地球深部探査船「ちきゅう」を用いた「下北八戸沖石炭層生命圏掘削調 査」により採取された大深度堆積物資料から分離された 圧力関連微生物の性質 ○加藤千明・諸野祐樹・稲垣史生・多米晃裕・植松勝之(海洋研究開発機構),堀知行(産業技術総合 研究所),Gabriella M. Runko・Jiasong Fang(Hawaii Pacific University) 【目的】統合国際深海掘削計画(IODP)第 337 航海「下北八戸沖石炭層生命圏調査」により、地球深 部探査船「ちきゅう」によって掘削採取された堆積物コア試料を用いて、同極限環境に生息する圧力 関連微生物を分離し、その性質を解明する。 【方法】下北八戸沖の掘削サイト C0020 (41°10.5983"N, 142°12.0328"E、水深 1180m) より、海底 下 1498~2406m の環境から、約 2000 万年前に形成された石炭層(褐炭)をはじめとする、有機物に富 む(TOC: ~60%) 堆積物コア試料を採取した。得られた試料を船上ラボで直ちに嫌気状態に処理し、現 場の圧力(35MPa)と現場温度(40〜50℃)の状態で加圧集積培養を行った。本集積培養液から、好圧 菌を含む圧力関連微生物の分離を行った。分離された微生物に関して系統解析を行い、その生育に対 する圧力・温度等の影響を調べた。 【結果】加圧集積培養されたコア試料から、好圧菌の指標である 50MPa でも良好な生育を示す微生物 数株の分離に成功した。これらの分離株は、嫌気環境でも生育できる通性嫌気性を示した。本分離株 の 16S rRNA 遺伝子配列に基づく系統解析により、分離株が Firmicutes に属する胞子形成細菌のグル ープ、Virgibacillus 属 (6R3-1 株)、Robinsoniella 属 (19R1-15 株)、Bacillus 属 (29R7-12M 株)で あることが示された。これらの分離株は、いずれも好圧性を示しその生育至適温度は 45℃、至適圧力 が、10~30MPa であり、充分生息環境の条件でも良好に生育できることがわかった。電子顕微鏡による 観察では、これらの株は桿菌の形状であった(写真参照)。 【まとめ】下北八戸沖の大深度掘削試料から、好圧性をもつ微生物の分離・培養に成功した。これら の分離株は、Firmicutes のいくつかの系統に属し、加圧・嫌気条件下で良好な生育を示した。現在、 胞子形成能を含む生理・生化学的性状について検討を行っている。 6R3-1 株 19R1-15 株 29R7-12M 株
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