校長室の窓からNo.12 (H21.9.16) - 下山小学校

新潟市立下山小学校
校長 石坂 正之
平成 21 年9月16日
NO.12
あ る 小 学 6 年 生 の 作 文 か ら
10 月の全校朝会のときにでも,子どもたちにお話しようかと思っていたのですが,10 月を待っていら
れない感じになりましたので,
「校長室の窓から」に書かせていただきます。少し,難しい漢字もありま
すが,ぜひ,子どもたちにも読んでほしいと思っています。
ある人が書いた小学校6年生のときの作文を紹介します。
ゆめ
いちりゅう
ぷ ろ やきゅうせんしゅ
ちゅうがく
こうこう
ぜんこくたいかい
で て
「ぼくの夢は 一 流 のプロ野球 選手になることです。そのためには 中 学 ,高校と全国 大会に出て
かつやく
かつやく
れんしゅう
ひつよう
3さい
活躍しなければなりません。活躍できるようになるためには 練 習 が必要 です。ぼくは3歳のときか
れんしゅう
はじめて
3さい
7さい
はんとし
3ねんせい
いま
ら 練 習 を始めています。3歳から7歳までは半年くらいやっていましたが,3年生のときから今まで
365にちちゅう 3 6 0 に ち
は げ し い れんしゅう
は365日中360日は激しい 練 習 をやっています。
いっしゅうかんちゅう
ともだち
あ そ べ る じかん
5 , 6 じ か ん
れんしゅう
だから,一 週 間 中 で友達と遊べる時間は5,6時間です。そんなに 練 習 をやっているのだから,
かならず ぷ ろ やきゅう
せんしゅ
おも いま す
きゅうだん
ちゅうにち ど ら ご ん ず
せいぶ ら い お ん ず
必ずプロ野球の選手になれると思います。そして,その 球 団 は 中 日 ドラゴンズか西武ライオンズで
ど ら ふ と にゅうだん
けいやくきん
1おくえん いじょう
もくひょう
じしん
とうしゅ
だげき
す。ドラフト 入 団 で契約 金は1億円以上が 目 標 です。ぼくが自信のあるのは投手か打撃です。
きょねん
なつ
ぜんこくたいかい
い き ま し た
とうしゅ
み て
じぶん
去年の夏,ぼくたちは全国 大会に行きました。そして,ほとんどの投手を見てきましたが,自分が
たいかい な ん ば ー わ ん せんしゅ
かくしん
だげき
けんたいかい
しあい
ほ ー む ら ん 3ぼん
う ち ま し た
大会ナンバーワン選手と確信でき,打撃では県 大会4試合のうちホームラン3本を打ちました。そし
ぜんたい
と お し た だりつ
5わり 8 ぶ 3 り ん
じぶん
なっとく
せいせき
て,全体を通した打率は5割8分3厘でした。このように自分でも納得のいく成績 でした。そして,
1ねんかん ま け し ら ず
やきゅう
ちょうし
ぼくたちは1年間負け知らずで野球ができました。だから,この調子でこれからもがんばります。
いちりゅう
せんしゅ
しあい
で ら れ る
お せ わ
ひと
しょうたいけん
そして,ぼくが 一 流 の選手になって試合に出られるようになったら,お世話になった人に 招 待 券
く ば っ て おうえん
ゆめ
ひとつ
いちばん お お き な ゆめ
やきゅうせんしゅ
を配って応援してもらうのも夢の一つです。とにかく一番大きな夢は野球 選手になることです。
」
誰が書いた作文か,お分かりになったでしょうか。
作者は,当時,愛知県西春日井郡豊山町立豊山小学校6年2組,鈴木一朗さんです。もうお分かりで
すね。現在,大リーグ,シアトル・マリナーズの「イチロー選手」の子ども時代の作文です。
8月の末に,イチロー選手が左のふくらはぎを痛めて,1週間ほど試合に出られなかったことがあり
ました。それで,わたしは勝手に「今年も200本安打は達成できるとは思うが,きっと,早くて9月
下旬かな」などと思っていたのです。そうなると,
「10月に子どもたちにお話するといいかな」などと
密かに思っていたのです。ところが,さすが,イチロー選手です。昨年や一昨年以上のハイペースで2
00本安打を達成してしまいました。
9年連続200本安打は大リーグ始まって以来の記録,これまでの8年連続は108年前のこととい
ったマスコミの報道を見聞きするたびに,イチロー選手のすごさを感じます。
先ほどの作文を改めて見てください。
「ぼくの夢」と言っていますが,漠然とした夢ではないですね。
本当に自分はプロになるという「具体的な目標」になっています。そして,その目標に向かって努力し
ていることがすごいです。365日中360日の激しい練習。友達と遊べるのは一週間で5,6時間。
これほどの努力を小学生が続けているということに驚きます。
そして,最後がまたすばらしいと思います。
「お世話になった人に招待券を配る」
,感謝の心を忘れな
い,のですね。
最近,こんな CM があります。
『イチローはなぜ,同じ毎日をくり返しているのに 未来をつくれるの
か。確かな一歩の積み重ねでしか,遠くへは行けない。
・・・・』
同じことのくり返しは,簡単な気もしますが,実はそうではないのですね。
遅刻したイチロー選手を見た人は誰もいないといいます。時間厳守は当たり前,試合のある日は,定
時に起床,朝食は必ずカレーライス,誰よりも早く球場に行き,試合前のランニングと柔軟体操を毎日
まったく同じようにくり返すといいます。バッターボックスでの仕草というか「儀式」もまったく同じ
ですし,なんともかっこいいですね。
イチロー選手は「小さい努力の積み重ねが未来をつくる」と言っています。よくいわれる言葉として
は,
『継続は力なり』でしょうか。毎日毎日の努力の大切さはよく言われることですが,わたし自身,人
に誇れるような毎日の努力など何一つない状態で,情けない限りです。毎日,
「10分×学年数」で家
庭学習を続けている子どもたちの方が,はるかに立派です。
毎日コツコツと努力を続ける,最高のコンデションで試合に出られるようにランニング・柔軟体操す
るということは,イチロー選手の「準備」ともいえます。だからこそ,ケガや故障が少ないのだと思い
ます。今年は,胃潰瘍やふくらはぎのはりで16試合,試合を欠場しましたが,昨年までは,大リーグ
8年間で16試合の欠場だったといいます。これもまた,見事なものです。季節の変わり目といっては,
風邪をひいたり,腰を痛めたり,という自分と比較すると,これもお恥ずかしい限りです。
イチローと自分を比べること自体に無理があるのですが,
「夢をもち,夢に向かって努力する」
「小さ
な努力を続ける」
「準備を怠らない」など,少しでもまねしたいものです。