高滝ダム貯水池の水質改善に関する調査研究 藤村葉子 小島博義 平間幸雄 飯村 晃 小倉久子 1 はじめに し貯水池内 St7 までは T-N と D-T-N(溶存性窒素)の違 高滝ダム貯水池は富栄養化により夏場はアオコが いは小さいが,St9,11 で上層の懸濁性の比率が高くな 発生し,上水道原水として好ましくない状態となって った。一方貯水池下層では溶存性の栄養塩類濃度がい いる。環境研究センターは平成 2008 年度より河川整 ずれの地点でも高く,底質からの溶出が示唆された。 備課,高滝ダム管理事務所と共同で高滝ダムの水質改 また,貯水池の鉛直プロフィールからは夏期に約 2 善についての調査を行っている。 ~4m の水深において温度躍層,DO 躍層が生じ,上 平成 2009 年度は高滝ダム貯水池において高滝ダム 層部でクロロフィル a が高くなること等がわかった 管理事務所による水質調査に協力し,実態調査を行っ (図 2) 。このことから,短期的(貯水池内)対策とし たので,これらの調査結果について概要を報告する。 上層 中層 20 SS 10 5 高滝ダム貯水池に流入する養老川の水質は全りん ④ ⑥ ⑦ ⑨ 0.080 0.040 高滝ダム管理事務所と共同で,2009 年 9 月 8 日,9 ⑥ ⑦ ⑨ ⑪ ⑦ ⑨ ⑪ 0.80 0.60 0.40 0.20 0.00 ① ③ ④ ⑥ ⑦ ⑨ ⑪ ① 0.160 ③ ④ ⑥ 1.2 PO4-P 0.120 NO3-N(mg/L) PO4-P(mg/L) 2・2 高滝ダム貯水池水質保全対策検討調査 ④ D-T-N 1.00 0.120 0.000 ら検討をおこなっている。 ③ 1.20 上 地区からの汚濁負荷削減対策について,現在各方面か 0.4 ① T-P 増し,0.1mg/L を超過することがわかった。この石神 0.6 ⑪ D-T-N(mg/L) 調査を行ったところ,石神地区の前後で T-P 濃度が倍 ③ 0.160 T-P(mg/L) かけて,高滝ダム管理事務所と共同で養老川上流部の 0.8 0 ① のアオコの原因となっている。2009 年 2 月から 3 月に 下層 0.2 0 (T-P)が常に 0.1mg/L を超えており,高滝ダム貯水池 中層 T-N 1 T-N(mg/L) 2・1 養老川上流部調査 上層 1.2 15 SS(mg/L) 2 調査の概要 下層 0.080 0.040 NO3-N 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0.000 ① ③ ④ ⑥ ⑦ ⑨ ① ⑪ ③ ④ ⑥ ⑦ ⑨ 月 18 日,10 月 1 日の3回高滝ダム貯水池内の縦断調 査を実施し,湖沼内における富栄養化防止対策の検討 を行った。9 月 8 日には貯水池内 7 地点において,上 図 1 高滝ダム貯水池 養老川 層別地点別水質 層,中層,下層の水を採水し水質分析をおこなった(図 1) 。高滝ダム貯水池は St.1では流れがあり,河川の ような状況であるが,ここから栄養塩類等が流入し St.11 へと流下して行く。St.1 では T-P,PO4-P は 0.12mg/L 程度で流入するが,流れの止まる St.2 付近 から上層の PO4-P は減少し,懸濁性りんの比率が高く なると考えられた。9 月 8 日は St.2 から St.11 のあた St. ① ~ ⑪ : りにアオコが発生しており,この懸濁性りんはアオコ によるものと推察される。T-N は 1.0mg/L 程度で流入 養老川 調査地点 ⑪ 9/8 水温 DO 水温[℃] 18 19 20 21 22 23 24 25 9/18 28 0.0 3.0 6.0 9.0 湖床 クロロフィルa DO[mg/l] 26 27 10/1 ORP Chl[μg/l] 12.0 15.0 0.0 20.0 40.0 ORP[mV] 60.0 -200 0 200 -200 0 200 -200 0 200 400 600 800 1000 600 800 1000 600 800 1000 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 深度[m] No.7 市取水場 地先 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 ※検量線を用いた推定値であり、参考値とする 水温[℃] 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 DO[mg/l] 0.0 3.0 6.0 9.0 Chl[μg/l] 12.0 15.0 0.0 20.0 40.0 ORP[mV] 60.0 400 0.0 1.0 2.0 3.0 深度[m] 4.0 No.8 北崎橋 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 ※検量線を用いた推定値であり、参考値とする 水温[℃] 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 DO[mg/l] 0.0 3.0 6.0 9.0 Chl[μg/l] 12.0 15.0 0.0 20.0 40.0 ORP[mV] 60.0 400 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 深度[m] No.9 県取水場 地先 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 ※検量線を用いた推定値であり、参考値とする 図2 貯水池鉛直水質プロフィール(地点⑦,⑧,⑨) *高滝ダム管理事務所調査(パシフィックコンサルタンツ株式会社報告書)より て水道取水口付近に 5m 程度水深までカーテンのよう 3 今後の水質改善対策 な幕を吊り,貯水池中央部の上層水が上水道取水口付 高滝ダム貯水池内の対策については,上水道取水関 近に流入しないようにする,中長期的(集水域)対策 係機関とダム管理事務所で調整を行い,今後の方向性 として流域の窒素・りん負荷を削減する等の対策が提 が決められていくものと考えられる。 言された。
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