CMB法による解析 - 環境技術研究所

CMB法による解析
大気汚染物質に対応した解析を行っています
環境技術研究所は,CMB法により浮遊粒子状物質の発生源寄与率を推定しています。
環境基準に定められた大気汚染物質の多くは単一成分で構成されています。例えば一酸化炭素は,
株式会社
どの発生源から発生しても1つの成分(CO)で構成されています。しかし,浮遊粒子状物質(SPM)
は他の物質とは異なり,決して単一物質で構成されてはいません。
環境基準では粒径が 10μm 以下の浮遊粒子を SPM として定義しています。つまり,10μm 以下の
浮遊粒子であればどのような成分で構成されていても SPM になります。このように SPM は種々の
金属や有機物で構成されていますので,この性質を利用して,いろいろな発生源からどのような割
合で拡散してきたのか,すなわち発生源寄与率を推定することができます。その一つの方法がCM
B法(Chemical Mass Balance Method)です。
CMB法とは?
(単純な計算例)
環境中のある地点で浮遊粒子状物質を採取した場合,採取された粒子状物質は様々な成分を含んで
います。これらの成分は種々の発生源から排出された粉じんが拡散・移流してきたものです。
ところで,これらの発生源は,成分組成が異なります。CMB法はこの性質を利用します。
太陽光線
最距離輸送
自然源
二次生成粒子
煙突
粉じん
発生施設
SPM採取装置
自動車排出ガス
※出典:今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について-第三次報告-(平成 10 年 12 月 14 日,中
環審大気部会・自動車排出ガス専門委員会)
いきなり,問題を解いてみましょう。
いま,鉄工場(A)とアルミ工場(B)に囲まれた地点(測定地点)があるとします。測定地点で
採取した粉じんの組成を分析したところ,表1であったとします。また,鉄工場とアルミ工場の粉
じんを調べたところ,鉄とアルミの組成率は表2であったとします。
表1 測定地点の粉じんの各成分の濃度
表2
各工場の組成率
成分名
鉄(Fe)
アルミ(Al)
濃度 [μg/m3]
730
270
成分名
鉄(Fe)
アルミ(Al)
鉄工場(A)
0.90
0.10
アルミ工場(B)
0.05
0.95
そこで,測定地点は鉄工場とアルミ工場以外の発生源の影響はないと仮定すると,測定地点で得ら
れた濃度 C は,鉄工場における組成率 A と
アルミ工場における組成率 B から,次式で示
すことができます。ここで,S は,それぞれ
鉄工場,アルミ工場からの発生源寄与濃度を
A工場
B工 場
Fe:90%
表します。
Al:10%
Fe:
採取
5%
Al : 9 5%
鉄とアルミに分けて示すと,次式になります。
CFe=AFe・SA+BFe・SB
CAl=AAl・SA+BAl・SB
Fe:73%
具体的な値を入れてみましょう。
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環境技術研究所
Al:27%
〒123-0872 東京都足立区江北二丁目 11 番 17 号 Tel.03-3898-6643
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730=0.90 SA+0.05 SB
270=0.10 SA+0.95 SB
上式は連立方程式ですので,これを解くと,
SA=800 μg/m3
SA=200 μg/m3
すなわち,鉄工場からは 800μg/m3,アルミ工場からは 200μg/m3 の粉じんが測定地点に飛んできま
すので,各々の寄与率は 80 %及び 20 %となります。
CMB法を単純な計算例で説明しましたが,基本式は次式で示されます。
化学成分数が n 個,発生源が p 種類あると仮定しますと,
p
C i = ∑ aij ⋅ S j
j =1
(i = 1,2,3 ⋅ ⋅ ⋅ ⋅n、 j = 1,2,3 ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ p )
ここで,Ci:観測した粒子状物質の成分 i の濃度,aij:発生源 j からの寄与濃度の成分 i の割合,
Sj:発生源 j の濃度。
このとき,n≧p であれば,上式の線形連立方程式を解くことにより,各発生源の寄与濃度を求める
ことができます。昔から上式の解法として次のような手法が試みられています。
①指標元素モデル
②指標元素連立方程式モデル
④重み付き最小二乗法モデル
⑤リッジ回帰モデル
株式会社
③最小二乗法モデル
環境技術研究所では,主に「重み付き最小二乗法モデル」を用いて解析しています。
CMB法による解析例
CMB法による解析例は、各地方自治体や環境省の調査例によく見られます。
東京都でも、1989 年、東京都環境科学研究所年報で「東京都における浮遊粒子状物質へのリセプター
モデルによる発生源寄与の評価」としてその結果を公表しています。この研究で示された指標元素と
組成割合は表3のとおりで、解析結果から得られた発生源寄与率(一例)は下図のような結果でした。
表3
東京都が使用した指標元素と組成割合
重油燃焼
1%
海塩
3%
土壌
24%
鉄鋼工業
2%
廃棄物燃焼
2%
ガソリン自動車
1%
不明部分
12%
二次生成
13%
CMB法の解析においては、特に
表4
ディーゼル自動車
42%
環境省の発生源組成(2001)
「指標元素と組成割合」は結果を左
右するほど重要です。最近の例では、
「粒子状物質総量削減計画に係る
粒子状物質実態調査」
(平成 13 年 11
月、環境省環境管理局)で示された
発生源組成などがあります。
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