2.美しい農山漁村景観を支える適切な農地・森林の活用 - 農林水産省

2.美しい農山漁村景観を支える適切な農地・森林の活用・創造・管理
農山漁村の景観を阻害する要素・要因
健全な農林漁業の営みを通じて育まれ、支えられてきた農山漁村の美しさですが、過疎化、高齢化の
進展や社会経済状況の変化等に伴って、農林漁業の活力や集落の機能が低下するにつれ、営農や管
理の粗放化、土地利用の混乱などを通して、美しい景観が阻害される事例も見受けられるようになっ
ています。
●農林漁業が支える美しさの乱れ
の意味を失ったことによる景観の乱れを感じる
ことがあります。
しい農山漁村の魅力は、農林漁業の営
美
また、農地やビニールハウスの周辺では、営
みを軸としながら、地域資源を管理する
農資材のほか、肥料袋など農作業に使用した
住民の努力によって支えられてきました。地域
後のゴミが散乱している場合もあり、景観を損
の環境と一体となった二次的自然としての田畑
なう要因になっています
や里山、ため池などを使い管理する技術や知識
管理面では、ほ場や耕作道、水路などの管理
が育まれ、地域の伝統文化として集落コミュニ
不足によって、法面の崩壊や雑草の繁茂といっ
ティの中で伝承されてきました。
た状態が見受けられます。これは景観面からも
しかしながら、過疎化・高齢化の進展や農林
問題があるだけでなく、農道や水路本来の機能
漁業をめぐる厳しい経済状況などによって、農
に支障を来します。さらに、耕作放棄地や手入
山漁村を取り巻く環境が変化する中で、農林漁
れ不足の森林、管理されない道路やゴミの不法
業の活力や集落コミュニティの機能が低下し、
投棄を誘発し、農地・森林への廃車や資材の放
農山漁村の美しさが損なわれる状況も見受け
置に至る場合もあり、まとまりのある農地の利
られるようになりました。
用を妨げるだけでなく、地域の美しさも台無し
農山漁村の景観の乱れは、営農面、管理面、
土地利用の面、空間の調和の面など様々な要
因から引き起こされています。
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にしてしまいます。
土地利用の面では、優良農地の中の一部を
無秩序に住宅等に転用することなどは、まとま
まず、営農面では、水田、畑などの農地が耕
りのある農地の利用による健全な営農を妨げ
作放棄され雑草が繁茂していたり、樹林地など
るのみならず、土地利用の混在を招き、秩序あ
の管理が不十分で健全な樹林の成長が阻害さ
る土地利用が醸しだす美しさを損ねてしまいま
れていたりする様子には、生産の場として本来
す。
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村
管理不足の水路
水路法面の草刈りなど管理不足の状況では、本来の機
能である通水機能に支障がでることに加えて、見た目も
悪くなります。
ごみの不法投棄
人の目のとどかない場所や、すでにごみが捨てられてい
る場所などは、ごみの不法投棄の場所になってしまいま
す。普段から管理することで防止することができます。
土地利用の混在
まとまりのある農地の中に駐車場などの非農用地が混在
することは、生産性の高い農業に支障をきたすだけでは
なく、景観的にも問題が多いのです。
管理不足の林
間伐が遅れている森林は、うっそうとし、薄暗く、人を拒
絶するような雰囲気をもちます。危険さえも感じてしまい
ます。適切な管理をすることが必要です。
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農地・森林の活用と創造を通じた農山漁村の景観形成
農山漁村景観の乱れについては、
農地・森林を本来の生産空間として有効に活用することを基本とし、
遊休農地の担い手への集積を図るとともに、市民農園としての活用、景観作物の導入、ビオトープと
しての活用など、農地・森林の多様な活用も工夫しながら美しい農山漁村づくリをすすめることが大
切です。
●農地・森林の有効活用によって美しさを
取り戻す
農作業の受委託が円滑に行われるように工夫す
ること等が必要でしょう。併せて新規就農者を
支援するために受入れ組織なども検討すること
地・森林については、やはり本来の生産
農
も大切です。また、中山間地では、中山間地域
空間として有効に活用することが基本で
等直接支払制度を活用して、集落協定を締結
す。生産空間として活用されることで農林水産
し、地域全体で農地を守るという方法もありま
物を供給するという機能を果たすのみならず、
す。
二次的自然として多様な生物種の棲息空間とし
て機能したり、四季に応じた作物の生育や農作
●体験農業等都市交流の拠点として活用
業を通じて風景に彩りを加えるなど多様なかた
ちで農山漁村の美しさを維持することにつなが
ります。
方で、担い手への利用集積が難しい農
一
地については、体験農業の場や市民農園
農地・森林の活用には、様々な方法がありま
としての活用も検討するなど、都市住民など地
す。例えば、遊休農地を地域の担い手に適切
域内外の人々と一緒になって、生産空間として
に利用集積することが有効であり、そのために
維持していく工夫も重要です。棚田を中心とし
事例
全国各地における中山間地域等直接支払制度での耕作放棄地の復元・対策
1.岩手県岩泉町江川
耕作放棄地率の高い農用地も含め、集落協定を締結し(8 人、20ha)、管理が困難になった農
地が出た場合には、参加者の中で管理する仕組みとなっています。
2.山口県周東町ひよじ
交付金のうち耕作放棄保険として、個人配当分を積み立て、耕作放棄地となった場合には積
立金から 1 万円、耕作不可能となった農家が 1 万円を拠出することで、耕作放棄地を発生させ
ない仕組みとしています(37 人、33ha)
。
3.高知県香北町西部中央
田のうち耕作放棄地になりやすいところを畑(ユズ)に転換し、耕作放棄地の発生を防止する
こととし、現在まで 20a のユズを植えています。
4.沖縄県名護市安部
集落の耕作放棄地率の高い農地を対象として集落協定を締結し、耕作放棄地の復旧に取り
組んでいます。集落の耕作放棄地は 11.36ha ありましたが、平成 13 年度の活動で 2.81ha の耕作
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放棄地の復旧をしました(25 人、21ha)
。
た農の営み、景観保全や自然環境の維持など
りを考えることも重要です。
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に関心がある都市住民などが参加して経費を
例えば、耕作放棄地には景観形成作物を導
負担したり、農作業の一部を支援する棚田オー
入し、何も植えられていない状態を防ぐことも
ナー制度も全国各地の中山間地の棚田で実施
景観形成のためには重要な手段になります。
その他にも、環境に配慮してビオトープをつ
されるようになってきました。
くり地域の子ども達の学習の場として提供す
●景観形成作物の導入とビオトープとして
の活用
る、花を植えて花つみもできる花畑として活用
したり、また、そばを植えることで景観形成の
みならず、収穫祭や手打そば体験を併せて企画
疎化・高齢化や生産条件の悪さ等の様々
過
するなど、都市農村交流のための1つの手段と
な理由で、農地・森林が生産空間として
しての側面を活用するというような地域づくりを
活用できない場合もみられます。このような場
通じて、美しい景観を維持することができます。
合には、これまでの生産空間としてではなく、
また、こういった農地・森林の活用を地元の
農山漁村景観の形成に配慮して、農地・森林な
住民自身で考え、実行することで、地域コミュ
らではの活用をすることで、積極的な景観づく
ニティを再び活発にすることも期待されます。
イギリスでの取り組みの紹介
田園スチュワードシップ事業
イギリスには様々な農村環境政策があります。その 1 つとして農村景観・野生生物生息地の
保全を目的とする事業として 1991 年に創設された田園スチュワードシップ事業(Countryside
Stewardship Scheme)があります。この事業は、伝統的農村景観等の維持のために、自発的に
参加する農業者等と政府とが管理協定
(management agreement)
を結び、農業者が景観保全、
生物保護等のための土地管理を行うことに対して政府から奨励金が支払われる、というもので
す。2002 年での協定の契約数及び契約農地面積は 1 万 3745 契約、34 万 3132ha であり、年間
に支払われる奨励金としては、1ha 当たり4 ∼ 510 ポンド
(約 700 ∼ 8 万 3000 円)
になります。
土地管理等の内容としては、生け垣や石壁の修復・再生、植林、牧草地の管理、荒れ地の
管理、などがあり、それぞれについて支給額及び作業内容が詳細に決められています。
このように農業者等が自分の土地を、伝統的な景観保全のために管理してはじめて、奨励
金が支払われる仕組みになっています。
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事例 「構造改革特区」
で耕作放棄地対策
−千葉県鴨川市の棚田農業特区−
千葉県鴨川市大山地区では、3 年前からスタートした大山千枚田の貸し出し事業が軌道に乗り、
すでに毎年 100 組の参加者を集めています。構造改革特区指定は、大山の成功を市全体に広げ
ようとするものです。まず 5 集落が手を挙げました。平成 15 年 10 月には 2.1ha を対象に、190 組の
棚田オーナーを募集しました。基本料金は苗の代金や指導料を含めて 3 万円/ 100m2 です。市で
はさらに平成 20 年には 14 集落の約 11ha で 400 組以上のオーナーを受け入れる意気込みです。農
地法の特例では市や農協に限られる市民農園の開設が、特区における規制緩和により農家など
でも貸し農園として開けるようになりました。
特区で棚田の耕作放棄地の復元と防止を図り、都市農村交流による地域の活性化をすること
で、美しい農業景観を維持しています。
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冬の水田をコスモス畑に
み
ま
−愛媛県三間町での活動−
愛媛県三間町は、宇和島市の北隣にある温暖な中山間の町です。三間町では、転作田や刈り
取り後の水田に町の花であるコスモスが植えられ、集落毎にコスモス祭りを行っています。中に
は 1 集落で 16ha のコスモス畑を管理しているところもあります。町全体では 40ha のコスモス畑が
広がり、町の「コスモス祭り」も年 1 回開催され、町外からも多くの人が訪れます。
さらには、地域の街道沿いに「水仙街道」、
「紫陽花街道」、
「彼岸花街道」、
「つつじ街道」などが
地区ごとに管理されており、町中が花であふれています。
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事例
実はこの花を植える活動は、元の公民館長が個人的に 1 人で始めたものです。それが集落に広
がり、隣の集落に広がり、さらに町中に広がりました。元公民館長は、
「花を植えることを通じて地
域のコミュニティが活発になったことがなによりも一番の成果だ」
と考えています。景観づくりが地域
コミュニティを活発にし、それがさらに美しい景観をつくりだしているすばらしい事例です。
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農地・森林の適切な土地利用計画を通じた美しい農山漁村景観の形成
農山漁村での空間的な利用をするにあたっては、適切な土地利用計画を策定することが重要です。
土地利用を乱す要因である、休耕地、廃車置き場、資材置き場、派手な看板などは、しっかりとした
土地利用計画によって管理することで、美しい農山漁村景観を維持することができます。
また、その土地利用計画の策定の際には、地域の人々が自ら計画策定に参加することが大切であり、
そうした意見集約のための「場」の創出が求められています。
●土地利用計画の大切さ
置き場や廃車置き場などに利用されてしまうよ
うな不適切な土地利用を防止することができま
農
す。
人々の生活の営み、歴史文化等を基調としなが
●地域の人々が決める土地利用のルールづ
山漁村空間の美しさは、地域固有の自然
と農林漁業等の経済活動、そこで暮らす
ら、これらが調和した土地利用のうえで展開さ
くり
れることによって発揮されます。
農山漁村の美しさを構成する要素は多様で
あり、地域の風景が展開される素地としての自
ま
然空間、地形を活かしながら、そこでの人々の
住民自ら積極的に参加することが大切であり、
生活を支えてきた農地や森林などの生産空間、
計画の実効性を高める上でも大いに効果があ
そして生産と一体となった日々の暮らしが行わ
るでしょう。個人所有の土地といえども住民自
れ文化的・歴史的な彩りも添えられた生活空
らがより広い地域的な視点も学びながら土地利
間、文化空間等、様々な機能を有する空間が、
用に関する計画を考え、議論し、お互いの理解
一定の秩序をもって相互に関連しながら構成さ
を深めながら地域の将来に向けた土地利用の
れて土地利用を形成しています。
計画を策定することは、個人のせまい範囲の利
土地利用の計画や策定の段階から地域
棚田や里山など農山漁村に特有の良好な景
害意識を超えて、地域の土地利用のあり方、地
観を保全・形成するためには効率的に農地や森
域の景観のあり方について改めて考える機会
林の利用・管理を行うことが求められ、そのた
になるという点でも有効な方法といえます。
めにも土地利用計画の果たす役割は重要です。
また地域住民自らがルールを策定したという
農山漁村の美しさを支える活力ある農林漁
ことであれば、そのルールを守っていこうとい
業が営まれるためには、景観と調和のとれた良
う意識もより強くなります。土地の利用に関す
好な営農条件の確保を図るために土地利用が
る話し合いが深まり、お互いに納得のいく合意
適切になされている必要があります。土地利用
が醸成されてくれば、その合意をより確かなも
が適切に行われるためには、まとまりのある土
のとするために、土地利用に関する協定を地域
地利用がなされていること、農地や宅地・工場
内で結ぶことも有効な手段です。
など様々な土地利用がそれぞれの果たすべき
機能に応じて“住み分け”がなされていること
が大切です。土地利用計画により、農地として
保全するエリア、宅地や公供用地として活用す
るエリア等を明確にすることができ、それをし
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とまりのある土地利用がなされるために、
っかりと守ることで、さらには農地・森林が資材
●美しい農山漁村景観を継続させることを
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村
目的とした意見集約の
「場」
づくり
統的な農山漁村では、地域の自然条件に
伝
適したかたちで農林漁業の生産性を向
上させるためのたゆみない努力のなかで、
「地
域の美しさ」を保持するような仕組みを養いな
がら、世代を超えて継承されてきました。
農林漁業のもたらす様々な美しさが、観光資
源等あらたな意味付けを持ちながら見直され、
再評価されている中で、将来的にもこうした美
しさを保全するためには、まず地域住民自身が
自らの生活の場である農山漁村の美しさを再認
識する必要があります。自然条件や歴史、文化
に影響を受けながら、長い間の先人の努力に
よって今日の美しい景観があることを踏まえ、
他の地域とは異なるその地域独自の景観を意
識することで、
「自分が生まれ育った場所」、
「自
分が日々暮らしを送っている場所」として地域
の景観を自らのアイデンティティとすることがで
きるのです。
こうした地域の独自性を自ら再発見するため
に、都市住民など外部の人々との交流も効果的
です。近年、多様な地域資源を活かした地域振
興策のひとつとして、体験型の農林漁業活動や
農家民宿など地域の農林漁業の力によって支え
られるグリーン・ツーリズムなどの様々な都市
農村交流活動が各地で活発化していますが、こ
うした活動は単に経済的な活性化をもたらすだ
けでなく、交流のなかで地域住民が新たな視点
を獲得するということも大きな効果だと考えら
れます。
地域住民と外部来訪者の交流の中で、改め
て地域の農山漁村の美しさを再認識し、その保
全のあり方について、住民自身で検討していく
▲
●
▲
■
必要があります。そのためには美しい農山漁村
景観の継続を目的とした地域住民の意見を集約
する「場」づくりが求められることになります。
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事例
長野県穂高町の「穂高町まちづくり条例」
穂高町は長野県北西部に位置する町で、
「安曇野」で有名な地域です。また名水百選に選ばれ
ている湧き水は豊かで、ワサビ栽培が盛んであるなど、非常に自然豊かな美しい農村地帯です。
一方で、松本市のベッドタウンとして人口増加の町であり、1995 年から 2000 年では 2 万 9730 人か
ら 3 万 1974 人に増加しています。これらの影響から、宅地等の需要が多くなり、土地利用の混乱
から美しい景観が損なわれることがみられるようになりました。このような状況を背景として、
1999 年に「穂高町まちづくり条例」が制定されました。
条例の中では、土地利用調整基本計画を策定することになっています。この計画では土地利用
の基本方向等を決めることになっています。基本的な方向として、①優良農地の保全、②虫食い
的な住宅開発の規制とデザインコントロール、③高質な田園居住型住宅の形成、④良好な地域資
源の形成とネットワークの構成、という4 つの方針を定めています。そしてこの方針に基づいて計
画では町内を、田園風景保全ゾーン、農業保全ゾーン、農業観光ゾーン、集落居住ゾーン、自然保
護ゾーン、生活交流ゾーン、産業創造ゾーン、公共施設ゾーン、文化保護ゾーンの 9 つに区分し位
置づけています。
また町長が町民から指定の要請を受けて、まちづくり協議会等と協議しながら「まちづくり推進
地区」を指定できます。地区内では、住民や土地所有者による「まちづくり協議会」が結成され、
まちづくりの目的や方針、土地利用の方法などを盛り込んだ「地区まちづくり提案」を協議会から
町に提出します。町はこの提案をふまえて土地利用調整基本計画との調整をしつつ「地区まちづ
くり基本計画」を策定し、この計画にもとづいてまちづくりに関する施策を実施します。
このように穂高町では、土地利用調整基本計画において優良農地の保全や虫食い的な住宅開
発の規制を謳い、町の姿勢として農地の保全や土地利用秩序の形成を打ち出しています。また、
土地利用の方法を盛り込んだ地区まちづくり提案によって地区住民自らが地区の土地利用の計画
策定に携わるような仕組みとなっており、より実効性の高い計画策定が可能になると考えられま
す。
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兵庫県加美町の「岩座神棚田の里づくり協定」
兵庫県加美町の岩座神地区には、棚田百選に選ばれている棚田があり、棚田を中心とした美
しい農村景観がみられます。この貴重な地域資源を守り、有効に活用することで次世代に引き継
いでいくために、地区では「岩座神棚田の里づくり協定」が締結されています。
●協定区域
加美町の岩座神地区の棚田を中心とする地域を対象としています。
●棚田の目標像
協定の中では、棚田の里の目標像を「棚田コミュニティづくり」としており、単に棚田景観を守る
にとどまらず、さらに人々が集まり楽しむことができるように棚田を有効活用するという考えがあ
ります。具体的には、①棚田の里の風景をつくっていく、②むらの活性化のため棚田活用(棚田経
営)
を進める、③岩座神棚田学校を開校し棚田の維持存続に努めていく、の 3 点を掲げています。
●棚田の里の原則
この目標像の実現のために「棚田の里の原則」として、風景づくり・棚田活用・棚田学校のそれ
ぞれについて以下のような原則をあげています。
■風景づくりの原則
(1)
ラルゴ※な棚田の里の風景に磨きをかけていく
(2)むらの体力に相応し、無理のない着実な風景づくりを行う
(3)岩座神の棚田は一筆もなくさないという気持ちで臨む
■棚田活用の原則
(4)温かいもてなしをする
(5)岩座神ならではのモノ
(棚田オリジナル)にこだわる
(6)高齢者の発想等住民の知恵を結集する
■岩座神棚田学校の原則
(7)先達の協働の精神(岩座神スピリット)
を守り、受け継ぐ
●景観形成等への配慮
地区内での建築物等の新築・増改築・大規模な修繕等を行う場合には県指定景観形成地区景
観形成基準を遵守するとしています。また、棚田において宅地の造成等の棚田風景の形成に影響
を及ぼすおそれのある行為などについては、以下のルールに適合するように努めることとしてい
ます。
(1)棚田コミュニティづくりの景観形成基本ルール
(2)棚田コミュニティづくりの棚田活用基本ルール
(3)棚田コミュニティづくりの棚田維持存続基本ルール
そして、地区内において上記のような行為を行う場合には、地域の代表者によって組織される
「棚田の里づくり委員会」に相談し、委員会が基準に適合しているかどうかを判断します。
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いさりがみ
事例
このように棚田を地域の伝統的な資源として価値づけし、棚田での農業を継続し、景観を守る
ことで、最終目標である「棚田コミュニティづくり」を目指しています。つまり、単に棚田の景観を
守るにとどまらず、その景観を活用し、都市農村交流を通じた地域コミュニティづくり、地域の活
性化を図っている事例です。
美しい景観形成はそれ自体が最終目的ではなく、美しい景観を活用して地域の人々の生活をよ
り豊かなものにすることが大切なことなのです。
※ラルゴ:音楽の速度標語で、
「極めてゆっくりとした速さで」の意味を持つ。また同時に「表情豊かに」
という意味を持つ。
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