの成分といった項目についても見 奈良由美子 奈良由美子
(放送大学教 (放送大学教
ていく。
授)
授)
【キーワード】
不確実性、確率、望ましくない結果、頻度、強度、ハザー
ド、ペリル、ダメージ
3 リスクの実際
この回のねらいは、わたしたちの生活にどのようなリスクがど
の程度の大きさで存在しているのかを把握することによっ
て、リスクの様相の局面を理解することである。具体的に
は、人間の死亡についての統計データをみることで、いくつ 奈良由美子 奈良由美子
かのリスクの大きさをとらえる。また、現代社会および一人の (放送大学教 (放送大学教
授)
人間の生活に発生するリスクについての分類を提示する。 授)
【キーワード】
平均寿命、年間死亡リスク、生涯死亡リスク、リスクの分類
回
テ ー マ
内 容
執 筆 担 当放 送 担 当
講 師 名講 師 名
(所属・職名) (所属・職名)
リスクの本質は不確実性にあり、これに人間の認知能力の
制約が関わることで、リスク情報の処理の過程には認知バイ
アスが生じる。この認知のゆがみが、主観リスクと客観リスク
との乖離をうむ。この回では、リスク認知のバイアスとは何か
について、具体的ないくつかの認知バイアスをとりあげなが 奈良由美子 奈良由美子
(放送大学教 (放送大学教
4 リスク認知とバイアス ら説明する。
授)
授)
【キーワード】
リスク認知、客観リスク、主観リスク、認知バイアス、ヒューリ
スティック、リスク情報、正常性バイアス
わたしたちはリスクについてのイメージを形成し、そのイメー
ジによってリスクを判断している。ひとびとのリスクイメージと
リスク認知について見ていく。また、ひとびとのリスクの受容
奈良由美子 奈良由美子
リスクイメージとリスク の実態とその要因について、もっとも低いレベルでのリスク
(放送大学教 (放送大学教
5
受容すなわちゼロリスク要求にも言及しながら考える。
の受容
授)
授)
【キーワード】
リスクイメージ、リスクの認知地図、リスク受容、便益、自発
性、ゼロリスク
6 社会のなかのリスク
7
リスクマネジメントの
基本
リスクについての認識はひとによって違う。これは、各個人
がおかれている社会的コンテクストが異なるためである。こ
の回では、リスクに対する見方や考え方がどのように社会的
に構成されるのかについて考える。日本におけるリスク観の 奈良由美子 奈良由美子
(放送大学教 (放送大学教
特徴やその背景にも触れる。
授)
授)
【キーワード】
社会的コンテクスト、個体的要因、文化的・環境的要因、国
際比較 日本人 リ ク観
際比較、日本人のリスク観
リスクを低減するための管理手法であるリスクマネジメントに
関して、その意義と基本を提示する。リスクの分析や評価、
リスク処理の手法を含む具体的なリスクマネジメントプロセス
について述べる。また、生活者が自らの生活にリスクマネジ 奈良由美子 奈良由美子
メントを導入する際の留意点や積極性についても言及す
(放送大学教 (放送大学教
る。
授)
授)
【キーワード】
コスト、PDCAサイクル(PDSサイクル)、リスクマネジメント
プロセス、リスク分析、リスク評価、リスク処理技術
あるリスクについて立場の異なる複数の主体が関係すると
き、リスクについての問題解決が困難になることが多い。リス
クに対する考え方や意見の違いがあるとき、リスクコミュニ
奈良由美子 奈良由美子
リスクコミュニケーショ ケーションが必要となる。この回では、リスクコミュニケーショ
(放送大学教 (放送大学教
8
ンについて、その意義と基本的な方法を考える。
ン
授)
授)
【キーワード】
リスクコミュニケーション、生活者、専門家、専門家バイア
ス、欠如モデル、相互作用プロセス
9 自然災害
わが国は世界有数の自然災害国である。自然災害は生活
に大きな損害をもたらす。この回では自然災害について、
その様相、認識、対処の局面を考える。とくに地震災害に
焦点をすえながら、社会と生活者にとっての対処の方法と 奈良由美子 奈良由美子
(放送大学教 (放送大学教
課題を検討する。
授)
授)
【キーワード】
自然災害、地震、公助、自助、共助、時間
回
テ ー マ
10 犯罪
内 容
執 筆 担 当放 送 担 当
講 師 名講 師 名
(所属・職名) (所属・職名)
わが国の安全神話の崩壊が指摘されて久しい。この回で
は、生活の安全・安心を脅かす犯罪について、リスクの様
相、認識、対処の局面からアプローチする。具体的には、
犯罪の認知件数や被害状況等から犯罪の実際をおさえる
とともに、生活者の体感治安と犯罪不安の様子を見ること 奈良由美子 奈良由美子
で、犯罪に対する安全と安心の阻害状況を理解する。その (放送大学教 (放送大学教
授)
授)
うえで、犯罪への対処の方策について考えていきたい。
【キーワード】
犯罪、認知件数、犯罪被害、体感治安、犯罪不安、犯罪
者、ターゲット、環境、地域
11 製品安全
12 食品安全
科学技術が進展し消費者のニーズも多様化する現代社会
にあって、さまざまな製品が開発・販売され、生活の利便性
を高めている。同時に、その使用による被害も指摘されてい
る。この回では、日常生活で使用する製品をとりあげ、事故
や被害実態を見たうえで、製品安全に対する生活者の認 奈良由美子 奈良由美子
識をおさえ、さらにこれへの対処を行政、事業者、そして消 (放送大学教 (放送大学教
費者の立場から考えていく。
授)
授)
【キーワード】
消費者、製品事故、製品評価技術基盤機構(NITE)、警告
表示、消費生活用製品安全法、製造物責任法(PL法)、責
任、誤使用と正常使用、製品の不確実性
食の安全・安心に対するひとびとの関心は高い。この回で
は食品の安全性について、客観的な様相を具体的なデー
タによっておさえ、これとひとびとの主観的な認識との差が
どうであるか、さらにはその差の要因は何かを考察する。総
じて、現代社会にあってわたしたちが食品リスクに向かい合 奈良由美子 奈良由美子
うための手がかりを考えていきたい。
(放送大学教 (放送大学教
授)
授)
【キーワード】
食の安全・安心、食中毒、食品添加物、食品安全委員会、
BSE問題、遺伝子組換え食品、中国製冷凍ギョーザ事件、
マスコミ報道
13 信頼とリスク
14
生活者の主体性とリ
スクガバナンス
現代社会においてリスクを考えるとき、重要な分析概念の
ひとつとなるのが「信頼」である。この回では、まず信頼の意
味ならびに生活の安全・安心と信頼との関わりをおさえる。
そのうえで、リスクをめぐる複数の主体のあいだで信頼を構
築することの意義と可能性について、主要モデルや具体的 奈良由美子 奈良由美子
(放送大学教 (放送大学教
事例を示しながら考えていく。
授)
授)
【キーワード】
信頼、生活の外部依存、安全の外部依存、伝統的な信頼
モデル、主要価値類似性モデル、専門的能力、姿勢、誠実
さ、参加の重要性、第三者
この回では、生活者がリスク社会に主体的に関わることの意
義と可能性を検討する。具体的には、ソーシャル・キャピタ
ルの醸成とリスクガバナンスの展開をとりあげ、そこに生活
者が能動的に参加することでもたらされる新たなリスク対処 奈良由美子 奈良由美子
(放送大学教 (放送大学教
資源や問題解決手法について検討していく。
授)
授)
【キーワード】
主体性、参加、ソーシャル・キャピタル、信頼、ネットワーク、
互酬性の規範、リスクガバナンス、フレーミングの多角化
これまでに現代社会における生活リスクについて、その様
相、認識、対処の局面から述べてきた。最終回では、それら
の内容を①ゼロリスクを前提としない実際的なリスクマネジメ
ントの導入、②安全に裏付けられた安心の実現、③生活者
奈良由美子 奈良由美子
安全と安心、そして信 のリスク管理の主体としての復権の観点から総括すること
(放送大学教 (放送大学教
15
で、本書全体のまとめを行う。
頼の構築にむけて
授)
授)
【キーワード】
リスクマネジメントのクライテリア、ゼロリスク、安全と安心、不
安 生活全体への満足 主体性 セルフエンパワメント 信
安、生活全体への満足、主体性、セルフエンパワメント、信
頼