IODP 関東アスペリティプロジェクト(KAP)の事前調査(KY07-14) 報告:相模湾・房総沖におけるピストンコアから得られた情報 ○ 村岡 山本 諭・小川 勇二郎・(筑波大学生命環境科学研究科), 富士男(海洋研究開発機構-CDEX),川村 仲宗根 徹(日本海洋事業), 上栗 喜一郎(深田地質研究所), 伸一(筑波大学生命環境科学研究科) 我々は KY07-14 航海により IODP 関東アスペリティプロジェクト(KAP)のための事前調査の一環と して相模湾と房総沖において,ピストンコア4本とグラビティコア 2 本による採泥と音響測深による 地形調査を行った.4本のピストンコアのうち3本は相模湾,1本は房総沖,グラビティコアは 2 本 とも相模湾で採取した(下図).採取したピストンコアについて,スミアスライドおよびソフトX線写 真の観察,放散虫の同定を行い,堆積環境やイベントの回数や間隔の推定などを通して KAP の事前調 査を目的として考察した. 相模湾で採取したピストンコアは全体的にシルト質な泥であるのに対し,房総沖で採取したそれは 全体的に級化した粗粒∼中粒の砂層になっており,所々に直径 1-5 cm のシルト岩のクラストが複数挟 まれ斑状になっている.また,貝の破片やラミナ,生物擾乱がいずれにおいても明瞭であった.房総 沖のコアは砂質堆積物であること,および,同辺の地形的特徴から,混濁流が陸側海底斜面を流れて 堆積したタービダイトであると考察される. また,4本のピストンコア全てにおいて 5 万年前の指標となる放散虫 Lychnocanoma sakaii が含ま れておらず,氷河期に特徴づけられる冷温帯で生息していた Cycladophora davisiana がわずかに含ま れていた.このことは,Morley et al. (1995)の提唱したステージ a に相当する.つまり,4つのコア 全ては過去 1 万年以内に堆積した完新世の堆積物だと考えられる. 房総沖のコアに見られる級化層理は表 層 2.64 m の間に5回繰り返しており,タ ービダイトが地震による振動によって崩 壊した陸側海底斜面からもたらされた堆 積物であるとし,コアの上限下限の年代が 確定すれば,級化層理の回数で地震の数や 平均間隔推定が可能と考えられたが,今回 のコアは過去 1 万年前以降の堆積物だとわ かったため,これらの目論見は今後に持ち 越された.
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