アメリカ教育プロジェクト研究授業(倫理・英語)

アメリカ教育プロジェクト研究授業(倫理・英語)
県立那覇国際高等学校
上里 博 美
安谷屋 剛 夫
Ⅰ TT学習指導案
実施日時:2002年2月21日(木)2校時
9時55分∼10時45分
対象学級:2年9組(国際科)(男子3名・女子33名・計36名)
担当教諭:那覇国際高校
上里博美(英語科)
安谷屋剛夫(地歴公民科)
1 単元:民主主義とグローバリズム
2 単元設定の理由
東西冷戦終結後の世界は、唯一の超大国アメリカの影響力が絶大となり、
「アメリカ的民主主義」
はいっそう普遍的な響きをもって語られるようになっている。しかしそのことが、国際的な緊張
関係を新たに生じさせており、それが今世紀最初のさまざまな難問となって我々に迫っている。
この「アメリカ的民主主義」の限界という問題は,同時に民主主義の課題という問題を提起して
いる。本単元では民主主義のめざすべき方向性を見定め,それを可能にするようなコミュニケー
ションとは何かを考えさせ,そのことをとおして,国際化(グローバリゼーション)のあり方を
考えたい。
3 授業計画(4時間)
(1)イスラム教とイスラム社会(1時間)
*2時間目以降の基礎として行う。本来ならば「思想の源流」のところで扱う単元であるが、
研究授業の日程に合わせて、ここで行う。
(2)民主主義とグローバリズム∼「アメリカ的民主主義」の限界と民主主義の課題
(1時間・本時)
(3)ナショナリズムと民主主義(1時間)
、、、
*異文化相互のコミュニケーションを阻害するものの一つとして偏った「愛国心」があると考え
る。さまざまな国の国歌をとおして、「愛国心」の本質とは何かを考える。
(4)民主主義的コミュニケーション(1時間)
*インターネット『百人の村』を紹介し、世界の不平等さを知る。
*自文化相対主義や異文化理解を可能にする「コミュニケーション」のあり方を考える。
*
*レヴィ・ストロースの文化相対主義とその矛盾に触れる.
*コミュニケーションにともなうモラルについて考える。
4
生徒観
在籍数は41名であるが、現在5名が留学中である。女子が圧倒的に多く、クラスは大変活発
-1-
で、学校行事など何事においても積極的な姿勢が見られる。授業では自由な意見や質問が多く、
時として教師が(安谷屋が)それに振り回されることもあるが、結果的にはそのような生徒の積
極性が授業内容をより深め、また授業を楽しいものにしていると思われる。
5
本時の授業
(1)本時の目標
①冷戦後のアメリカをめぐる国際政治の緊張関係を認識する。
②異質なもの同士のコミュニケーションの困難性を知る。
;ブッシュ・アメリカ大統領の「一般教書」演説の中の「an axis of evil」
(=悪の枢軸)発言と,
それに対するイラン・イラク・北朝鮮の反応を取り上げ,両者の間のコミュニケーションを阻害
しているものは何かを考えさせる。
③コミュニケーションの弁証法的発展の可能性に気づかせる。
(2)本時の授業計画
流れ
指導内容
教師の活動
(公民教師)
導入
5分
①国際政治の緊
張関係
生徒の活動
資料
(英語教師)
9・11事件以後
6人ずつ6班を形
の出来事を大まか
成。
に説明。
ニュース番組の
ビデオを見て本時
ビデオでアメリ
の学習イメージを
カの一般教書を
つかむ。
紹介。
展
①冷戦後のグロ
冷戦後のアメリ
プ リ
ーバリズムの
カ中心のグロー
ン ト
進展
バリズムとその
①
反発という、新
しい緊張関係に
開
ついて簡単に説
②英字新聞に親
Ⅰ
しむ。
明。
「一般教書」の要
各班で「一般教書」 プ リ
点(英字)を生徒
(英字)を読む。
に発問しながらま
25
とめる。
分
-2-
(5分)
発問に対する回答。
ン ト
②
3国(イラン・イ
プ リ
"an axis of evil"
ラク・北朝鮮)の
ン ト
の 意味にふれ
位置関係を確認。
③
る。
「テロ輸出国」
アメリカの3国
各班でアメリカの
への告発文と3国
「告発文」とそれ
の反応を読ませ
に対する3国の反
「大量破壊兵器」 る。
などの用語を解
応を読む。
(10分)
説。質問に対す
展
る回答、用語の
3国の反応を、各
解説
班で発表。(5分)
④コミュニケー
アメリカと3国
班ごとにアメリカ
ションを阻害す
との間にコミュ
とイラン・イラク
る要因。
ニケーションが
・北朝鮮との間で
欠落しているこ
コミュニケーショ
とを指摘。
ンを阻害している
開
*自文化中心主
Ⅱ
義(エスノセ
ントリズム)
15
分
要因を話し合う。
両者の間のコミ
(5分)
ュニケーション
*ナショナリズ
を阻害している
ム(愛国心)
要因を考えさせ
班ごとに発表。
(5分)
る。
*異質なもの同
士のコミュニケ
*ヘーゲルの
ーションが弁証
「弁証法」
法的に発展する
可能性に気づか
せる。
ま
*次回に扱う「愛
ア
と
国心」につなげ
ン
め
る
ケ
ー
5
*本時のアンケ
ート
ト
分
-3-
Ⅱ
授業プリント
第1回研究授業∼宗教と人間∼
1.宗教とは?
=「
」こと
↓
自己の(
)を乗り越え、自己を再び(
→人間=(
)なる存在→(
→人間=(
)なる存在→(
→人間=(
)と結びつける。
)教
)教
)存在→(
)教
人間の否定的な側面に注目し、それを乗り越えようとするところに
三大(
)が成立。
2.イスラームの人間観=人間(
)説
Q. 人間の「弱さ」を克服するには、どうすればよいと考えますか?
君の考え;
①「西欧的な考え方」(
:
)を形成する
↓
(
②「日本的な考え方」(
:
)の拡大→キリスト教への信仰
)によって個人の「弱さ」を克服
-4-
③「イスラームの考え方」=人間の弱さを率直に認める。
→(
)を祈る=(
)
神のご加護あらば…
→(
)を(
)や(
)で縛る
*「神は大自然をつくり、天体の動きに秩序を与え、人間には来世の幸福が保障される
うに(
)を与えた」
↓
3 .(
)( =
①イスラム法の源…(
)
)
(
)(ムハンマドの言行録)
*上の二つを、イスラム法学者(ウラマー)が類推・解釈して現実生活に適用する。
→ムスリムが絶対しなければならないこと(=ファルド・ワージブ)
;(
)が中心。
→義務ではないが、した方がよいこと(=マンドゥーブ)
→どちらでもよいこと(ハラール)
→しない方がよいこと(マクルーブ)
→絶対してはならないこと(ハラーム)
↓
・(
)の禁止…違反するとムチ打ち(
・(
)してはいけない…違反すると場合によっては死刑。
・(
)を食べてはいけない
・(
)を物の受け渡しに使ってはならない。
・女性は夫以外に(
)や(
)回
)を見せてはならない。
…などなど…
-5-
よ
②(
)
六信;次の六つを心から信じなければならない。
→(
);アッラーの他に神なし。
→(
);神と人間の中間的存在としての天使。
→(
);クルアーン。
→(
);最後の預言者(
→(
);信仰をもち、正しい生活をすれば天国へ行ける。
→(
);世界の出来事、人間の人生はすべて天命として予定され
)
ている。
五行;ムスリムは次の五つを必ず実行しなければならない。
→(
);シャハーダ。「アッラーの他に神はなく、ムハン
マドはその預言者である」ことを宣言。
→(
);サラート。一日(
)回、(
→(
);ザカート。経済的弱者への施し。
→(
):サラム。イスラム歴9月(
)の方角へ。
月)の間、
30日間の断食。ただし、日が落ちてからはいくらでも
食べて良い。
→(
);ハッジ。聖地(
)への巡礼。
☆POINT
;イスラームは人々の(
)を律する、
「生活の宗教」である。
-6-
TOPIC ∼イスラム(
)とは何か∼
もともとイスラム社会では、シャリーアが生活を律する唯一の規範であり、
(
)と(
)が一体となっていた。ところが19世紀になると、
欧米列強の圧力のもとで、欧米型の「近代国家」に移行するようになり、近代憲法や法律
がシャリーアにとって替わるようになり、イスラム社会に「ひずみ」をもたらした(*注
1)。
そこでシャリーアの復活を求めて、世俗的な権力を打倒しようとする(
)派が生
まれる。これがイスラム原理主義(復古主義)であり、彼らはその目的のために、時とし
て(
)を手段に選ぶこともある。彼らにとってそれは、唯一神アッラーのための、
またイスラム共同体(=
)の復活のための、「聖戦」
(=
である。
*注1;イスラム社会が「近代化」したことによる「ひずみ」とは何か?
①(
②(
)の激化
)文明よりも(
)文明を重視。
-7-
)
第2回研究授業
民主主義とグローバリズム
1.米ソ冷戦後の世界
唯一の超大国=(
)
↓
(
)を中心とする(
)や政治・経済が
全世界へ
=
(
)
*アメリカ的民主主義とは異質な国々の反応は?
→
プリント②へ
2.アメリカ=「
」
↓
アメリカ的民主主義は(
*1960年代…(
)的に発展する?
)運動
-8-
プリント No1
3.コミュニケーションを阻害する要因は何だろう?
-9-
プリント
No.2
The State of the Union Address
Paragraph 1: Stalk (
) wherever theygo.
Paragraph 4: Never allow anycountries which support (
Paragraph 5: The countries such as (
), (
an axis of evil.
AnAxisofEvil
- 10-
).
), and (
) are
Responces:
① It is theU.S.thatis"evil".
訳
( from Time)
② We rejecttheU.S.accusationsand
we thinkthat the world will nottolerate
hegemony of the U.S.
訳
(from Japan Times)
- 11-
Responces:
① The speechwas"Littleshort of declaring war". (from Time)
訳
② The remarks were merelyU.S.shenanigangs aimed a t
continuingwith its policy of aggression against us.
(from Japan Times )
訳
Responces:
①"Such threats donot scare us."
(from Time)
訳
②"Little Bush'saccusation ... is baseless." (from Newsweek)
訳
③ Bush's remarks were "stupid" and "inappropriate of the president of the (world's )biggest country.
(from JapanTimes )
訳
- 12-
第3回
「愛国心」とは何か∼各国の国歌に触れて
*国歌の英語は?
1 .(
);(
)
Oh, say, can you see,
by the dawn 's early light,
What so proudly we hail'd
at the twilight 's last gleaming?
Whose broad stripes and bright star
thro' the perilous fight,
O'er the ramparts we watch'd,
were so gallantly streaming?
and the rockets' red glare,
the bombs bursting in air,
Gave proof thro' the night that our flag was still there.
O say, does that star-spangled bannar yet wave
O'er the land of the free and the home of the brave?
見えるかい、夜明けの薄明かりの中で
我々が誇らしげに呼びかけた薄暮れの最後の輝きのもとで
誰の太いストライプと明るい星が(
)
我々が見た城壁の上で(
)のか
ロケット弾の赤い炎、(
)
夜をとおして証明してくれ、我々の旗がまだそこにあることを
(
自由の大地、(
)はまだはためいているのか
)の上で
この国歌の印象
- 13-
2 .(
);(
)
君が代は
千代に八千代に
さざれ石のいわおとなりて
こけのむすまで
3.
(
);(
和訳
真澄の空より
深き海より
そびゆる山より
こだまする自由
広き野辺の道
牛車やゆくよ
親しき言葉は
野辺に満ちたり
(
)は
自由の土地よ
住み良き楽土よ
(
)
4.愛国心とは何だと思いますか?
- 14-
)
第4回研究授業
異文化理解と民主主義的コミュニケーション
1.現在の世界∼「100人の村」より
世界を100人の村に例えると…
①性別…女性は(
)人、男性は(
②人種…白人は(
)人、有色人種は(
③民族…アジア人は(
)人。
)人。
)人、南北アメリカ人は(
)人、
)人、ヨーロッパ人は(
)人。
アフリカ人は(
④宗教…キリスト教は(
)人、イスラム教は(
ヒンズー教は(
)人、仏教は(
⑤貧富の差…栄養失調状態の人は(
太りすぎの人は(
)人、
)人。
)人、(
)人は瀕死の状態。
)人。
空爆や地雷におびえながら暮らしている人は(
コンピュータを持っている人は(
大学教育を受けられる人は(
*(
)人。
)人。
)人。
)人が地球上の富の60%を持っている。
彼らはみな(
)人。
2.民主主義的コミュニケーション
(1)コミュニケーションを可能にするもの
①(
)…自分の知らない世界を知ろうとする努力。
②(
)主義
→(
)…環境から独立し自己の(
)のみに
よって判断。
→(
)主義…自文化を(
)する(
)で強靱な
精神。
→(
)さ…(
)なものを受け入れる広い心のあり方。
*文化相対主義∼(
)の(
)主義
↓
西欧文明だけが文明ではないとし、未開社会の文明を見直す。
異文化に対する(
)を強調。
*文化相対主義の矛盾…隣国で大規模な「人権抑圧」があったばあい、それを「文化
相対主義」の立場から(
)してもよいだろうか?
- 15-
↓
民主主義的コミュニケーションを可能にする文化相対主義は(
)
を大前提としている。
(2)「民主主義的コミュニケーション」とは何か
=
(
)的(
)による新しい(
①(
)間との(
②(
)を(
)の創造
)であること。
)化するところに成り立つもの。
③単なる情報のやりとりではなく、情報の送り手と受け手との間に
(
)的な(
)があること。
④相手の人格を尊重するという(
)をともなうものであること。
⑤国家や資本の原理を越えた(
)レベルの交流であること。
(3)日本人の異文化との接触の仕方∼典型的な2つのパターン
「アイデンティティ
「アイデンティティ
*(
型」…
型」…
)にとって、どのようなアイデンティティのあり方が望ましいだろ
うか。
- 16-
Ⅲ
生徒の反応
第1回ティーム・ティーチング(第2回研究授業)に関するアンケート結果
1.社会と英語の協同授業についてどう思いますか。
( 1 ) 大 変 よ か っ た … 48 %
(その理由)
・英語だから分かりやすい。
・おもしろかった。
・両方の教科とも伸びると思う。
・今回の事例では、英語で理解したほうが、どういう意味がどの言葉に込められているとかが分
かる。
・説明が二重になっているから分かりやすかった。
・国際理解の授業(英語)でも、もっと今の情勢について習いたい。
・最近の世界の問題をよく理解することができたから。
・テーマが興味深いものだから。普段触れることのない社会問題の英単語を学ぶことができた。
新鮮な感じでおもしろかった。
・おもしろかったし英語力も伸びそう。
・自分で主体的に勉強してるって感じがしたし、世に役立つ、意味のある勉強ができた。
何となく楽しかった。
・英語力も倫理の力も伸びると思う。
・おもしろかったし、考えさせられた。
( 2 ) 良 か っ た … 31 %
(その理由)
・ちょっと混乱するけど、たくさん英語が分かるからいい。
・難しい英語を聞く力がつくと思うから。
・英語のところが早くでついていけなかった。
・授業の内容はとても良かったけど、時間がたりなかったと思う。
・楽しかった。けど内容も難しかった。
・社会と英語の授業が一緒にできておもしろかった。でも倫理と英語を合わせるのはちょっと
難しいかも。
・初めてやって、こんなのもあるんだ、と思いました。
・早くてついていけない。
(3)普通…
7%
(その理由)
・世界情勢を学ぶには、英語と倫理を両方やったら深くできるとは思ったけど、少し半端に な
ってしまうと思った。
- 17-
( 4 ) 良 く な か っ た … 14 %
(その理由)
・時間がないのに、こんな重要な題材を、こんなテンポで進めていくのは違うと思った。
50分にやるべきことを詰め込みすぎだと思う。
・テンポが速すぎて話し合う時間がなかった。
・内容は楽しいのに展開が速すぎて…。
2.当てはまる数字を○で囲んで下さい。
(1)内容がよく理解できた
思う
思わない
5
4
45
41
3
10
2
1
4
0
(%)
(2)アメリカに対する興味が高まった
思う
思わない
5
4
52
31
3
16
2
0
1
1
(%)
(3)今後も協同授業をしてほしい
思う
思わない
5
4
3
2
62
20
7
7
1
4
(%)
(4)その他感想
・せっかく大事な問題で、みんなも興味を持っているのに、時間がなくてちゃんと話し合って考
えることができなかった。
・倫理を英語でするのは楽しいけれど、考える時間がなかった。
・進むスピードが速すぎてあんまりだった。もっとゆっくりならよかったと思う。
・たまにやるのは楽しいかもしれません。
・アメリカと中東との関係が分かるようになってきた。
・もっとやってみて、慣れたらいいと思いました。
・今までテロとかアメリカのことなどについて、
自分の考えていた考え方が少し変わったと思う。
・もっと下準備、時間配分を考えたらいいと思う。
・こんな授業がいいです。でも、時間が足りなかった。
・次回が楽しみ。
- 18-
・とても興味はあったけど、日本語でやったところは分かったけれど、英語が難しかったです。
・調べたりしたけど速くてついていけなかった。
・倫理と英語は最高だけど、日本史も大変いいと思います。
・世界の事件や出来事などを国際理解の授業でやりたいです。
・分かりやすかったし、日本語でも英語でも理解できるから英語力も伸びると思う。
・時間がとても短かった。2時間くらいぶっ通しの方がよい。その方がいろいろ考えられるし、
・ゆとりがあって先生も生徒もやりやすいと思う。
・最初、先生が緊張しているのが分かった。でもTTで2人も説明する人がいて楽しかっ た。
・国際理解の授業でも、もっと本当に国際的な問題について取り組みたい。
・先生も初めての授業で流れがうまくいってなくて時間が足りなくなってたけど、世界の問題を
同年代の人と意見を言うことで、刺激を受けてとても良かった。
・もうちょっと、みんなでディベートみたいにしっかりした内容の濃い話し合いもしてみたいと
思いました。とても楽しかったし、ためになったと思います。
・いろいろ社会の問題を知らなければいけないと思った。
・もっと長い時間をとって欲しかった。もっとやりたいと思う。
・こんな授業をもっと増やしてくれたら、学校が楽しくなると思いました。
・もっと楽しみたいから、こういう場を増やして欲しい。
・日本語で倫理をするより、英語で倫理をする方が楽しいと思った。
第2回ティーム・ティーチング(第3回研究授業)に関するアンケート
1.社会と英語の協同授業についてどう思いますか。
( 1 ) 大 変 よ か っ た … 40 %
(その理由)
・英語でもテロについてのことが分かったし,楽しかった。
・分かりやすかった。内容が深まった。
・国際的な問題を英語で学べるのはおもしろいから。
・英語を使って他のことをするのがおもしろかった。
・英語でやることによって,より興味がわいてきたし,たのしかった。
・国際理解の授業みたいにできた。いろいろな国の顔が見えたし,自分たちも見えた。
・倫
理もよく分かるし,英語も伸びると思う。
・他の教科と一緒に英語を学んだ方が楽しいし,ためになるから。
・考えようとするから英語の勉強にもなる。
・英語力の向上にも,倫理の理解にも良いと思うから。
( 2 ) 良 か っ た … 24 %
(その理由)
・政治的な語彙力がつく。新しい単語の知識が増える。でも理解するのに時間がかかる。
良かったけど,日本語でもっと詳しく知りたかった。
・普段の授業で学べないことができた。
- 19-
・
・今回のは,社会が強かったかな,と思った。
・訳をするのは難しかったけど,実際に自分たちで英語で書かれた記事を訳したりして,今起こ
っていることをもっと身近に感じられた気がした。
・英語も倫理も分かれるようになったから。
( 3 ) 普 通 … 21 %
(その理由)
・おもしろかったけれど,たまにでいいかもしれない。
・英語は納得できたけど,倫理的な問題については,やはり考える時間がなかった。
・なぜ英語で授業するのかが分からなかった。
・おもしろかったけど,速すぎた。
・英語の授業って気がしなかった。
・もっとゆっくりだったらいいはず。
( 4 ) 良 く な か っ た … 12 %
(その理由)
・時間が短すぎて意味が分からなかった。2時間連続とかだったらうよかった。
・最初はいいと思ったけど,ペースが遅いから時間がもったいないと思う。
・日本語訳にさく時間が多く,倫理部分が浅くなっているような気がしたから。
2.当てはまる数字を○で囲んでください。
(1)内容がよく理解できた
思う
思わない
5
44
4
32
3
16
2
8
1
0
(%)
(2)アメリカに対する興味が高まった
思う
思わない
5
4
52
12
3
28
2
0
1
8
(%)
(3)今後も協同授業をしてほしい
思う
5
52
思わない
4
16
3
20
2
1
8
4
(%)
(4)その他の感想
・将来はアメリカに留学する予定なので,英語でのその他の授業を行うことは,これからのため
- 20-
になるからいいと思った。また,英語で他の授業を行うことを,国際高校の特徴の一つにして
もいいと思った。
・次回は国際経済なども英語でやってみたい。
・研究授業がある時だけじゃなくて,たまにTTをやって欲しいです。
・これからもやってほしい。
・アメリカだけじゃなく,いろいろな国(ドイツとか中東など)の考え方も知りたい。とっても
良かった。普通科でも月に1度くらいは実施した方がいい。
・普段あまり考えないことを,授業を通して考えるとすごく難しく思うけど,自分たちの考えも,
相手の考えも知ることは,とても大切だと思う。
・これからもこんなふうに授業してほしい。
・もうちょっとゆっくりやったら,もっと理解が深まった。もう少し世界のことに目を向けてみ
ようと思った。新聞を読みたくなった。
・みんなで意見を言い合いながらやるから,いろんな考え方を知ってとても楽しかった。
・ビデオも楽しかった。
・倫理は倫理,英語は英語で勉強して,その両方を使って新しいとこを見つけるのは自分でやる
ことだと思った。
・テロの勉強をしていると,アメリカが嫌いになっていきそうでした。
・今のアメリカや北朝鮮,中国の動きに対して興味があったので,今回のTTはとても良かった
と思う。これからも世界の動きに関心を持ち,自分の意見を述べることのできる人になりたい。
・世界は今,とても複雑な関係なんだと改めて実感した。
・時間内にまとめられてなくて,中途半端に終わってしまっていたのが残念だった。
・自分が知らなかったことが多すぎて,なんかすごく大切で自分も考えなきゃいけないなぁと思
いました。難しそうで,自分とは遠い問題だと思って真剣に向かい合って考えるのを避けてし
まっていたことが恥ずかしくなりました。少しずつ,もっと新聞とかニュースなどに目を通そ
うと思います。
・どんどんアメリカが嫌いになっていく気がした。
第2回研究授業
「 理 想 的 な 愛 国 心 と は ど の よ う な も の か 」( 生 徒 の 意 見 )
・それぞれが自分の国に誇りを愛情を持つこと。但し,自分の国を愛しすぎるゆえに,自分たち
の国だけが絶対的であるように思わないこと。他国と自を比べ,感情的にならず,客観的なも
ののとらえ方で,他国・自国ともに批判できること。そうすれば他国も自国もますます良いも
のとなり,自分の国をより深く愛することができるようになると思う。また,他国からも愛さ
れる素晴らしい国が築けると思う。いつまでも古い考えにとらわれることなく,時代の流れに
よって自分たちの国を見直していけることも,国を愛するのには必要。
・そのような質問をされると,とても困り,考えてしまう 。答えが出てこない。しかし私には「愛
国心」はある。とても沖縄が好きである。他の県に行くと落ち着くことができず,沖縄に帰っ
てくるととても安心するし,くつろげる。私は沖縄のいいところや悪いところをみんなに紹介
- 21-
できる。しかし,アメリカとかその他の海外の国の人々は「わが国は一番。何もかもすべてが
よい。悪いところはない」みたいな感じがする。そこまでいったら自意識過剰のようで,そこ
までする価値があるのか尋ねたくなる。よく分からないけど,好きな人のいいところも悪いと
ころもわかって,その人を愛せるのだと思う。
・私は愛国心が強いことは素晴らしいと思います。最近オリンピックがありました。それぞれの
国には応援団がいて,自国の人を応援しています。これも一つの愛国心だと思います。私は全
然知らない国の人,例えばチェコ出身の人の応援はめったにしません。理想の愛国心とは,今
まで倫理で勉強してきたように宗教,考え方の違いを互いに知って,その上で強くないとだめ
だと思います。
・強すぎる愛国心は少し怖いけど,愛国心は持つべきものだと思います。日本人は愛国心を持た
な過ぎだと思います。私は一応,愛県心はあるけど,「基地反対」とハチマキを巻いてデモを
するほどはありません。私はそんなことをできる人はすごいなと思うけど,怖いと思うことも
あります。私が考える愛国心とは,自分の国や伝統を大切にし,またそれに片寄り過ぎず,
他国と調和のとれた関係を築ける心だと思います。
・愛国心と聞いて私がすぐ思うのはアメリカ合衆国だ。しかしアメリカが理想的な愛国心の国だ
とは思わない。アメリカの国歌を聴いても分かるように,「ロケット弾の炎,爆弾が空中では
じける…」とは,国のために軍隊が戦場に行き戦っている風景を物語っている。またこの歌詞
の最後に,自分たちのことを「勇者」とと言っている。私はテロ事件を通して,アメリカが理
想的な愛国心の国だと思わなくなった。なぜなら彼らの話を聞いていると,彼らは自分たちが
一番偉い,アメリカは世界の頂点にいて,世界中を支配しているという様な印象を私に感じさ
せた。それを聞いて私は,なぜかイライラした。いくら愛国心が強いといっても,自分たちが
世界でエライと考えてアフガニスタンの人々の感じていることを考えようともしない態度が嫌
だった。いくら国を愛していても,相手の立場で考え,お互いの国の事を思うことが大切だ。
他国への思いやりもあり,自国の国への愛がある,これが私の思う理想的な愛国心だ。
・自分の国の良いところを心から愛すること。
(文化・風習などを)よく理解すること。他の国
を尊敬できる姿勢を持つこと。自分の国の悪いことを認めて受け入れる,あるいは変えようと
すること。
・自国を絶対化したり優越感にひたったりせず,いつでも変化していくものとして国を愛す。だ
けど,人間はなぜ国と国との間に隔たりを作ったのだろうか。同じ一つの地球に住みながら,
どうして「愛星心」を持たないのだろうか。やはり寛大な心を持つことが大切だと思う。
・アメリカを見習うほどじゃなくてもいいと思う。けど,日本ほど離れているのもさみしい。
理想的なのは,国を見つめる姿勢だと思う。自分の国を愛するというより,悪いところもいい
ところも見よう,目をそらさずに国を見よう,と一人一人が思うことだ。
・国の人みんなが自分の国のことをとても誇りに思える。他の国を認めながら,自分の国に自信
を持てる。同じ国の人がまとまって一つになれるところ,いつもはみんな一人一人違う生活を
しているけど,同じ国の人として,同じ国(自分達の国)が大好き。普段はあまり意識しない
けど,オリンピックとかサッカーの試合などで,国歌が流れ,選手が胸に手を当てて目を閉じ
ている姿を見ていると,何と言えばいいのか,とてもいいなぁって感動します。みんなが自然
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と帰るところ,戻るところが理想だなと思います。国歌を歌っているとき,この国に生まれた
ことを自然に感謝したり,そいういうふうだとすごくいいと思います。
・例えばスポーツ観戦のときには誇りをもって自分の国を応援できるような心。政治や経済など
で他国と対立関係になってしまった場合には自国を見つめ直し,関係をより良く改善しようと
いう心。
・「井の中の蛙大海を知らず」が ,ふと脳裏に浮かんだ 。過度の愛国心はこの状態に陥りやすい。
というより,すべての国・人に「しきり」がある限り,私は「井の中の蛙」でそこから大海を
想像しても本当の意味で知ることはできない。私は日本人に生まれて良かったと思うし,日本
にずっと暮らしてもいいと思う。でもそこの居心地がよいほど,大海への渇望は薄れ,ますま
す知ることができない。愛国心は他国と自国の比較から生まれるべきではないけれど,大海を
本当に理解した上で生まれるものだ。また大海には,つながり,共有のイメージがある。私た
ちは地球という一つの星を共有した仲間である。友人を理解するように他国を受け入れるべき
だと思う。私たちが個々の星や国,人に分けられたことには意義があるはずだ。その意義を知
ること,知ろうとする心が愛国心で,これらのことを意識した愛国心が今の私にとって,理想
の愛国心である。
・自分たちの国を誇りに思い,自分たちの伝統を守り伝えていく一方で,他の国にも目を向け、
良いところを取り入れようと努力する心。だけど,自分の国のために戦える心っていうのはダ
メだと思う。それが戦争を起こすことにつながるから。
・過激すぎてもいけないし,愛国心がなさすぎてもいけない。周囲の人や権力者に影響を受けて
持つものではなく,自然に心の中に生まれて持つものが理想的な愛国心だと思う。
・わからない。愛国心とうのは非常に難しいものだと思う。現在の世界状況や今までの歴史とか
を見ても分かるように,多くの争いの原因の一つに愛国心がある。私が愛国心を難しいと思う
のは,愛国心はバランスを保ちにくいと思うからだ。国,自分の故郷を愛し,大切に思う気持
ちは決して悪くはないと思うが,この愛国心というのは,人から公正な物の見方を奪ってしま
う。自国中心になってしまうと思う。時には他者(他国)を批判し排除しようとする事もある
と思う。だから私は,愛国心より「愛地球心」がいいと思う。でも愛国心の中で理想的なもの
があるとすれば,故郷を大切にしつつ,それが偏らず,公正な物の見方,他者を受け入れる事
のできるゆとりある程度に国を愛することだ。
Ⅳ
考察
「社会と英語の協同授業についてどう思うか」というアンケートの質問に対して、肯定的な回
答(大変よかった・よかった)は全体をとおして過半数以上であった。ただ詳しく見てみると、
第1回目は肯定的な意見が79%であったのに対し、第2回目は64%にまで落ち込んでいる。
初回は目新しさもあり、授業を無批判に肯定していた生徒が、その後冷静な目で授業を眺めはじ
めたことを示しているのではないかと思われる。具体的な生徒の意見を見るとその辺がはっきり
出ているように思える。生徒の意見の中で、とくに多かったのは「時間的なゆとりがない」とい
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うものであった。授業の内容を欲張りすぎたところが確かにあり、ゆっくり考える時間を与える
ことができなかった点を反省する。また、根本的に、なぜ社会(倫理)と英語の協同授業なのか 、
というとまどいも生徒の反応の中に読みとれる。普通、社会と英語の協同授業というと、社会科
的な問題を英語を道具として使用しながら考える、ということになるのであろうが、我々の研究
授業では、英語自体を「社会科的な目的」として捉えることができないか、という点を考えた。
異文化間のコミュニケーションのという文脈で英語の可能性を考えるならば、英語は単なる「道
具 」から、
「民主主義」という社会科的な価値の領域の中で捉えることができるのではないか…。
ということを理念的に考えたのであるが、授業実践の中で、この理念を具現化することができな
かった。研究不足であったことを反省したい。
Ⅴ
参考文献
①『イスラーム文化』井筒俊彦(岩波)
②『イスラームの日常世界』片山もとこ(岩波新書)
③『ボランティア・もう一つの情報化社会』金子郁容(岩波新書)
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