数学総合I - 京都大学大学院理学研究科/理学部数学教室

数学総合 I
福岡大学理学部応用数学科
応用数学コース
(2009 年 7 月 31 日改訂)
1
目次
第I部
複素数
3
1
複素数とは
3
2
実数係数の 2 次方程式の解としての複素数
5
3
複素数と平面
8
4
複素数の四則演算と幾何学
12
5
ド・モアブルの定理
17
6
1 の n 乗根
18
7
参考
21
第 II 部
集合と論理
26
8
集合の表現
26
9
集合の演算と論証
27
10 実数の部分集合
30
11 無限個の集合の和集合と共通部分
31
12 実数を値域に持つ関数の例
36
13 関数の定義
39
14 合成関数
39
15 逆関数
40
16 単調性を持つ関数とその逆関数
41
17 関数・写像の像と逆像
42
2
第I部
複素数
[第1章] 複素数の性質
1
複素数とは
算数・数学の最も基本的な概念といっても良い「数」については, りんごの個数を数えるための 1, 2, 3, . . . , 1000
√
に始まって, 2 といったものまで, 高校までに段階的に学んできている.
最初に, 「数」とは何かと言うことを念頭に置きながら, この段階を振り返ってみよう. もともと数の概念は, 物
の個数を数える為に自然に生まれたものであろう. しかし, 単純に 1, 2, 3 と順番に数えるだけではなく, 例えば, 左
手に豆を 3 粒持っていて, 右手に 5 粒あれば, あわせて 8 粒だと分かったり, 10 個入りのみかんの箱が 5 ケースあ
るから, 全部で 50 個という様に計算することもできる.
これを数学の言葉では, 二つの数 n, m に対して, 和 n + m, 積 nm という演算 (operation) が定まっているとい
う. この演算によって, 数が単なる数字の集まりでは無く, 便利な概念になっているという観点から, 数の生い立ち
を眺めてみる事にする.
誰もが最初に出会う, もっとも原始的な数は自然数 (natural number) であろう. 二つの自然数 n, m に対し, 和
n + m, 積 nm はまた自然数になる. この性質を, 「自然数は和と積に関して閉じている」という. しかし引き算,
例えば, 差 3 − 5 を考えようとすると, もはや自然数ではなくなってしまう. そこで負の数と 0 が必要となってく
る. そうして, 正の数, 負の数, 0 をあわせた, 整数 (interger) が登場する. 整数は, 和・積・差に関して閉じている.
しかし, 割り算をしようと思うとこれでも足りない. そこで整数 a, b (b = 0) の比
a
b
という形の数全体である, 有
理数 (rational number) が出現することになる. ここまで来てやっと四則演算については閉じた数になったわけだ
√
が, まだ実用上足りない数がある. 例えば, 1辺1の正方形の対角線の長さである 2 は有理数ではない1 . そこで,
これらの無理数 (surd)
2
と有理数をあわせたものを実数 (real number) と呼んでいる.
ここまでの議論をもう少し整理してみよう. 自然数から整数の段階に移った理由は「引き算がしたいから」, 整
数から有理数は「割り算がしたいから」, 有理数から実数は「対角線の長さが知りたいから」であったが, これら
を次のように統一的に考えることができる.
すなわち, 引き算 n − m は方程式 (equation)x + m = n の解 (solution), 割り算 n/m は, 方程式 mx = n の解,
1辺1の正方形の対角線の長さは, (三平方の定理から) 方程式 x2 = 12 + 12 の解, と思うことができる. このよう
に考えると, これまでの数の発展は方程式を解く為になされた, と言うことができる.
さて, 実数まで数を発展させることで, x2 = 2 は解けるようになったが, これで終わりというわけにはいかない.
ここまで数を拡張しても, まだ解を持たない方程式が存在するのである. 実際, どんな実数も 2 乗すると 0 以上に
√
なるから, x2 = −1 は実数の世界では解けない. そこで, x2 = 2 の (正の) 解を新しい記号 2 と書いて数の世界の
一員に加えたように, x2 = −1 の「解」を i と書いて新しい数と見なす事で, 実数より広い数を考えることができ
る. これが複素数である.
定義 1.1. 2 乗すると −1 になる数, すなわち, 方程式 x2 = −1 の解(のひとつ)を i と表し, 虚数単位 (imaginary
unit) と呼ぶ.
注意: (−i)2 = (−1)2 · i2 = −1 であるから, −i も x2 = −1 の解となっている. また,
x2 + 1 = (x − i)(x + i)
1 興味のある人は,
証明を考えてみよ.
2 無理数のきちんとした定義は大変難しいが,
大体, 循環しない無限小数と思っておくと良い.
3
であるから, x2 = −1 の解は, i と −i の二つしかない. (α が x2 = −1 の解だとすると, α2 + 1 = (α − i)(α + i) = 0
を満たす. よって, α = i または α = −i のいずれかが成り立つ.)
定義 1.2. 2 つの実数 a と b を用いて a + b i の形で表わされる数を複素数 (complex number) という.
複素数 a + bi に対して a を実部 (real part), b を虚部 (imaginary part) と言う. 特に, 虚部 b が 0 でない複素数
を虚数 (imaginary number) といい, 特に, 実部 a = 0 かつ 虚部 b = 0 のとき純虚数 (purely imaginary number)
という.
a, b, c, d を実数とするとき, a + b i = c + d i であるための必要十分条件は a = c かつ b = d である. (参考: §7)
√
問 1.3. 次の複素数のうち, 等しいもの, 虚数であるもの, 純虚数であるものをそれぞれ全てあげよ. ( −3 につい
ては, 次節で詳しく述べる.)
2i,
0,
√
−3,
√
√
− 7,
√
5
+ 2i,
4
4
i,
2
√
3i
ここでは半ば機械的に登場した複素数だが, 現実社会においても, 物理・工学・化学などの諸分野で実際に活躍
している. この講義ではこういった数学以外への応用には触れないが, §7 では一見複素数となんら関係の無い整数
の問題が, 複素数を用いることで見通しよく解ける例をあげてあるので, 興味があれば挑戦してみてほしい.
問 1.4. 数学以外の科学や実生活において, 複素数が活躍している例を調べよ.
(ヒントキーワード: 波動, 交流回路, 単振動, オイラーの公式など)
複素数
√
実数
π+1
1+i √
e
2−1
有理数
1
3
−
整数
−100
0
自然数
1
3002
3
図 1: 数の世界
4
11
4
−4
3i
実数係数の 2 次方程式の解としての複素数
2
これまでの議論では, 複素数は 2 次方程式 x2 = −1 を解くために考え出されたと言える. では, 一般に 2 次方程
式は複素数の範囲で解けるのであろうか. まず手始めに, x2 = −a (a > 0) を考えよう3 . この解は次のようにして
求まる.
x2
x2
⇔
a
x 2
⇔ (√ )
a
x
⇔ (√ )
a
⇔x
よって,
√
ai を
√
= −a
= −1
= −1
= ±i
(x2 = −1 の解は x = ±i)
√
= ± ai
√
−a と書くことにすると, x2 = b (b は任意の実数) の解は, b の正負にかかわらず, x = ± b と
なる.
注意:任意の実数 a, b に対して,
√
ab =
√ √
a b が成り立つとは限らない4 .
次に一般に実数係数の 2 次方程式について考える.
a, b, c (a = 0) を与えられた実数で,x を未知数 (unknown) とする 2 次方程式
ax2 + bx + c = 0
(1)
√
の解法を考えよう. この為には, 今しがた証明した, 実数 b に対して x2 = b ⇔ x = ± b という事実を使い, 次の
様な平方完成を考えれば良い.
ax2 + bx + c
b
⇔ 4a2 (x + )2
2a
(
)2
b
⇔ 2a(x + )
2a
b
⇔ 2a(x + )
2a
b
⇔x+
2a
=
0
=
b2 − 4ac
=
b2 − 4ac =
=
⇔x =
(両辺の平方根をとると)
√
± b2 − 4ac √
b2 − 4ac
±
2a
√
−b ± b2 − 4ac
2a
(両辺を 2a で割ると)
よって, 実数係数の 2 次方程式 ax2 + bx + c = 0
(a = 0) の解は,
√
−b ± b2 − 4ac
x=
2a
となる.
問 2.1. 2 次方程式 2x2 − 3x + 7 = 0 を平方完成して解け.
上の解の公式からわかるように, 実数係数の 2 次方程式の解には次の 3 通りの場合しかない.
3a
> 0 と書くと
a が正である事と同時に
, a が実数であることも表している. 参考: §7
√ , 文字通り
√
√
√
1 = 1 = −1 · −1 = −1 · −1 = i2 = −1 はどこが誤っているのか, 考えてみよ.
4 次の式,
5
• 解は異なる2つの実数
• 解はただひとつの実数(重解をもつ)
• 解は異なる2つの虚数
方程式の解のうち, 虚数であるものを虚数解, 実数であるものを実数解と呼ぶ.
上の3つのどの場合が成り立つかは, 判別式 (discriminant) によって判定できる. 実数係数 2 次方程式 ax2 +bx+c =
0 に対して,
D = b2 − 4ac
を判別式と言う.
√
−b ± D
この時, 方程式の解は x =
と表せるので, 判別式と解の種類との関係は, 次のようになっている.
2a
• D > 0 ⇔ 異なる2つの実数解を持つ
• D = 0 ⇔ 実数の重解を持つ
• D < 0 ⇔ 異なる2つの虚数解を持つ
問 2.2. 2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 の判別式 D が D = 0, D > 0, D < 0 の場合に, 2 次関数 y = ax2 + bx + c
のグラフはそれぞれどのような特徴をもつか, 実際にグラフを描いて調べよ.
例 2.3. (1) 2x2 + 6x + 1 = 0 に対して, 判別式は D = 62 − 4 · 2 · 1 = 28 > 0, 二つの実数解は,
√
√
−3 ± 7
−6 ± D
=
.
x=
4
2
(2) 2x2 + 4x + 3 = 0 に対して, 判別式は D = 42 − 4 · 2 · 3 = −8 < 0, 二つの虚数解は,
√
√
√
−4 ± D
−4 ± 2 −2
−2 ± 2 i
x=
=
=
.
4
4
2
問 2.4. 次の 2 次方程式の解を求めよ.
(1)
x2 + 6x + 5 = 0
(2) 3x2 − 4x − 5 = 0
(3)
4x2 − 4x + 1 = 0
(4) 3x2 − 7x + 8 = 0
この節では, 実数係数の 2 次方程式が, 複素数の範囲で必ず解けることを見た. では, より高次の方程式に関して
はどうであろうか. また新たに数を拡張しなければ解けない方程式が存在するのであろうか.
安心できることに, 次の定理が知られている.
定理 2.5 (代数学の基本定理). 複素数係数の任意の n 次方程式は, (重複を込めれば) ちょうど n 個の複素数解を
持つ.
詳しくは, §7 を参照のこと.
6
複素数の計算
この節では, 複素数の四則演算に慣れる事を目標として, 具体的な計算練習を行う. (四則演算の正式な定義は次
章にゆずる.)
実際の計算に入る前に, まず一つ便利な記号を用意しておこう.
きょうやく
a, b を実数とする. 複素数 z = a + b i に対して, z = a − b i を 共 役 複素数 (conjugate complex number) という.
zz = (a + bi)(a − bi) = a2 − (bi)2 = a2 + b2 .
が成り立ち, z z¯ は常に 0 以上の実数となる.
問 2.6. 次を求めよ.
(1) 2 + 3 i =
(2)
√
2 − 2i =
(3) −3 i =
(4) 7 =
次の (1), (2) の性質に注意して複素数の計算をしてみよう.
√
(1) i = −1 で, i2 = −1.
1
a − bi
a
b
− 2
i
(2)
=
= 2
a + bi
(a + bi)(a − bi)
a + b2
a + b2
すなわち, 複素数の四則演算は, まず i を文字と思って計算し, i2 が出てきたら −1 と置き換えればよい. 分母に
虚数が出てきた場合は, (2) を使って有理化と同じ要領で分母から i を追い払う.
例 2.7. (1)
(2 + i) + (−3 + 4i)
(2) (1 − 2i)(4 + 3i)
解 (1) (2 + i) + (−3 + 4i) = (2 − 3) + (1 + 4)i = −1 + 5i. (実数部分と虚数部分のそれぞれの計算をする)
(2) (1 − 2i)(4 + 3i) = 4 + 3i − 8i − 6i2 = 4 + 6 + (3 − 8)i = 10 − 5i. (i2 = −1 を用いて計算する)
問 2.8. 次の計算をせよ.(1) (2 + i) − (−3 + 4i)
(2) (3 + 2i) + (−1 + 4i)
例 2.9. 次の式を満たす数 z を求めよ.
1
1 1
(1) ( + i) + z = + i
(2) (1 + i)z = 2 + i
3
2 4
1 1
1
1 1
1
1 3
解 (1) z = ( + i) − ( + i) = ( − ) + ( − 1)i = − i.
2 4
3
2 3
4
6 4
2+i
(2 + i)(1 − i)
(2 + 1) + i(−2 + 1)
3−i
(2) z =
=
=
=
.
1+i
(1 + i)(1 − i)
1+1
2
(割り算をして,分母の共役複素数を分子,分母に掛ける)
(3)
3 − 2i
= (2 − i)2
z
(引き算をして,z を求める)
(3)
3 − 2i
= (2 − i)2
z
=⇒ (3 − 2i) = (2 − i)2 z. (両辺に z を掛ける)
3 − 2i
=⇒ z =
. (割り算をする)
(2 − i)2
(3 − 2i)(2 + i)2
(3 − 2i)(3 + 4i)
(9 + 8) + (12 − 6)i
=⇒ z =
=
=
2
2
2
(2 − i) (2 + i)
(4 + 1)
25
=
17 + 6i
. (分母の共役複素数を分子,分母に掛ける)
25
7
(3) (3 − 2i)(1 − 4i)
問 2.10. 次の数 z を求めよ.
√
√
2 1
1
2
(1) (
+ i) + 2z = +
i
3
3
5
5
√
3
2
2
3
(2) ( + √ i) − z = +
i
2
5
4
3
問 2.11. 次の数 z を求めよ.
√
(1) iz = 5
(2) (1 + 2 − i)z = 1 + i
3
√
z
√ = 2+i
1 − 2i
(3)
複素数と平面
実数 (real number) は数直線 (number line) として, 絵に描くことができた. もう少し厳密には, 実数と数直線上
の点全体とが 1 対 1 に対応していると言うことができる. それでは, 実数をその一部として含む複素数は, どの様
に絵として表す事ができるのであろうか.
この節では, 複素数が平面上の点全体と 1 対 1 に対応している事を見る. したがって, 平面上の点をそのまま複
素数と考えてもよいのである. 別の言い方をすれば, 平面上の点に対して特別な四則演算を定めたものが複素数で
あると考えることができ, 平面をこの様に捉える時, 特に複素数平面 (complex plane) と呼ぶ. この演算が絵とし
てどの様に表現されるかは, 次章で詳しく見ることになる.
複素数は z や w などの記号で表わされることが多い.複素数 z が
z = a + bi
と表わされているとき z の実部 a を Re z で表し,虚部 b を Im z で表す.すなわち,
z = a + bi
のとき
a = Re z,
b = Im z
である.
問 3.1. 共役複素数 z¯ を用いると,
Re z =
1
(z + z¯),
2
Im z =
1
(z − z¯)
2
と表せる事を確かめよ.
問 3.2. (1) Re(3 + i) =
(2) Re(−2) =
;
; Im(3 + i) =
Im(−2) =
(3) Re(3 i) =
;
Im(3 i) =
複素数 z = a + b i を座標平面上の点 P(a, b) に対応させると, 複素数はすべて座標平面上の点として図示でき
ることになる.逆に, 座標平面上の点 P(a, b) に対して, 唯一の複素数 z = a + b i が定まる. これを, 座標平面と複
素数全体の集合には一対一対応があると表現する.
複素数 z = a + b i を表す点 P を P(z) または P(a + b i) などと表す.
座標平面上の点 P(a, b) を複素数 z = a + b i と対応させた平面を複素平面 (complex plane) という.複素数平面
またはガウス平面 (Gaussian plane) ともいう.複素平面では x 軸を実軸 (real axis),y 軸を虚軸 (imaginary axis)
と呼ぶ.
複素数平面には, 実数に対応する数直線が実軸として含まれており, その拡張となっていることに注意してほしい.
複素数 z = a + b i に対して,z の共役複素数 z¯ = a − b i を図示すると図 3 のようになる.
8
この点を
P(z) または P(a + b i)
..
虚軸
.
y .............
...
...
...
...
...
...
....
...
...
..
...
..........
...
...
...
...............................
.
•
−
..
....
..
...
...
..
...
...
...
..
...
...
..
...
..
...
...
...
.
......................................................................................................|..................................................................
....
..
.
または P(a, b) と表す
z = a + bi
b
a
O
x
実軸
図 2: 複素平面 (complex plane)
y ............
..
...
b −....... . . . . . . . . . . . . . . . . .•...................z = a + b i
..
.. ....
...
.. ....
..
.. ....
...
. ....
....
..........................................................................|................................................
...
.. ...
...
.. ....
...
.
...
... ....
...
.. .........
.
.
...
...
...
... . . . . . . . . . . . . . . . . .•
−
...
..
x 実軸
a
O
−b
z = a − bi
z と z は実軸に関して対称である
図 3: 共役複素数
問 3.3. 次の複素数とそれぞれの共役複素数を複素平面上に図示せよ.
(1) 2 − 3 i
(2) −4
(3) −2 i
(4) 0
問 3.4. z = a + b i の表す点を P(z) とするとき, P と x 軸, y 軸 および原点 O と対称な点 P , P および P
を z と z を用いて表せ. 図 4 を参考にせよ.
.... y
.........
...
b
....
..
.. P(z)
•
−
P •......................................
...
.
.
..
..
..
...
..
..
....
..
..
...
...........................|..............................................................................................................|............................................
..
..
...
.
.
...
...
....
..
..
...
...
..
......................................
..
•
•
−
...
....
.
−a
P
O
a
−b
P
x
図 4: z と対称な点を求める
問 3.5. 任意の複素数 z, w に対して, 次の等式を証明せよ.
(1) (z) = z
(2) z + w = z + w
(3) z w = z w
さて,平面上の点は, (x, y) 座標の他にも, 原点からの距離と方角でも定めることができる. (例えば, 地図上のあ
る位置は, 現在地点からの距離と方位で指定することができる) これを複素数 z = a + b i の場合にも当てはめて
みよう.
√
a2 + b2 , x 軸の正の方向と線分 Oz とのなす角を θ とする.(但し,
r = 0 の時は, θ は任意の実数でよいとする.) このとき原点を中心にして x 軸の正の方向から図 5 のように左回り
b
a
, sin θ =
にはかったとき正の値,逆に右回りにはかったとき負の値をとることにする.すると, cos θ =
r
r
図 5 の様に, 原点 O と z の距離を r =
9
..
.........
...
....
..
...
...
..
... . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ............•
−
.. ... .
...
... ....... ..
...
... ...........
.
...
.
.
...
.
...
... ...........
...
..
..
...
......
.
.
.
...
.
.
.
...
.
.. ..........
.
..
...
....
..
...
..
.. ............
.
...
.
.. .........
.
...
...
. ...
... ... ...........
...
... ........... ..........
.
............... ....
.................................................................................................................................|...............................................................................
...
...
....
y
z = a + bi
= r(cos θ + i sin θ)
b
r
θ
O
a
x
図 5: 複素数の極座標による表示
なので
(
z = a + bi = r
)
a
b
+
i = r(cos θ + i sin θ)
r
r
である.すなわち
(r ≥ 0)
z = r(cos θ + i sin θ)
と表示できることになる.これを複素数の極形式 (polar form) といい, (r, θ) を z の極座標 (polar coordinates) と
いう.
√
r = a2 + b2 を複素数 z = a + b i の絶対値 (absolute value) といい |z| で表す.θ を z の偏角 (argument) と
いい arg z で表す.すなわち,
定義 3.6. z = a + b i = r(cos θ + i sin θ) のとき
|z| = r =
√
a2 + b2 ,
arg z = θ
と定める.
注意 z が実数 z = a + 0i の時, |z| =
√
a2 + 02 = |a| となるから, 複素数の絶対値の定義は, 実数の絶対値の定義
の拡張になっている.
注意 1 つの複素数 z に対して,偏角はただ 1 通りには定まらない.例えば, i = 1 · (cos π2 + sin π2 ) = 1 · (cos 5π
2 +
( 3π )
( 3π )
5π
sin 2 ) = 1 · (cos − 2 + sin − 2 ) と何通りもの極形式を持つ.
一般に, z = 0 の 1 つの偏角を θ0 とすると
arg z = θ0 + 2 nπ
(n は整数)
と表わされる.
問 3.7. z = a + b i のとき積 z z を,a と b を用いて表し, |z| =
√
z z¯ を示せ. また, これを用いて |z1 ||z2 | = |z1 z2 |
を示せ.
問 3.8. 次の複素数を平面上に表示し,それらの絶対値と偏角を求めよ.ただし,偏角 θ の範囲は −π < θ ≤ π
とする.
(1) z1 =
√
3 +i
(2) z2 = 1 + i
(4) z4 = (−1 + i)(1 + i)
(5) z5 = 3 i
(3) z3 = −1 +
√
3i
(6) z6 = −i
10
y ..............
..
...
..
2
...
...
−
... . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .............•
2
... ..
...
.......
.
.
.
.
.
.
...
.
..
..
.......
...
.......
.
.
.
.
.
.
...
.
..
...
.......
...
.......
...
...
.......
.......
..
...
.......
.
.
.
.
.
...
.
.....
.
.
...
.
.
.
...
.
1...............
..
...
..
.......
... . . . . . . . . .•
−
...
1
...
...
...
..
..
...
..
..
...
...
.
..........................................................|..................................................................................................................|....................................
....
..
.
P
d
z = c + di
z1 と z2 の距離は複素数の
P
b
O
絶対値を用いて表される
z = a + bi
a
c
x
図 6: 2 つの複素数の間の距離を求めてみよう
問 3.9. z1 と z2 を 2 つの複素数とする.複素平面上で P1 (z1 ) と P2 (z2 ) の距離を複素数の絶対値を用いて表せ.
図 6 を参考にせよ.
問 3.10. 複素平面において, 次の 2 点間の距離を求めよ.
(1) P1 (1 + 2 i), P2 (3 + i)
(2) P1 (3 − i), P2 (2 + 3 i)
問 3.11. m, n を正の数とし,z1 , z2 を複素数とする.複素平面上の 2 点 P(z1 ) と Q(z2 ) を結ぶ線分 PQ を m : n
に内分する点 R と外分する点 S を z1 と z2 を用いて表せ.
例 3.12. z = 0 を複素数とするとき
解
z
1
z
= 2 であることを示せ.
z
|z|
|z|2
z
zz
= 1 なので
2 =
2 =
|z|
|z|
|z|2
z
1
=
である.
z
|z|2
問 3.13. z1 = a + b i, z2 = c + d i = 0 のとき
ac + bd
bc − ad
z1
= 2
+ 2
i
z2
c + d2
c + d2
であることを示せ.
問 3.14. 任意の複素数 z, z , w, w , u について次の式が成立することを証明せよ.
(1) zw = wz
(2) z(w + w ) = zw + zw ;
(z + z )w = zw + z w
(3) (zw)u = z(wu)
(4) zw = 0 ⇔ z = 0 または w = 0
最後に, 図形と複素数との関連を探る次章の先取りとして, 三角形に関する初等幾何の定理が, 平面と複素数の
対応を用いて証明される事を見る. 単なる式の計算だけではなく, 図形を書いて意味を考えてみて欲しい.
問 3.15. 任意の複素数 z と w に対して次の式が成立することを証明せよ.
(1) 三角不等式
(2) 中線定理
|z + w| ≤ |z| + |w|
|z + w|2 + |z − w|2 = 2(|z|2 + |w|2 )
11
[第2章] 複素数と図形
4
複素数の四則演算と幾何学
複素数は平面上の点として表示できることを学んだが,このように複素数と平面上の点を同一視するとき,複
素数の四則演算 (+, −, ×, ÷) は幾何的 (図形的) な操作として認識できることがわかるのである.特に,極形式を
用いることにより,積 (×) と商 (÷) が図形の回転に関係しているということが判明する.実は,複素数を使用す
る大きな利点がここにある.以下, 複素数の四則演算 (+, −, ×, ÷) のもつ図形的な性質を詳しく調べてみよう.
複素数の和と差 :
2 つの複素数 z1 = a + b i と z2 = c + d i の和 z1 + z2 と差 z1 − z2 は次のように定義されて
いる.
z1 + z2 = (a + b i) + (c + d i) = a + c + (b + d) i
z1 − z2 = (a + b i) − (c + d i) = a − c + (b − d) i
複素平面上で z1 の表す点を P1 とし,z2 の表す点を P2 とすると z1 + z2 の表す点 P は,図 7 のように OP1 と
OP2 を 2 辺とする平行四辺形のもう 1 つの頂点である.
.... y
........
..
P
.
b + d −........ ..................................................................................................•..... z1 + z2 = a + c + (b + d) i
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......................
.....................•
..................................................................|...........................................|.................................................................|.................................................
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d
z = c + di
P
b
O
複素数 z1 と z2 の和 z1 + z2 は
平行四辺形 P1 OP2 P の第 4 の
頂点 P にある
P
c
z =a + b i
a
a+c
x
図 7: 複素数の和を図示すると上のようになる
問 4.1. 前節の問 3.15 の三角不等式を上の図を用いて説明せよ.即ち,任意の複素数 z1 と z2 に対して次の式
が成立することを, 上の図を用いて説明せよ.
|z1 + z2 | ≤ |z1 | + |z2 |
例 4.2. z1 − z2 の表す点 P(z1 − z2 ) は複素平面上で P1 (z1 ), P2 (z2 ) とどのような位置関係にあるか平行四辺形
を用いて説明せよ.図 8 を参考にせよ.
問 4.3. 複素平面上に4点 A(1 + i), B(3 + 2i), C(4 + 5i), D(z) がある.四角形 ABCD が平行四辺形である時,
複素数 z の値を求めよ.
複素数の積と商 :
前章でも 2 つの複素数の積および商を扱ったが,ここでもう一度思い出そう.2 つの複素数
z1 = a + b i と z2 = c + d i の積は次のように定義されている.
z1 z2 = (a + b i)(c + d i) = ac − bd + (ad + bc) i
これは中央の式を展開して,i2 = −1 とおき整理した式と同じである.
2 つの複素数 z1 と z2 の積の図形的な意味を知るために,z1 と z2 を極形式を用いて
z1 = r1 (cos θ1 + i sin θ1 ),
z2 = r2 (cos θ2 + i sin θ2 )
12
y .............
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2
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2
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..........................................................|.........................|.......................................................|.................................
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1
2
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1
2
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.. ........
..........
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. .........................
...
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1
2 •.................................
−
...
...
...
2
....
P
d
z = c + di
P
b
−c
z = a + bi
a−c
O
P
b−d
P
c
x
z − z = a − c + (b − d) i
複素数 z と z の差 z1 − z2 は
平行四辺形 P OP2 P の第 4 の
頂点 P にある
−d
−z = −c − d i
a
図 8: 複素数の差を図示すると上のようになる
と表示しておこう.このとき,
z1 z2
= r1 r2 (cos θ1 + i sin θ1 )(cos θ2 + i sin θ2 )
= r1 r2 {cos θ1 cos θ2 − sin θ1 sin θ2 + i(sin θ1 cos θ2 + cos θ1 sin θ2 )}
= r1 r2 {cos(θ1 + θ2 ) + i sin(θ1 + θ2 )}
である. 故に
z1 z2 = r1 r2 {cos(θ1 + θ2 ) + i sin(θ1 + θ2 )}
である.ここで r1 = |z1 |, r2 = |z2 | であるので,z1 と z2 の積 z1 z2 の絶対値は r1 r2 = |z1 ||z2 | であり,z1 z2 の
偏角は z1 の偏角 θ1 と z2 の偏角 θ2 の和 θ1 + θ2 であることが分る.すなわち,
|z1 z2 | = |z1 ||z2 |,
arg(z1 z2 ) = arg z1 + arg z2
となっている.この関係を複素平面上で図示してみよう.図 9 のように, z1 , z2 , z1 z2 を表す点をそれぞれ P1 ,
P
z z
..
.•
1 2
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1
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2.......•..
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2
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...
1
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...
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......•
.... 1.....
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.. ..................
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1
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......................... 2 .... 1
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.................................................................................................................................................................|....................................................................................................................
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..
..
y ..............
OEP と
P
z
P
θ
θ
O
OP2 P は相似である
z
θ
E
x
1
図 9: 複素数の積
( )
1
P2 , P とし,点
を E とおくと,∠ POP2 = θ1 , OP = r1 r2 なので,
0
13
OEP1 と
OP2 P は相似な三角形
であることがわかる.したがって P(z1 z2 ) は点 P2 (z2 ) を原点を中心にして θ1 だけ回転し,P2 (z2 ) と原点の距離
r2 を r1 倍すれば得られることになる.
問 4.4. z = r(cos θ + i sin θ) のとき, 次の複素数の絶対値と偏角を求めよ. ただし, r > 0 である.
(1) −iz
(2) −2 z
(3) (1 + i)z
次に, z = r(cos θ + i sin θ) のとき,z の逆数
1
z
1
を求めてみよう.
z
=
1
cos θ − i sin θ
1
=
·
r
r (cos θ + i sin θ)
(cos θ + i sin θ)(cos θ − i sin θ)
=
1 cos(−θ) + i sin(−θ)
1
·
= {cos(−θ) + i sin(−θ)}
r
r
cos2 θ + sin2 θ
1
1
1
の絶対値は
であり, の偏角は −θ であることが分る.これ
z
r
z
したがって, z = r(cos θ + i sin θ) のとき,
を図示してみると図 10 のようになる.
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.....
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...•
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............................................................................................................................................................................................................
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... .. ...................
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......
...
......
.. .. ....
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..
•
...
....
..
.
y
z = r(cos θ + i sin θ)
r
θ
−θ
O
1
r
x
1
1
= {cos(−θ) + i sin(−θ)}
z
r
図 10: 複素数の逆数
例 4.5. z1 = r1 (cos θ1 + i sin θ1 ), z2 = r2 (cos θ2 + i sin θ2 ) のとき, 商
z
せ.また, 1 の偏角を θ1 と θ2 を用いて表せ.
z2
z1
z2
の絶対値を r1 と r2 を用いて表
1
z1
1
r
= z1 ·
= r1 (cos θ1 + i sin θ1 ) ·
{cos(−θ2 ) + i sin(−θ2 )} = 1 {cos(θ1 − θ2 ) + i sin(θ1 − θ2 )}. した
z2
r2
r2
z2
z1
r1
|z1 |
z1
がって
の絶対値は
=
であり,
の偏角は θ1 − θ2 = arg z1 − arg z2 である.
z2
r2
|z2 |
z2
解
z1
|z1 |
,
=
z2
|z2 |
(
arg
z1
z2
)
= arg z1 − arg z2
という公式が得られたことになる. 複素数の商を図示すると図 11 のようになる.
問 4.6. P(z1 ), Q(z2 ), R(z3 ) を複素平面上の異なる 3 点とする. 線分 QR と線分 QP が作る角 (図 12 の θ) を
arg を用いて表せ.
例 4.7. 絶対値 1 の複素数を他の複素数に掛けたとき, どのようになるか調べてみよう. w を絶対値 1 の複素数と
し, z を任意の複素数とすると,
w = cos α + i sin α,
z = r(cos θ + i sin θ)
14
y ............
OEP と
2
....
...
..
...
...
2.
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•.
...
2
2
2
...... 2
.. ..
...
.. .....
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1
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1
1
1
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... ...................
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... ... ........... 2....................
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................................................................................................................|....................................................................................................................
.. .....
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... ....... ........
...
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2
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...
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...
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.....
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..... ....
...
..... ..
1
1
.....
...
•
...
1
2
....
..
2
2
..
P
z = r (cos θ + i sin θ )
P
θ
z = r (cos θ + i sin θ1 )
E
θ
−θ
O
OPP1 は相似である
x
1
z
r
= {cos(θ − θ ) + i sin(θ1 − θ2 )}
z
r
P
図 11: 複素数の商は上の図のような図形的な意味をもつ
y .............
P
.
.
....
....•
...
.......
1
......
..
......
.
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.
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.......
...
......
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...
...... .......
...
....... ......
......
..
...
.................
.
•
...
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................
.............
...
.............
2
...
....•
.
...
...
3
...
...
...
......................................................................................................................................................................
...
...
.
Q
z
θ
z
R
z
x
O
図 12: θ は複素数の偏角 arg を用いて表される
と書ける. このとき,
wz = zw
= r(cos θ + i sin θ)(cos α + i sin α)
= r{cos(θ + α) + i sin(θ + α)}
なので,w = cos α + i sin α を z = r(cos θ + i sin θ) に掛けると,z を原点のまわりに角度 α だけ回転した複素
数が得られることが分かる.
問 4.8. 複素数 z = r(cos θ + i sin θ) に対して iz, −z, −iz はそれぞれ z をどのように移動した点を表わすか?
π
だけ回転した点を表す複素数を求めよ.
6
π
π
π
だけ回転するので,w = cos
+ i sin
を掛ければよい.従って求める複素数は
解 原点のまわりに
6
6
6
(
√
√
π)
π
+ i sin
(4 + 2 i) = 2 3 − 1 + (2 + 3)i
wz = cos
6
6
例 4.9. z = 4 + 2 i を原点のまわりに
となる.
例 4.10. 複素平面上の 4 点 P(z1 ),Q(z2 ),R(z3 ),S(z4 ) が,正方形の 4 頂点になっているとする.(ただし P,Q,R,S
の順で反時計回りに並んでいるとする.) このとき,z3 及び z4 を,z1 , z2 を用いて表せ.
−→
−→
π
だけ回転させてできるベクトルと等しい.従って
解 QR は,PQ を P の周りに
2
(
π
π)
z3 − z2 = cos + i sin
(z2 − z1 ) = i(z2 − z1 )
2
2
である.よって
z3 = i(z2 − z1 ) + z2 = −iz1 + (i + 1)z2
15
−
→
−→
π
となる.また SP は,PQ を P の周りに − だけ回転させてできるベクトルに等しい.従って
2
(
( π)
( π ))
z1 − z4 = cos −
+ i sin −
(z2 − z1 ) = −i(z2 − z1 )
2
2
である.よって
z4 = z1 + i(z2 − z1 ) = (1 − i)z1 + iz2
となる.
問 4.11. 複素平面上の 3 点 2 + 3i, 6 + 5i, z が正三角形をなすように z の値を定めよ.
16
[第3章] ド・モアブルの定理と n 乗根
5
ド・モアブルの定理
絶対値が 1 の複素数 z = cos θ + i sin θ を考えよう.z n を普通に計算しようとすると,(cos θ + i sin θ)n を展開
することになり,一見非常に複雑な式になるように見える.しかし,実はこれから述べる定理 (ド・モアブルの定
理) が成り立ち,極めて簡単な式になる.このド・モアブルの定理は,n 乗の計算ばかりでなく,次節で述べる n
乗根の計算においても大変な威力を発揮する.
複素数の積の公式
(cos θ1 + i sin θ1 )(cos θ2 + i sin θ2 ) = cos(θ1 + θ2 ) + i sin(θ1 + θ2 )
において θ1 = θ2 = θ とおくと
(cos θ + i sin θ)2 = cos 2θ + i sin 2θ
となる.さらに
(cos θ + i sin θ)3
= (cos θ + i sin θ)2 (cos θ + i sin θ)
= (cos 2θ + i sin 2θ)(cos θ + i sin θ)
= cos(2θ + θ) + i sin(2θ + θ)
= cos 3θ + i sin 3θ
である.これを続けて,一般に,任意の自然数 n について
(cos θ + i sin θ)n = cos nθ + i sin nθ
が得られる.さらに,任意の自然数 n について
(cos θ + i sin θ)−n
=
=
1
1
=
(cos θ + i sin θ)n
cos nθ + i sin nθ
cos(−nθ) + i sin(−nθ)
である.したがって次の定理が成立する (n = 0 のときも成立することを各自確かめよ.)
定理 5.1. (ド・モアブルの定理) n を任意の整数とするとき次の公式が成り立つ.
(cos θ + i sin θ)n = cos nθ + i sin nθ
問 5.2. 次の計算をせよ.
√
(2) (1 − 3i)−9
√
問 5.3. n を自然数とするとき, (1 + 3i)3n の値を求めよ.
(1) (1 + i)7
(3) (2 − 2i)−17
問 5.4. 次の式を簡単にせよ.
(2 cos 3θ + 2i sin 3θ)n (3 cos 2θ + 3i sin 2θ)2n
(cos θ + i sin θ)7n
例 5.5. ド・モアブルの定理は上のような計算や次節の n 乗根の計算に役立つが,その他に次のような応用もあ
る.まず,ド・モアブルの定理により
(cos θ + i sin θ)2 = cos 2θ + i sin 2θ
17
である.一方 (cos θ + i sin θ)2 を展開して計算すると
(cos θ + i sin θ)2 = (cos2 θ − sin2 θ) + (2 sin θ cos θ)i
となる.従って
cos 2θ + i sin 2θ = (cos2 θ − sin2 θ) + (2 sin θ cos θ)i
となる.ここで両辺の実部,虚部を比較すると
cos 2θ = cos2 θ − sin2 θ,
sin 2θ = 2 sin θ cos θ
を得る.これは cos, sin の 2 倍角の公式に他ならない.全く同様の方法で,3 倍角の公式,4 倍角の公式,5 倍角
の公式 , . . . といくらでも導くことができる.
問 5.6. ド・モアブルの定理を用いて cos, sin の 3 倍角の公式を導け.
6
1 の n 乗根
複素数 α と自然数 n に対して,方程式 z n = α の解 z を α の n 乗根という.ここでは, 1 の n 乗根,すな
わち z n = 1 の解について考えてみよう.この解を求める際,上でやった極座標表示とド・モアブルの定理が活
躍する.
方程式 z n = 1 の両辺を極座標で表そう.z を極座標表示により z = r(cos θ + i sin θ) と表わしておくと,ド・
モアブルの定理により,左辺は
z n = {r(cos θ + i sin θ)}n = rn (cos θ + i sin θ)n = rn (cos nθ + i sin nθ)
となる.また右辺は 1 = 1(cos 0 + i sin 0) であるから,方程式 z n = 1 は次のようになる.
rn (cos nθ + i sin nθ) = 1(cos 0 + i sin 0)
両辺の絶対値を比較すると rn = 1 である.r ≥ 0 なので r = 1 を得る.また両辺の偏角を比較すると
nθ = 2πk (k は任意の整数)
2πk
である.よって
n
(
)
(
)
2πk
2πk
z = cos
+ i sin
n
n
を得る.(nθ = 0 の時だけとは限らないことに注意!) 従って θ =
を得る.
ここで,k は任意の整数であった.k を決めるごとに上式の右辺の値が定まるので,この値を zk と書こう.複
素平面上に z0 , z1 , z2 , · · · , zn−1 を順番にプロットしてみると,それらは単位円周上に等間隔に並ぶことがわかる.
(例えば n = 3 の場合の z0 , z1 , z2 を図示してみると図 13 のようになる.) k = n を上式に代入すると,cos, sin
の中身は 2π となって,円を丁度一周したことになり,zn は z0 と同じ点 (つまり 1) に戻ることがわかる.以降,
zn+1 , zn+2 , zn+3 . . . をプロットしていっても,z1 , z2 , z3 . . . と同じ点が出てくるだけで,異なる点は出てこない.
したがって次の定理が得られた.
定理 6.1. 1 の n 乗根は
(
cos
2πk
n
)
(
+ i sin
2πk
n
)
(k = 0, 1, 2, · · · , n − 1)
の n 個である.
18
y ............
..
...
..
...
.
......................................
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.......
1...........
......
....
•
.
......
.... ....
.
.
.
...
.
.....
.
...
.....
.....
...
...
....
...
.
.
.
.
.
.
...
...
.
.
...
.
.
.
...
2π
... .. ..
..
...
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
............ .. .........
...
..................... ...... 3
....
.
.
.
.
...
.
.
.
.
.
4π
.
.
.
.
...
.
.
.
.
.... ...
...
... ..... ....
...
.
.
.
... ..
..
.....
..
..
3
.
.
.
......................................................................................................................................................•
..............0
..........................
...
... ... ...
...
...
. .
................. ....
...
....
.
.
.
...
.
.
.
. .
...
...
... ...
...
..
...
...
...
...
...
...
...
...
..
.
.....
.
.
.
.
.
.
.
.
..
.....
....
.....
...... ....
.....
.
........
•............... ..... ......................
.............................
2
.....
..
.
z
−1
i
z
1
O
x
z
−i
(
)
(
)
2πk
2πk
zk = cos
+ i sin
3
3
(k = 0, 1, 2)
図 13: 1 の 3 乗根 z0 , z1 , z2 は, 上のように単位円周上に図示される
また,上で説明したことから,定理 6.1 で求めた 1 の n 乗根 z0 , z1 , z2 , · · · , zn−1 は,単位円周上で 1 を 1 つ
の頂点とする正 n 角形の頂点の上にある.(例えば 1 の 3 乗根 z0 , z1 , z2 は図 13 のようになる.)
問 6.2. 次の方程式の解を求めよ. (1) z 6 = 1
(2) z 8 = 1
例 6.3. 方程式 z 3 = 8 の解を求めよ.
解 方程式の両辺を極座標表示する.z を極座標表示により z = r(cos θ + i sin θ) と表しておくと,ド・モアブル
の定理より z 3 = r3 (cos 3θ + i sin 3θ) である.よって,方程式 z 3 = 8 は次のようになる.
r3 (cos 3θ + i sin 3θ) = 8(cos 0 + i sin 0)
両辺の絶対値を比較すると r3 = 8 である.従って r = 2 を得る.また,偏角を比較すると
3θ = 2πk (k は任意の整数)
となる.従って θ =
2πk
である.よって
3
(
(
)
(
))
2πk
2πk
z = 2 cos
+ i sin
3
3
を得る.k = 0, 1, 2 の時の計 3 個が全ての解である.これらを z0 , z1 , z2 と書くと,
z0 = 2 (cos 0 + i sin 0) = 2
)
(
√
2π
2π
+ i sin
= −1 + 3
z1 = 2 cos
3
3
(
)
√
4π
4π
z2 = 2 cos
+ i sin
= −1 − 3
3
3
を得る.
√
例 6.4. 方程式 z 4 = 2 + 2 3i の解を求めよ.
解 方程式の両辺を極座標表示する.z を極座標表示により z = r(cos θ + i sin θ) と表しておくと,ド・モアブルの
(
√
√
π
π)
定理より z 4 = r4 (cos 4θ + i sin 4θ) である.また,2 + 2 3i を極座標表示すると 2 + 2 3i = 4 cos + i sin
3
3
である.よって方程式は次のようになる.
(
π
π)
r4 (cos 4θ + i sin 4θ) = 4 cos + i sin
3
3
19
両辺の絶対値を比較すると r4 = 4 である.r ≥ 0 より r =
4θ =
となる.従って θ =
√
2 を得る.また,偏角を比較すると
π
+ 2πk (k は任意の整数)
3
π
πk
+
である.よって
12
2
(
)
(
))
√ (
π
πk
π
πk
+
+ i sin
+
z = 2 cos
12
2
12
2
を得る.k = 0, 1, 2, 3 の時の計 4 個が全ての解である.これらを z0 , z1 , z2 , z3 と書くと,
)
)
√ (
√ (
π
π
7π
7π
z0 = 2 cos
+ i sin
, z1 = 2 cos
+ i sin
,
12
12
12
12
(
)
)
√ (
√
13π
13π
19π
19π
z2 = 2 cos
+ i sin
, z3 = 2 cos
+ i sin
12
12
12
12
を得る.
問 6.5. 次の方程式の解を求めよ.
(1) z 3 = 54
(2) z 3 = i
(3) z 5 = 1 + i
20
7
参考
ここからは, 講義の本題からは少し離れた発展的な内容や, 歴史的な話題を扱う.
(参考) 複素数と初等整数論
ここでは, 複素数とはなんら関わりの無いように見える整数の問題が, 複素数を用いることで見通しよく解決す
る例を, いくつかの問題を通して見る.
問 7.1. a, b, n を正の整数とする. このとき,
(a2 + b2 )n = x2 + y 2
となる整数 x, y が必ず存在することを示せ.
ヒント: z = a + bi とおくと, 左辺はどうあらわせるかを考えよ.
74 = 52 + 72 である. 13 × 74(= 962) を二つの平方数の和で表せ.
ヒント: z = 2 + 3i, w = 5 + 7i として, |z|2 |w|2 = |zw|2 を用いよ.
問 7.2. 13 = 22 + 32 ,
問 7.3 (難). 4n + 1 の形をした素数は, 必ず平方数の和で表される.
この最後の問題は, ガウス平面の名前の由来ともなっている数学者ガウス (Gauss) の創始した代数的整数論とい
う壮大な理論の入り口となっている. 詳しく知りたい人は, 高木貞二著「初等整数論講義」(共立出版) を参照して
ほしい.
(参考) 複素数の相等
二つの複素数 a + bi, c + di が等しいということを, a = c かつ b = d としたが, これは当たり前のことの様でい
て, 実は「定義」(ルールとして決めること) である.
分数の相等を引き合いに出して, この意味を明らかにしてみよう. 記号にごまかされるといけないので,
b
a
を (a, b)
と書くことにする. この時 2 つの分数 (a, b) と (c, d) が等しいというのは, ad − bc = 0 のことであるから, a = c か
つ b = d の時だけとは限らない. しかし, 複素数の相等については a = c かつ b = d とするのが妥当である. 以下
でそれを説明しよう.
もともと i は x2 = −1 の解として定義された. すなわち, x2 = −1 の解は ±i である. これを素直に拡張するな
ら, (x − a)2 = −b2 の解は, a ± bi と考えられるだろう. ここで, a = 0 とすると, この方程式は x2 = −b2 となるか
ら, その解は ±bi であるので, a = 0 ⇒ ±bi = a ± bi と考えるのが妥当だろう. また, 同様に b = 0 ⇒ a = a ± bi
と考えられる. つまり, a = 0 かつ b = 0 ならば, a ± bi = 0 だといえる.
逆に, a + bi = 0 は, (x − a)2 = −b2 が, 0 という解を持つことだと考えると, (0 − a)2 = −b2 より, a2 + b2 = 0
だから, a = 0, b = 0 となる. まとめると,
a = 0 かつ b = 0 ⇔ a + bi = 0
これから,
a + bi = c + di ⇔ (a − c) + (b − d)i = 0 ⇔ a − c = 0 かつ b − d = 0
となり, 複素数の相等の定義の妥当性を説明できる.
21
(参考) 複素数の大小
実数や整数等の数の特徴的な性質として, 演算の他に大小関係 (order relation) が定まっていることがあげられ
る. 二つの数が与えられれば, どちらが大きいか (または等しいか) 判断することができるし, 沢山数を与えられれ
ば, それを小さい順に並べることができた. それでは, 実数を発展させて新しく生まれた数である複素数にも, 大小
関係を定めることができるのであろうか.
まず, 実数の大小関係はどのようなものだったか復習しよう.
定理 7.4. 任意の実数 a, b に対して, 実数の大小関係は以下の性質を持つ.
1. a ≤ b, a ≥ b の少なくとも一方が成り立つ. また, a ≤ b かつ a ≥ b ⇔ a = b
2. a ≤ b, b ≤ c ならば, a ≤ c
3. a ≤ b のとき, 任意の実数 c について, a + c ≤ b + c
4. a ≤ b, 0 ≤ c のとき, ac ≤ bc
よって, もし複素数に大小関係が入るとするなら, 同様の性質を持つことが望ましい. しかしこれは不可能であ
ることが次の様にして示される.
上のような性質を持つ大小関係があるとして, 矛盾を導き, 背理法で示す.
まず 1 つ目の性質から, i ≤ 0 または i ≥ 0 が成り立つ事が言える.
もし i ≤ 0 と仮定すると, 3 つ目の性質を使って, i ≤ 0 の両辺に −i を加えると,
0 ≤ −i
となる. さらに 4 つ目の性質を使い, この両辺に −i をかけると,
0 ≤ (−i)2 = −1
となり矛盾.
次に 0 ≤ i と仮定する. 4 つ目の性質を使い, 両辺に i をかけると,
0 ≤ i2 = −1
となり矛盾.
結局どちらの場合もありえない. よって複素数には大小関係を入れることが出来ない.
(参考) 代数学の基本定理
次の歴史の項で詳しく述べるが, 複素数という一見人工的な「数」が, 数学において美しく自然であるという認
識を決定付けたのは, ガウス (Gauss) による次の重要な定理である.
定理 7.5. (代数学の基本定理) n を自然数とする.n + 1 個の複素数 an , an−1 , · · · , a1 , a0 (an = 0) を係数とする
x の n 次多項式
an xn + an−1 xn−1 + · · · + a1 x + a0
は,複素数の範囲で n 個の 1 次式の積に因数分解される.すなわち,n 個の複素数 c1 , c2 , · · · , cn が存在して
an xn + an−1 xn−1 + · · · + a1 x + a0 = an (x − c1 )(x − c2 ) · · · (x − cn )
とできる (ここで c1 , c2 , · · · , cn の中には同じ複素数があってもよい).したがって,x の n 次方程式
an xn + an−1 xn−1 + · · · + a1 x + a0 = 0
は複素数の範囲で (重った解も考えて) ちょうど n 個の解 c1 , c2 , · · · , cn を持つ.
22
(参考) 複素数に関する歴史
複素数 (complex number) は 2 次方程式や 3 次方程式の解法と密接に関係している. 2 次方程式や 3 次方程式
は, 古代バビロニア (2400 B.C. ∼ 1350 B.C.) において, 特別なものが既に解かれていることが知られている (カ
ジョリ 「初等数学史」 p. 36 参照). しかし, 複素数が数学的に必要な “数” として認識されはじめたのは, 3 次方
程式の一般的解法が盛んに研究されはじめた 16 世紀以降である. カジョリ 「初等数学史」 p. 317 を読んでこの
間の事情を考えてみよう.
第1節
ルネッサンス時代
. 方程式の代数的解法
77. (i) 16 世紀における代数学上の大発展の一つは,3 次方程式の代数的解法であった.この注目すべき大業の
名誉はイタリア人に帰する.(3 次方程式の幾何学的解法は,すでにアラビア人によって与えられていた.)
3 次方程式解法の最初の成功者は,ポロニャの数学教授シピオ・フェッロ (1465? ∼ 1526 年) である. 彼は
x3 + mx = n の形の 3 次方程式を解いた.しかし 1505 年に弟子のフロリドゥスに教えたということ以外,何も
知られていない.
当時,またはその後も長いあいだ,教師は, 自己発見の新法や, 取り扱い上の新方法をけっして門人以外に知ら
せないで,かたく秘密をまもる習慣であった.それは自己以外の学派に知らせないため,または難問を提出して
競争者である数学者にまさろうとするためであった.この秘密主義の習慣は,発見の優先権について,論争をひ
きおこすことが多かった.それらのうち,もっとも有名なものは,3 次方程式の解法に関する,タルタリアとカル
ダノとの論争である.
(ii) 1530 年にコッラという人が,タルタリアに多くの問題を提出した. そのなかに方程式 x3 + px2 = q に導
けるものがあった. タルタリアはこの問題を解く不完全な方法を発見して,その成功は公表したが, その方法は秘
密にしていた. ところが,フェッロの弟子フロリドゥスは, 方程式 x3 + mx = n の解法を知っていると公言した.
そこでタルタリアは,1535 年 2 月 22 日を期して,おおやけの席上で問題解決の立合を申し込んだ. タルタリア
は非常な苦心の末, 他の形の 3 次方程式の解法も研究し,決戦の日から 10 日前になって, x3 = mx + n の解法
を得た.
決戦には双方から 30 題ずつ提出し, 50 日以内にこれを解き得た問題数の多いほうが勝利者とされた. タルタ
リアは,敵の問題を 2 時間以内に解き終わったのに反し,フロリドゥスは, タルタリアが提出した問題を 1 題も解
くことができなかった.
以来タルタリアは,3 次方程式解法の研究に心血を注ぎ, 1541 年にはその一般解法を会得したのである.
彼の名声は,イタリア全土にひろまった. 知識階級の人々は, この種の公開論争に大きな興味をひかれた. こう
して論争に勝利を得た数学者は,その才能を尊重され,嘆美された. タルタリアは,まだその解法を公表しないで
おこうとした. それというのは,代数学の大著を公刊し,そのなかで 3 次方程式解法を特色ある主要記事として,
名誉を永久に伝えたいと願ったからである.
(iii) ところが,ミラノにジェロニモ・カルダノ (1501 ∼ 1576 年) という学者がいた. 彼はタルタリアの解法を
知りたくてたまらず, 手をかえ品をかえて懇望し,ついに儀式正しい秘密を厳守する約束をもって, タルタリアか
らその解法を得た. カルダノは,1545 年になって, 数学書『大なる術』〈Ars Magna〉を出版し,そのなかにこの
解法を編入したのである.約束を無視されたタルタリアは,おどろきのあまり, ほとんど気が狂わんばかりになっ
た. しかし,いまとなってはいたしかたもなく, 彼がとった第一歩は,発見の歴史を書くことであった. しかも根
本的にカルダノを糾弾しようとして,彼と彼の門人フェラリに挑戦したのである.
タルタリアは,問題解法の能力は優秀であったが,しかし不公平に取り扱われた.すなわち 16 世紀における代
数学上もっともおもな貢献者の名は忘却されて,3 次方程式の解法発見は,カルダノの名で知られることになった
のである.もちろん,カルダノはすぐれた数学者である. しかし 3 次方程式解法の発見に彼の名を結びつけるこ
とは,歴史上の大きなあやまりであり,その上タルタリアの天才をけがすことになるのである.
23
78. (i) 3 次方程式の解法に成功してからは,数学者の心が鼓舞され,高次方程式解法の方面に異常な努力が払
われた. 4 次方程式の解法は, カルダノの弟子ロドヴィコ・フェラリによって成就された. カルダノは, 1545 年の
『大なる術』のなかで, この光彩ある発見を喜んで公表した. カルダノが真の発見者でないのに 3 次方程式の発見
者と呼ばれているように, 4 次方程式もまた発見者でないボムベッリの名をもってときどき呼ばれている. (以上,
pp. 317–320)
∗∗∗∗∗∗∗
ルネッサンス時代にもどると, ここにおもしろいことを観察することができる. カルダノは彼の著書のなかで,
方程式の負根について着目し (負根を「虚構のもの」〈 fictitious 〉 と呼び, 正根を「真正のもの」〈 real 〉と呼
んだ),ある数字係数の 3 次方程式の 3 根を全部求めることができたのである (それ以前には, まだかつて,どん
な方程式についても,2 根より多くは求められなかった).
彼の初期の著書では,虚根は不可能として,これを排斥したのであったが,
『大なる術』のなかでは,つぎの問
題を解くにあたって,大胆な思想を発表している.
すなわち「10 を 2 部分に分けて,その積を 40 とせよ.
」 答として
5+
√
−15
と
5−
√
−15
をとり,これを相乗じて 25 + 15 = 40 とした.
われわれは,ここにいたってはじめて,インド人以上にこの方向の展開がなしとげられたことを見るのである.
虚数についての進歩した見解は,またポロニャのラファエロ・ボンベッリによって示された. 彼は 1572 年に出
版した代数書のなかで,3 次方程式が,いわゆる「既約の場合」に,3 根として実数を与えることを認めたのであ
る.(以上, pp. 322–323)
III. 虚数,代数学の原則
√
18 世紀末期の主要な問題は, 虚数 −1 の図的表示とその説明とであった. 負数の場合のように, 虚数もこれを
目の前に図示できるまでは, その理論を十分に展開することができなかった.それでニュートン, デカルト, オイ
ラー時代には, 虚数はなお代数的虚構とされていたのである.
十分成功した図形的表示は, はじめてノルウェーの測量家カスパール・ウェッセルの『デンマーク科学学士院記
事』所載の論文(1797 年に書かれ, 1799 年に出版)と,ジュネーヴのジャン・ロべ−ル・アルガン (1768∼1822
年)の有名な『幾何学的作図による虚量表示についての試論』〈Essai,1806 年出版〉によって公表された.
しかしそれらの論文はほとんど人目を引かなかった.そしてゲッティンゲンの偉大なカール・フリードリッヒ・
√
ガウス (1777–1855 年,71 項)にいたって,はじめて,虚数についての最後の故障が打破された. ガウスは −1
を 1 とは独立した座標の単位にとり,a + ib を「複素数」として導入したのであった.(注 : ガウスは 1799 年の
論文において, 「代数方程式はかならず根を有する」こと (代数学の基本定理) を証明するさいにも, 虚数の図示を
知っていたけれども, これにふれずに論じ, 1831 年に今日の形で詳述したのである.) (以上, pp. 357–358)
最後に, 3 次方程式の解の公式の意味とその具体的な解法を解説した一文を, 編集代表 吉田稔, 飯島忠 「心を揺
する楽しい授業 話題源数学 上」 p. 64 から引用しておく.
虚数の成立と発達
虚数は, 負の数と同じように, 方程式の解法 —— 方程式の係数に四則と開方の演算を有限回施して根を表すこ
と —— を起源としている.
整数の世界で解ける方程式 x + 1 = 0 も自然数の世界では解けない. 整数の世界では方程式 2x + 1 = 0 は解
けないが, 有理数の世界では解くことができる. このように方程式が「数」の発展を促し, 1 次方程式 ax + b = 0
が常に解ける有理数の範囲まで数の世界を広げてきた. 1 次方程式 ax + b = 0 は, もちろん, 実数の範囲でも解
くことができる. では, 2 次方程式 ax2 + bx + c = 0 は実数の世界で解けるであろうか. 否である. 確かに, 実係
24
数の 2 次方程式の中には, 実数の範囲内に解をもたないものがある. この場合には, 根はない, と言いきってしまえ
ば, 解法の探究はそれで終わりであった. たとえ, 形式的な解として虚数が導入されたとしても, その時代にあって
は, “単なる思考上のもの” であり, 説明の不可能なものとして, 扱われていたに違いない.
ところが, カルダノが 3 次方程式の解の公式を発見 (1545) してから, 事情は変わった. なぜなら, この方法では
3 根とも実数になる場合でも, 複素数の立方根を求めねばならず, カルダノの公式は, 解の表示に虚数を必要とした
からである. 例えば, 方程式 x3 − 6x2 + 11x − 6 = 0 の根は, ω を 1 の 3 乗根とすると,
√
√
3+i 3
2 3−i 3
6+ω
+ω
2
2
x=
3
となる.
これを実数の範囲で代数的に解こうとする試みがなされたが, 不可能であることが示された. すなわち方程式が,
3 つの実根を有するならば, その根を四則算法と実のベキ根を求めることだけによって計算することは不可能であ
ることが分かった. 虚数が本質的に必要となったのである. このような数学的現象を数学者は無視することはでき
ない. したがって, 初めて “虚数” が数学的に知られたのはこの時といえるかもしれない.
この「虚」に対する疑念を払拭するにはガウス(1774∼1855)まで待たねばならなかった. 直交座標を導入した
平面で, 座標が (a, b) である点によって複素数 α = a + b i を表す. 複素数のこの幾何学的表示をアルガンはガウ
スに先んじて公にし, 複素数の絶対値に“ モジュラス ”という名を与えた. ガウスも, 複素数平面を積極的に用い,
この数に複素数(complex number)という名を与えた. 彼が複素数の演算の幾何学的解釈を与えてからは, 複素
数も実数と同様に「数」として認められるようになった. 複素数は 2 次元的な量として把握されているが, むしろ
「作用」としてとらえると, 何かと納得することが多い. さらに, ガウスは, 1799 年, 「代数学の基本定理(複素係
数の代数方程式は複素数の範囲で根をもつ)」の証明に成功し, 複素数を数学にとって不可欠なものとした.
√
一方, デカルト(1637)は方程式の根に“ 実根・虚根 ”の名を付し, オイラー(1777)は i = −1 なる記号
を初めて用いた.
コーシーは定積分の計算の統一的手法として複素数を積極的に使った. いわゆる留数計算である. これが発展し
て関数論におけるコーシーの積分定理となった. こうして, 複素数は徐々に市民権を得ていった.
現在我々が親しんでいる実数の組 (a, b) としての複素数を定義したのは, ハミルトンが最初である. 彼は, 複素
数を更に拡張した四元数を定義している.
サブファイル [3 次方程式] 3 次方程式 ax3 + bx2 + cx + d = 0 を解くには, A = 9abc − 2b3 − 27a2 d, B = b2 − 3ac
とおいて, まず t2 − At + B 3 = 0 の 2 根 t1 , t2 を求める. 次に, ω を 1 の 3 乗根とすれば
√
√
− b + ω 3 t1 + ω 2 3 t2
x=
3a
が初めの方程式の根となる. (Cardano の公式) . ... (略) ...
(筑波大学数学系講師 渡辺公夫)
25
第 II 部
集合と論理
[第4章] 集合と論理
集合の表現
8
3 より大きく 9 より小さい自然数という条件をみたす数の集まりは
4, 5, 6, 7, 8
の 5 個である.このように条件のはっきりしているものの集まりを集合という. 集合に含まれているものをその
集合の要素または元という.要素 x が集合 A に含まれることを, x ∈ A または A
る」と読む.また, x が A に含まれないことを, x ∈ A または A
x と書き,「 x は A に属す
x と書く.
ある条件 P を満たす要素 x の全体を {x|P} と書き, また, x1 , x2 , · · · , xn から成る集合を {x1 , x2 , · · · , xn } の
ようにも書く.
例 8.1.
1 より大きく 8 より小さい自然数の集合 A を表す2つの方法:
A = {2, 3, 4, 5, 6, 7} · · · 要素をすべて書いて表す方法,
A = {x|x は自然数かつ 1 < x < 8} · · · 要素のみたす条件を述べて表す方法.
例 8.2.
一般の数学書では N, Z, Q, R, C は通常次の集合を表す:
N={x|x は自然数 }, Z={x|x は整数 }
Q={x|x は有理数 }, R={x|x は実数 },
C={x|x は複素数 }
すなわち, N は自然数全体の集合, Z は整数全体の集合, Q は有理数全体の集合, R は実数全体, C は複素数全体
の集合である.A = {2, 3, 5, 7} のように有限個の元しか含まない集合を有限集合といい, 実数全体の集合 R など
のように無限に多くの元を含む集合を無限集合という. 集合 S が有限集合であるとき, S の元の個数を n(S) また
は
#
S で表す. 上の集合 A については, n(A) = 4 である.
例 8.3.
A = {x|x ∈ R かつ a ≤ x ≤ b} とおくとき, a ≤ x ≤ b をみたす実数 x に対しては, x ∈ A であり, x < a または
x > b をみたす x に対しては x ∈ A である.この A を [a, b] と書き, 閉区間 [a, b] という.
また, (a, b) = {(x, y)|x ∈ R かつ a < x < b} を 開区間 (a, b)という.
例 8.4.
B = {(x, y)|x2 + y 2 < 4 かつ x, y は実数 } とおくとき, B は平面において, 原点 (0, 0) が中心で半径が 2 の開円板
である.
√
(3, −1) ∈ B
(1, 2) ∈ B,
< 英語 > 集合 : set, 要素(元): element, 属する : belong,
自然数 : natural number, 整数 : integer, 有理数 : rational number,
実数 : real number, 閉区間 : closed interval, 開区間 : open interval
26
9
集合の演算と論証
集合 A の要素がすべて集合 B に含まれるとき, A を B の部分集合といい, A ⊂ B または B ⊃ A と書く.ま
た, A ⊂ B かつ B ⊂ A のとき A = B と書く.要素を 1 つも含まない集合を空集合といい, ∅ と書く. 空集合は
任意の集合の部分集合であると約束する.
2 つの集合 A, B に対して,
A
∪
B = {x|x ∈ A または x ∈ B}
を A と B の和集合, 合併集合または結びという.
A
∩
B = {x|x ∈ A かつ x ∈ B}
を A と B の共通部分, 積集合または交わりという.
例 9.1.
A = {1, 2, 3, 4, 5}, B = {2, 4, 6} とおくとき,
A
∪
B = {1, 2, 3, 4, 5, 6}, A
∩
B = {2, 4}
例 9.2.
A = {x|0 < x < 2}, B = {x|1 < x < 2}, C = {x|1 < x < 3},
D = {x|3 < x < 4} とおくとき,
B ⊂ A, A
∪
C = {x|0 < x < 3}, A
∩
C = {x|1 < x < 2}, A
∩
D=∅
例 9.3.
自然数全体の集合 N, 整数全体の集合 Z, 有理数全体の集合 Q, 実数全体の集合 R に対しては, 次の包含関係が成
り立つ:
N⊂Z⊂Q⊂R
例 9.4.
集合 X = {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9} の部分集合 A = {1, 3, 5, 7, 9} に対して, X の要素であって A の要素でないもの
の集合は次のようになる:
{2, 4, 6, 8}
この例のようにあらかじめ考えているもの全体の集合を全体集合という.全体集合 X の要素であって, A の要
素でないものの集合を A の補集合といい, Ac または X − A で表す.A と Ac については, 次の式が成り立つ (証
明は定理 thm:compliment を参照せよ):
A
∪
Ac = X,
A
∩
Ac = ∅,
(Ac )c = A
例 9.5.
(1) 集合 N={x|x は自然数 } の部分集合 A = {n|n は正の奇数 } に対して, Ac = {n|n は正の偶数 },
(2) 集合 R={x|x は実数 } の部分集合である開区間 A = (a, b) = {x|a < x < b} に対して, Ac = {x|x ∈ A} =
∪
{x| − ∞ < x ≤ a} {x|b ≤ x < ∞},
(3) 集合 R={x|x は実数 } の部分集合である Q={x|x は有理数 } に対して, Qc = {x|x は無理数 }.
27
< 英語 > 空集合 : empty set, 和集合 (合併集合, 結び) : union,
共通部分 (積集合, 交わり) : intersection, 全体集合 : universal set,
補集合 : complement
問 9.6. A = {2, 3, 4, 5, 6, 7, 9}, B = {1, 3, 4, 9} とおくとき,
(1) A
∪
B,
(2) A
∩
B
を要素をすべて書いて表す方法で表せ.
問 9.7. 全体集合を X = {x|1 ≤ x ≤ 12 かつ x は自然数 } とし, その部分集合を
A = {2, 3, 5, 6, 8}, B = {x|x は奇数 }
とするとき, 次の集合の要素をすべて書いて表す方法で表せ.また, その個数を求めよ.
(1) A
∪
B
(2) A
∩
(3) B c
B
(4) A
∩
Bc
問 9.8. 1 から 100 までの自然数で 3 でも 7 でも割り切れない数の個数を, 次の様にして求めよ.
全体集合 X = {n ∈ N | 1 ≤ n ≤ 100} として, A ⊂ X を 3 で割り切れる数の集合, B ⊂ X を 7 で割り切れる数
の集合と置く. この時, 3 でも 7 でも割り切れない集合を, A, B, X を用いて表し, その要素の個数を #A, #B で表
す事により求めよ.
問 9.9.
A = {(x, y)|x2 + y 2 < 9 かつ x, y ∈ R},
B = {(x, y)|y > x2 かつ x, y ∈ R},
C = {(x, y)||x| + |y| ≤ 1 かつ x, y ∈ R}
とおくとき, 次の集合を xy 平面上に図示せよ. 境界に注意する事.
(1) A
∪
B
(2) B
∩
C
(3) A
∩
Bc
初等集合論と論理
次に初等集合論と論理の基礎を扱う. A, B を任意の集合とするとき, A ⊂ B が成り立つことを証明するには,
x ∈ A =⇒ x ∈ B を示せばよい. また, A = B を証明するには, A ⊂ B かつ B ⊂ A が成り立つことを示せばよ
い. さらに, A ⊂ B, B ⊂ C =⇒ A ⊂ C は容易に証明できるが, 以下でいくつかの基礎的な結果について考える.
定理 9.10. A, B を任意の集合とするとき, 次が成り立つ.
∩
∩
(1) A B ⊂ A, A B ⊂ B
∩
(2) A ⊂ B ⇐⇒ A B = A
∩
証明 (1) x ∈ A B とすると, x ∈ A かつ x ∈ B である. したがって x ∈ A であるから,
∩
∩
A B ⊂ A が成り立つ.同様にして, A B ⊂ B も示される.
∩
(2)(=⇒ の証明)x ∈ A とすると, A ⊂ B より x ∈ B である. ゆえに x ∈ A B であるから,
∩
∩
∩
A ⊂ A B が成り立つ.(1) より A B ⊂ A であるから, A B = A が得られる.
∩
∩
(⇐= の証明)(1) より A B ⊂ B であるから, 仮定より A = A B ⊂ B, すなわち A ⊂ B
が得られる. //
28
定理 9.11. A, B, C を任意の集合とするとき, 次が成り立つ.
∩
∩
∩ ∩
∪
∪
∪ ∪
(1) (A B) C = A (B C), (A B) C = A (B C)
∩
∩
∪
∪
(2) A B = B A, A B = B A
(結合法則)
(交換法則)
証明は問として残す.
定理 9.12. A, B, C を任意の集合とするとき, 次の公式(分配法則)が成り立つ.
∪ ∩
∪
∩ ∪
(1) A (B C) = (A B) (A C)
∩ ∪
∩
∪ ∩
(2) A (B C) = (A B) (A C)
∩
∪
∩ ∪
∪ ∩
∩
(B C) ⊂ (A B) (A C) を示す. x ∈ A (B C) とすると, x ∈ A または x ∈ (B C)
である. よって, x ∈ A または (x ∈ B かつ x ∈ C) であり, 従って (x ∈ A または x ∈ B) かつ (x ∈ A または
∪
∪
∪
∩ ∪
x ∈ C) が成り立つ. 故に x ∈ A B かつ x ∈ A C となり, x ∈ (A B) (A C) が示された. (上の推論
∪
∩ ∪
∪ ∩
∪
∩ ∪
∪
を逆にたどって,)次に, (A B) (A C) ⊂ A (B C) を示す. x ∈ (A B) (A C) とすると, x ∈ A B
∪
かつ x ∈ A C である. よって, (x ∈ A または x ∈ B) かつ (x ∈ A または x ∈ C) であるから, x ∈ A または
∩
∪ ∩
(x ∈ B かつ x ∈ C) が成り立つ. 故に x ∈ A または x ∈ B C であるので, x ∈ A (B C) となる. (2) は問と
して残す.//
証明 (1) まず, A
∪
例 9.13. X を全体集合とし, A, B, C, D をその部分集合とするとき, 次の問いに答えよ.
∩
∩
(1) C ⊂ A, D ⊂ B ならば, C D ⊂ A B が成り立つことを示せ.
(2) (1) の逆が成り立たない例を1つ挙げ, その理由を説明せよ.
∩
解 (1) x ∈ C D とすると, x ∈ C かつ x ∈ D である. C ⊂ A, D ⊂ B より x ∈ A かつ x ∈ B が得られ, 従って
∩
∩
∩
x ∈ A B である. 以上より C D ⊂ A B が示された.
∩
∩
(2) 逆の命題は「C D ⊂ A B ならば, C ⊂ A かつ D ⊂ B 」となるが, これが成り立たない例は次の様に構成
できる.
X = {0, 1, 2}, A = X, B = {0}, C = {0, 1}, D = {0, 2}
問 9.14. X を全体集合とし, A, B, C, D をその部分集合とするとき, 次の問いに答えよ.
∪
∪
(1) C ⊂ A, D ⊂ B ならば, C D ⊂ A B が成り立つことを示せ.
(2) (1) の逆が成り立たない例を1つ挙げ, その理由を説明せよ.
定理 9.15. A を X の部分集合とするとき, 次が成り立つ.
∪
(1) A (X − A) = X
∩
(2) A (X − A) = ∅
(3) X − (X − A) = A
証明 (1) A も X − A も X の部分集合だから, A
∪
(X − A) ⊂ X が成り立つ.一方, x ∈ X とすると x ∈ A または
∪
x ∈ A である. x ∈ A ならば, x ∈ X − A だから, x ∈ A または x ∈ X − A が成り立つ.よって, x ∈ A (X − A)
∪
だから, X ⊂ A (X − A) が成り立ち, (1) が示された. (2) と (3) は問として残す.//
29
問 9.16. X を全体集合とし, A, B をその部分集合とするとき, 次の公式
(ド・モルガンの法則)が成り立つことを示せ.
(1) (A
(2) (A
∪
∩
B)c = Ac
∩
Bc
∪
B)c = Ac B c
問 9.17. X を全体集合とし, A, B をその部分集合とするとき, 次の各条件が同値であることを示せ.
(1) A ⊂ B
(2) X − B ⊂ X − A
∩
(3) A (X − B) = ∅
∪
(4) (X − A) B = X
問 9.18. 集合論の誕生について図書やインターネットなどで調べよ. 参考資料・文献を明記すること.
10
実数の部分集合
一般に N, Z, Q, R, C は次の集合を表す.
N = { x | x は自然数 },
Z = { x | x は整数 },
Q = { x | x は有理数 },
R = { x | x は実数 },
C = { x | x は複素数 }
N は自然数全体の集合, Z は整数全体の集合, Q は有理数全体の集合, R は実数全体の集合, C は複素数全体
の集合である.
問 10.1. 文明の発展に伴って数の世界はだんだんと広がってきた. 歴史上現れる記数法や位取りのしかたなど,
数にまつわる歴史を調べよ.
開区間と閉区間は次のように定義される. それらは R の部分集合である.
(1) 開区間 (open interval)
(2) 閉区間 (closed interval)
(a, b) = { x | x ∈ R かつ a < x < b }
[a, b] = { x | x ∈ R かつ a x b }
開区間 (a, b)
◦
a
...................................................
閉区間 [a, b]
◦...........................................................................
b
R
•
a
•
b
..........................................................................................................................................................................................................................
R
定義 10.2. X と Y を集合とするとき, 次の集合を X と Y の差集合という.
X − Y = {x | x ∈ X
差集合 X − Y を X \ Y または X
かつ
x∈Y }
Y で表すこともある.
例 10.3. X = {1, 2, 3, 4, 5}, Y = {2, 4, 6, 8, 10} のとき, X − Y = {1, 3, 5}, X − N = ∅ である. (X の中にある
Y の要素を, X から取り除いたものが X − Y )
30
問 10.4. 次の集合を求めて, (1),(2) は数直線上, (3),(4) は平面上に図示せよ.
(1) X = [0, 4], Y = [2, 4] とするときの X − Y
(2) X = (0, 4), Y = (2, 4) とするときの X − Y
(3) X = {(x, y) |x, y ∈ R, |x|
1 かつ |y|
1}, Y = {(x, y) | x, y ∈ R, x2 + y 2 < 1} とするときの X − Y
(4) X = {(x, y) |x, y ∈ R, x2 + y 2 < 1}, Y = {(x, y) | x, y ∈ R, |x| + |y|
1} とするときの X − Y
問 10.5. 次の集合に最大値や最小値が存在するか調べよ.
(1) [0, ∞) − N
(2) [0, ∞) − Z
(3) N − 2N
(4) Z − N
(5) R − Z
(6) R − Q
11
無限個の集合の和集合と共通部分
これまでに, 2 つの集合の和集合と共通部分を学んだ. この章では 3 個以上の集合の和集合と共通部分を考える.
2 つの集合 A と B について, 和集合と共通部分の定義は次のようなものであった.
A
A
注意
∪
∩
B
= { x |x ∈ A または x ∈ B}
B
= { x |x ∈ A かつ x ∈ B}
A と B の和集合
A と B の共通部分
A ∩ B ⊂ A ∪ B であることに注意. A ∪ B は A ∩ B を含んでいる. つまり「x ∈ A または x ∈ B 」という
条件は「x ∈ A かつ x ∈ B 」という条件を含んでいる.
注意
和集合の定義から, x が A ∪ B に含まれているということは, 「x ∈ A または x ∈ B が成り立つ」と書き
換えることができる.
共通部分の定義から, x が A ∩ B に含まれているということは, 「x ∈ A かつ x ∈ B が成り立つ」と書き換える
ことができる.
問 11.1. 次の式が成立することを証明せよ. ただし, mN = { mk | k ∈ N } である.
(1) 2N ∩ 3N = 6N
(2) 2N ∪ 3N ⊂ N − P5
ただし P5 = { p | p は素数で p ≥ 5 }
問 11.2. A = { 2n | n ∈ N }, B = { 2n − 1 | n ∈ N } とするとき, A ∩ B と A ∪ B を求めよ.
3 個以上の集合に対しても, 和集合や共通部分を考えることができる.
31
A1 と A2 と A3 が集合のとき
A1
A1
∪
∩
∪
A2
∩
A2
A3
= { x | x ∈ A1 または x ∈ A2 または x ∈ A3 }
A3
= { x | x ∈ A1 かつ x ∈ A2 かつ x ∈ A3 }
と定める. このように“ または ”や“ かつ ”で条件をつなげる方法では, 集合の個数が増えたときに煩雑になった
り, 正確に表現できないこともある. そこで, 次のような言い換えを考える.
x ∈ A1 または x ∈ A2 または x ∈ A3
x ∈ A1 かつ x ∈ A2 かつ x ∈ A3
⇔
x は A1 か A2 か A3 のどれかに属している.
⇔
x ∈ A1 か x ∈ A2 か x ∈ A3 のどれかが成り立つ.
⇔
x ∈ Ai となる i ∈ { 1, 2, 3 } がある.
⇔
x は A1 と A2 と A3 のすべてに属している.
⇔
x ∈ A1 と x ∈ A2 と x ∈ A3 のどれもが成り立つ.
⇔
すべての i ∈ { 1, 2, 3 } に対して, x ∈ Ai .
すると 3 つの集合の和集合と共通部分は次のように書くことができる.
A1
A1
∪
∩
A2
A2
∪
∩
A3
= { x | x ∈ Ai となる i ∈ { 1, 2, 3 } がある }
A3
= { x | すべての i ∈ { 1, 2, 3 } に対して x ∈ Ai }
集合の個数が増えても, この定義の i ∈ { 1, 2, 3 } のところを変えるだけでよい. そうすることで, 有限個だ
けでなく無限個の集合に対しても, 和集合と共通部分を正確にかつ簡潔に表現することができる.
N を自然数全体の集合とする. An (n ∈ N) が集合のとき
∪
An
= { x | x ∈ An となる n ∈ N がある }
An
= { x | N のすべての元 n に対して x ∈ An }
n∈N
∩
n∈N
= { x | 任意の n ∈ N に対して x ∈ An }
注意
次の記号を用いることも多い. 両辺は同じ意味である :
∪
n∈N
An =
∞
∪
An
および
n=1
例 11.3. 無限個の閉区間 [0, n] (n ∈ N) の和集合
∩
n∈N
∪
n∈N
32
An =
∞
∩
An
n=1
[0, n] を求めてみよう.
考え方 閉区間の個数を順々に増やしていって, 和集合の様子を観察してみる.
1
∪
[0, n] = [0, 1]
n=1
2
∪
n=1
3
∪
[0, n] = [0, 1] ∪ [0, 2] = [0, 2]
[0, n] = [0, 1] ∪ [0, 2] ∪ [0, 3] = [0, 3]
n=1
..
.
k
∪
[0, n] = [0, 1] ∪ [0, 2] ∪ [0, 3] ∪ · · · ∪ [0, k] = [0, k]
n=1
閉区間の個数が増えるごとに和集合は, [0, 1] → [0, 2] → [0, 3] → · · · → [0, k] → · · · のように右側に広がってい
くことがわかる. このことより, k → ∞ とすると, 和集合は [0, ∞] となりそうだが, ∞ という数はないので, ∞ を
端っことする閉区間は考えることができない. 無限に大きくなる区間を表すには, [0, ∞) のように表す.
∪
[0, n] ⊂ [0, ∞) である.
解 任意の n ∈ N について [0, n] ⊂ [0, ∞) なので
n∈N
また, 任意の x ∈ [0, ∞) をとると, x m を満たす m ∈ N が存在する. この m に対して x ∈ [0, m] である.
∪
∪
ゆえに x ∈ [0, m] ⊂
[0, n] である. したがって [0, ∞) ⊂
[0, n] がいえた.
以上より,
∪
n∈N
n∈N
[0, n] = [0, ∞) であることが示された.
n∈N
問 11.4. 次の区間の和集合を求めよ.
(1)
∪
(0, n)
(2)
n∈N
∪
n∈N
例 11.5. 無限個の閉区間 [0,
1
(−n, − )
n
(3)
∪
n∈N
1
[−n, − ]
n
(4)
∪
n∈N
(−n,
1
)
n
∞
∩
1
1
] (n ∈ N) の共通部分
[0, ] を求めてみよう.
n
n
n=1
考え方 閉区間の個数を順々に増やしていって, 共通部分の様子を観察してみる.
1
∩
1
1
[0, ] = [0, ]
n
1
n=1
2
∩
n=1
3
∩
[0,
1
1
1
1
] = [0, ] ∩ [0, ] = [0, ]
n
1
2
2
[0,
1
1
1
1
1
] = [0, ] ∩ [0, ] ∩ [0, ] = [0, ]
n
1
2
3
3
n=1
..
.
k
∩
1
1
1
1
1
1
] = [0, ] ∩ [0, ] ∩ [0, ] ∩ · · · ∩ [0, ] = [0, ]
n
1
2
3
k
k
n=1
1
1
1
1
閉区間の個数が増えるごとに, 共通部分は [0, ] → [0, ] → [0, ] → · · · → [0, ] → · · · のようにだんだん狭
1
2
3
k
まっていくことがわかる. 閉区間の右端はどんどん小さくなっていくが負の数になることはなく 0 に近づく. 0 は
1
全ての閉区間 [0, ] に含まれているから, 共通部分は 0 だけになるのではないか? と予想を立てる.
n
∞
∞
∩
∩
1
1
1
解 任意の n ∈ N について 0 ∈ [0, ] であるから, 共通部分の定義より, 0 ∈
[0, ] となるので, { 0 } ⊂
[0, ]
n
n
n
[0,
n=1
である.
33
n=1
逆に
∞
∩
[0,
n=1
∞
∩
1
1
] ⊂ { 0 } となることを示すために,
[0, ] には 0 しか含まれないことを言う (背理法を使う).
n
n
n=1
∞
∩
1
1
もしも x ∈
[0, ] となるような 0 でない正の数 x があったとすると, 0 <
< x となるような自然数 n0 がと
n
n
0
n=1
∞
∩
1
1
1
れる. このとき, x ∈ [0,
] である. これは, すべての閉区間 [0, ] に含まれるという x の取り方 x ∈
[0, ] に
n0
n
n
∞
∩
矛盾する. よって,
以上から,
∞
∩
n=1
[0,
n=1
∞
∩
1
1
[0, ] には 0 以外の数は含まれないので,
[0, ] ⊂ { 0 } である.
n
n
n=1
n=1
1
] = { 0 } であることが示された.
n
問 11.6. 次の区間の共通部分を求めよ.
(1)
∞
∩
n=1
(0,
1
)
n
(2)
∞
∩
n=1
[0,
1
)
n
(3)
∞
∩
1 1
[− , ]
n n
∞
∩
(4)
n=1
1 1
(− , )
n n
n=1
(参考) 数学の演算記号について
2 項演算の表記方法には演算記号を項と項の間に書く方法と 2 つの項の前に演算記号を書く方法とがある. α :
X × X → X を集合 X 上で定義された 2 項演算とすると, 任意の x, y ∈ X に対して
α(x, y) = x α y
と表す. 上の式の両辺は同じ意味である. いずれも直積 X × Y の元 (x, y) に対して 2 項演算 α により定まる X
の元を表すのである.
例 α = + を実数全体の集合 R 上で定義された 2 項演算 α : R × R → R とすると,
+(x, y) = x + y
である. 実数の和を表すのに上記の 2 通りの方法があることが分かる.
一般にいくつかの項の間の演算記号はまとめて先頭に書く方法があることを注意しておく. 次の例をよく考えて
みよう.
A1
∪
A2
∪
A3
=
3
∪
Ai
i=1
A1
∩
A2
∩
A3
=
3
∩
Ai
i=1
a1 + a2 + a3 + a4 + a5 + a6
=
6
∑
ai
i=1
a1 × a2 × a3 × a4 × a5 × a6
=
6
∏
i=1
34
ai
項の数が n 個の場合は次のように書ける :
A1
∪
A2
∪
A3
∪
···
∪
An
n
∪
=
Ai
i=1
A1
∩
A2
∩
A3
∩
···
∩
An
n
∩
=
Ai
i=1
自然数全体 N についての和集合と共通部分は次のように書ける :
A1
∪
A2
∪
A3
∪
···
∪
An
∪
∞
∪
··· =
Ai =
i=1
A1
∩
A2
∩
A3
∩
···
∩
An
∩
∞
∩
··· =
∪
Ai
i∈N
Ai =
i=1
∩
Ai
i∈N
(参考) 無限個の集合に対するド・モルガンの法則
各 n ∈ N に対して An を R の部分集合とする. R − An を An の補集合とすると次の公式 (ド・モルガンの法
則) が成立する.
∪
(R − An ) = R −
An
n∈N
n∈N
∩
∩
(R − An ) = R −
n∈N
∪
An
n∈N
問 11.7. (発展問題) 上の ド・モルガンの法則を証明せよ.
問 11.8. 次の集合の共通部分を求めよ.
(1)
∩
{R − (n, n + 1)}
(2)
n∈N
(3)
∩
∩
{R − (0, n)}
n∈N
{R − [−n, 0]}
(4)
n∈N
∩
{R − (−n, n)}
n∈N
問 11.9. 次の集合の共通部分を求めよ.
(1)
∩
{R − (n, n + 1)}
(2)
n∈Z
∩
{R − {n}}
n∈Z
[第5章] いろいろな関数
2 つの変数 x と y があり, x に対して y の値を決定する規則が与えられているとき, 変数 y を「x の関数」という.
例えば y = x2 という式のことを考えてみよう. これは「x の値が決まれば, それを 2 乗することで y の値が決
まる」ということを式で表したものである. このように, 1 つの数 (x) が決まったら, その数に対して新しい数 (y)
が対応しているようなときにその対応を“ 関数 ”と呼ぶ (関数の定義は次章を参照). この対応規則を適当な文字を
35
使って y = f (x) などと表す (“ function ”の頭文字の“ f ”はよく使われる). また, y = f (x) において x = a に対
応する y の値を x = a における関数の値といい, f (a) で表す.
関数 y = f (x) において, 変数 x のとる値の全体 (変域) をこの関数の定義域という. また, x が定義域内のあら
ゆる値をとるときに, それに応じて変数 y が取る値 (変域) を, この関数の値域という.
関数の値域は, 実数 R や複素数 C の部分集合であることが多い. 値域が実数の集合となる関数を実数値関数, 値
域が複素数の集合となる関数を複素数値関数という. この場合それぞれ定義域がどのような集合であるかは問わな
い. 特に定義域も値域も実数の集合であるような関数を実関数といい, 定義域も値域も複素数の集合であるような
関数を複素関数という. また値域がベクトルの集合を扱うような関数はベクトル値関数と呼ばれる.
<英語>関数:function, 変数:variable, 定義域:domain, 値域:range, 値:value 実数値関数:real valued function
複素数値関数:complex valued function 実関数:real function 複素関数:complex function ベクトル値関数:vector
valued function
12
実数を値域に持つ関数の例
われわれが今まで取り扱った関数は, 定義域, 値域が実数の集合となるものであった. ここでは, これらの代表的
な関数について復習してみよう.
多項式関数
変数 x について関数を考えるとき, その加減乗除の演算をイメージすることは自然である. まず変数 x に割り算
を使わずに x の加減乗の演算を考えると x の n 次式,
y = an xn + an1 xn1 + · · · + a1 x + a0
という関数が考えられる (an , an1 , · · · , a0 は実数). これを多項式関数あるい n 次関数という.
(多項式関数の例) y = ax + b (1次関数), y = ax2 + bx + c (2次関数), y = ax3 + bx2 + cx + d (3次関数)
例 12.1. y = x2 は一番最初に学ぶ 2 次関数である. x2 はすべての実数 x に対して考えることができるので, 特
に指定がない場合は定義域は実数全体と考える. その場合, どんな実数に対しても, 2 乗したら 0 以上の数になる
から, 値域は {y|y ≥ 0} となる.
有理関数
次に割算も含めた x の加減乗除の演算を考えると,
y=
h(x)
,
g(x)
(ここで h(x), g(x) = 0 はそれぞれ変数 x の多項式) という関数が考えられる. これを有理関数といい, 特に g(x)
が定数でないとき分数関数という.
(有理関数の例) y =
2
2x − 3
(直角双曲線), y =
x
x−2
36
1
は x が 2 以外の実数のときに関数の値が考えられる. だから, 定義域を {x|x ∈ R, x = 2} と
x−2
すると, 値域は {y|y ∈ R, y = 0} となる.
例 12.2. y =
無理関数
変数 x を使って無理数の形で表現される関数を無理関数という.
(無理関数の例) y =
√
x, y =
√
2x − 6
√
例 12.3. y = − x は x が 0 以上のときにだけ関数の値は実数になる. だから, 定義域を {x|x ≥ 0} とすると, 0
√
√
以上の数 x に対して x は 0 以上の数だから, − x は 0 以下の数になるので, 値域は {y|y ≤ 0} となる.
三角関数
任意の実数 θ に対して, ∠XOP = θ となるように単位円周上(x2 + y 2 = 1)の動点 P (x, y) をとる. このとき
直角三角形 XOP の2辺の比を
y
= tan θ
x
なる変数 θ の関数で考えとき, これらの関数を三角関数という.
x = cos θ, y = sin θ,
指数関数
正数 a > 0 に対して, すべての実数 x ∈ R について指数法則が成り立つ. こうして定まる関数 y = ax を, a を底
とする指数関数という. (指数関数の例) y = 2x , y = 3x , y = (
1 x
) , y = ax , y = ex
2
対数関数
実数 x に対して, x = ay , (a > 0) となる y を対応させる関数を対数関数とよび, y = loga x と表す.
(対数関数の例) y = log10 x, y = log2 x, y = log 12 x, y = loge x
<英語>多項式関数:polynomial function, 有理関数:rational function, 分数関数:fractional function, 無理関
数:irrational function, 三角関数:trigonometric function,( 円関数 circular function とも言う. ) 対数関数:
logarithmic function, 指数関数:exponential function
グラフの書き方:平行移動
関数 y = f (x − p) + q のグラフは y = f (x) のグラフを x 軸方向に p, y 軸方向に q だけ平行移動したものである.
関数 y = f (a(x − p)) のグラフは y = f (ax) のグラフを x 軸方向に p だけ平行移動したものである.
例 12.4.
3x − 4
のグラフを書け.
x−2
(2) 定義域, 値域を求めよ.
(3) 漸近線を求めよ.
(1) 関数 y =
37
解 まず y =
グラフ略.
2
+ 3 と変形して考える, 定義域 {x|x ∈ R, x = 2}, 値域 {y|y ∈ R, y = 3}, 漸近線 x = 2, y = 3,
x−2
例 12.5. 関数 y =
√
2x − 6 のグラフを書き, 定義域と値域を求めよ.
解 定義域 {x|x ∈ R, x ≥ 3}, 値域 {y|x ∈ R, y ≥ 0}, グラフ略.
例 12.6. 次の関数のグラフを書き, 定義域と値域を求めよ.
(1) 三角関数 y = sin(x + π3 )
(2) 対数関数 y = log2 (x − 1)
(3) 指数関数 y = 2x−2 + 2
解 (1) 定義域 R, 値域 {x| − 1 ≤ x ≤ 1}, グラフ略.
(2) 定義域 {x|x > 1}, 値域 R, グラフ略.
(3) 定義域 R, 値域 {y|y > 2}, グラフ略.
問 12.7. 次の関数 (1)–(6) のグラフを書き, 定義域と値域を求めよ.
2x + 3
(1) y =
(−2 ≤ x ≤ 0, x = −1)
√x + 1
(2) y = 6 − 3x (−1 ≤ x ≤ 2)
(3) y = cos x
(4) y = tan x
√
(5) y = 4 − x2
1
(6) y = x +
x
(7) 関数 (1),(4),(6) の漸近線を求めよ.
単調増加関数, 単調減少関数
区間 I は関数 f (x) の定義域に含まれているとし, 実数 x1 , x2 は I の要素とする.
1. 関数 f (x) が区間 I で単調増加であるとは, ”x1 < x2 ならば f (x1 ) < f (x2 ) ”が成り立つことである5 .
2. 関数 f (x) が区間 I で単調減少であるとは, ”x1 < x2 ならば f (x1 ) > f (x2 ) ”が成り立つことである.
奇関数, 偶関数, 周期関数
1. 関数 f (x) が奇関数であるとは, f (−x) = −f (x) が成り立つことであり, 関数 f (x) が偶関数であるとは,
f (−x) = f (x) が成り立つことである.
2. ある a ∈ R について関数 f (x) が任意の x ∈ R に対し f (x + a) = f (x) が成り立つとき, 関数 f (x) は周期 a
の周期関数であるという.
問 12.8. 上述した問 12.7 の関数の例から
(1) 単調増加関数, 単調減少関数を選べ.
(2) 周期関数を選べ. また, その周期を求めよ.
(3) 奇関数, 偶関数を選べ.
5 文献によっては、狭義単調増加と呼ぶ事もある.
38
奇関数のグラフは原点に関して対称である.
偶関数のグラフは y 軸に関して対称である.
例 12.9. y = x2 (x > 0) のグラフを次に関して対称に移動したグラフを書け.
(1) x 軸 (2) 原点 (3) 直線 x = 3
解 (1) y = −x2 , 定義域 {x|x > 0}, グラフ略.
(2) y = −x2 , 定義域 {x|x < 0}, グラフ略.
(3) y = (x − 6)2 , 定義域 {x|x < 6}, グラフ略.
問 12.10. y = x2 (x > 0) のグラフを次に関して対称に移動したグラフを書け.
(1) y 軸 (2) 直線 y = 2 (3) 直線 y = x
[第6章] 関数の定義・性質
13
関数の定義
定義 13.1. X ⊂ R, Y ⊂ R とする. X の要素に対して Y の要素が決まる対応 f が次の 2 つの性質を満たすとき,
f を X から Y への関数と呼び, f : X → Y と書く.
(1) X のすべての要素 x に対して, f (x) ∈ Y が成り立つ.
(2) x1 = x2 ならば, f (x1 ) = f (x2 ) が成り立つ.
(言葉で書くと, 「X のすべての要素 x に対して, Y の要素がただ 1 つ対応している」となる)
例 13.2. f (x) = x2 とするとき, y = f (x) が R から R への関数 の定義を満たしていることを確かめる.
(1) どんな実数 x に対しても, x2 は実数である. つまり f (x) = x2 ∈ R となるので, (1) が成り立つ.
(2) x1 = x2 ならば, もちろん x21 = x22 である. だから, f (x1 ) = f (x2 ) となるので, (2) が成り立つ.
以上より, y = f (x) = x2 は R から R への関数であることが確かめられた.
問 13.3. 多項式関数, 分数関数, 無理関数, 三角関数, 対数関数, 指数関数などは, 上述の関数の定義を満たしてい
ることを確認せよ.
問 13.4. 円 x2 + y 2 = 1 と直線 x = p との共有点の個数を q とする. q は p の関数 q = f (p) になっていること
を示せ.
問 13.5. 関数の歴史について, 図書館やインターネットで調べよ. 参考資料・文献を明記すること.
14
合成関数
定義 14.1. X ⊂ R, Y ⊂ R, Z ⊂ R とする. 2 つの関数 f : X → Y , g : Y → Z を考える. x ∈ X に対して
g(f (x)) を対応させる関数, すなわち
h : X → Z,
h(x) = g(f (x))
となる h を f と g の合成関数といい, g ◦ f で表す. つまり (g ◦ f )(x) = g(f (x)) である.
問 14.2. 上のように定義した合成関数が, 関数の定義を満たしていることを確かめなさい.
例 14.3. f (x) = x − 2, g(x) = x2 とする. (g ◦ f )(x), (f ◦ g)(x) を求めよ.
39
解 (g ◦ f )(x) = (x − 2)2 , (f ◦ g)(x) = (x2 − 2).
問 14.4. 2 つの関数 f (x) = 2x + p, g(x) =
求めよ.
15
x2 + 3
について, (g ◦ f )(x) = x2 + x + 1 となるように定数 p の値を
4
逆関数
定義 15.1. X ⊂ R, Y ⊂ R とする. f : X → Y において,
x1 = x2 =⇒ f (x1 ) = f (x2 )
がなりたつとき, f は X から Y への1対1の関数であるという.
問 15.2. (1) A =⇒ B の対偶をいえ. (2) x1 = x2 =⇒ f (x1 ) = f (x2 ) の対偶をいえ.
例 15.3.
(1) f (x) = 2x − 1 は 1対1の関数である.
この f が1対1の条件を満たすことを説明する.
x1 = x2 ならば, 2x1 − 1 = 2x2 − 1 である. よって, f (x1 ) = f (x2 ) となる.
(2) g(x) = x2 は 1対1の関数ではない.
この g が1対1の条件を満たさないことを説明する. 「1対1の条件を満たさない」ということは, 「x1 = x2
なのに, g(x1 ) = g(x2 ) とはならない x1 , x2 が存在する」ことを言えばよい.
例えば, x1 = 1, x2 = −1 とすると, もちろん x1 = x2 である. ところが, g(x1 ) = g(1) = 12 = 1, g(x2 ) =
g(−1) = (−1)2 = 1 となるので, f (x1 ) = f (x2 ) である. この反例から, 「x1 = x2 =⇒ f (x1 ) = f (x2 )」は成り立
たないことがわかる. よって g は1対1ではない.
上で述べた 1 対 1 の関数について, その関数をもとに逆の対応を考えよう.
関数 f : X → Y で, f が1対1の関数で f の値域が Y に一致するようなものを考える.
つまり
(1)f (X) = Y
(2)x1 = x2 ならば f (x1 ) = f (x2 )
となっているような場合を考える.
(1) Y = f (X) だから, Y の要素はすべて f (x) と表される, ということである. つまり, Y のすべての要素 y に
対して, y = f (x) となるような x が対応している, ということである. この x を, xy と表しておく.
(2) 対偶を考えると, 「f (x1 ) = f (x2 ) ならば x1 = x2 」となる. ここで, y1 = f (x1 ), y2 = f (x2 ) とおいて (1)
の最後の表し方を使うと, x1 = xy1 , x2 = xy2 となるので「y1 = y2 ならば xy1 = xy2 」が成り立つことになる.
ここで, 関数の定義を思い出して欲しい. 定義 11.1 の 2 つの条件 (1) と (2) が成り立つことが関数の定義であっ
た. 以上のことから, この f を元にして, Y から X への関数 y → xy が得られたことになる.
定義 15.4. X ⊂ R, Y ⊂ R とする. 関数 f : X → Y において, f が 1 対 1 の関数で, f の値域が Y に一致すると
き, Y のどの要素に対しても y = f (x) となるような X の要素 x がただ 1 つ定まる. この関数を f の逆関数といい
f −1 と表す.
40
逆関数の求め方
y = f (x) を x について解いて x = g(y) となるとき, x と y を入れ替えた y = g(x) が y = f (x) の逆関数である.
y = g(x) = f −1 (x)
逆関数の定義域
関数と逆関数では定義域と値域が入れ替わる.
例 15.5. 次の逆関数を求め, グラフを書け.
(1) y = 2x + 3(−2 ≤ x ≤ 2)
1
(2) y = (x2 − 3)(x ≥ 2)
2
解 (1) y = 12 x − 32 , 定義域 {x| − 1 ≤ x ≤ 7}.(2) y =
√
2x + 3, 定義域 {x|x ≥ 12 }.
逆関数のグラフ
y = f −1 (x) のグラフと y = f (x) のグラフは直線 y = x に関して 対称である.
16
単調性を持つ関数とその逆関数
単調増加関数, あるいは単調減少関数は, 1 対 1 の関数であり, その逆関数が存在する. 三角関数のような周期性
をもった周期関数も適当な定義域に制限して考えれば, 部分的に単調増加性あるいは単調減少性をもった関数と解
π
π
釈でき, その定義域のもとで対応する逆関数を求めることができる. 例えば sin x は定義域を − ≤ x ≤
で考
2
2
−1
えれば, 1対1の関数になり, 逆関数を持つ. この逆関数を arcsin x または sin x で表す. 同様に, cos x, tan x
も適当な定義域で考えることによって, 逆関数 cos−1 x, tan−1 x を考えることができる.
例 16.1. 関数 y = x2 + 1 に適当な定義域を与え逆関数を求めよ. またそのグラフを書け.
解 定義域を {x|x ≥ 0} とすると関数 y = x2 + 1 は単調増加関数で 1 対 1 の関数である. したがってその逆関数は
√
y = x − 1(定義域 {x|x ≥ 1}) となる. グラフ略.
問 16.2. 次の逆関数を求め, グラフを書け.
π
π
(1) y = sin x (− ≤ x ≤ )
2
2
(2) y = cos x (0 ≤ x ≤ π)
π
π
(3) y = tan x (− < x < )
2
2
問 16.3. 次の逆関数を求め, グラフを書け. グラフには, 元の関数と y = x のグラフも書き入れること.
(1) y = 2x + 6(−2 ≤ x ≤ 2)
1
(2) y = (1 − x2 )(x ≥ 0)
2
√
(3) y = x + 4
(4) y = 2x − 1
(5) y = log3 x − 1
41
<英語> 合成関数:composite function, 逆関数:inverse function, 1対1の関数:one-to-one function, 周期関数:
periodic function, 単調増加関数: monotone increasing function, 単調減少関数: monotone decreasing function,
偶関数: even function, 奇関数: odd function
関数・写像の像と逆像
17
定義 17.1. X ⊂ R, Y ⊂ R, f : X → Y を関数 (function) とする. 任意の部分集合 A ⊂ X と B ⊂ Y に対し,
次のように定義する.
f (A) = { f (a) | a ∈ A }
f −1 (B) = { x | f (x) ∈ B }
f (A) を f による A の像 (image), f −1 (B) を f による B の逆像 (inverse image) または原像 (preimage) という.
注意 逆関数 f −1 が定義されなくても, 逆像 f −1 (B) はどんな集合 B に対しても定義されることに注意しよう. 逆
関数の記号 f −1 と逆像の記号 f −1 (B) は同じ f −1 を用いるので意味をよく考えて混同しないようにしよう.
例 17.2. f : R → R を f (x) = 2x とするとき 閉区間 A = [3, 5] と B = [2, 4] について f (A) と f −1 (B)
を求めよ.
解 f による A の像 f (A) を定義に従って書きなおすと, f (A) = { f (a) | a ∈ A } = { 2a | a ∈ [3, 5] } となる.
a が [3, 5] の中を動くときの 2a の範囲を求める. a = 3 のとき最小値 f (3) = 2 × a = 6, a = 5 のとき最大値
f (5) = 2 × 5 = 10 となるので, f (A) = [6, 10] である.
f による B の逆像 f −1 (B) を定義に従って書きなおすと, f −1 (B) = { x | f (x) ∈ B } = { x | 2x ∈ [2, 4] } となる.
2x ∈ [2, 4] つまり 2 2x 4 となる x の範囲を求める. 辺々2 で割って 1 x 2 となるので, f −1 (B) = [1, 2]
である.
例 17.3. f : R → R を f (x) = x2 とするとき 開区間 A = (−1, 3) と 閉区間 B = [−5, 4] について f (A) と
f −1 (B) を求めよ.
解 f による A の像 f (A) を定義に従って書きなおすと, f (A) = { f (a) | a ∈ A } = { a2 | a ∈ (−1, 3) } となる. a
が (−1, 3) の中を動くときの a2 の範囲を求める. f (x) = x2 は x = 0 ∈ (−1, 3) で最小値をとることに注意する.
a = 0 のとき最小値 f (0) = 02 = 0, a = 3 のとき最大値 f (3) = 32 = 9 となるので, f (A) = [0, 9) である.
f による B の逆像 f −1 (B) を定義に従って書きなおすと, f −1 (B) = { x | f (x) ∈ B } = { x | x2 ∈ [−5, 4] }
となる. x2 ∈ [−5, 4] となる x の範囲を求める. 常に 0
x2 なので, x2
4 となる x の範囲を求めればよい.
−2
x
2 となるので, f −1 (B) = [−2, 2] である.
問 17.4. f : R → R を f (x) = −3x とするとき 閉区間 A = [2, 4] と B = [3, 6] について f (A) と f −1 (B)
を求めよ.
問 17.5. f : R → R を f (x) = x2 − 2 とするとき 開区間 A = (−1, 3) と 閉区間 B = [−5, 2] について f (A)
と f −1 (B) を求めよ.
−1
(A) を求
問 17.6. f : R → R を f (x) = 2 cos x とするとき 開区間 A = (0, 3π
2 ) について f (A) と f
めよ.
42
例 17.7. f : R → R, g : R → R で A ⊂ R とするとき, 次の式が成り立つ.
(g ◦ f )(A) = g(f (A))
解 任意の元 c ∈ (g◦f )(A) をとると, c = (g◦f )(a) を満たす元 a ∈ A が存在する. このとき, c = g(f (a)) ∈ g(f (A))
である. ゆえに, (g ◦ f )(A) ⊂ g(f (A)) であることがいえた.
任意の元 c ∈ g(f (A)) をとると, c = g(b) を満たす元 b ∈ f (A) が存在する. このとき, b = f (a) を満たす元
a ∈ A が存在するので, c = g(b) = g(f (a)) = (g ◦ f )(a) ∈ (g ◦ f )(A) である. したがって, g(f (A)) ⊂ (g ◦ f )(A)
である.
以上より, (g ◦ f )(A) = g(f (A)) であることが証明された.
問 17.8. 次の式が成り立つことを証明せよ.ただし f : R → R, g : R → R で C ⊂ R とする.
(g ◦ f )−1 (C) = f −1 (g −1 (C))
例 17.9. f : R → R を写像,A, B を R の任意の部分集合とするとき,次の式が成り立つ.
A ⊂ B =⇒ f (A) ⊂ f (B)
解 任意の元 c ∈ f (A) をとると, c = f (a) を満たす元 a ∈ A が存在する. a ∈ A ⊂ B なので a ∈ B である. ゆえ
に, c = f (a) ∈ f (B) である. したがって, f (A) ⊂ f (B) であることが示された.
例 17.10. f : R → R を写像,A, B を R の任意の部分集合とするとき,次の式が成り立つ.
f (A ∪ B) = f (A) ∪ f (B)
解 任意の元 c ∈ f (A ∪ B) をとると, c = f (x) を満たす元 x ∈ A ∪ B が存在する. x ∈ A または x ∈ B である.
x ∈ A の場合は c = f (x) ∈ f (A) であり, x ∈ B の場合は c = f (x) ∈ f (B) である. ゆえに, c ∈ f (A) ∪ f (B) で
ある. したがって, f (A ∪ B) ⊂ f (A) ∪ f (B) である.
また, A ∪ B ⊃ A なので f (A ∪ B) ⊃ f (A) である. 同様に A ∪ B ⊃ B なので f (A ∪ B) ⊃ f (B) である. ゆえ
に, f (A ∪ B) ⊃ f (A) ∪ f (B) であることがわかる.
以上より, f (A ∪ B) = f (A) ∪ f (B) であることが証明された.
問 17.11. f : R → R を写像,A, B を R の任意の部分集合とするとき,次の式が成り立つことを証明せよ.
f (A ∩ B) ⊂ f (A) ∩ f (B)
問 17.12. 上の問 17.11 において f (A ∩ B) = f (A) ∩ f (B) となる例や f (A ∩ B) = f (A) ∩ f (B) となる例をあ
げよ
問 17.13. f : R → R を写像,A, B を R の任意の部分集合とするとき,次の式が成り立つことを証明せよ.
A ⊂ B =⇒ f −1 (A) ⊂ f −1 (B)
例 17.14. f : R → R を写像,A, B を R の任意の部分集合とするとき,次の式が成り立つ.
f −1 (A ∪ B) = f −1 (A) ∪ f −1 (B)
43
解 任意の元 x ∈ f −1 (A ∪ B) をとると, f (x) ∈ A ∪ B なので f (x) ∈ A または f (x) ∈ B である. f (x) ∈ A の
場合は x ∈ f −1 (A) であり, f (x) ∈ B の場合は x ∈ f −1 (B) である. ゆえに, x ∈ f −1 (A) ∪ f −1 (B) である. し
たがって, f −1 (A ∪ B) ⊂ f −1 (A) ∪ f −1 (B) である.
また, A ∪ B ⊃ A なので f −1 (A ∪ B) ⊃ f −1 (A) である. 同様に A ∪ B ⊃ B なので f −1 (A ∪ B) ⊃ f −1 (B) で
ある. ゆえに, f −1 (A ∪ B) ⊃ f −1 (A) ∪ f −1 (B) であることがわかる.
以上より, f −1 (A ∪ B) = f −1 (A) ∪ f −1 (B) であることが証明された.
問 17.15. f : R → R を写像,A, B を R の任意の部分集合とするとき,次の式が成り立つことを証明せよ.
f −1 (A ∩ B) = f −1 (A) ∩ f −1 (B)
問 17.16. (発展問題)
f : R → R を写像,A, B ⊂ R を任意の部分集合とするとき,次の式が成り立つことを
証明せよ.
(1) f (R − A) ⊃ f (R) − f (A)
(2) f −1 (R − B) = R − f −1 (B)
問 17.17. (発展問題)
f : R → R を写像とする. A, B ⊂ R のとき次の (1) ∼ (3) の式が成り立つことを証明
せよ.
(1) f (A) ⊂ B ⇐⇒ A ⊂ f −1 (B)
(2) f −1 (f (A)) ⊃ A
(3) f (f −1 (B)) ⊂ B
問 17.18. 上の (2), (3) において「⊂」または 「⊃」が = となる例および = となる例をあげよ.
44
問題の略解
[第 1 章]
√
a
問 1.1 (ヒント) a, b を互いに素な整数として, 2 = と書く時, 2b2 = a2 の両辺が,2 で何回割れるかを考える.
b
√
√
√
√
√
√
√
4 √
5
4 √
4 √
問 1.3 (等しいもの) 2i =
i, −3 = 3i (虚数)2i, −3,
+ 2i,
i, 3i (純虚数)2i, −3,
i, 3i
2√
4
2
2
3 ± 47i
問 2.1 (答えのみ) x =
4√
√
2 ± 19
1
7 ± 47i
問 2.4 x = −1, −5, x =
,x= ,x=
3
2
6
√
問 2.6 (1) 2 − 3i (2) 2 + 2i (3) 3i (4) 7
問 2.8 (1) 5 − 3i (2)2
√ + 6i√(3) −5 − 14i
3 − 5 2 + (3 2 − 5)i
440 130
問 2.10 (1)
(2)
−
i
30
139 417
√
√
1
問 2.11 (1)−5i (2) ( 2 − 1 + i) (3) 2 2 − i
2
問 3.2 (1) Re(3 + i) = 3, Im(3 + i) = 1 (2) Re(−2) = −2, Im(−2) = 0 (3) Re(3i) = 0, Im(3i) = 3
問 3.4 P = z¯, P = −z, P = −¯
z
問 3.5 (ヒント) z = a + bi, w = c + di とおいて, 両辺を計算する.
問 3.7 a2 + b2
√
1
1
2
π (2) |z2 | = 2, arg(z2 ) = π (3) |z3 | = 2, arg(z3 ) = π
6
4
3
1
3
(4) |z4 | = 2, arg(z4 ) = π (5) |z5 | = 3, arg(z5 ) = π (6) |z6 | = 1, arg(z6 ) = π
2
2
問 3.9 |z1 − z2 |
√
√
問 3.10 (1) 5 (2) 17
nz1 + mz2
−nz1 + mz2
問 3.11 (内分点)
(外分点) m : n に外分=m : −n に内分,
m+n
m−n
問 3.13 (ヒント) 頑張る.
問 3.14 (ヒント) (2) はどちらか片方を示せば,(1) から残りが従う.
問 3.8 (図は省略) (1) |z1 | = 2, arg(z1 ) =
問 3.15 (ヒント)(1) (i)|z| = |¯
z |, (ii)|zw| = |z||w|, (iii)Re(z) ≤ |z| を用いる.
左辺2 = (z + w)(z + w) = |z|2 + |w|2 + z w
¯ + z¯w
右辺2 = (|z| + |w|)2 = |z|2 + |w|2 + 2|z||w|
右辺2 − 左辺2
= 2|z||w| − (z w
¯ + z¯w)
= 2|z||w|
¯ − (z w
¯ + z¯w),
= 2|z w|
¯ − (z w
¯ + z¯w),
= 2|z w|
¯ − 2Re(z w),
¯
≥ 0,
(i) より
(ii) より
z¯w = z w
¯ より
(iii) より
(2) 同様に z, w のまま計算する.
[第 2 章]
問 4.1 (ヒント)「三角形の一辺の長さは,他の二辺の長さの和より小さい」ということを用いよ.
問 4.3 z = 2 + 4i
π
(これに 2nπ を加えた値 (ただし n は任意の整数) でも正解.(2),(3) に
2
√
π
ついても同様.) (2) | − 2z| = 2r, arg(−2z) = π − θ (3) |(1 + i)z| = 2r, arg((1 + i)z) = + θ
4
z − z2
問 4.6 (ヒント) Q が原点に一致するように,3点を平行移動して考えよ.(解) arg 1
z3 − z2
問 4.4 (1) | − iz| = r, arg(−iz) = θ −
45
π
だけ回転させた点を表す.−z は z を原点のまわりに π だけ回転させた点を
2
3π
表す.−iz は z を原点のまわりに
だけ回転させた点を表す.
2 √
√
√
√
問 4.11 z = 4 − 3 + (4 + 2 3)i, 4 + 3 + (4 − 2 3)i
[第 3 章]
1
1+i
問 5.2 (1) 8 − 8i (2) − 9 (3) 26
2
2
問 5.3 (−8)n
問 5.4 18n
問 4.8 iz は z を原点のまわりに
問 5.6 省略
√
√
√
1 + 3i
−1 + 3i
−1 − 3i
問 6.2 (1) 解は次の z0 , . . . , z5 (計6個).z0 = 1, z1 =
, z2 =
, z3 = −1, z4 =
,
2 √
2
2
√
√
2(1 + i)
2(−1 + i)
1 − 3i
z5 =
(2) 解は次の z0 , . . . , z7 (計8個).z0 = 1, z1 =
, z2 = i, z3 =
, z4 = −1,
2
2
2
√
√
2(−1 − i)
2(1 − i)
z5 =
, z6 = −i, z7 =
2
2
√
√
√
√
√
3 3 2(−1 + 3i)
3 3 2(−1 − 3i)
3
問 6.5 (1) 解は次の z0 , z1 , z2 (計3個).z0 = 3 2, z1 =
, z2 =
(2) 解は次の
2
2
√
√
3+i
− 3+i
z0 , z1 , z2 (計3個).z0 =
, z1 =
, z2 = −i (3) 解は次の z0 , . . . , z4 (計5個).
2
(
)
( 2
)
)
√
√
√ (
π
π
9π
9π
17π
17π
z0 = 10 2 cos
+ i sin
, z1 = 10 2 cos
+ i sin
, z2 = 10 2 cos
+ i sin
,
20
20 )
20 )
20
20
(
( 20
√
√
5π
5π
33π
33π
+ i sin
, z4 = 10 2 cos
+ i sin
z3 = 10 2 cos
4
4
20
20
[第 4 章]
問 9.6 (1) {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 9} (2) {3, 4, 9}
問 9.7 (1) {1, 2, 3, 5, 6, 7, 8, 9, 11}, n(A ∪ B) = 9 (2) {3, 5}, n(A ∩ B) = 2 (3) {2, 4, 6, 8, 10, 12}, n(B c ) = 6 (4)
{2, 6, 8}, n(A ∩ B c ) = 3
問 9.8 57
問 9.9 省略
問 9.14 省略
問 9.16 省略
問 9.17 (ヒント) (1)-(4) の命題が同値であることを示すには, (1) ならば (2), (2) ならば (3), (3) ならば (4), (4)
ならば (1) の4つを証明すれば良い.
問 9.18 省略
問 10.1 略
問 10.4 略
問 10.5(最大値, 最小値の順)(1) なし, 0 (2) なし, なし (3) なし, 1 (4)0, なし (5) なし, なし (6) なし, なし
問 11.1(1) (証明) (2N∩3N ⊂ 6N が成り立つこと) x ∈ 2N∩3N とすると x ∈ 2N かつ x ∈ 3N である. x ∈ 2N よ
り, x = 2n1 (n1 ∈ N) と表せる. 同様に x ∈ 3N より, x = 3n2 (n2 ∈ N) と表せる. このとき 2n1 = 3n2 で n1 も n2
も自然数だから, n1 は 3 の倍数である. つまり n1 = 3n3 (n3 ∈ N) となる. これより x = 2n1 = 2×3n3 = 6n3 ∈ 6N
である. よって x ∈ 6N となるので 2N ∩ 3N ⊂ 6N が成り立つ.
(6N ⊂ 2N∩3N が成り立つこと) x ∈ 6N とすると, x = 6n (n ∈ N) と表せる. このとき, x = 6n = 2×3n = 2n1
(n1 = 3n とすると n1 ∈ N) となるので x ∈ 2N である. 同様に, x = 6n = 3 × 2n = 3n2 (n2 = 2n とすると
n2 ∈ N) となるので x ∈ 3N である. よって, x ∈ 2N ∩ 3N となるので, 6N ⊂ 2N ∩ 3N が成り立つ.
以上より, 6N = 2N ∩ 3N であることがわかる.
(証明終わり)
(2)(証明) x ∈ 2N ∪ 3N とすると, x ∈ 2N・
・
・ または x ∈ 3N・
・
・ である. ( の場合)x ∈ 2N のとき, x は 2
の倍数として表される自然数である. 2 の倍数だから, 5 以上の素数ではない. よって x ∈ N − P5 である. ( の
場合)x ∈ 3N のとき, x は 3 の倍数として表される自然数である. 3 の倍数だから, 5 以上の素数ではない. よって
46
x ∈ N − P5 である.
明終わり)
いずれの場合も x ∈ N − P5 となるから, 2N ∪ 3N ⊂ N − P5 であることがわかる. (証
問 11.2 A ∩ B = ∅, A ∪ B = N
問 11.4 (1) (0, ∞) (2) (−∞, 0) (3) (−∞, 0) (4) (−∞, 1)
問 11.6 (1) ∅ (2) {0} (3) {0} (4) {0}
∪
∩
∩
問 11.7 (
(R − An ) = R −
An の証明)(⊂ が成り立つこと) すべての k ∈ N について Ak ⊃
An
n∈N
だから, R − Ak ⊂ R −
∪
(R−An ) ⊂ R−
n∈N
∩
∩
n∈N
n∈N
An となる. 左辺の k を動かして和集合をとっても包含関係は保存されるので,
n∈N
An が成り立つ. (⊃ が成り立つこと) x ∈ R−
n∈N
∩
∪
n∈N
∪
∩
(
∪
n∈N
(R − An ) = R −
n∈N
R−Ak ⊃ R−
R−
(R − An ) ⊃ R −
∪
∪
∩
An が成り立つ. 以上より, 等号が成り立つことがわかる. (証明終わり)
n∈N
An の証明)(⊃ が成り立つこと) すべての k ∈ N について Ak ⊂
n∈N
An となる. 左辺の k を動かして共通部分をとっても包含関係は保存されるので,
n∈N
An が成り立つ. (⊂ が成り立つこと) x ∈
∩
n∈N
(
∩
(R − An ) = R −
て用いると,
∩
An の別証明) 先に示した, R −
(R − An ) の補集合は, R −
(R − An ) = R −
∪
An である. よって,x ∈ R −
∩
∩
∪
n∈N
(R − An ) =
n∈N
Bn =
∪
An とな
n∈N
An が成り立つ. 以上より, 等号が成り立つことがわかる.
n∈N
n∈N
∪
n∈N
∪
(R−An ) ⊃
(R − An ) とすると, すべての n ∈ N について x ∈ R − An
n∈N
n∈N
∩
∪
An だから,
∩
n∈N
n∈N
(R − An ) ⊂ R −
∪
n∈N
である. つまり, すべての n ∈ N について x ∈ An となるので x ∈
∩
(R−An )
n∈N
n∈N
り,
An であ
n∈N
る. 共通部分に入っていないということは, x ∈ Ak となる k ∈ N が存在する. このとき x ∈ R−Ak ⊂
である. よって,
∩
An とすると, x ∈ R かつ x ∈
∪
(証明終わり)
(R − Bn ) を, Bn = R − An とし
n∈N
An となる. よってさらに補集合を考える事で,
n∈N
An が示された.
n∈N
n∈N
問 11.8 (1) (−∞, 1) ∪ N (2)(−∞, 0] (3) (0, ∞) (4) ∅
∪
問 11.9 (1) Z (2)
(n, n + 1)
n∈N
[第5章]
1
+ 2, 漸近線 x = −1, y = 2, 定義域 {x| − 2 ≤ x ≤ 0 かつ x = −1}, 値域 {y|y ≤
x+1
1 あるいは 3 ≤ y}, グラフ略.
√
(2) y = 3(2 − x), 定義域 {x| − 1 ≤ x ≤ 2}, 値域 {y|0 ≤ y ≤ 3}, グラフ略.
(3) 定義域 {x|x ∈ R}, 値域 {y| − 1 ≤ y ≤ 1}, グラフ略.
)
(
∪
1
(4) 漸近線 x = (n + )π, n ∈ Z, 定義域 n∈Z (n − 12 )π, (n + 12 )π , 値域 {y|y ∈ R}, グラフ略.
2
(5) 定義域 {x| − 2 ≤ x ≤ 2}, 値域 {y|0 ≤ y ≤ 2}, グラフ略.
(6) 漸近線 x = 0, y = x, 定義域 {x|x ∈ R かつ x = 0}, 値域 {y|y ≤ −2 あるいは 2 ≤ y}, グラフ略.
問 12.8 (1) 単調増加関数 なし単調減少関数 (2)
問 12.7
(1) y =
(2) 周期関数 (3),(4)
(3) 奇関数 (4),(6), 偶関数 (3),(5),
問 12.10 (1) y = x2 , (x < 0), グラフ略.
(2) y = 4 − x2 , (x > 0), グラフ略.
√
(3) y = x, (x > 0), グラフ略.
47
[第6章]
問 13.3 略
問 13.4 題意より p < −1 とき q = 0, p = −1 とき q = 1, −1 < p < 1 とき q = 2, p = 1 とき q = 1, p > 1 とき
q = 0 となる. したがって X = R,Y = {0, 1, 2} とすると, X の要素 p に対して Y の要素 q が決まる対応 f は関数
の定義を満たしている.
問 14.2 (g ◦ f )(x) = g(f (x)) が R から R への関数の定義を満たしていることを確かめる. (1) どんな実数 x ∈ X
に対しても y = f (x) ∈ Y が成り立つ. さらにこの実数 y に対して z = g(y) ∈ Z が成り立つ。したがってどんな
実数 x ∈ X に対しても z = g(f (x)) ∈ Z が成り立つ。(2) 関数 f に対して, x1 = x2 ならば f (x1 ) = f (x2 ) が成り
立つ. さらに関数 g に対して, f (x1 ) = f (x2 ) ならば g(f (x1 )) = g(f (x2 )) が成り立つ. したがって x1 = x2 ならば
g(f (x1 )) = g(f (x2 )) が成り立つ.
問 14.4 (g ◦ f )(x) = 41 {4x2 + 4px + p2 + 3}, p = 1.
問 15.2 (1)B でない =⇒ A でない.
(2)f (x1 ) = f (x2 ) =⇒ x1 = x2
問 16.2 (1)y = sin−1 x, 定義域 {x| − 1 ≤ x ≤ 1}, グラフ略.
(2)y = cos−1 x, 定義域 {x| − 1 ≤ x ≤ 1}, グラフ略.
(3)y = tan−1 x, 定義域 {x|x ∈ R}, グラフ略.
問 16.3 (1)y = 12 x − 3, 定義域 {x|2 ≤ x ≤ 10}, グラフ略.
√
(2)y = 1 − 2x, 定義域 {x|x ≤ 21 }, グラフ略.
(3)y = x2 − 4, 定義域 {x|x ≥ 0}, グラフ略.
(4)y = log2 (x + 1), 定義域 {x|x ≥ −1}, グラフ略.
(5)y = 3x−1 , 定義域 {x|x ∈ R}, グラフ略.
問 17.4 f (A) = {−3x | x ∈ [2, 4]} = [−12, −6], f −1 (B) = {x | − 3x ∈ [3, 6]} = [−2, −1]
問 17.5 f (A) = {x2 − 2 | x ∈ (−1, 3)} = [−2, 7) f −1 (B) = {x | x2 − 2 ∈ [−5, 2]} = [−2,(2]
∪ 4n − 1 4n + 1 )
3π
−1
問 17.6 f (A) = {2 cos x | x ∈ (0, 3π
)}
=
[−2,
2)
f
(A)
=
{x
|
2
cos
x
∈
(0,
)}
=
π,
π
2
2
2
2
n∈Z
問 17.8(証明) 以下のように必要十分な条件で変形できる. x ∈ (g ◦ f )−1 (C) ⇔ (g ◦ f )(x) ∈ C ⇔ g(f (x)) ∈ C
⇔ f (x) ∈ g −1 (C) ⇔ x ∈ f −1 (g −1 (C)) よって, (g ◦ f )−1 (C) = f −1 (g −1 (C)) が成り立つ.
(証明終わり)
問 17.11 (証明) y ∈ f (A ∩ B) とすると, y = f (x) となる x ∈ A ∩ B が存在する. x ∈ A より f (x) ∈ f (A) であ
り, かつ, x ∈ B より f (x) ∈ f (B) である. よって f (x) ∈ f (A) ∩ f (B) となるので, f (A ∩ B) ⊂ f (A) ∩ f (B) が
成り立つ.
(証明終わり)
問 17.12 例えば, f (x) = x とすると, どんな A, B ⊂ R についても, f (A ∩ B) = A ∩ B = f (A) ∩ f (B) となる.
例えば, g(x) = x2 , A = [−2, −1], B = [1, 2] とすると, A ∩ B = ∅ なので, g(A ∩ B) = ∅ である. A, B の g によ
る像を考えると, g(A) = [1, 4], g(B) = [1, 4] なので, g(A) ∩ g(B) = [1, 4] となる. よって, g(A ∩ B) = g(A) ∩ g(B)
である.
問 17.13 (証明) A ⊂ B ということを仮定して, f −1 (A) ⊂ f −1 (B) を導く. x ∈ f −1 (A) とすると, f (x) ∈ A であ
る. A ⊂ B という仮定より, f (x) ∈ B となる. よって x ∈ f −1 (B) となるので, f −1 (A) ⊂ f −1 (B) が成り立つ.
(証明終わり)
問 17.15 (証明)(⊂) A ∩ B ⊂ A より, 問 18.13 の結果を使うと, f −1 (A ∩ B) ⊂ f −1 (A) である. 同様にして
f −1 (A ∩ B) ⊂ f −1 (B) だから, f −1 (A ∩ B) ⊂ f −1 (A) ∩ f −1 (B) である.
(⊃) x ∈ f −1 (A) ∩ f −1 (B) とすると, x ∈ f −1 (A) かつ x ∈ f −1 (B) である. 逆像の定義から, f (x) ∈ A かつ
f (x) ∈ B となるので f (x) ∈ A ∩ B である. よって x ∈ f −1 (A ∩ B) となり, f −1 (A) ∩ f −1 (B) ⊂ f −1 (A ∩ B) で
ある.
(証明終わり)
問 17.16 (1)(証明) y ∈ f (R) − f (A) とすると, y ∈ f (R) かつ y ∈ f (A) である. y ∈ f (R) より y = f (x) となる
48
x ∈ R が存在する. その x について x ∈ A である (もしも x ∈ A とすると y = f (x) ∈ f (A) となって y のとり方
に矛盾する). つまり x ∈ R − A となるので y = f (x) ∈ f (R − A) だから, f (R) − f (A) ⊂ f (R − A) である. (証
明終わり)
(2) 以下のように必要十分な条件で変形できる. x ∈ f −1 (R − B) ⇔ f (x) ∈ R − B ⇔ f (x) ∈ R かつ f (x) ∈ B
⇔ x ∈ f −1 (R) かつ x ∈ f −1 (B) (f −1 (R) = R より) ⇔ x ∈ R − f −1 (B) よって, f −1 (R − B) = R − f −1 (B)
である.
問 17.17 (1)(証明) (⇒) 「f (A) ⊂ B が成り立つ」ことを仮定して, 「A ⊂ f
−1
(証明終わり)
(B) が成り立つ」ことを示す. x ∈ A
とすると f (x) ∈ f (A) である. 仮定より f (A) ⊂ B だから f (x) ∈ B となる. よって x ∈ f −1 (B) となるので,
A ⊂ f −1 (B) が成り立つ.
(⇐) 「A ⊂ f −1 (B) が成り立つ」ことを仮定して, 「f (A) ⊂ B が成り立つ」ことを示す. y ∈ f (A) とすると
y = f (x) となる x ∈ A が存在する. 仮定より A ⊂ f −1 (B) だから x ∈ f −1 (B) となるので y = f (x) ∈ B. よって
f (A) ⊂ B が成り立つ.
(証明終わり)
(2) (証明) x ∈ A とすると f (x) ∈ f (A) である. (考えやすくするために B = f (A) とおくと, f (x) ∈ B. 逆像
の定義より x ∈ f −1 (B). この B をもとの f (A) に戻すと次の式が得られる) よって, x ∈ f −1 (f (A)) となるので,
A ⊂ f −1 (f (A)) である.
(証明終わり)
−1
−1
(3) (証明) y ∈ f (f (B)) とすると, y = f (x) となる x ∈ f (B) が存在する. このとき y = f (x) ∈ B となるの
で f (f −1 (B)) ⊂ B である.
(証明終わり)
問 17.18(2) (⊃ が=となる一例) y = 2x, A = [1, 2] とすると, f (A) = {2x | x ∈ [1, 2]} = [2, 4],
f −1 (f (A)) = f −1 ([2, 4]) = {x | 2x ∈ [2, 4]} = [1, 2] = A
(⊃ が = となる一例) y = x2 , A = [1, 2] とすると, f (A) = {x2 | x ∈ [1, 2]} = [1, 4],
f −1 (f (A)) = f −1 ([1, 4]) = {x | x2 ∈ [1, 4]} = [−2, −1] ∪ [1, 2] = [1, 2] = A
(3) (⊂ が=となる一例) y = 2x − 1, B = [1, 3] とすると, f −1 (B) = {x | 2x − 1 ∈ [1, 3]} = [1, 2],
f (f −1 (B)) = f ([1, 2]) = {2x − 1 | x ∈ [1, 2]} = [1, 3] = B
(⊂ が = となる一例) y = x2 , B = [−2, 4] とすると, f −1 (B) = {x | x2 ∈ [−2, 4]} = [0, 2],
f (f −1 (B)) = f ([0, 2]) = {x2 | x ∈ [0, 2]} = [0, 4] = [−2, 4] = B
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