7 検定結果 (1)薬剤耐性菌検定 なし黒星病菌に対する薬剤感受性検定

7 検定結果
(1)薬剤耐性菌検定
なし黒星病菌に対する薬剤感受性検定成績書
1.目 的
ナシ黒星病に対する防除では、ステロール生合成阻害(DMI)剤は使用頻度が高く重要な薬剤であるが、
近年、他県では黒星病菌に対する感受性低下の事例が報告されている。昨年度実施した検定結果によると、本
県の一部地域ではDMI剤に対する薬剤感受性が低下している可能性が示唆された。このため、なし苗木を用
いた検定を実施し、県内各地の黒星病菌についてDMI剤に対する感受性を調査して今後の防除対策の参考と
する。
2.検定概要
(1)病原菌の採取地(露地栽培圃場)
採取時期(平成22年)
No. 採取地
品種
5/26 6/2 6/9 6/11 6/21 6/22 6/28
1 島原市有明町 ○
○
○
幸水、豊水
2 雲仙市国見町
○
○
○
〃
3 東彼杵郡波佐見町
○
○
○
〃
4 諫早市小船越町
○
○
○
〃
5 諫早市本明町
○
○
○
〃
(2)供試薬剤及び濃度
No. 商品名
成分名
希釈倍数(倍)
濃度(ppm)
1 スコア顆粒水和剤 ジフェノコナゾール
4,000
25
2 ルビゲン水和剤
フェナリモル
3,000
40
3 アンビルフロアブル
ヘキサコナゾール
2,000
10
4 バイコラール水和剤
ビテルタノール
2,500
100
5 オンリーワンフロアブル
テブコナゾール
4,000
50
注)オンリーワンフロアブルは諫早市本明町以外の4地区(菌株)について検定を行った。
(3)検定方法
供試樹に品種「幸水」1 年生樹を用いた。予め冷蔵庫に入れて生育を遅延させておいた苗木を、4 月 20 日
に直径 40cm のポリ鉢に植えつけ、その後に伸展した葉を接種に供した。
各薬剤は上記のとおり常用濃度で供試し、噴霧器で供試樹全体に十分量散布し、風乾した。また、対照(無
処理)には水道水を散布した。
各採取地の圃場から罹病葉及び罹病果を採取し、病斑部を切り取って 0.5∼1×105cells/ml 濃度の胞子縣
濁液を調整し、ハンドスプレーで苗木 1 樹当たり 50ml を噴霧して接種した。接種後は供試樹を鉢ごとポリ
袋で 2 日間被覆して高湿度に保った後、露地条件下に置いた。なお、薬剤散布及び病原菌の接種は下表のと
おり実施した。
表 各供試菌毎の薬剤処理と接種処理の実施状況
薬剤処理
No.
採取地
5/27 6/1 6/10 6/21 6/28 7/8
1 島原市有明町 ○
○
○
○
○
2 雲仙市国見町
○
○
○
○
○
3 東彼杵郡波佐見町
○
○
○
○
○
4 諫早市小船越町
○
○
○
○
○
5 諫早市本明町
○
○
○
○
病原菌接種
5/28 6/2 6/11 6/22 6/29
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
(5)調査方法
病原菌接種時に伸張した新梢の先端の展開葉をマーキングしておき、7 月 16 日(諫早市本明町は 7 月 20
日)に以下の調査基準に従って調査を行い、発病葉率、発病度及び防除価を算出した。なお、調査日前に黄
化・落葉した葉はその時点で調査した。
発病程度
指数
発病状況
発病なし
0
無
病斑が1個
1
少
病斑が2∼3個、又はそれ相応の大きな病斑が1個
3
多
病斑が4個以上、又はそれ相応の大きな病斑が2個以上
5
甚
- 102 -
(発病度)=Σ(発病指数×指数別葉数)/(5×(調査葉数))×100
(防除価)=(1−(薬剤処理区の発病度)/(薬剤無処理区の発病度)
)×100
3.検定結果の概要・要約
(1)スコア(ジフェノコナゾール)顆粒水和剤の 4,000 倍散布は、全ての採取地区で発病葉率および発病度が
対照(無処理)より低く、防除価 75∼100 と高い防除効果を示した(表 1)。このことから、供試した各菌株
に対して安定して効果が高いものと思われた。
(2)ルビゲン(フェナリモル)水和剤の 3,000 倍散布は、各採取地の菌株に対して発病葉率および発病度が高
い傾向であり、防除効果は低かった(表 1)。
(3)アンビル(ヘキサコナゾール)フロアブルの 2,000 倍散布は、諫早市本名町採取菌株に対しては高い防除
効果を示したが、その他の採集地の各菌株では発病葉率および発病度が高い傾向であり防除効果は低かった
(表 1)
。
(4)バイコラール(ビテルタノール)水和剤の 2,500 倍散布は、各採集地の菌株に対して発病葉率および発病
度が高い傾向であり防除効果は低かった(表 1)
。
(5)オンリーワン(テブコナゾール)フロアブルの 4,000 倍散布は、各採集地の菌株に対して発病葉率および
発病度が高い傾向であり防除効果は低かった(表 1)
。
4.考察
(1)ルビゲン(フェナリモル)水和剤、アンビル(ヘキサコナゾール)フロアブル、バイコラール(ビテルタ
ノール)水和剤、オンリーワン(テブコナゾール)フロアブルは防除効果が低い場合が認められ、園地によ
っては防除効果が低下している可能性が示唆された。
(2)スコア(ジフェノコナゾール)顆粒水和剤は現在のところ安定した防除効果が得られているものの、他の
DMI剤と作用点は同じであることや、本検定でも防除価で 75∼100 の幅があることなどから、将来的に防
除効果が低下する懸念は拭えないものと推察された。
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表1 ナシ栽培地域で採取された黒星病菌に対する各DMI剤の防除効果(2010年)
発病葉数
調査 健全
発病葉
No. 採取地 供試薬剤名
葉数 葉数 少(1) 多(3) 甚(5) 計 率(%)
1 島原市
スコア顆粒水和剤
24
18
3
3
0
6
25.0
有明町
ルビゲン水和剤
22
14
1
6
1
8
36.4
アンビルフロアブル
37
16
3
15
3
21 56.8
バイコラール水和剤
27
15
3
9
0
12 44.4
13
5
4
1
10 43.5
オンリーワンフロアブル 23
対照(無処理)
22
6
6
6
4
16 72.7
2 雲仙市
スコア顆粒水和剤
28
25
0
2
1
3
10.7
国見町
ルビゲン水和剤
39
12
10
12
5
27 69.2
アンビルフロアブル
23
14
0
9
0
9
39.1
バイコラール水和剤
19
7
3
6
3
12 63.2
9
3
2
4
9
50.0
オンリーワンフロアブル 18
対照(無処理)
23
9
1
9
4
14 60.9
3 諫早市
スコア顆粒水和剤
18
17
1
0
0
1
5.6
小船越町 ルビゲン水和剤
13
10
0
0
3
3
31.8
アンビルフロアブル
22
15
3
2
2
7
31.8
バイコラール水和剤
18
14
1
4
1
6
30.0
11
1
5
1
7
38.9
オンリーワンフロアブル 13
対照(無処理)
17
10
0
3
4
7
41.2
4 東彼杵郡 スコア顆粒水和剤
18
17
1
0
0
1
5.6
波佐見町 ルビゲン水和剤
19
8
1
4
6
11 57.9
アンビルフロアブル
13
8
0
5
0
5
38.5
バイコラール水和剤
30
11
2
4
13 19 63.3
10
1
4
7
12 54.5
オンリーワンフロアブル 22
対照(無処理)
34
7
4
6
17 27 79.4
5 諫早市
スコア顆粒水和剤
22
22
0
0
0
0
0
本明町
ルビゲン水和剤
18
15
1
1
1
3
16.7
アンビルフロアブル
21
19
2
0
0
2
9.5
バイコラール水和剤
24
16
1
7
0
8
33.3
対照(無処理)
35
15
4
4
12 20 57.1
- 104 -
発病度 防除価
10.0
21.8
34.1
22.2
19.1
40.0
7.9
36.4
23.5
37.9
32.2
41.7
1.1
23.1
17.3
18.0
23.3
34.1
1.1
45.3
23.1
52.7
43.6
62.9
0.0
10.0
1.9
18.3
43.4
75.0
45.5
14.9
44.4
52.2
−
81.2
12.8
43.8
9.2
22.8
−
96.7
32.4
49.4
47.2
31.6
−
98.2
28.1
63.3
16.3
30.7
−
100.0
77.0
95.6
57.8
−