《北京事務所だより》 第 246 号【最終号】 【CONTENTS】 ○短信 ・北京で日本の伝統文化を学ぶ~茶道を通じて日中交流~ (所長補佐 水越 稔子(京都府派遣)) (所長補佐 竹中 和彦(鳥取県派遣)) ・北京市の交通事情 ■*****************************************■ ○短信 北京で日本の伝統文化を学ぶ~茶道を通じて日中交流~ (所長補佐 水越稔子(京都府派遣)) 今年の4月から、北京に来て早くも9か月が過ぎようとしています。こちらで生活をするよう になってから、中国の文化や生活習慣に興味があるのはもちろんなのですが、改めて日本の文化 や日本人についても考えるようになりました。 私は日本にいる時、日本の伝統文化である茶道や華道、着物の着付け等、全く習ったことがあ りませんでしたが(京都出身なので、このうち1つは最低習っていると思われることも多いので すが) 、同僚の1人が茶道を習っていることと、県人会で、茶道裏千家淡交会北京同好会で茶道を 教えていらっしゃる方と知り合ったこともあって、北京で茶道を習うことを通じて、日本の伝統 文化を見つめてみようと決心しました。 そこで、まず1度、今年の夏に開催されている入門講座の見学に行きました。入った瞬間に、 日本と変わらない立派な空間が目に飛び込んできました。「ここは日本じゃない。北京だったよ ね。 」と思いながら、皆さんがお稽古されている様子を見学させていただきました。 お稽古に来られているのは、北京在住の日本人ば かりだと勝手に思っていたのですが、中国人の方も おられました。皆さんの中には日本語が全く出来な い方もおられ、先生の説明が日本語と中国語で行わ れていて、 「この茶道の用語やお道具の名前(茶杓や 茶せん)は中国語でこう言うのか」と新鮮な感じが しました。また、何よりも日本の伝統文化に興味を 持ってくれている中国の方がいることについて、単 純に嬉しく思いました。 (日本と全く同じ雰囲気です。 ) その後、正式なお稽古に入る前に、別途、入門講座を開講していただくことになり、参加する ことになりました。入門講座は言葉の問題等もあり、中国人の方と別々に受けましたが、同じ時 間帯に横のスペースで、中国人の方が慣れない正座と格闘されながら受講されているのを見て、 いろいろ思うところがありました。実は、私が参加した入門講座は9月中旬からの開催でした。 日中関係が緊張している時でも、それとは全く関係なしに、茶道を通じて中国人と日本人が交流 を深めている空間にいることが感慨深かったです。 入門講座が終わって、12 月から正式にお稽古を開 始しました。土曜日の午後の班に参加しているのです が、この班は中国人の方が多く(日本語が流暢な方が 多いので、コミュニケーションは問題ありません) 、 以前から、茶道を習っておられる方も多いです。お稽 古ではレベルに合わせていくつかのグループに分か れるのですが、私を含めて日本人3名、中国人1名で 一緒にお稽古をすることが多いです。私は覚えが悪い ため、現在、習っている「盆略点前」が一通り終わる まで、すごく時間がかかり、先日、一緒にお稽古して (薄茶(私が点てたものではありませんが) ) いる中国人女性が「大丈夫だよ」と励ましてくれました。また、お稽古に必要な茶具等の準備や 後片付けの時は、以前から習っておられる中国人の方に教えてもらっています。 通常のお稽古の他に、茶道を通じての文化交流を目的に、一般の人も参加できる講座や茶会も 開催されています。先日は「茶の湯の空間」をテーマとしたミニ講演会(プラスその後、薄茶と 和菓子をいただける)が行われ、9割以上の参加者が中国人の方で、みんな熱心に講義を聞かれ ていました。 (ミニ講演会の時のお茶室といただいたお菓 子。クリスマス直前ということもあって、飾り つけやお菓子にクリスマスらしい演出が施さ れていました。 ) 元々、茶道を習おうと思ったきっかけは、日本の伝統文化を見つめてみようと思ったことで、 それについては、茶道の一連の動きにはそれぞれ意味があり、奥深さを感じていますが、一方、 文化を通じた民間の草の根交流の大切さを改めて感じることができ、こういった文化交流は国の 関係に影響されないということを目のあたりにすることができました。私の仕事は、日本の自治 体と中国の地方政府との交流を推進するものですが、仕事以外でも、一緒に茶道のお稽古をして いる皆さんと交流を深めていきたいと思います。 ___________________________________________ 北京市の交通事情 (所長補佐 竹中 和彦(鳥取県派遣)) 新年明けましておめでとうございます。 昨年は日中関係の現実を知り、残念に思うととともに、一方で、日本のファッションやアニメ に興味をもつ中国の若者や、中国の歴史や言語に関心をもつ日本人が着実に増えていることを感 じ、まだ時間はかかるかもしれませんが、近い将来、お互いに理解しあえる良き友人になること ができると確信した一年でもありました。 さて、今日は私が普段、通勤で利用している地下鉄を中心に、北京市の交通事情についてご紹 介します。 現在、北京市では大気汚染が深刻な問題となっていますが、近年は、中でも特に微小粒子状物 質(PM2.5)への関心が高まっています。自動車の排気ガスもその発生要因の一つとされています ので、交通渋滞を解消することは緊急の課題でもあります。 このため公共交通の利用を推進し、交通渋滞を解消する様々な取組が行われています。 機動車のナンバープレートの末尾番号による交通規制もその一つです。これはナンバープレー トの末尾番号により、平日、五環路内での機動車の運転を禁止するもの(例えば、月曜日は末尾 番号が1と6の機動車が、火曜日は2と7の機動車が、五環路内で運転をすることができないと いうもの)で、2008 年から始まりました。 また、新車登録の総量規制も行われています。 自動車を運転するには当然、ナンバープレートの 登録が必要ですが、そのためには競争倍率の高い 抽選で当たらなければなりません。 同様に、タクシーについても総量規制が行なわ れており、北京市は、今後3年間はタクシーの総 量を増やさず、66,000 台以内に抑える方針を打ち ≪朝は市内中心部に向かう車で混み合う≫ 出しています。 さらに、今後は渋滞税の導入を柱とした交通渋滞税徴収管理システムの構築にも力を入れると いうことです。 【 タクシー 】 市内では、黄色を主とした車体のタクシーを頻繁に目にしますが、時間帯と場所によっては、 これがなかなかつかまりません。90 年代後半に私が中国を旅行した際は、風貌から一目で外国人 とわかり、タクシーの運転手からよく声をかけられたものですが、現在は街を歩いていて、声を かけられることはほとんどありません。その当時、市民にとってタクシーは贅沢な移動手段だっ たのですが、市民の収入も増え、現在では手軽な移動手段となっています。タクシーの初乗り運 賃が 10 元(約 130 円。初乗りから3km 以上で燃油附加費2元が追加徴収される)と、他の物価 と比べても割高感がないことがこの理由の一つでしょう。例えば、某ハンバーガーショップのお 昼のセットメニュー(ハンバーガー、ポテト、飲み物のセット)は 15 元~20 元程度です。 【 自転車 】 北京では歩道の脇に専用の自転車道が設けら れていることも多く、比較的快適に乗ることがで きるのではないかと思います。ただ、車が非常に 多いので安全に十分注意することは言うまでも ありません。市内では一般の自転車に加え、電動 自転車が普及しています。 しかし歩行者にとっては、後ろから電動自転車 が近付いて来ても音が聞こえないので、便利な一 ≪普及する電動自転車≫ 方で、危ないとの声も多く聞かれます。 【 市内バスと地下鉄 】 バスはその路線等によって運賃は異なりますが、 一般には1元です。路線と本数は多く、目的地を 通るバスの番号さえ覚えてしまえば、安くて便利 な移動手段です。電気バスや、通常の車体2台が 連なったような長い車体のもの、さらに、路線に よっては2階建てバスも走っています。 しかしバスは確かに便利なのですが、初めて乗 車する場合は下車地がわかりにくかったり、時間 ≪バス停で乗車する乗客≫ 帯によっては渋滞に巻き込まれるといったおそれ もあります。 その点、地下鉄は最も確実で気軽に利用できる移動手段です。地下鉄の料金は空港線を除き一 律2元です。地下鉄車内では、電光線路図を見れば現在の通過駅がわかり、車内アナウンスも中 国語と英語で流れます。 ただ、駅通路の構造上の問題や改札前にエックス線による荷物検査があること等から、通勤時 間帯では、地上駅の入口から実際に地下鉄に乗車するまでの移動に時間がかかります。 さて、地下鉄、バス両方の利用にあたっては、大変利用価値の高い「一卡通」というタッチ式 の IC カードの存在が欠かせません。このカードに事前に入金しておけば小銭が不要になるばかり か、このカードを使用することでバスの運賃は 0.4 元にまで割引されます。 一方で、地下鉄改札機のセンサー感度が悪く、タッチしても感知しないことが度々あり、改札の 前でよく人だかりが生じています。さらに、私が通勤で利用している東直門駅については、毎週 金曜日の退勤時間帯に地下鉄の出入口を一方通行とし、人の流れをスムーズにする取り組みを行 っているのですが、これがまだあまり知られていなかったりするためか、逆に人の流れを滞らせ る結果を招いています。 ≪改札でのもたつき≫ ≪金曜日の退勤時間(東直門駅)≫ 北京市は公共交通の利用を推進するため、今後も地下鉄やバスの整備を拡充するとしています。 2012 年 12 月下旬には、地下鉄4路線(6・8・9・10 号線の部分区間)が一斉に開通する予定 で、開通後の地下鉄総距離はなんと 442km になるということです。特に6号線の開通は、市内を 東西に走る1号線と平行に走るため、凄まじいまでの1号線の混雑の緩和が期待されています。 北京市の発表によると、現在、公共交通による市民の移動比率は 44%に達し、2015 年には 50% に達する見込みです。 中国では農民の都市部での定住を促す「都市化」の推進を構造改革の柱に掲げているため、都 市部の人口増加を許容できる交通インフラの整備は、今後ますます重要になってくることでしょ う。 ■*****************************************■
© Copyright 2024 ExpyDoc