海外資産保全策について 改定( 2016.07.31)

海外資産保全のための対策について
海外に資産を保有されている方は配偶者に万一のことが生じた場合を考えて金融資産・不動産などの海外資
産を配偶者や家族が容易に相続することが出来るための対策を事前に講じておく必要があります。
実例として海外でご主人が突然死されたケースで、遺言を作成されておりませんでしたので、一切ご主人の銀行
預金の引き出しが出来ず、自動車の売却のための名義変更も出来ないまま放置した状態です。遺言がない場
合には最低でも 2 年間は名義変更できません。共有名義の銀行預金だから問題ないとは断言できません。銀行
によっては共有名義の口座は名義人の死亡が判明した瞬間に口座を凍結されたことが御座います。
「1」遺言書
死後の遺産相続について相続人と相続財産を書面で確定する目的です。
マレーシアにおける財産を全て包括して相続財産として遺言に規定することが出来ます。
遺言の永久保管条件付きで作成費用(和訳付き)は RM2,235.-/一人当たり(RM4,470.-/夫婦当たり)とな
ります。
「2」信託宣言書
いくら健常者であっても突然意識障害に陥ることはあります。その時には既に自分の資産管理能力が無くなる
恐れがあります。海外生活するに必要な生活資金の管理が出来なくなります。特に一人住まいの方にとっては
生存することが難しくなります。従いまして健常者で間に信託宣言を作成されることをお勧めいたします。万一の
事象(死亡や精神障害・植物人間)が生じますと医師の診断書の提示により、2 週間程度で配偶者又は親
族へ資産が譲渡されます。マレーシアは相続税がありませんので、生前贈与が自由に行うことが出来ます。
信託宣言書の作成費用(和訳付き)は RM2,170.-(夫婦当たり)となります。
「3」リビングウイル
本人の意識が明確な間にご自身の生き方についての本人意思を書面にて作成しておくことが肝要です。
最近ではエンディングノートという書式が本屋で販売されております。
(1)不治の病になった時の治療方針
(2)意識障害に陥ったときの希望する生活環境
(3)要介護状態になった時の介護してもらいたい内容と希望する生活環境
(4)死後の葬儀・埋葬・供養に関する希望
遺言は日本でも一般的になってきておりますが、信託宣言についてはまだ日本で法整備が不十分であり、生前
贈与税が課税されますので、信託宣言(自己信託とも言う)に関しては皆様の関心が低いです。
存命中の個人の資産管理の法的サポートが可能な信託宣言書の作成をお勧めしております。
遺言は死後の相続財産の分配を規定するですが、信託宣言は意識障害に陥った時に本人の財産管理が不
能になった段階で身近な方へ生前贈与することにより本人と配偶者の海外財産のうち信託財産として個別に
規定した信託財産を信託会社へ信託管理してもらうことで生活資金の運用が可能となります。
遺言と信託宣言の特徴と相違点
「1」裁判所の遺言の検認が前提ですが、信託は裁判所の検認無く、即実行出来ます。
遺言による遺産相続は6~9 カ月を要するとお考えください。信託宣言では 2~4週間で遺産相続が可能で
す。もし遺言が無ければ最短でも 2 年間(長ければ 4-5 年)は本人の財産は凍結される事になります。
信託宣言を作成しておけば、本人が意識障害に陥った時でも本人の財産管理を信託会社が管理委達し
ますので、保護者(後見人)を立てておけば後見人と信託会社で意見調整しながら、本人の生活費・介護
費・医療費の支払いを継続して管理されます。その信託管理費は将来実際に信託管理が必要になった時に
初めて信託運用管理料として生活支援料(総額で年間 RM4,000 程度。信託証書に規定されます)を支払
う必要があります。信託管理が開始されない限りは信託契約を締結しても信託管理費用は一切発生いたし
ません。
「2」遺言ではまず資産から負債を控除した残余を相続する。信託では信託資産に対して債権者は触れる事は
できません。
「3」遺言では全財産と規定できます。信託財産は全て個別財産目録の記載が義務付けられます。従って将来
取得するであろう資産に関してはその都度信託財産の目録の改定が必要です。
「4」自動車は信託財産として登録できません。(理由は委任状(POA)の法的効力(信託会社へ所有権の譲
渡をする)を JPJ が認めてないからです。)自動車を保有されている方は遺言を作成されないと万一の場合
に名義変更が非常に困難になります。
「5」不動産を信託財産へ組み込む場合には信託財産登記のために印紙税が不動産価額の2%程度を必要
とします。印紙税の費用負担が高額になりますので、不動産は遺言書を作成されて、相続財産に含めるこ
とをお勧めいたします。
遺言執行人の選任の効果
「1」遺言や信託宣言書を作成しておけば、海外(マレーシアから見た日本)に居る遺族が死後の遺産相続を心
配することなく、遺言執行人として法律事務所を任命します。遺産相続の法的手続きを行い、不動産動産
や動産(自動車やゴルフ会員権)も必要に応じて売却してご遺族の日本の指定口座へ振り込まれます。
「2」死亡されてからの遺言執行の費用は遺産総額の 1.8%(最低 RM2,000.-)程度です。
現地人でさえ不安に感じている事を英語に不安を感じている日本人が法定手続きを高額の弁護士手数料を
支払って法廷での審議を依頼して2年間以上掛けて遺産相続手続きをすることは多難なことです。
MINASAN LIFE CARE SDN. BHD.
佐山清司
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文責:佐山清司