3 限

8回目課題の解答(1)
物理学 I (力学) 10 回目:
ベクトルの外積と角運動量
中野武雄
2012年6月12日
Q: 重力加速度 9.8 [m/s] のもと、地上(y=0)から物体を 100
[km/h] で真上に投げ上げた。最高到達点では速度が0にな
ることを利用して、到達点の高さを求めよ。
A:いつものように
1000 [m]
1[h]
100 [km/h]  100 [km/h] 

 27.78[m/s]
1[km] 3600 [s]
最高点を ymaxとすると力学的エネルギーの保存より
1
1
2
mv0  mg  0  m  0 2  mgymax
2
2
2
v0
27.78[m/s]2
よって ymax 

 39.4 [m]
2 g 2  9.8[m/s 2 ]
8回目課題の解答(2)
8回目課題の解答(3-1)
Q: 100 [km/h] で、45度上方に投げ上げた場合の到達点の高
さを求めよ。このとき x 方向には等速度運動なので、最高到
達点での速度は初速度の x 成分に等しいことを利用せよ。
v
A:
最高到達点では v  v x  0 なので、
2
力学的エネルギー保存の式は
2
1
1 v 
2
mv0  mg  0  m 0   mgymax
2
2  2
これを解いて
1  2 1 2  v0
 19.7 [m]
 v0  v0  
2g 
2  4g
2
ymax 
8回目課題の解答(3-2)
1
1
2
2
E  m A sin t  B cos t   k  A cos t  B sin t 
2
2
1
 m 2 A2 sin 2 t  2 AB sin t cos t  B 2 cos 2 t 
2
1
 k A2 cos 2 t  2 AB sin t cos t  B 2 sin 2 t 
2
1
 k A2 sin 2 t  cos 2 t   B 2 cos 2 t  sin 2 t 
2
1
 k A2  B 2  よって時間t によらず一定。
2
Q: 1次元の単振動の運動方程式 ma  kx の解
x(t )  A cos t  B sin t ただし  k / m において、
あらゆる時間 t において位置エネルギーと運動エ
ネルギーの和が一定であることを示せ。
A:位置を時間微分するとv(t )  A sin t  B cos t
全力学的エネルギー E は
1
1
E  mv 2  kx 2
2
2
1
1
2
2
 m A sin t  B cos t   k  A cos t  B sin t 
2
2
8回目課題の解答(4-1)
Q: 重力が 𝐹 = −𝑚𝑔𝑒𝑦 (𝑔 = 9.8[m/s2]) で与えられているとき、位
置 𝑟1 = 𝑂 (原点)から 𝑟2 = (1.0 m )𝑒𝑦 まで移動した物体が、こ
の重力から受ける仕事を考える。経路が (1) 直進、 (2) 中心(0,
0.5 [m])、半径 0.5 [m] の円に沿って移動、のときそれぞれにつ
いて、仕事 𝑊1 、𝑊2 を線積分を用いて計算し、両者が一致する
ことを示せ。
A: 経路の終点の y 座標を y2と置く。
経路1については
   
W1  F  r  F r cos   mgy2
y
y2


F   mg e y
θ
経路
1
O
経路
2
x
1
8回目課題の解答(4-2)
成分を用いた線積分の計算
経路 2 については、半円の半径を r ( y2 / 2)


r2

r1
  t2  
t2 
dx
dy 
F  dr   F  v dt    Fx
 Fy dt
t1
t1
dt 
 dt
t2
t2
dx
dy
  Fx
dt   Fy
dt
t1
t1
dt
dt



なお t は r  x (t )e x  y (t )e y を定めれば良い
のであって、必ずしも実際の時間そのもの
 
F (r )
経路 C




θ
経路
2
 mgr cos  d   mgr sin  
O
x


運動量: p  mv これを用いた運動方程式
 
dp
F
dt
の両辺を時間で積分すると、

t 2 dp


左辺  
dt  p (t 2 )  p (t1 )
t1 dt

t2 
右辺   F dt は力積 I と定義
t1



すると p (t 2 )  p (t1 )  I
外積の定義
具体的な計算のしかた・成分表示
角運動量の定義、トルク方程式
角運動量の保存
重力下の振子の運動
運動量保存則

運動量の変化は、与えられた力積に等しい
重心と全運動量
力の働いていない物体

dp

 0 より、p は時間によらず一定。
dt
力を及ぼしあう2物体
作用反作用の法則より、運動量の和は不変。
物体1
r
運動量と運動方程式
運動量と力積、運動量保存則
2物体の衝突

F12


F   mg e y
 /2
 / 2
 mgr (1  (1))  2mgr  mgy2
角運動量


O
ベクトルの外積


 / 2
前回のおさらい


 /2
よってW1 とW2 は等しい。
今日の内容



r1
でなくても良い。

 
r  v t r
2

r
として、x  r cos 、y  r (1  sin  )とおける。
y
dx
dy
よって
 r sin 、  r cos  なので、
y2
d
d
   / 2  dx
dy 
W2  
F  r    Fx
 Fy
d
経路 2
 / 2
d 
 d

F21 物体2
m1  m2    m5   mi  M

F21
i

m 
重心ベクトル RG   i ri
i M
これを用いると全運動量は



dr
dR
P   mi i  M G
dt
dt
i
また


d 2r
dP
  mi 2i  K i
dt
dt
i
i
2

F12

K3
1
外力が0なら全運動量(=重心の運動量)は不変
3
F35
4

F53

K5
5
2
重心の運動と衝突
重心 X G 
m1 x1  m2 x2
m1  m2
 重心の速度VG 
いま相対速度として
vR  v1  v2
衝突前
v1
m1v1  m2 v2
m1  m2
運動量保存
m1v1  m2 v2  m1v'1  m2 v'2
相対速度と衝突
v2
VG
衝突後
衝突前 v
R
v1
を定義すると、
m2
v1  VG 
vR
m1  m2
v2  VG 
v2 '
v1 '
よりVG  V 'G , つまり重心の
m1
vR
m1  m2
v2
VG
衝突後
v 'R
v1 '
v2 '
となる。よって e  v' R / vR
速度は衝突前後で不変。
VG
によって v1 ' , v'2 も決まる。
VG
ベクトルの外積

ベクトルの外積

ベクトルとベクトルの積→結果はベクトル
(内積の結果はスカラーでした)
3次元空間を舞台とする科学理論の
いろいろなところで利用される





3次元デカルト座標系

右手系



x 軸の正の向き、y軸の
正の向きを選んだのち、
z 軸の正の向きをどちら
に選ぶか
親指-x、 人差し指-y、
中指-z
世界統一ルール
高校の物理・数学ではやらなかった(はず)
たいていみんな最初は苦手(笑)
右手系=右ねじ系
x

右ねじ系

y
z
角運動量
コリオリの力(回転系での慣性力)
電磁気学(ローレンツ力・フレミングの右手・左手則)
x 軸の正の向きから y 軸
の正の向きに向かってド
ライバーを回転させるとき、
ねじが進行する方向を z
の正の方向と定義
y
x
z

角度の狭い方を通る
3
3次元デカルト座標系の
基準ベクトルとベクトルの外積
z

ex
各種ルール


ez
x

ey
y
x      
ex  ex  e y  e y  ez  ez  0
  
  
ex  e y  ez , e y  ez  ex ,
 

 

e y  ex  ez , ez  e y  ex ,
z
y
  
ez  ex  e y
 

ex  ez  e y
外積

(内積)
自分との外積 :
 
A A  0
 
A  A  A2
交換法則:
 
 
A B  B  A
   
A B  B  A
結合法則(スカラー倍):
  
 

kA B  A  kB   k A  B 
kA B  A  kB   k A  B 
分配法則:
  
   
A  B  C   A  B  A  C
  
   
A  B  C   A  B  A  C



 

x
外積の特徴
外積の成分表示
     
A  B  A, A  B  B
大きさ
 
 
A  B  A B sin 

B
(平行四辺形の面積)
 直交している 2 ベクトルの
 
外積の大きさは A B

A

z
 






A  B (Ax ex  Ay e y  Az ez )
 Bx e x  B y e y  Bz e z )
(
 
 
 
 Ax Bx ex  ex  Ax B y ex  e y  Ax Bz ex  ez
 
 
 
 Ay Bx e y  ex  Ay B y e y  e y  Ay Bz e y  ez
 
 
 
 Az Bx ez  ex  Az B y ez  e y  Az Bz ez  ez






 Ax B y ez  Ax Bz e y  Ay Bx ez  Ay Bz ex  Az Bx e y  Az B y ex
 
A B
向きは「右ねじ則」
y



 ( Ay Bz  Az B y )ex  ( Az Bx  Ax Bz )e y  ( Ax B y  Ay Bx )ez
 平行だと0
xy平面上にある2ベクトルでは:
行列式としても書ける
 



A  B  ( Ay Bz ex  Az Bx e y  Ax B y ez



 ( Az B y ex  Ax Bz e y  Ay Bx ez



ex e y ez
 Ax Ay Az
Bx B y Bz
 






A  B (Ax ex  Ay e y  0ez )
 B x e x  B y e y  0e z )
(



 ( Ay 0  0 B y )ex  (0 Bx  Ax 0)e y  ( Ax B y  Ay Bx )ez
x
y
z
あるいは
4
内積・外積の比較
結果
大きさ
 
A // B


AB
外積
ベクトル
 
A B sin 
0
 
AB
角運動量と保存則
内積
スカラー
 
A B cos
 
AB
0
角運動量の定義
角運動量の性質

運動物体に対してある原点 Oを
置き、その原点から計測した



位置ベクトル r と運動量 p  mv 

とによって、角運動量 L を
  
Lrp
O
と定義する。
  
Lrp
原点まわりの「回転運動」
の大きさを示す量




r
運動方程式と角運動量

dp 

運動方程式
 F の両辺とr の外積を取る
dt

 dp  
r   r F
dt

いま角運動量 L の時間微分は



dL d   dr   dp
 r  p    p  r 
dt dt
dt
dt
 
いま第一項は v // pより0。よって

dL  
 r F
dt

p
位置ベクトルと速度ベクトル
が平行ならば0
位置ベクトルと速度ベクトル
が直交していれば最大値

p
O' '
原点の取りかたによって
値が異なる

一般に速度ベクトルは原点
の取り方に寄らずに決まる
が、位置ベクトルは原点が
変わると異なった値を取る
O'
O
力のモーメント(トルク)
角運動量の時間変化を与える式

dL  
 r F
dt
の右辺をトルクと定義する
  
N  r F
すると

dL 
N
dt
  
N rF
O

トルク方程式

F

r
5
質点系での角運動量保存
中心力と角運動量の保存


第三法則より F12   F21 、また

F21

これらの力は互いを結 ぶ直線上 物体1 F12
にあるから


r1  r2  // F12  r1  r2  F12  0

 

r1  F12  r2   F21  0


d  
N1  N 2 
L1  L2  0
dt


r2
つまり中心力のトルクは 0。
このとき

dL
0
dt

したがって L は時間に
O
運動量の場合と同様に、質点系における
全角運動量は、内力によっては変化しない

y
t
この平面に x軸、y 軸を
x
定めると、p z 0  0 かつ
dp
Fz= z  0 なので、運動は
dt
この面内に留まる。
重力下の振り子
z
y
O
x

p

r
重力下の振り子:運動方程式
T
O
mg sin 
mg
鉛直線
物体の初期状態として、位置ベクトルと運動量が
決まったとすると、その 2 ベクトルを含む平面を
定義可能
A
 

L  r  mv  mA(一定)

dL
よって
0
dt
mg

F
参考:中心力→平面運動
r (t )  A(一定),  (t )  t
dr
d
vr 
 0, v  r
 A
dt
dt
T
O
よって変化しない
振り返り:等速円運動

中心力:原点の方向(あるいはその逆)を向く力
 
 
r // F  r  F  0、

r1
 



物体2
 
r1  r2

e

er
mg cos 
 d 2 r  d  2 
r 成分:mar  m 2  r 
   fr
 dt
 dt  
 2 d  1 2 d 
 成分:ma  m
 r
   f
 r dt  2 dt 
r  l(定数)
を考慮に入れると
T
mg sin 
 d 
 ml 
  mg cos   T
 dt 
mg
 2 d  1 2 d 
d 2
m
l


mg
sin


l


g
sin



dt 2
 l dt  2 dt 
2

e

er
mg cos 
6
重力下の振り子:トルク方程式
 


N  r  (mg )  lmg sin  ez
 

 d  
L  r  (mv )  l  ml
e z
dt 

よってトルク方程式より

dL 
d
 N l
  g sin 
dt
dt
d 2
  g sin    g
dt 2
これは単振動の方程式と同じ形式。

ez
O

l

r
g
g
 
と置けば、
l
l
 (t )   0 sin(t  0 ) は運動方程式の解。
2 
T
鉛直線
初速と最大振れ角の関係
張力Tは仕事をしないので、
エネルギー保存則から
1
2
mv0  mgh
2
 mgl (1  cos M )
重力下の振り子:
θが微小のときの解
O
 M?

mg
このとき周期 T 
2

 2
l
g
参考:振り子のエネルギー保存
d 2
g
  sin 
dt 2
l
  0 において v  v0より、
d d 2
g
d
2
C2  v0  2 gl


sin

dt dt 2
l
dt
よって
2
d  1  d   g d


cos   C  v 2  2 gl (1  cos  )  v0 2


dt  2  dt   l dt
2g
 d 
cos   C2

 
l
 dt 
v 2  2 gl cos   C2
2
cos M  1 
2
v0
2 gl
v0

1 2
1
2
mv  mgl (1  cos  )  mv0
2
2
7