ML - さっぽろ在宅医療クリニックのホームページ

背景:在宅医療の現状と意義
入院・外来に次ぐ『第三の診療体系』として
・定期的かつ確実な診察
慢性疾患の重症化予防と健康維持管理
入院
・通院不可能な患者への対応
在宅
重症疾患:悪性腫瘍・神経筋疾患・在宅人工呼吸
在宅ターミナルケア
等への対応
・地域における診療連携体制の構築
病院・訪問看護・介護者などとの連携拠点として
・医療費の削減
外来
在宅医療の問題点と対策
医療面での問題
・緊急時や急変の対応
・診療や検査の『限定』
在宅という空間において
・閉鎖空間の中での評価
・在宅医療の情報や教育不足
日常の健康管理
急変への準備
迅速キット
カンファレンス
診療の発信
研究会
病診連携
負担の増加
・家族の介護負担
・24時間体制での医師の負担
身体・精神的サポート
当番制・グループ制
在宅診療
体系の確立
チーム
医療
チーム医療とは
チーム医療
医師・看護師・介護者などの専門職がそれぞれの
専門知識を生かし、積極的な意見交換や情報共有を通じて
協力して患者さんの治療にあたること
チームの中心には患者が位置し、その最も重要な一員となる
プロジェクト型
・医師を中心とした診療体制
(専門職によるサポート)
・高度診療と治療
(癌治療など)
コーディネート型
・患者の希望を優先
(チームによる介助や調
整)
・精神面のケア
・ターミナルケアなど
在宅におけるチーム医療
医療連携やカンファレンス
を通じて診療にあたる
訪問看護
ステーション
訪問看護
メンタルケア
薬剤の管理
配達
在宅療養
支援診療所
医療・介護関連企業
(メーカー・卸)
居宅介護
支援事業所
訪問診療
ケアプラン
作成
患者
家族
訪問介護
訪問入浴
検査・入院
薬局
病院
居宅介護
サービス
事業者
症例1
現病歴
69歳女性 肺癌
平成19年5月に頭痛と嘔気を自覚、7月に意識消失
を発症して入院し、全身精査にて肺癌と転移性脳腫瘍
の診断にて化学療法と全脳照射を施行された。
腫瘍縮小効果は認めたものの、続発性けいれんや
意識状態は改善せず、寝たきり状態となっていた。
11月に入り、家族より休薬期間中に自宅療養をさせ
たいとの強い希望があり、在宅医療を開始した。
現症
寝たきり状態、JCS:100
肺雑音や低酸素血症なし
右鎖骨下にCVポート挿入:中心静脈栄養
11/8 病院にて合同カンファレンス
IVH
⇒病院主治医・担当看護師・CM・SW・訪問看護師・家族
在宅でのチーム医療
⇒医師・訪問看護師・訪問リハビリ・訪問入浴など
化学療法
11/13
12/27
1/17
WBC
CRP
12000
IPM/CM
9000
LVFX
6000
G-CSF
6
4
2
3000
0
0
30
1/
28
1/
25
1/
21
1/
16
1/
7
1/
4
1/
6
/2
12
7
/1
12
0
/1
12
/5
12
/3
12
6
/2
11
6
/1
11
在宅での癌治療(外来化学療法との連動)
経過
・意識状態の改善:家族の声かけには反応するように
・化学療法にてSDを維持:明らかな憎悪は認めず
意義
・ADLの向上(主に家族の):外来通院の軽減
・合併症や副作用への対策:輸液・抗生剤・G-CSF など
・家族の精神的安堵感:自宅介助のサポート
問題点
・緊急時や急変時の対応:起こり得る合併症を予め確認
・介護負担の増加
症例2
現病歴
71歳男性 虫垂癌
平成17年に虫垂癌のため手術、その時点で腹膜播種
を認め、術後化学療法を施行するが憎悪していた。
平成19年8月に癌性腹膜炎によるイレウスにて入院、
積極的治療は困難であり、減圧目的の胃瘻と中心静脈
栄養を開始、緩和ケア(モルヒネ持続静注⇒フェンタニ
ル貼付)を開始されていた。
この時点で本人・家族より強い希望があり、自宅での
ターミナルケアを目的に当院を紹介された。
現症
意識は清明、間欠的な腹部の仙痛あり
ほぼベッド上寝たきり、介助での歩行は可能
右鎖骨下CVポート挿入:絶飲食・IVH管理
診療前カンファレンス
・在宅でのターミナルケア希望
・病状と経過
・在宅看取りへの強い意思を確認
(特に家族)
・使用中の薬剤や輸液
・家族の介護経験と可能な手技
・使用薬剤の在宅での調整
・必要な看護・介護体制の確保
・在宅での注意点の説明(家族
へ)
準備
・IVH:薬剤と輸液、ポンプ、ルートセットなど
・PEG:排液バッグ、延長チューブ
・訪問スケジュールの確認
(訪問診療・訪問看護)
・麻薬の準備
デュロテップ
パッチ
CV
ポート
カフティ
ポンプ
IVH
サンドスタチン
PEG 減圧目的
10/18 病院にて合同カンファ
家族・本人と面談
11.6~11.14
実診療日数:23日
旅行
倦怠感高度
PS=3
1.25mg
下顎呼吸
意識消失
PS=4
デュロテップパッチ
2.5mg
モルヒネ持続静注
12
アンペックSp10mg:1日1回(2~3日に1回)
デカドロン
10.22 在宅医療開始
4mg
24
60
2mg
12.10 死亡
本症例の経過
経過
・在宅療養後より、ほぼ寝たきり生活であったが、意識は清明
で疼痛も自制内で、本人と家族の満足感も見られていた
・数回の訪問と傾聴を繰り返すことで、本人の希望を聴取する
できた『できれば旅行に行きたいんだが・・・』
・意思を再確認した上で各方面(旅行会社・旅行先の医療機
関など)に調整し、それらの協力の下で旅行が可能であった
・旅行後は全身状態が落ちたが、本人は満足していた
・最終的には『先生、もう俺、ちょっと疲れたかな』と言う言葉を
聞き、モルヒネ量を増量して疼痛・苦痛なく看取りを行うこと
ができた
在宅ターミナルケア
意義
・患者の意思を聞き取り、『自分らしさ』をサポートする
⇒苦痛や疼痛の軽減、本当の意思や希望の汲み取り
・『すくなくとも不幸ではない』
⇒家族に見守られての人生の終末へ
課題・問題点
・緊急時や急変時の対応と準備
・家族の介護負担(肉体的・精神的)
⇒『死』を見つめ、見届けることへの恐怖・罪悪感
・ 本 人 や 家 族 に 対 す る メ ン タ ル ケ ア
⇒起こり得る経過の説明、心の準備、看取り後のねぎらい
今後の課題と目標
在宅診療の向上
・在宅診療経験の積み重ねと診療の改善
・研究会や学会を通じた診療内容の発信と議論
・患者や家族の気持ちを『読み取る』ことができる診療を
地域協力体制の構築
・チーム医療の構築と更なる連携の強化
・患者や医療者に対する情報提供と普及への努力
・入院⇔在宅間での意識共有
結語
•在宅医療の実現のためには、チーム医療の充
実が必須である
•在宅医療でのチーム医療においては、患者を
中心として、その希望や意思を医療者がサ
ポートすることが求められている
•医療者や患者に対する在宅医療の情報発信
や連携体制の確立が必要である