舗装試験施工の路面沈下量測定による浄水汚泥の路床材としての評価

土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
Ⅲ-226
舗装試験施工の路面沈下量測定による浄水汚泥の路床材としての評価
茨城大学
フェロー会員
安原一哉
正会員
正会員
村上
○蛭田俊明
哲
学生会員
茨城県日立市企業局
1.はじめに
既往の研究
正会員
小峯秀雄
渡邊保貴
非会員
磯秀幸
豊田和弘
水道事業により排出される浄水汚泥は,地盤工学的利用が期待されている産業廃棄物の一つである.
1), 2)
より,適切に脱水・乾燥を行った浄水汚泥は道路構成材料などの地盤材料として利用可能な力学的
性質を示すという知見が得られている.しかし,既往の知見は,室内試験に基づくものであり,道路等で使用す
るにあたって重要な指標となる施工性,わだち掘れ,平坦性などの評価を行うには至っていない.そこで,本研
究では,既往の室内試験結果を基に,茨城県日立市森山浄水場にて発生した浄水汚泥を路床材として用いた舗装
試験施工を実施した.そして,定期的に路面の沈下量(わだち掘れ)を測定し,茨城県日立市で路床材・管路の埋戻
し材として利用されている山砂を路床材として用いた試験施工舗装と,浄水汚泥を含む材料を路床材として用い
た試験施工舗装の,交通荷重および経年変化による路面の沈下量を比較することにより,浄水汚泥の路床材とし
ての実環境での適用性の評価を行った.
5000mm
本研究では,茨城県
取水管地上連結部
(取水管は耐食性を
有した鋼管とする)
別途施工した物理試
験用施工区間はアス
ファルト無しの構造で
ある
再生密粒度アスコン
M-30
RC-40
鋼管(直径75mm)
取水管取り付け位置
含む 5 種類の試料を路床材として用いて,図‐
1 に示す概要に基づいて舗装試験施工を実施し
た.試験施工は,従来通りの施工を実施した試
浄水汚泥より透水性
の高い砂層を敷くこ
とで浸出水の一次元
的な流れをつくる
溶出水がある場合
は取水管から採水し,
環境影響評価を行う
(浄水汚泥)
単位[mm]
600
300
験施工区間に加え,直接路床上でコーン貫入試
山砂(浄水汚泥)
300
日立市森山浄水場内から発生した浄水汚泥を
890
200 150
400
2.舗装試験施工の概要
試験施工区間A
物理試験用
施工区間A'
試験施工区間B
物理試験用
施工区間B'
試験施工区間C
物理試験用
施工区間C'
試験施工区間D
物理試験用
施工区間D'
試験施工区間E
物理試験用
施工区間E'
500~1000
験等の原位置試験を行うために,アスファルト
図‐1
層を省いた物理試験用施工区間を設けた.本論
舗装試験施工の概要
文においては,従来通りの施工を行った試験施工区間上で実施した路面の沈下量の測定結果を報告する.
3.試験施工舗装に用いた試料
本舗装試験施工は,路床材として,茨城県日立市森山浄水場から排出される天日
乾燥浄水汚泥および加圧脱水浄水汚泥の 2 種類の脱水方法の異なる浄水汚泥を用いた.比較対象として,茨城県
日立市において路床材,管路の埋戻し材として用いられている山砂を用いて,同様に舗装試験施工を実施した.
また,既往の知見 1)より,浄水汚泥は排出量に限りがあるため,山砂などの現地発生土と混合して利用することが
有力視されている.そこで,2 種類の浄水汚泥と山砂を,体積比で 1:1 に混合した混合土についても同様に施工
し, 5 種類の試料で舗装試験施工を実施した.本舗装試験施工にて,路床材として用いた 5 種類の試料の各土質
試験結果を表‐1 に示す.
表‐1
各試験施工区間に路床材として用いた試料の土質試験結果
A(山 B(天日乾燥浄 C(加圧脱水浄
D(天日乾燥浄水汚
E(加圧脱水浄水
試験施工区間名(試料名)
7.6
34.8
62.9
24.5
19.0
含水比 w (%)
2.704
2.536
2.450
2.666
2.654
土粒子の密度ρS (g/cm3)
2.4
18.6
26.1
7.0
7.2
強熱減量 Li (%)
5874
6449
8993
4787
7070
コーン指数 qC (kN/m²)
38.1
55.3
20.6
45.6
CBR (%)【92 回/層突固め】 35.7
4.測定方法 測定方法としては図‐2 に示した浄水場と試験施工区間の位置関係図の基準点②に毎回トータルス
テーションを据付け,④の基準点の高さを 0(m)として,その他の基準点および路面沈下量測定点の高さの測定を
行った.
キーワード
廃棄物
茨城大学工学部
浄水汚泥
試験施工
防災・環境地盤工学研究室
現場計測
連絡先
TEL0294-38-5163
-451-
〒316-8511
茨城県日立市中成沢町 4-12-1
土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)
Ⅲ-226
5.測定結果
図‐3~図‐7 は各試験施工区間において初期の地盤
トータル
ステーション
据付け位置
基準点
高の測定結果を 0(m)とした時の地盤高の変位量を表したものであ
重による変位量が最も小さいと考えられる両端の測定値を用いて
④
①
給食センター
跡地
天日乾燥床
D
E
と,現在までに最大の沈下量は山砂が 4mm,浄水汚泥が含まれて
また,路面の沈下量(わだち掘
れ量)を定量的に評価する方法と
して維持管理指数 MCI がある.
地盤高さの変化量(m)
0.000
-0.005
A(山砂)補正
0.010
部分拡大図
2009年5月14日
2009年5月19日
2009年6月1日
2009年6月19日
2009年7月31日
0.010
0.005
2009年8月26日
2009年10月13日
2009年11月20日
20010年1月22日
0.000
-0.005
C(加圧脱水浄水汚泥)補正
-0.010
-0.005
B(天日乾燥浄水汚泥)補正
-0.010
B0 B0.5 B1 B2 B3 B4 B5 B6 B7 B8 B9 B10B11B12
測定点名
図‐4 初期の地盤高からの変位量
【天日乾燥浄水汚泥】(補正後)
0.010
0.005
2009年5月14日
2009年5月19日
2009年6月1日
2009年6月19日
2009年7月31日
-0.005
D(天日乾燥浄水汚泥+山砂)補正
-0.010
D0 D0.5 D1 D2 D3 D4 D5 D6 D7 D8 D9 D10D11D12
測定点名
測定点名
図‐6 初期の地盤高からの変位量
【天日乾燥浄水汚泥+山砂】(補正後)
0.010
ち掘れ量(mm)の平均である.今後,路面の沈下量(わだち掘れ量が)が増加
した場合は,(4)式より,わだち掘れ量が約 30mm 付近で MCI が 4 程度と
なり維持管理が必要となると考えられる 3).
地盤高さの変化量(m)
MCI を求めるための評価式は(4)式で表され,MCI が 4 以下になった場合
に補修するのが現在の維持管理の現状となっている.評価式の D はわだ
2009年8月26日
2009年10月13日
2009年11月20日
20010年1月22日
0.000
C0 C0.5 C1 C2 C3 C4 C5 C6 C7 C8 C9 C10C11C12
図‐5 初期の地盤高からの変位量
【加圧脱水浄水汚泥】(補正後)
2009年8月26日
2009年10月13日
2009年11月20日
20010年1月22日
0.000
A0 A0.5 A1 A2 A3 A4 A5 A6 A7 A8 A9 A10A11A12
図‐3 初期の地盤高からの変位量
【山砂】(補正後)
2009年5月14日
2009年6月1日
2009年6月19日
2009年7月31日
0.005
地盤高さの変化量(m)
能が期待できると考えられる.
2009年8月26日
2009年10月13日
2009年11月20日
20010年1月22日
測定点名
地盤高さの変化量(m)
様の施工方法で山砂と同等の性
⑤
5m
0.005
-0.010
市において路床材として利用さ
泥含む材料を用いた場合にも同
2009年5月14日
2009年6月1日
2009年6月19日
2009年7月31日
0.010
あると考えられる.したがって,
れている山砂と比較して,浄水汚
②
地盤高さの変化量(m)
の沈下が確認され,トータルステ
らの考察ではあるが,茨城県日立
E 12
単位[ m m ]
図‐2 浄水場と試験施工区間の位置関係
いる舗装においても最大で 6mm
現在までのモニタリング結果か
E6
物理試験用施工区間A
認された.補正後の値を用いて各試験施工区間について整理する
慮しても沈下量は 10mm 以下で
E0
A 12
C
試験結果から,5 つの試験施工区間の全てで路面の沈下傾向が確
として許容してある±3mm を考
A6
B
補正を行ったものである.
ーションによる測定誤差の範囲
A0
ストック
ヤード
花壇
試験施工区間A
基準点
路面沈下量測定点
物理試験用 施工区間
り,測定時におけるトータルステーションの設置方法や気温の変
化により発生する可能性がある誤差を,各試験施工区間で交通荷
③
試験施工区間
0.005
2009年5月14日
2009年5月19日
2009年6月1日
2009年6月19日
2009年7月31日
2009年8月26日
2009年10月13日
2009年11月20日
20010年1月22日
0.000
-0.005
E(加圧脱水浄水汚泥+山砂)補正
-0.010
E0 E1 E2 E3 E4 E5 E6 E7 E8 E9 E10 E11 E12
測定点名
MCI = 10 − 0.54D 0.7 ・・・(4)
図‐7 初期の地盤高からの変位量
【加圧脱水浄水汚泥+山砂】(補正後)
6.結論
本研究では,浄水汚泥を路床材として用いた舗装試験施工を実施し,路面の沈下量の測定を定期的に行った.
その結果,最大の沈下量は山砂が 4mm,浄水汚泥が含まれている舗装においても最大で 6mm の沈下となり,大き
な差異は見られなかった.したがって,本舗装試験施工により,浄水汚泥についても室内試験結果に基づき,必
要な力学的性質を示す含水比まで適切に脱水することで,山砂と同様の施工方法で路床材としての有効利用が可
能であることを明らかにした.
〈参考文献〉1)蛭田俊明,小峯秀雄,安原一哉,村上哲,渡邊保貴,ベジェヒョン,豊田和弘:現地発生土との混
合による浄水汚泥の有効利用法の提案と混合土の評価,第 8 回環境地盤工学シンポジウム発表論文集,pp.83-86,
2009.2)ベジェヒョン,小峯秀雄,安原一哉,村上哲,鹿志村清勝,豊田和弘:力学的特性による浄水汚泥の道路
構成材料への利用に関する評価,第 42 回地盤工学会研究発表会講演集(CD-ROM),2007.3)社団法人日本道路協
会:舗装設計施工指針, 社団法人日本道路協会, pp.15-45, 2006.
-452-