ポスト抗体医薬:疾患関連タンパク質を ターゲットトした分子標的ペプチド の網羅的創出技術 大阪府立大学大学院理学系研究科・藤井 郁雄 21世紀科学研究機構ケミカルバイオロジー研究所・所長 立体構造規制ペプチドから低分子医薬へ: 新しい分子標的化合物の創出法 タンパク質立体構造を取得 立体構造をもとにした医 薬品設計(SBDD) X線結晶解析,NMR 長い時間がかかる ヒット化合物 タンパク質構造からファーマコフォアを取得 標的タンパク質 •タンパク質の 立体構造なし ヒット化合物 CC & HTS タンパク質の 立体構造なし 作用物質の 構造なし 低分子ライブラリーの取得 (4000円X320万種=128億円) •作用物質の 構造なし 新手法 高コスト 作用物質構造 を取得 立体構造規制ペプチド 進化分子工学 ペプチド・ライブラリー (205 = 320万種類) ヒット化合物 作用物質の構造からファーマコフォアを取得 ・標的たんぱく質の立体構造がいらない:スピードアップ ・ライブラリー構築が容易:低コスト 2008年の世界の医薬品売り上げ 順位 製品名 薬効 メーカー 分類 特許満了年 1 リピトール 高脂血症/スタチン ファイザー/アステラス 低分子 2011 2 プラビックス 抗血小板薬 サノフィ・A/BMS 低分子 2011 3 アトドベア/セレタイド 4 リツキサン 5 エンブレル 6 レミケード 7 ディオバン 降圧剤/ARB ノバルティス/イプセン 低分子 2012 8 ネクシアム 抗潰瘍剤/PPI アストラゼネカ 低分子 2014 9 エポジェン 腎性貧血 アムジェン/J &J/ キリ ン タンパク製剤 2004 10 アバスチン 抗がん剤/結腸・乳が ん ジェネンテック/ロシュ モノクローナル抗体 - 11 ハーセプチン 抗がん剤/HER2乳がん ジェネンテック/ロシュ/ 中外 モノクローナル抗体 2013 12 ジプレキサ 統合失調症薬 イーライリリー 低分子 2011 13 セロクエル 統合失調症薬 アストラゼネカ/アステ ラス 低分子 2011 14 シングレア/キプレス 抗喘息/気管支喘息 メルク/キョーリン 低分子 2012 15 ヒュミラ 関節リウマチ/乾癬他 アボット/エーザイ モノクローナル抗体 - グラクソ・スミスクライン 低分子 /アルミラル バイオジェン ・アイディ 非ホジキンリンパ腫 モノクローナル抗体 ク/ロシュ アムジェン/ワイス/ 武 抗体組み替えタンパク 関節リウマチ/乾癬他 田 製剤 関節リウマチ/クローン J&J(セントコア)/SP/田 モノクローナル抗体 病他 辺三菱 抗喘息薬 2010 2014 2009 2014 抗体医薬品の台頭とその問題点 問題点 巨大タンパク質(MW:150 kD) 抗体 150 kD 多数のジスルフィド結合による 構造形成 抗原性:ヒト化が必要 細胞膜を透過しない 動物細胞による生産が必要 特許の高い壁 乳がんの手術後再発予防の治療費: 従来の化学療法剤による治療では50~60万 円程度のところ、トラスツズマブ(ハーセプチン®)は300万円を超える。 Beyond Antibodies: 抗体から次世代抗体へ 抗体様分子標的ペプチドの創出 マイクロ抗体 ペプチド(MW:3-5 kD) 抗体 150 kD 非抗原性:ヒト化が不必要 細胞膜透過性:細胞内タン パク質が分子標的になる 化学合成が可能 コストが安い 特許の縛りがない 研究戦略 立体構造規制ペプチド・ ライブラリーの開発 低分子リード化合物 の設計と合成 マイクロ抗体 バーチャル・ スクリーニング 作用ペプチド コンビバイオによる ハイスループット・ スクリーニング ファーマコフォアの 立体構造情報 320万種類(205)の分子ライブ ラリーを1晩で調製することが 可能 ファージ表層提示ライブラリー・スクリーニング 大腸菌 蛍光 再感染 増幅 洗い出し 選別 アンタゴニスト・アゴニスト 標的タンパク質 ペプチド・ライブラリー α-ヘリックス構造を有するペプチド・ライブラリーの分子設計 サイトカイン(a-ヘリックス含有たんぱく質) へリックス・ループ・へリックス構造 helix-loop-helix IL-6, G-CSF: 関節炎治療薬 G7 IL-4, IL-5:抗アレルギー薬、抗喘息薬 K22 E9 L10 L23 X25 L26 X28 A8 L6 A5 A4 L3 A1 N E2 X24 K29 L30 X31 X32 L33 A35 C ライブラリー領域 構造支持領域 A11 L12 A12 ペプチドの分子設計 ■35 アミノ酸から構成される。 ■N-末端 a-へリックス、グリシン・ループ、C-末端 a-へリックス の3部分から構成される。 ■ロイシン側鎖の疎水相互作用により2つのへリック スが会合し安定化する。 ■グルタミン酸側鎖とリジン側鎖の静電相互作用に より2つのへリックスが会合し安定化する。 α-ヘッリクス構造ペプチドの分子設計: ヘリックス・ル-プ・ヘリックス構造の安定性 N-terminal segment C-terminal segment CD spectra of peptides α-ヘッリクス構造ペプチドのファージ・ディスプレイ・ライブラリ- A peptide library was displayed on gVIII coat protein of phage by a modification of the pComb8 system Library size: 1.8 x 106 G-CSF 受容体に対する親和性ペプチドの創出 G-CSF (granulocyte colony-stimulating factor ) 顆粒球コロニー刺激因子 白血球の1種である好中球の分化・増殖を誘導する糖タンパク質。分子量約1.8-2.2万で、ヒトで 174アミノ酸から構成される。骨髄移植時の好中球の増加促進剤や抗ガン剤の副作用である好 中球減少症の治療薬として使用されている。 Ig-like BN BC Cytokine Receptor Homologous Region FNIII-like Cell membrane Cytoplasm Crystal structure of a complex of the receptor BNBC domain (CRH) with G-CSF G-CSF 受容体結合ペプチドの立体構造と受容体結合活性の相関 peptide sequence Kd (µM) scaffold 1 AELHALEHELAALEG(7)KLAALKAKLAALKAY >1000 pep 2 AELHALEHELAALEG(7)KLSDLKLKLPELKAY 150 pep 4 AELHALEHELAALEG(7)KLSDLKLKLAELKAY 28 pep 5 AELAALEAELAALEG(7)KLSDLKLKLAELKAY 2 3 4 1 3.8 G-CSFR分子標的ペプチドの特異性 SPR spectra 120 G7 A11 A12 E9 A8 A4 L12 A5 A1 L10 L6 E2 L3 G-CSFR K22 80 L23 M25 L26 A24 L28 K29 L30 E32 A31 Kd = 214 nM % helix = 34 % Human IgG 40 L33 R35 Y N C 0 P8-2KA Peptide = 500 nM (BiaCore T-100) 時間(t) 高い特異性:ヒトIgG-Fc, IL-4受容体,I L-5受容体, VEGFには全く結合しない。 分子標的ペプチドの最適化: BIACOREを用いたG-CSF受容体結合性ペプチドの熱力学解析 A C C Y A Y C HN Kd = 214 nM % helix = 34 % P8-2KA Kd = 3 nM % helix =59 % P8-2KA-S (Disulfide) S O Kd = 4 nM % helix = 41 % P8-2KA-S (Thioether) peptide conc.12.5 nM. temp.: 10 - 37 ℃ 次世代抗体としての可能性 マイクロ抗体 helix-loop-helix 次世代抗体としての可能性 安定性? 非抗原性? バイオアッセイ:細胞増殖阻害試験 細胞増殖阻害試験 NFS60細胞 : 4×104 G-CSF : 200pM OD570 P8-2KA P8-2KA-S Peptides IC50 P8-2KA 50 μM P8-2KA-S 75 nM チオエーテル化P8-2KA-S 90 nM チオエーテル化P8-2KA-S A P8-2KA ペプチド濃度(μM) C C A Y P8-2KA-S Y C H N S O P8-2KA Kd = 214 nM IC50 = 50 µM X 71 X 666 チオエーテル化 P8-2KA-S Kd = 3 nM IC50 = 75 nM P8-2KA-S 血清中安定性試験 安定性試験 マウス血清中 半減期 peptides 残存ペプチド量(%) チオエーテル化P8-2KA-S P8-2KA-S half life P8-2KA 6.3 hour P8-2KA-S 5.25 day あああああああああああ 15.25 day チオエーテル化P8-2KA-S 0.5hour P8-2KA C末 P8-2KA P8-2KA C末 時間(分) A P8-2KA C C A Y P8-2KA-S Y C H N S O チオエーテル化 P8-2KA-S 次世代抗体としての可能性: 非抗原性 7/27 Balb/c mouse 8/10 2 weeks immunizatio n 8/24 2 weeks 8/31 Titration Curve 1 . 2 microAb-KLH 1 week + adjuvant* immunizatio n immunization Titer 1 (50 µg/mouse) (1) O D 4 9 0 microAb 0 . 8 microAb + adjuvant* 0 . 6 + adjuvant* (2) 0 . 4 microAb 0 . 2 microAb (3) KLH + adjuvant* 0 2 1 0 3 1 0 4 1 0 d il u t i o n s *Adjuvant: AbISCOTM (12 µg / mouse) 5 1 0 分子標的:血管内皮細胞増殖因子 Vascular endothelial growth factor (VEGF) VEGFは、脈管形成および血管新生に関与する一群の糖タンパク。VEGFは主に血管内皮細胞表面にある血管 内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR) にリガンドとして結合し、細胞分裂や遊走、分化を刺激したり、微小血管の血 管透過性を亢進させる。正常な体の血管新生に関わる他、腫瘍の血管形成や転移など、悪性化の過程にも関与 している。 Functions Migration Invasion proliferation Survival Permeability Lymphangio -genesis angiogenesis Lymphangiogenesis Tumor growth 抗VEGFマイクロ抗体の結合活性 Trx-49 A C C KD : 3 nM Trx-42 A thioredoxin Competitive binding assay with Trx-42 (VEGF 25 nM) for VEGFR-2 VEGF 25 nM thioredoxinfused peptide 0 nM 87 nM 175 nM 350 nM 700 nM 1400 nM KD : 300 nM 細胞増殖阻害活性 ヒト臍帯静脈内皮細胞(Normal Human Umbilical Vein Endothelial Cells : HUVEC) (Ala mutant) (anti-TNF α pep.) 立体構造規制ペプチドライブラリー ファージ表層提示法,酵母表層提示法 X18 X18 X17 G7 X20 X16 L12 A12 A11 E L30 5 A1 L26 E 2 E L 3 X3 X32 1 E 2 L 3 L33 E A2 8 1 A32 N C Loop L26 X28 L30 6 5 A1 E X24 X25 K29 L A A4 K22 L23 9 A8 A3 L10 L 3 2 X3 X32 1 L33 A3 5 5 C α−helical A11 A3 5 N X20 L12 A12 L26 L30 6 5 A1 A3 A24 A25 K29 L A A4 L33 L10 X19 X16 K22 L23 9 A8 K29 6 L12 A12 A11 X28 L A X24 X25 9 A8 A4 L10 K22 L23 X17 X19 N C α−helical-Loop タンパク質−タンパク質相互作用阻害 抗G-CSF受容体・マイクロ抗体(抗リューマチ薬) 抗ヒトIgG-Fc・マイクロ抗体(免疫不全治療,抗体精製) 抗TNF-α・マイクロ抗体(抗リューマチ薬) 抗血管内皮細胞増殖i因子(VEGF)・マイクロ抗体(抗がん薬) 抗キナーゼ・マイクロ抗体(抗がん薬:オーロラA, B) 抗hDM2・マイクロ抗体(抗がん薬:p53類似ペプチド) 次世代抗体医薬:立体構造規制ペプチド・ライブラリーによる 分子標的ペプチド(マイクロ抗体)の開発 次世代抗体としての可能性 安定性:マウス血清中 半減期 15.25日 抗原性:なし 細胞膜透過性:あり 表層提示ライブラリーによるスクリーニングシステムの開発 酵母表層提示ライブラリーの構築: 2 X 106 本シーズの応用 次世代抗体医薬 診断薬 タンパク質アフィニティー担体 本技術に関する知的財産権 1)特願2010-105581 「環境ペプチド」 2)特願2012-139243 「抗腫瘍ペプチド化合物」 3)特願2012-190551 「VEGF結合性ペプチド」 出願人 :大阪府立大学 代表発明者 : 藤井郁雄 お問い合わせ先 公立大学大阪府立大学 地域連携研究機構 産学官研究連携推進センター 知的財産マネジメントオフィス 菅谷 正 TEL:072-254-9317 FAX:072-254-9849 e-mail:[email protected]
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