熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
メタボリック症候群モデルラットにおけるnon-dipper型
高血圧への腎交感神経の関与
Author(s)
片山, 哲治
Citation
Issue date
2014-03-25
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/29960
Right
学位論文
Doctoral Thesis
メタボリック症候群モデルラットにおけるnon-dipper型高血圧への腎交感神経の関与
(Renal sympathetic nerve is involved in the pathogenesis of non-dipper type hypertension in
a rat model of metabolic syndrome)
片山 哲治
Tetsuji Katayama
熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻生体機能薬理学分野
指導教員
光山 勝慶 教授
熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻生体機能薬理学分野
2014年3月
学
位
論
文
Doctoral Thesis
論文題名
:メタボリック症候群モデルラットにおける non-dipper 型高血圧への腎交感神経の関与
( Renal sympathetic nerve is involved in the pathogenesis of non-dipper type hypertension in a
rat model of metabolic syndrom)
著 者 名 :
片 山 哲 治
Tetsuji Katayama
指導教員名 :熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻生体機能薬理学
審査委員名
:
分子生理学担当教授
富澤 一仁
泌尿器病態学担当教授
江藤 正俊
知覚生理学学担当教授
宋
腎臓発生学担当教授
西中村
2014年3月
文杰
隆一
光
山
勝
慶
教授
目次
1. 要旨
3-4
2. 発表論文
5
3. 謝辞
6
4. 略語一覧
7
5. 研究の背景と目的
8-9
6. 研究方法
10-13
6-1 実験動物
6-2 実験プロトコール
6-3 メタボリックケージ
6-4 腎除神経手術(Renal denervation)と偽手術(Sham operation)
6-5 テレメトリーによる持続血圧測定
6-6 腹腔内ブドウ糖負荷試験(IGTT)と腹腔内インスリン負荷試験(IITT)
6-7 生化学検査
6-8 血管輪状切片作成と血管弛緩反応測定
6-9 組織学的評価と免疫組織化学検査
6-10 組織スーパーオキシド測定
6-11 蛋白質抽出とウェスタンブロット
6-12 統計
7. 実験結果
14-16
7-1 肥満、耐糖能、インスリン抵抗性における腎除神経の長期効果
7-2 血圧における腎除神経の効果
7-3 尿 Na 排泄における腎除神経の長期効果
7-4 腎 NCC、WNK4、SGK-1、ENaC と AT1 受容体における腎除神経の長期効果
7-5 心血管障害と酸化ストレスにおける腎除神経の長期効果
7-6 腎障害、血漿レニン活性、尿中及び血漿アルドステロンにおける腎除神経の長期効果
7-7 腎臓および尿中ノルエピネフリンにおける腎除神経の長期効果
7-8 血圧、累積ナトリウムバランス、血漿レニン活性、血漿及び尿中アルドステロンにおける腎除
神経の短期効果
8. 考察
17-18
9. 結論
19
1
10.
図およびその説明
20-31
11.
文献
32-34
2
1. 要旨
[ 目的 ] 腎除神経は、治療抵抗性高血圧患者において有意に血圧を低下させると報告されて
いるが、メタボリック症候群を合併した高血圧における腎交感神経の関与は十分に分かって
いない。またメタボリック症候群を合併した高血圧においては、しばしば non-dipper 型高血
圧がみられ、心血管イベントのリスクを増加させている。今回我々は、メタボリック症候群
を合併した高血圧における腎交感神経の関与を調べるために、メタボリック症候群のモデル
として有用な肥満高血圧自然発症ラット SHR/NDmcr-cp(+/+) rats (SHRcp ラット)に対して腎
除神経を行い、その長期効果について検討を行った。
[ 方法 ] SHRcp ラットを腎除神経群(bilateral renal denervation : RD 群)、偽手術群(Control
群)に分け、また週令の一致した WKY ラットに対して偽手術を施行した(WKY 群)。血圧日内
変動、及び糖代謝(腎除神経後 14 及び 15 週)や臓器障害(腎除神経後 19 週)について検討を行
った。血圧日内変動は、腎除神経 16 週後にテレメトリー装置を留置し、腎除神経 19 週後に
観察した。
[ 結果 ] テレメトリー解析による血圧日内変動は、SHRcp ラットにおいて non-dipper 型を呈
した。SHRcp ラットにおける腎除神経は、有意に血圧を低下させただけではなく、血圧日内
変動を non-dipper 型から dipper 型へ正常化させた。これらの改善には、腎除神経による尿中
ナトリウム排泄の亢進と腎臓における Na-Cl 共輸送体(NCC)の発現低下が関与しており、腎
交感神経が不適切な Na 再吸収を招き、non-dipper 型高血圧の一因になったことがわかった。
また腎除神経により血漿レニン活性は低下傾向にあり、このことも尿中ナトリウム排泄亢進
に一部で関与しているとわかった。またさらに腎除神経による効果により、心筋線維化、心
筋炎症細胞浸潤、冠動脈肥厚や冠動脈周囲線維化といった心血管リモデリングや血管内皮障
害は抑制され、心血管における酸化ストレスも減少した。一方で腎除神経は、SHRcp ラット
において、肥満、糖代謝、蛋白尿の減少等の効果は認めなかった。さらに腎臓組織当たりの
ノルエピネフリンは、腎除神経により 10%以下に低下した。一方で 24 時間尿中ノルエピネ
フリン濃度は抑制することはできなかった。
[ 考察 ] 今回の我々の研究で、腎交感神経はメタボリック症候群において、NCC の発現亢進
にて高血圧を発症させるだけでなく、血圧の日内変動を破綻させるということがわかった。
[ 結論 ]
腎交感神経は、メタボリック症候群に合併した Non-dipper 型高血圧に、NCC を介
して関与していることがわかった。
3
Summary
Background: Although renal denervation is reported to significantly reduce blood pressure in patients with resistant
hypertension, the role of renal nerve in hypertension with metabolic syndrome is unknwon. Therefore we examined
the effectiveness of long-term renal denervation on SHR/NDmcr-cp(+/+) rats (SHRcp), a useful rat model of
metabolic syndrome, to evaluate the role of renal nerve in hypertension with metabolic syndrome.
Method: We divided SHRcp into (1) bilateral renal denervation (RD) group and (2) sham operation group (control),
to examine the effect of long-term RD on blood pressure, blood pressure circadian rhythm, metabolic disorders and
organ injury. Blood pressure measurement was performed by the telemetry device after 19 weeks of RD.
Result: The findings of continuous direct blood pressure measurement with telemetry showed that SHRcp exhibited
non-dipper type hypertension, indicating that SHRcp is a useful rat model for investigating impaired blood pressure
circadian rhythm in metabolic syndrome. RD in SHRcp not only significantly lowered blood pressure but also
improved disordered circadian rhythm of blood pressure from non-dipper type to dipper type. Moreover RD
increased urinary sodium excretion and suppressed renal Na+-Cl- cotransporter (NCC) upregulation in SHRcp,
indicating the natriuresis is at least partially involved in the decrease of blood pressure and the improvement of
blood pressure circadian rhythm. RD significantly reduced cardiac weight, cardiac inflammation, cardiac fibrosis,
coronary remodeling and vascular endothelial dysfunction, and attenuated cardiovascular oxidative stress.
However, RD failed to ameliorate obesity, metabolic disorders, and renal injury in SHRcp. RD failed to reduce
systemic sympathetic activity in SHRcp, though renal norepinephrine contents in SHRcp with RD were decreased
to less than 10%, compared with control group (10.0±3.5 vs 114.9 ±26.7 ng/g tissue, P<0.01).
Conclusion: Our work revealed that renal sympathetic nerve is involved in the pathogenesis of non-dipper type
hypertension in metabolic syndrome, via upregulation of NCC.
4
2. 発表論文
① 関連論文
1編1冊
1.
Katayama T, Sueta D, Kataoka K, Hasegawa Y, Koibuchi N, Toyama K, Uekawa K,
MingJie M, Nakagawa T, Maeda M, Ogawa H, Kim-Mitsuyama S
Long-Term Renal Denervation Normalizes Disrupted Blood Pressure Circadian Rhythm
and Amliorates Cardiovascular Injury in a Rat Model of Metabolic Syndrome
J Am Heart Assoc. 2013;2:e000197
② その他の論文
3 編3冊
1.
Sueta D, Kataoka K, Koibuchi N, Toyama K, Uekawa K, Katayama T, MingJie M,
Nakagawa T, Waki H, Maeda M, Yasuda O, Matsui K, Ogawa H, Kim-Mitsuyama S
Novel Mechanism of Disrupted Circadian Blood Pressure Rhythm in a Rat Model of
Metabolic Syndrome—The Critical Role of Angiotensin II
J Am Heart Assoc. 2013;2:e000035
2.
MingJie M, Uekawa K, Hasegawa Y, Nakagawa T, Katayama T, Sueta D, Toyama K,
Kataoka K, Koibuchi N, Kuratsu J, Kim-Mitsuyama S
Pretreatment with rosuvastatin protects against focal cerebral ischemia/reperfusion injury
in rats through attenuation of oxidative stress and inflammation
Brain Res. 2013 Jun 26;1519:87-94
Nakagawa T, Hasegawa Y, Uekawa K, MingJie M, Katayama T, Sueta D, Toyama K,
Kataoka K, Koibuchi N, Maeda M, Kuratsu J, Kim-Mitsuyama S
Renal Denervation Prevents Stroke and Brain Injury via Attenuation of Oxidative Stress
in Hypertensive Rats
J Am Heart Assoc. 2013;2:e000375
3.
5
3. 謝辞
本研究を行うにあたり、直接御指導を頂きました熊本大学大学院医学教育部博士課程
病態制御学専攻生体機能薬理学分野光山勝慶教授に深甚なる謝意を表します。
また、本研究において全面的に御支援下さいました熊本大学大学院医学教育部博士課
程臨床医科学専攻循環器病態学分野小川久雄教授、和歌山県立医科大学医学部生理学第二講座前田
正信教授をはじめ多くの先生方に深く感謝申し上げます。
6
4. 略語一覧
WKY:
Wistar-Kyoto
RD:
renal denervation
NCC:
Na-Cl cotransporter
WNK
with-no-lysine-kinase
SGK:
serum and glucocorticoid induced protein kinase
ENaC:
epithelial Na channel
AT1R:
angiotensin 1 receptor
NO:
nitric monoxide
IGTT:
intraperitoneal glucose tolerance test
IITT:
intraperitoneal insulin tolerance test
PAS:
periodic acid–Schiff
SEM:
standard error of the mean
PLSD:
protected least-squares difference
7
5. 研究の目的と背景
5-1 高血圧
高血圧は、現在我が国で約4000万人が罹患している。高血圧は、脳(脳卒中、認知症)、心
臓(左室肥大、狭心症、心筋梗塞、心不全)、腎臓(蛋白尿、腎不全)、血管(大動脈瘤、大動脈解離、
閉塞性動脈硬化症)などの臓器障害を引き起こすとされている。また高血圧は、糖尿病、脂質異常
症、肥満、喫煙と同様に心血管病の危険因子である。これまでの臨床研究で、高血圧治療により
心血管イベントが減少するエビデンスは多数報告されている。高血圧治療は、大変重要な課題で
ある。
高血圧の治療には、減塩(6g/日未満)、減量、運動、節酒、禁煙などの生活習慣の改善や降圧薬
治療がある。降圧薬には、カルシウム拮抗薬、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬・アンギオテン
シン変換酵素阻害薬、利尿薬、β遮断薬があり、単剤もしくは併用使用により降圧目標を達成す
る。しかしこれらの治療にもかかわらず降圧目標に達しない治療抵抗性高血圧(3 剤以上の降圧薬
を内服しても、降圧目標に達しない)も多くみられ、これらの患者に対する降圧治療も課題の一
つである。
5-2 高血圧と交感神経
交感神経は、高血圧、心血管疾患、腎疾患の発症に大きく関与していると報告されている[1-3]。
実際に、腎交感神経は、腎機能、体液ホメオスターシス、血圧制御や心不全、慢性腎臓病の病態
生理に関与している。腎遠心性交感神経の活動亢進は、体液貯留や Na 再吸収を亢進させ、腎血
流を減少し、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系を活性化させる[4-5]。さらに腎求心性
交感神経は中枢神経系に重要な知覚情報を伝達し、そうすることで腎臓や心臓や全身の血管系な
どの臓器へ交感神経性の調節を行うとされているが、その詳細については、腎遠心性交感神経ほ
どよく知られていない。
5-3 カテーテル腎神経電気焼灼
いくつかのランダム化比較試験[6-7]において、治療抵抗性高血圧患者に対して、カテーテルに
よる選択的な腎交感神経の電気的焼灼術が施行されてきた。そこでは、両側腎除神経により、治
療抵抗性高血圧患者に対して有意で持続的な血圧低下が示された。最近では、腎除神経は、日中
及び夜間の 24 時間血圧を有意に低下させるという報告もある[8]。
ヒトにおけるカテーテル腎神経電気焼灼の方法は、大腿動脈からカテーテルを腎動脈分岐部ま
で進める。そこで腎動脈断面の 0 時か 3 時方向を低エネルギーで焼灼する(約 5W)。動脈内腔よ
り焼灼するが、内皮細胞や血管平滑筋は障害されず、腎動脈外膜へ侵入する腎神経束(遠心性腎
交感神経と求心性腎神経)のみが障害される。次にカテーテルを手前に引いて、動脈断面の 3 時
から 6 時方向を焼灼する。さらに引いて 0 時から 9 時方向を焼灼する。治療時間は約 1 時間以
内と短期時間で行われ、合併症も非常に少ない。
カテーテル腎神経電気焼灼は、治療抵抗性高血圧患者において、腎ノルエピネフリンスピルオ
8
ーバー[9]、骨格筋の交感神経の活動亢進、全身性のノルエピネフリンスピルオーバーを低下させ、
このことは腎除神経が腎交感神経の活動亢進に加え、全身性の交感神経の活動亢進を抑制する可
能性があることを示唆している。一方で治療抵抗性高血圧患者における腎除神経による血圧低下
を示さないという報告もあり、その臨床試験[10]では、選択されていない治療抵抗性高血圧患者
において、腎除神経は有意に血圧を低下させず、全身性交感神経の活動亢進を抑制しないと報告
している。それゆえに以前報告された中枢性交感神経活動の低下は、腎除神経後に必ず生じるも
のではなく、例外的なものである可能性も秘めている。さらに現在の腎除神経のアプローチが、
あらゆるタイプの高血圧にはあまり効果がないという可能性もある[11]。患者によるレスポンダ
ーとノンレスポンダーが存在しうる。それゆえに、臨床実践していく上で、腎除神経の適切な適
応を決めるために、さらなる基礎実験が必要であると考える。
5-4 高血圧とメタボリック症候群
メタボリック症候群とは、肥満、高血圧、脂質異常、高血糖を特徴とし、心血管イベントのリ
スクとされている。
高血圧症は、しばしば肥満、耐糖能異常やインスリン抵抗性などのメタボリック症候群に合併
してみられることが多い。重要なことに、交感神経の活動亢進もまた、インスリン抵抗性や糖代
謝異常を起こし、またメタボリック症候群や糖尿病患者において交感神経の活動亢進が観察され
る[12-13]。
5-5 メタボリック症候群モデルラット
SHR/NDmcr-cp(+/+)(SHRcp)ラットは、SHR 系統のラットであり、レプチン受容体の遺伝子変異
を有している[14]。SHRcp ラットは、肥満、高血圧、インスリン抵抗性、耐糖能異常、脂質異常を
呈し、ヒトにおけるメタボリック症候群のモデルラットとして有用と考える[15-18]。さらに我々は、
SHRcp ラットは、dipper 型高血圧の SHR ラットとは異なり、non-dipper 型の高血圧を呈すること
を報告しており、SHRcp は血圧日内変動破綻の治療や機序を研究するのに適していると考える[19]。
今研究では、高血圧を合併したメタボリック症候群の腎除神経の効果を調べるために、SHRcp に
腎除神経を行い、その長期的な効果を調べた。
9
6. 研究方法
6-1実験動物
雄性 WKY とメタボリック症候群モデルの SHRcp ラット[15-18]を日本 SLC(静岡)より購入
し、12時間 light-dark サイクルの施設で飼育した。
6-2実験プロトコール
SHRcp における腎除神経の長期効果をみるために、SHRcp に腎除神経を行い、腎除神経後
19 週間観察した。SHRcp ラット(n=22)を 2 群に分けた。1 群は両側腎除神経群(RD 群、n=11)、
もう 1 群は偽手術群(Contorol 群、n=11)。7 週令に腎除神経または偽手術を施行した。また週
令が一致した WKY ラット(WKY 群、n=11)に偽手術を施行した。体重は毎週測定した。腎除神
経、または偽手術後 13 週間に SHRcp ラットと週令の一致した WKY ラット(n=6)をメタボリ
ックケージで飼育し、24 時間の尿サンプルを収集した。経腹糖負荷検査と経腹インスリン負
荷検査は、それぞれ、腎除神経又は、偽手術後 14 週、15 週に施行した。また血圧日内変動を
みるために、
腎除神経を施行した SHRcp ラット(n=5)、偽手術を施行した SHRcp ラット(n=5)、
偽手術を施行した WKY ラット(n=5)にテレメトリー装置を留置した。腎除神経及び偽手術後
19 週間で、SHRcp ラット及び WKY ラットをイソフルレン麻酔下で、心穿刺で速やかに動脈
血を採取し、血清と血漿を急速凍結させ、使用するまで-80℃冷凍庫で保存した。また PBS で
潅流を行い、頸動脈、胸部大動脈、心臓と腎臓を採取し、以下の実験に使用した。
また一方で、血圧に対する腎除神経の短期効果をみるため、SHRcp ラットにおいて、累積
Na バランス、血漿レニン活性、血漿アルドステロン濃度を調べた。血圧測定のため、6週令
で SHRcp ラット(n=14)に直接的に血圧測定をできるテレメトリー装置を留置した。7 週令に
テレメトリーを留置したラットに、腎除神経(n=7)または偽手術(n=7)を施行した。腎除神経後
4 週に平均動脈血圧を測定した。SHRcp ラットの累積 Na は、腎除神経又は偽手術前5日から
術後 29 日までメタボリックに飼育し、測定した。術後 29 日目に血漿レニン活性と血漿アルド
ステロン濃度を調べるために、SHRcp の尻尾より静脈採血を行い、また 24 時間尿中アルドス
テロン排泄を調べるために、メタボリックケージから尿サンプルを採取した。
6-3メタボリックケージ
腎除神経長期実験においては、腎除神経又は偽手術施行後 13 週に、WKY ラット又は SHRcp
ラットを48時間メタボリックケージ(Techniplast 3701M001, Buguggiate, Italy)で飼育した後、
24時間の尿を採取した。
腎除神経短期実験においては、腎除神経又は偽手術前5日から手術後29日までの隔日で、
24時間尿を採取し、24時間の食餌量、飲水量、尿量を測定するために、代謝ケージで飼育
し た 。 2 4 時 間 ナ ト リ ウ ム 摂 取 量 (mmol) は 、 食 餌 量 (g) x 食 餌 中 の ナ ト リ ウ ム 含 有 量
(NaCl=0.053041 mmol Na+/g food)で計算した。24時間ナトリウムバランスは、24時間ナ
トリウム摂取量-24 時間ナトリウム排泄量で計算した。累積ナトリウムバランスは、代謝ケ
10
ージでの飼育の間の、隔日の24時間ナトリウムバランスを累積したものである。
6-4腎除神経手術(Renal denervation)と偽手術(Sham operation)
ラットをイソフルランによる全身麻酔下で腹臥位にし、背部正中で皮膚切開を行った。脊柱起
立筋群を牽引し、腎臓を剖出し、それよって腎動脈と腎静脈を確認できた。血管周囲の結合組
織を剥離した後、血管沿いの可視できる神経を切断した。さらにそれらの血管を 10%フェノー
ル液で塗布した[20]。次に結果を生理食塩水で洗浄した後に皮膚の縫合を行った。偽手術群は、
腎除神経群と同様の方法で腎臓を剖出させた。腎臓を剖出させただけで、神経の切断やフェノ
ールの塗布は行っていない。腎臓組織当りのノルエピネフリン含有量が、偽手術群と比べ、1
0%以下になっていることを確認することで、腎除神経の確認を行った。
6-5テレメトリーによる持続血圧測定
手術16週間後に SHRcp ラットを RD 群(n=5)、Control 群(n=5)、WKY 群(n=5)に分け、イ
ソフルラン全身麻酔下にテレメトリー(TA11PA-C40; Data Science International,St Paul, MN)
留置し[19]、カテーテルは腹部大動脈に留置された。腹部大動脈からの血圧及び心拍数の信号
は、意識下で、抑制されていない動物において測定された。2週間のリカバリー期間の後に、
24時間のオンライン記録はデジタル化されて保存された。血圧を心拍数の記録は、コンピュ
ーターシステム(DATAQUEST ART4.2 Acquisition; Data Sciences International, St Paul, MN)
を用いて、60 分間毎に 5 分間の平均として記録された。
腎除神経短期実験においても、長期実験と同様の方法で、テレメトリーによる持続血圧測定
を行った。
6-6腹腔内ブドウ糖負荷試験(IGTT)と腹腔内インスリン負荷試験(IITT)
腹腔内ブドウ糖負荷試験は、SHRcp ラット及び WKY ラットに、一晩絶食後に、腹腔内にブ
ドウ糖(1 g/kg 体重)を投与し、ブドウ糖負前とブドウ糖負荷後 30 分、60 分、120 分に、血糖
測定のため尾静脈から血液を採取した。
腹腔内インスリン負荷試験は、一晩絶食後に、ヒトレギュラーインスリン(2 単位/kg 体重)
を腹腔内に投与し、インスリン負荷前と負荷後 20 分、40 分、60 分に、血糖測定のため尾静
脈から血液を採取した。
6-7生化学検査
血液と尿生化検査は、SRL にて行った(東京、日本)。尿中アルドステロン濃度測定は、キッ
トを使用して行った(Enzo Life Science, New York)。腎組織中のノルエピネフリンは、ELISA
キット(LDN, Nordhorn, Germany)にて行った。
6-8血管輪状切片作成と血管弛緩反応測定
11
等張性張力実験による血管弛緩反応測定は、以前に当教室で行った方法で施行した[21]。ラ
ットから頸動脈を摘出し、血管内皮細胞を傷つけないように慎重に、5mm の長さに切断した。
それらは、37℃、95% O2 と 5% CO2 で潅流された modified-Tyrode バッファー(pH 7.4;
NaCl,121 mmol/L; KCl, 5.9 mmol/L; CaCl2, 2.5 mmol/L; MgCl2,1.2 mmol/L; NaH2PO4, 1.2
mmol/L; NaHCO3, 15.5 mmol/L; D-glucose, 11.5 mmol/L)下でチャンバー内の張力測定用のフ
ックにかけた。張力測定は、トランスデューサ―にて増幅し、ポリグラフ上に記録した。実験
中安静時張力は 1g に維持した。輪状血管は、まず KCL(50 mmol/L)で刺激した後に、L-フェニ
レフリン(10-7mol/L)で前収縮させた。測定張力が一定となったところでアセチルコリン(10-9 か
ら 10-4 mol/L)、又はニトロプルシドナトリウム(10-9 から 10-4 mol/L)を添加し、血管弛緩反応を
濃度依存曲線で表し、血管弛緩反応を評価した。
6-9組織学的評価と免疫組織化学検査
心臓を 4%パラフォルムアルデヒドで固定した後に、パラフィンに包埋し、5μm の切片を作
成した。心臓の切片はシリウスレッド F3BA(0.5%飽和ピクリン酸水溶液で溶解)にて染色し、
冠動脈の肥厚、心臓間質線維化の評価を行った[22]。解析は、Lumina vision 2.2 解析ソフトに
て行った。
ED-1 免疫染色は、心臓凍結切片を一晩一次抗体(500 倍希釈; Serotec, Raleigh, NC)に反応さ
せ、二次抗体(BioSource, Camarillo, CA)を反応させた[22]。ED1 陽性細胞の定量は、1 視野当
りの陽性細胞数をカウントし、10 視野以上の平均陽性細胞数で行った。
腎臓切片(5μm)は、PAS 染色を行い、糸球体硬化の程度を分析した[23]。糸球体硬化を以下
のように定義し(grade 0:糸球体硬化なし、grade 1:糸球体硬化 0~25%、grade2:糸球体
硬化 25~50%、grade3:糸球体硬化 50~75%、grade4:糸球体硬化 75~100%)、50 個以上
の糸球体を観察し、その平均を糸球体硬化指数(glomerulosclerosis score)とした。
6-10組織スーパーオキシド測定
ラットから採取した心臓と大動脈を速やかに、Tissue-Tek OCT (Sakura Finetek, Tokyo,
Japan)にて凍結包埋した。凍結臓器をクリオスタットを用いて薄切し、ジヒドロエチジウム
(dihydroethidium, DHE)にて組織スーパーオキシドの評価を行った[21]。蛍光プローベである
DHE 染色にて組織スーパーオキシドを可視化でき、蛍光顕微鏡にて蛍光強度を評価した。
Lumina vision 2.2 解析ソフトを用いて、平均蛍光強度を対照群の蛍光強度に対する割合で評価
した。
心血管組織での DHE による染色が、スーパーオキシド由来であるかを確認するために、
SHRcp ラットの Control 群の心臓及び大動脈の切片を、DHE 染色をする前に、30 分間、250U/mL
の PEG-SOD (polyethylene-glycol superoxide dismutase)に反応させた。PEG-SOD で前処理し
た SHRcp ラットの心臓、大動脈組織を PEG-SOD 前処理をしていない SHRcp ラットと WKY
ラットの心臓、大動脈組織の DHE 染色で比較を行った[24]。
12
6-11蛋白質抽出とウェスタンブロット
腎臓摘出後に-速やかに 80℃で凍結保存した組織を、蛋白質抽出緩衝液
(Hepes20mmol/L(pH7.2, NaCl 25mmol/L, EGTA 2mmol/L, NaF 50mmol/L, β-glycerophosphate
25mmol/L, aprotinin 60μg/mL, Leupeptin 2μg/mL, Na3VO4 1mmol/L, PMSF 1mmol/L, DTT
0.2mmol/L))下に、氷上で POLYTRON homogenizer PT1200E を用いてホモジナイズを行った
[22]。腎臓蛋白質抽出後に、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動
(SDS-PAGE)を行った。電気泳動後に PVDF(polyvinylidene difluoride)メンブレンに転写し、以
下の特異抗体を用いて蛋白検出を行った。
抗 With-no-lysine-kinase 4 抗体 (WNK4, 10000 倍希釈; Millipore)、抗 Na+-Cl-cotransporter
抗体(NCC,
5000 倍; Millipore)、抗 epithelial Na+ channel (ENaC 10000 倍; ABR)、
抗 serum and
glucocorticoid induced protein kinase (SGK1 2000 倍; Abcam)、
抗 angiotensin 1 receptor (AT1R
2000 倍; Santa Cruz
Biotechnology)、抗β-actin 抗体(2000; Cell Signaling Technology)。
バンドの濃度は J-image ソフト(National Institutes of Health, Bethesda, MD)を用いて、定量
化し、各検体は、それぞれのβ-actin の発現量で補正した。
6-12統計
すべてのデータは、平均±標準誤差(average±SEM)で表し、Prism (Graph Pad Software Inc,
San Diego, CA)ソフトを用いて解析を行った。体重、糖負荷検査、インスリン負荷検査、血管
弛緩反応検査、累積ナトリウムバランス、平均動脈血圧は、一元配置分散分析(対応あり)、最
小有意差法(Fisher の PLSD 法)で解析した。テレメトリーにより収縮期及び拡張期動脈血圧、
ロコモーターアクティビティー、心拍数は、二元配置分散分析(対応なし)、PLSD 法で解析し
た。その他のデータは、3 群間の比較には一元配置分散分析(対応なし)、PLSD 法で、2 群間の
比較には t 検定(対応なし)で解析した。すべての検定において、P 値 0.05 未満を統計学的有意
とした。
13
7. 実験結果
7-1 肥満、耐糖能、インスリン抵抗性における腎除神経の長期効果
コントロール群と比較し、腎除神経は体重の有意な変化を認めなかった(Figure1A)。腎除神経
後 19 週目の内臓脂肪(Figure1B)及び皮下脂肪(Figure1C)はコントロール群と腎除神経群間で
有意な差異は認めなかった。腎除神経は、耐糖能異常(Figure1D)やインスリン抵抗性(Figure1E)
を予防することができなかった。
7-2 血圧における腎除神経の効果
腎除神経または偽手術後 19 週目に、SHRcp ラット及び WKY ラットにおいて、テレメトリ
ー装置にて持続的及び直接的に収縮期(Figure3A)及び拡張期(Figure3B)血圧測定を行った。
WKY ラットの収縮期及び拡張期血圧は、暗記(活動期)に比べ、明期(非活動期)で有意に低く、
WKY ラットは、以前の報告通り dipper 型の血圧日内変動を示すことがわかった。SHRcp コン
トロール群におけるテレメトリーによる血圧は、WKY ラットと比べ有意に高かった。SHRcp
コントロール群ラットの血圧は、暗期と明期で有意差はなく、SHRcp ラットは、non-dipper
型の血圧日内変動を示すことがわかった。SHRcp 腎除神経群ラットの収縮期及び拡張期血圧
は、SHRcp コントロール群ラットと比較して有意に低下しており、それぞれの明期、暗期の
血圧も有意に低下していた。さらに腎除神経群の収縮期及び拡張期血圧は、明期で暗期と比べ
有意に低く、dipper 型の血圧日内変動を示すことがわかった。
SHRcp ラットの活動量(Figure4B)は、WKY ラットと比べ、暗期と明期のいずれにおいても
低下していた。腎除神経は、暗期及び明期の SHRcp ラットの活動量を有意に低下させること
はできなかった。また SHRcp ラットにおける心拍数は、両期において、WKY ラットより低下
していた(Figure4A)。
7-3 尿 Na 排泄における腎除神経の長期効果
腎除神経は、結果として尿 Na 排泄(Figure 5A)と尿 Na 排泄クレアチニン比(Figure 5B)を有
意に増加させた。食餌量(Figure 5C)、飲水量(Figure 5D)、尿量(Figure 5E)は SHRcp のコント
ロール群および腎除神経群において有意差は認めなかった。
7-4 腎 NCC、WNK4、SGK-1、ENaC と AT1 受容体における腎除神経の
長期効果
SHRcp コントロール群における腎臓の Na-Cl co-transpoter (NCC)(Figure 6A)の蛋白発現
は WKY ラットと比べ有意に増加していた。腎除神経は有意に SHRcp ラットにおいて、腎
臓における NCC の蛋白発現を有意に抑制した。with-no-lysine-kinase4 (WNK4)(Figure 6B)
serum and glucocorticoid induced protein kinase (SGK-1)(Figure 6C)、α-epithelial Na channel
(α-ENaC)(Figure 6D)、angiotensin 1 receptor (AT1-R)(Figure 6E)の蛋白発現は、WKY ラット、
SHRcp コントロール群、SHRcp 腎除神経群において有意差は認めなかった。
14
7-5 心血管障害と酸化ストレスにおける腎除神経の長期効果
SHRcp コントロール群と比較して、腎除神経は、有意に心重量(P<0.01, Figure 7A)、心筋
線維化(P<0.01, Figure 7B)、心臓 ED-1 陽性細胞浸潤(P<0.01, Figure 7C)、冠動脈肥厚(P<
0.05, Figure 7D)や冠周囲線維化(P<0.01, Figure 7D)を有意に改善させた。
腎除神経は、有意にアセチルコリンに対する内皮依存性の血管弛緩反応の増悪を有意に改
善させた(Figure 8A)。また L-NAME を前投与して行ったアセチルコリンに対する血管弛緩反
応は、3群ともに有意差は認めなかった(Figure 8B)。また3群間ともニトロプルシドナトリ
ウムに対する血管弛緩反応にも有意差は認めなかった(Figure 8C)。
腎除神経は、有意に心臓(Figure 9A)及び血管(大動脈)(Figure 9B)における、酸化ストレス
を減少させた。また SHRcp Control 群の心臓(Figure 9C)及び血管(大動脈)(Figure 9D)を
superoxide dismutase(SOD)で前処理すると、DHE の蛍光強度は有意に減弱した。
7-6 腎障害、血漿レニン活性、尿中及び血漿アルドステロンにおける腎除神
経の長期効果
24時間尿蛋白排泄(Figure 10A)、24時間尿アルブミン排泄(Figure 10B)そして糸球体硬
化指数(Figure 10C)は、SHRcp Control 群において、WKY 群と比較して、有意に増悪してい
た。またこれらは、SHRcp Contorol 群と RD 群の間では有意差は認めなかった。血漿レニン
活性(Figure 10D)は、WKY 群、SHRcp Control 群と RD 群において有意差は認めなかった、
RD 群においては、SHRcp Control 群より低下傾向であった(P=0.072)。24時間尿中アルド
ステロン排泄(Figure 10E)は、SHRcp 群は、WKY 群よりも有意に増加を認め(P<0.01)、腎
除神経は、尿中アルドステロンを有意に減少させることができなかった。また同様に腎除神
経は、血漿アルドステロン(Figure 10F)を有意に減少させることはできなかった。
7-7腎臓および尿中ノルエピネフリンにおける腎除神経の長期効果
腎臓のノルエピネフリンは、SHRcp Control 群において、WKY 群と比較して、有意に増加
していた。RD 群における腎臓のノルエピネフリン(Figure 11A)は、SHRcp Control 群と比較
して、有意に低下していた(10.0 ± 3.5 versus 114.9 ± 26.7 ng/g per tissue; P<0.01)。
24時間尿中ノルエピネフリン排泄(Figure 11B)は、SHRcp Control 群は、WKY 群と比較
して有意に増加していた(P<0.01)。しかし SHRcp Control 群と RD 群の間に有意な差は認
めなかった。
7-8 血圧、累積ナトリウムバランス、血漿レニン活性、血漿及び尿中アルド
ステロンにおける腎除神経の短期効果
腎除神経後 28 日間持続的に測定したテレメトリーによる平均動脈血圧は、RD 群におい
て、Control 群と比較して有意に低下していた(Figure 12A)。また腎除神経は、有意に累積ナ
15
トリウムバランスを増加させた(Figure 12B)。血漿レニン活性は、RD 群は Control 群と比較
して有意に低下させた(Figure 12C)。しかし一方で、RD 群と Control 群において、血漿アル
ドステロン(Figure 12D)及び 24 時間尿中アルドステロン排泄(Figure 12E)は、有意な差を認
めなかった。
16
8. 考察
Non-dipper 型高血圧のような破綻した血圧日内変動は、しばしばメタボリック症候群を合
併した高血圧患者にみられ、有意に心血管イベントを増加させている[20-21]。Non-dipper 型
高血圧のメタボリック症候群モデルラットである SHRcp ラットを用いて、我々は、メタボリ
ック症候群における、血圧日内変動、代謝異常、心血管における腎除神経の長期効果を調べ
た。今研究における主な所見は、(1)腎除神経は、SHRcp ラットにおいて、有意に血圧を低下
させるだけでなく、血圧日内変動を non-dipper 型から dipper 型へ改善させた。(2)これらの
血圧のおける効果は、心肥大や心リモデリング及び血管内皮障害を抑制させた。(3)腎除神経
は、NCC の過剰発現を抑制と血漿レニン活性を低下させ、有意に Na 排泄を増加させた。こ
れらの所見は、腎除神経を施行した SHRcp ラットにおいて、破綻した血圧日内変動の正常化
は、一部で腎臓での NCC 蛋白の過剰発現の抑制やレニン産生の低下による Na 利尿が関与し
ていると考える。我々の研究は、メタボリック症候群に合併した non-dipper 型高血圧におけ
る腎神経の原因的な役割について調べた、最初のエビデンスであると考える。
これまでのエビデンス[21-23]は、腎臓における Na 排泄の障害は、non-dipper 型高血圧又
は、食塩感受性高血圧の病態生理において原因的な役割を果たしていた。今研究では、長期
間の腎除神経は、SHRcp ラットにおいて、有意に尿中 Na 排泄を亢進させた。さらに腎除神
経後の SHRcp ラットにおける累積 Na バランスの結果は、腎除神経による尿中 Na 排泄の有
意な増加を意味している。それゆえに我々の所見は、腎除神経による SHRcp ラットにおける
破綻した血圧日内変動の正常化が Na 利尿に寄与する可能性があることを示唆している。それ
ゆえに腎除神経による尿中 Na 排泄の増加の機序を評価するために、我々は、NCC[24-25]、
WNK4[24]、ENaC[26]、SGK1[27]や AT1 受容体[28]などの腎臓における Na 再吸収に関わる
分子における、腎除神経の効果を調べた。その中で、NCC は WKY ラットと比較し、SHRcp
コントロールラットにおいて、有意に増加していた。さらに腎除神経は、SHRcp ラットにお
いて、NCC の発現を有意に低下させた。Na 再吸収と食塩感受性高血圧における NCC の重要
な役割について、我々の結果は、SHRcp ラットにおける腎除神経による血圧日内変動の正常
化は、一部で NCC 過剰発現の抑制や Na 利尿が関与しているということを支持している。そ
れにゆえに、腎除神経は、non-dipper 型高血圧などの破綻した血圧日内変動を示す高血圧患
者への治療戦略になり得る可能性を秘めている。
レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系は、血圧の正常化や体液貯留バランスに重要な
役割を果たしている[29]。それにゆえ、我々は、SHRcp における血漿レニン活性や血漿及び
尿中アルドステロンのおける腎除神経の効果を調べた。短期間の腎除神経は、有意に血漿レ
ニン活性を低下させた。それゆえに血圧と尿中 Na 排泄における腎除神経の効果は、部分的に
血漿レニン活性の低下が関与している。腎除神経による血漿レニン活性の低下に関わらず、
24 時間尿中アルドステロン排泄や血漿アルドステロン濃度は、短期及び長期の腎除神経によ
って、有意な変化はみられなかった。このことは、腎除神経を施行した SHRcp ラットにおい
てアルドステロンの調節は、レニンとは独立しているということを示唆している。SHRcp ラ
ットにおける血漿アルドステロンは、SHR ラットや WKY ラットと比較して、加齢とともに
17
上昇するという報告もある。これまでのエビデンスや今回の我々の結果から、SHRcp におけ
る腎除神経はアルドステロンには明らかな関与は示されなかった。しかしアルドステロンに
て調節される ENaC 活性が一部で関与が示唆されたことから、完全には否定もできない。さ
らなる研究が、
血圧や Na 利尿における腎除神経の効果におけるアルドステロンの関与を評価
する必要があると考える。
今研究では、長期の腎除神経は、SHRcp ラットにおいて、心肥大、心線維化、炎症、冠動
脈リモデリングや血管内皮障害などの心血管障害を抑制した。これらの腎除神経の心血管へ
の効果は、心血管酸化ストレスの抑制に関連していた。それゆえに腎除神経は、メタボリッ
ク症候群を合併した高血圧における心血管疾患への有効な治療戦略になり得るのではないか
と考える。腎除神経による心血管障害の抑制とは対照的に、腎除神経は SHRcp ラットにおけ
る腎障害を抑制することはできず、尿中蛋白、尿中アルブミン排泄や糸球体硬化を抑制でき
なかった。こういうわけで、我々の結果は、腎神経は、SHRcp ラットにおいて、腎障害の病
態生理には強く関与してないことがわかった。しかしメタボリック症候群の高血圧患者にこ
れが当てはまるかどうかは、現時点では不明である。
今回の我々の腎除神経は、遠心性腎神経と同様に求心性腎神経の除神経の効果であると考
える。求心性腎神経は、中枢性神経系を調節して全身性の交感神経系の調節において重要な
役割を果たしている。それゆえに治療抵抗性高血圧患者における腎除神経は、腎交感神経抑
制と潜在的には、全身性の交感神経抑制の両方を導き、それゆえに糖代謝、インスリン抵抗
性や肥満を改善さえるというような臨床的な仮説がある。今研究ではあ、長期腎除神経によ
る腎臓ノルエピネフリンの著明な低下を認めたにも関わらず、全身性の交感神経系活性をみ
る最も有用な指標である、尿中ノルエピネフリン排泄は、SHRcp ラットにおける腎除神経で
は、抑制されなかった。テレメトリーによる持続的な心拍数の観察では、腎除神経は、24 時
間にわたる心拍数や心拍の日内変動を改善することはなかった。さらに体重、脂肪重量、耐
糖能、インスリン抵抗性などの代謝パラメーターも SHRcp ラットにおける腎除神経によって
改善することはなかった。これらの所見は、求心性腎神経は、SHRcp ラットにおいて、全身
性の交感神経活性や代謝異常において、関与が少ないことが示唆された。
破綻した血圧日内変動の機序には、様々な要因がある。腎性の Na 貯留やレニン-アンギオ
テンシン-アルドステロン系だけではなく、内皮細胞由来の NO 産生低下、交感神経活性によ
る一日睡眠リズム障害や神経内分泌の調節障害なども関与していると考える。しかし今回
我々は、腎性 Na 排泄やレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系以外の機序については検
討していない。よって SHRcp ラットにおける破綻した血圧日内変動の正常化に関わる正確な
機序を定義するには、さらなる研究必要である。
18
9. 結論
今研究は、腎除神経は異常な血圧日内変動を non-dipper 型から dipper 型へ正常化させ、
それにより高血圧を合併したメタボリック症候群における心血管障害を抑制したというこ
とを実験的に証明した。血圧における腎除神経の効果は、少なくとも一部で NCC 過剰発現
を抑制し、そのことで Na 利尿を誘導した。しかし腎除神経が、腎障害や代謝障害を抑制す
るという結果は得られなかった。我々の結果は、メタボリック症候群を合併した高血圧の治
療における腎除神経の臨床的な意義に新しい見識を加えることになると考える。
19
10.図およびその説明
Figure1
腎除神経による(A) 体重、(B) 内臓脂肪、(C) 皮下脂肪、(D)耐糖能、(E)インスリン抵抗
性における長期効果(平均値±SEM、各群 n=5~6)。
WKY 群と比較し、Control 群では、有意な体重、内臓脂肪、皮下脂肪の増加および耐糖能
の低下、インスリン抵抗性を示した。Control 群と比較し、RD 群では体重、内臓脂肪、皮
下脂肪、耐糖能、インスリン抵抗性において有意な変化を認めなかった。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats;
Cont, sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not
significant; IGTT, intraperitoneal glucose tolerance test; IITT, intraperitoneal insulin
tolerance test
20
Figure2
腎除神経後 19 週にテレメトリーにて 7 日間連続で測定した(A)12 時間平均の収縮期血圧、(B)12
時間平均の拡張期血圧(平均値±SEM、各群 n=5)。
Control 群では WKY 群と比較して、収縮期及び拡張期の血圧の上昇を認めた。また RD 群では
Control 群と比較し、収縮期及び拡張期の血圧の低下を認めた。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant;
DBP, diastolic blood pressure; SBP, systolic blood pressure.
21
Figure3
腎除神経後 19 週にテレメトリーにて測定した 1 時間毎の(A)収縮期稀有圧、(B)拡張期血圧(平均
値±SEM、各群 n=5、*P<0.01、#P<0.05)
WKY 群は Control 群と比較し、収縮期及び拡張期血圧は、暗記(活動期)に比べ、明期(非活動期)
で有意に低く、WKY 群の血圧日内変動は dipper 型の血圧日内変動を示した。Control 群は、暗期と
明期で有意差はなく、non-dipper 型の血圧日内変動を示した。RD 群は Control 群と比較し、収縮
期及び拡張期血圧の有意な低下を認め、さらに dipper 型の血圧日内変動を示した。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant;
DBP, diastolic blood pressure; SBP, systolic blood pressure.
22
Figure4
(A)Locomotor activity と(B)心拍数における、腎除神経の長期効果(平均値±SEM、各群 n=5、
*P<0.01、#P<0.05)。
WKY 群と比較し、Control 群の活動量は、暗期(P<0.01)と明期(P<0.01)のいずれにおいても有意
に低下していた。RD 群の活動量は、Control 群と比較し、暗期及び明期のいずれにおいても、有意
な差は認めなかった。また Control 群の心拍数は、WKY 群と比較し、両期において有意な低下を認
めた(P<0.01)。Control 群と RD 群の 2 群間では有意な差は認めなかった。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant
23
Figure 5
SHRcp ラットにおける、(A)24 時間尿中 Na 排泄、(B)尿中 Na/Cr 比、(C)食餌量、(D)飲水量、(E)
尿量のおける腎除神経の長期効果(平均値±SEM、各群 n=6)。
Control 群は、WKY 群と比較し、24 時間尿中 Na 排泄(P<0.01)、尿中 Na/Cr 比(P<0.01)、食餌量
(P<0.01)、飲水量(P<0.01)、尿量(P<0.01)において、有意な増加を認めた。また RD 群は、Control
群と比較し、有意な尿中 Na 排泄を認めたが、食餌量・飲水量・尿量においては、有意な差は認め
なかった。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant
24
Figure 6
SHRcp ラットにおける、(A)NCC、(B)WNK4、(C)SGK1、(D)ENaC、(E)AT1 受容体の腎除神経
の長期効果(平均値±SEM、n=5~6)。(B)と(E)は同メンブレンを使用。そのため(B)と(E)のβ-actin の
バンドも同じものである。
WKY 群と比較し、Control 群における NCC の蛋白発現は有意に増加していた(P<0.01)。Control
群と比較し、RD 群では、有意な NCC の蛋白発現低下を認めた(P<0.05)。また WNK4、SGK-1、α
-ENaC、AT1-R の蛋白発現は、WKY 群、Control 群、RD 群の 3 群間において有意な差は認めなか
った。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant;
NCC, Na+-Cl cotransporter; WNK-4, with-no-lysine-kinase 4;
SGK, serum and glucocorticoid-induced protein kinase; ENaC, epithelial sodium channel; AT1,
angiotensin type I
25
Figure 7
(A)心重量、(B)心筋線維化、(C)心臓マクロファージ浸潤(cells/mm2)、(D)冠動脈肥厚と冠周囲線
維化における腎除神経の長期効果(mean±SEM)(n=5~6)。
WKY 群と比較し、Control 群では、心重量(P<0.01)、心筋線維化(P<0.01)、心臓 ED-1 陽性細
胞浸潤(P<0.01)、冠動脈肥厚(P<0.05)や冠周囲線維化(P<0.01)は、有意であった。また RD 群は、
Control 群と比較し、心重量の増加、心筋線維化、心臓 ED-1 陽性細胞浸潤、冠動脈肥厚、冠周囲線
維化を改善させた。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant;
26
Figure8
腎除神経の血管弛緩反応に対する長期効果。(A)L-NAME の前投与なしでの、アセチルコリンに
対する血管弛緩反応。(B)ニトロプルシドナトリウムに対する血管弛緩反応。(C)L-NAME を前投与
後のアセチルコリンに対する血管弛緩反応(average ± SEM)(各群 n=6、*P<0.01)。
WKY 群と比較し、Control 群では、有意なアセチルコリンに対する血管弛緩反応の低下を認めた
(P<0.01)。RD 群では、Control 群と比較し、有意なアセチルコリンに対する血管弛緩反応の増悪を
有意に改善させた(P<0.01)。
L-NAME を前投与して行ったアセチルコリンに対する血管弛緩反応は、
3群ともに有意差は認めなかった。またニトロプルシドナトリウムに対する血管弛緩反応は 3 群間
で有意差は認めなかった。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant;
L-NAME indicates N omega-nitro-L-arginine methyl ester; SNP, sodium nitroprusside
27
Figure 9
(A)心臓及び(B)大動脈の酸化ストレスにおける腎除神経の長期効果。
WKY 群と比較し、Control 群で、心臓(P<0.01)、大動脈(P<0.01)において有意な酸化ストレスの
増加を認めた。RD 群では、Control 群と比較し、心臓(P<0.01)、大動脈(P<0.05)において有意な酸
化ストレスの減弱を認めた。Control 群の(C)心臓(P<0.01)、(D)大動脈(P<0.01)切片を SOD で前処
理すると、DHE の蛍光強度は有意に減弱した。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant;
L-NAME indicates N omega-nitro-L-arginine methyl ester; SNP, sodium nitroprusside; DHE,
dihydroethidium; SOD, polyethylene-glycol superoxide dismutase
SOD(-), DHE fluorescence without SOD preincubation; SOD(+), DHE fluorescence with SOD
preincubation
28
Figure 10
(A)尿蛋白排泄、(B)尿アルブミン排泄、(C)糸球体硬化指数、(D)血漿レニン活性、(E)尿中アルド
ステロン、(F)血漿アルドステロンにおける腎除神経の長期効果(average ±SEM)(各群 n=6)。
WKY 群と比較し、Control 群で、有意な尿蛋白排泄(P<0.01)及び尿中アルブミン排泄(P<0.01)を
認めた。Control 群と RD 群では有意な差は認めなかった。糸球体硬化指数は、WKY 群と比較し
Control 群で有意に上昇しており(P<0.05)、Control 群と RD 群では有意な差は認めなかった。
血漿レニン活性及及び血漿アルドステロンは、WKY 群・Control 群・RD 群の 3 群間において、
有意差は認めなかった。また尿中アルドステロンにおいては、WKY 群と比較し、Control 群で有意
な増加を認めた。さらに Control 群と比較し、RD 群で有意な尿中アルドステロンの増加を認めた。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant
29
Figure 11
(A)腎臓ノルエピネフリン含有量、(B)24 時間尿中ノルエピネフリン排泄、(C)尿中ノルエピネフ
リン/Cr 比のおける腎除神経の長期効果(average ± SEM)(各群 n=6)。
WKY 群と比較し、Control 群において、有意に腎臓ノルエピネフリン含有量の増加を認めた
(P<0.05)。Control 群と比較し、RD 群では、腎臓ノルエピネフリン含有量を有意に減少させた
(P<0.01)。
WKY 群と比較し、Control 群において、
有意な 24 時間尿中ノルエピネフリン排泄(P<0.01)
及び尿中ノルエピネフリン/Cr 比(P<0.01)の増加を認めた。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant
30
Figure 12
(A)平均動脈血圧(各群 n=7)、(B)累積ナトリウムバランス(各群 n=6)、(C)血漿レニン活性(Control
群 n=10、RD 群 n=7)、(D)血漿アルドステロン(Control 群 n=10、RD 群 n=7)、(E)24 時間尿中ア
ルドステロン(各群 n=6)における、腎除神経の短期効果。
Control 群と比較し、RD 群で有意な平均血圧の低下を認めた(P<0.01)。また累積ナトリウムバラ
ンスでは、RD 群と比較し、Control 群では有意な増加を認めた(P<0.01)。血漿レニン活性は、Control
群と比較し RD 群で有意な低下を認め(P<0.05)、血漿アルドステロン及び 24 時間尿中アルドステ
ロンにおいて、Control 群と RD 群では有意な差を認めなかった。
略語説明
SHRcp, SHR/ND mcr-cp(+/+); SEM, standard error of the mean; WKY, Wstar-Kyoto rats; Cont,
sham-operated SHRcp rats; RD, SHRcp rats subjected to renal denervation; NS, not significant;
MAP, mean arterial pressure
31
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