学校行事とクラスづ くり ∼学校祭への取り組み∼ 広島工業大学高等学校 教 諭 桑 原 隆 司 「麗しの工大高校」 2003年度1年5組 はじめに 苦労しながらも、力を合わせ、やり遂 命に取り組む姿が見られた。なんとか 生徒たちは「去年よりたいへんそうな に数多くの実践例がある。クラス全員 学校祭におけるクラスの取り組み げた結果、喜びや達成感を共感できる 全員がノルマを終え、1枚ずつつなぎ のに、時間もないし、人数も少ない(34 が参加できて、協力し、助け合い、感動 として昨年度は1年生で「モザイクア ような仕掛けを心がけている。 合わせて完成したのは、学校祭前日の 名)。本当に間に合うのですか?」と不 を分かち合えることが人気の理由だ 夕方だった。生徒たちは作品の絵柄を 安を隠せなかったが、彼らが率先して と思う。ノウハウは単純なので、特別 1年次の取り組み 知らされないまま作業をしていたため、 取り組んでくれたおかげで、クラス全 難しいことはないが、ただ、絵柄の決 1年次は、学校祭とはこういうもの このとき初めて、自分たちの作ってい 体が流れに乗った。 定が最も重要で難しい。何らかの意味 だという意識を持たせる意味でも重 たものが明らかになる。歓声と拍手が ート∼麗しの工大高校∼」を、そして 今年度は2年生で「ハリセンボンアー ト∼夏の思い出*花∼」を制作した。 両作品とも生徒にとっても大満足の をこめた絵柄でなければ、せっかく完 出来で、最優秀特別賞というおまけつ 要である。1年次にしかるべき体験を 沸き起こり、クラス全員が驚きと喜び 成しても感動が薄れる。そこで、学年・ きであった。 した生徒とそうでない生徒とでは、そ を共感する瞬間である。 クラスに応じて、担任として生徒に伝 の後の学校行事に対する取り組み姿 本校の学校祭 勢に大きな差が見られるような気が 本校では例年11月の第2週に学校 する。 えたい想いをこめてテーマを定め、絵 おわりに 柄を決めている。 「達成感なくして自信なし、自信な 2年次はクラス替えの影響もあり、 1年次の「麗しの工大高校」は校歌 くして意欲なし」、 「苦楽を共にしてこ 祭が開催され、 1・2年生が工作や展示、 また一からクラスをつくり直すこと の一節をもじったタイトルである。山 そ真の仲間づくり」、この信念に基づ イベントを、3年生が模擬店を担当し になる。いかにしてクラスを固め、3 下先生が丹精こめて育てられている き教育にあたっているが、安直に楽を 塗料をスポンジにつけて爪楊枝を着色 ている。各クラスとも学校祭が近づく 年次につなげるかが問われるため、1 本校自慢のバラを題材とした。環境に 求めることに慣れている現代っ子には、 と毎日遅くまで準備する光景が見ら 年次以上に取り組みが難しく、緊張を 着色作業は本当にたいへんだった。 恵まれ、四季折々の花に彩られる本校 初めのうちは敬遠されがちである。し れる。 強いられる。10月には修学旅行という 初めは要領を得ず、思うようにはかど に愛着を持ってほしいという想いを かしながら、様々な行事を通じて体験 高校生活最大の行事があり、11月の学 らなかったが、試行錯誤を重ねながら こめた。 を重ねるうちに徐々に浸透していく。 クラス運営の基本方針 校祭はクラスづくりの仕上げとなる。 徐々にペースをあげて、ようやく作業 2年次の「夏の思い出*花」は、宮島 とりわけ、 学校祭は絶好の機会である。 学校祭に限らず、とびだせ青春や体 ハリセンボンアートは基本的な原 が完了した。学校祭まであと3日と迫 の花火とひまわりを題材とした。 初夏、 クラスがひとつにまとまり、一人ひと 理は色紙を使ったモザイクアートと っていたが、ここからは爪楊枝を刺す クラス全員で訪れた宮島で弥山登山 りが活きてくる。生活面、学習面にも 同じだが、色紙を貼る代わりに爪楊枝 作業となり、一人あたりB4サイズの を通じて苦楽を共にした思い出と、盛 好影響が見られる。 育祭、クラスマッチなどクラス主体の 色紙を間違えないように貼り付け 行事に取り組む際は、一貫して「苦楽 を共にしてこそ真の仲間づくり」をモ モザイクアートとは、絵や写真をコ を発泡スチロール板に1cm間隔で刺 板2枚を担当した。学校祭前日にすべ 夏の猛暑にも負けず、本校南門裏に咲 今後はさらにそれぞれの行事の効 ットーにしている。苦が大きければ大 ンピュータで8色に減色し、2センチ す点で異なる。 てをつなぎ合わせて完成し、ついに作 いたひまわりのように強く、明るく、 果を最大限に引き出せるように、工夫 きいほど、それだけ楽が大きく感じら 四方の色紙を貼り合わせて表現する 作品の大きさは1.3m×2.5mで、絵 品の絵柄が浮き上がった。皆が驚き、 のびのびと成長してほしいという願 を凝らし、粘り強く取り組みたいと思 いをこめた。 う。 れるものだ。 ものである。使用する色紙の数が多い 柄の異なるものを2点制作した。使用 喜びを分かち合う光景は何度見ても ほど大きな作品となり絵柄も鮮明に した爪楊枝は6万3千本にもなった。 よい。 仕上がるが、 作業量もそれだけ増える。 作品のサイズ、材料の数ともに昨年度 また、今回はクラスの保護者に土日 47名という生徒数をいかす意味でも のモザイクアートに比べると小規模 や祝日を利用して作業の協力を呼び 思いきって大きな作品に挑戦した。サ だが、一人あたりの作業量は昨年度以 かけてみた。にぎやかに作業をしなが イズは9m×5mで貼り付けた色紙は 上であった。というのも色紙とは異な ら、担任と保護者、そして保護者間の 9万枚を超えた。1人あたりB4サイ り、 爪楊枝は着色する必要があるため、 親睦を深めることができた。学校祭当 ズの紙にして10枚をノルマとし、9月 6万3千本もの着色作業だけでも気 日はたくさんの保護者に生徒同様に 感動を味わっていただけた。 中旬から準備を始めた。原稿の写しか が遠くなるほどであった。また、準備 ら色紙の貼り付けまで相当な時間と 期間が修学旅行後の3週間しかなく、 したがって、学校祭では生徒に投げ 手間を要したが、早朝や昼休み、放課 余裕がなかった。 作品のテーマにこめる想い 出したくなるほどの負荷を与え、共に 後は、時には雑談をしながらも一生懸 昨年度モザイクアートを経験した モザイクもハリセンボンも全国的 まだ暑い9月、 原稿の写しに集中 10 2年次の取り組み 1本ずつ丁寧にまっすぐ刺す 「夏の思い出*花」 2004年度2年2組 11
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