10年を迎える JREIT市場の これまでの 歩みと今後 - 不動産証券化協会

Special
J リート 10 周年記念企画
アナリスト
連続レポート
J-REIT市場が時価総額10兆円、
取得価格総額20兆円を目指すために
鳥井 裕史
SMBC 日興証券株式会社
株式調査部
シニアアナリスト
( ARES マスター M0701477 )
10年を迎える
JREIT市場の
これまでの歩みと今後
J-REIT市場の10年間は
意義深いものであった
年の J-REIT の割合は 6%にすぎなかった。その
後はその 割 合 は 上昇 傾 向となり、2005 年から
2007 年にかけては J-REIT が買い手として約半数
を占めるまでになった。一方、2008 年から 2010
J-REIT 市場は 2001 年 9 月 10 日に日本ビルファ
年に関しては資金調達環境の悪化等によりJ-REIT
ンド投資法人とジャパンリアルエステイト投資法人
の買い手としての割合は 20%台に低下し、これが
が東証に上場してスタートした。そして 2011 年 9 月
当時における不動産売買市場の低迷につながった
10 日に市場創設 10 周年を迎えた。2001 年 9 月 10
と考えられる。
日終値をベースとして上記 2 銘柄の時価総額は約
これらを勘案すると、今後の不動産売買市場の
2,600 億円、同月末時点の取得価格総額は約 3,200
動向は J-REIT 市場がカギを握っていると言っても
億円であった。一方、2011 年 9 月末時点における
過言ではないだろう。J-REIT 市場が活 性化し、
J-REIT 市場全体の時価総額は 3 兆 2,000 億円、
J-REIT による資金調達が旺盛になれば不動産売
取得価格総額は 8 兆 2,000 億円である。2007 年 5
買市場も活発化するであろう。逆に、J-REIT 市場
月末にはJ-REIT 市場全体の時価総額が 6 兆 8,000
が低迷し、J-REIT による物件取得が低水準にと
億円にまで拡大したものの、2008 年に発生したリー
どまれば不動産売買市場も低迷するだろう。すな
マンショックやニューシティ・レジデンスショックの
わち、 不 動産 売 買市場 や不 動産価 格 の動向は
後に時価総額は急減、取得価格総額の伸びは鈍化
J-REIT 市場の物件売買動向がかなり重要である
した。しかしながら J-REIT 市場は足元まで着実
と言えよう。
に資産規模を拡大してきたと言えよう。
また、2001 年 9 月 10 日から 2011 年 9 月末まで
J-REIT 市場が資産規模を拡大するにつれ、不
の約 10 年間における J-REIT 市場全体の価格指
動産市場における買い手としての存在感も大きく
数は -7.4%にとどまっている一方、配当込みのトー
なっていった。都市未来総合研究所の調べによる
タルリターンは +50.9%となっている。J-REIT は利
と、上場企業の不動産取引の買い手のうち、2001
益のほぼ全額を分配する仕組みであるが、約 10 年
28
ARES53.indb 28
11.12.5 5:27:17 PM
10 年を迎える JREIT 市場のこれまでの歩みと今後
図 1 J-REIT 及び国内株式の年別パフォーマンス
(配当なし)
(%)
図 2 J-REIT 及び国内株式の年別パフォーマンス
(配当込み)
(%)
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
0
-10
-10
-20
-20
-30
-30
J-REIT(配当なし)
TOPIX(配当なし)
-40
-40
-50
年
2001-201
1
年
2011
年
2010
年
2009
年
2008
年
2007
年
2006
年
2005
年
2004
年
2003
年
2002
年
2001
年
2001-201
1
年
2011
年
2010
年
2009
年
2008
年
2007
年
2006
年
2005
年
2004
年
2003
年
2002
年
2001
-50
-60
J-REIT(配当込み)
TOPIX(配当込み)
出所:QUICK、ブルームバーグ、東証、SMBC 日興証券
図 3 J-REIT 市場全体の累積分配金総額(億円)
12,000
累積分配金総額(億円 )
10,000
8,000
6,000
4,000
0
2001/9
2001/12
2002/3
2002/6
2002/9
2002/12
2003/3
2003/6
2003/9
2003/12
2004/3
2004/6
2004/9
2004/12
2005/3
2005/6
2005/9
2005/12
2006/3
2006/6
2006/9
2006/12
2007/3
2007/6
2007/9
2007/12
2008/3
2008/6
2008/9
2008/12
2009/3
2009/6
2009/9
2009/12
2010/3
2010/6
2010/9
2010/12
2011/3
2011/6
2011/7
2,000
出所:各投資法人資料より SMBC 日興証券作成
間という長期的なスパンで見ると、
「インカムゲイン」
を達成してきた。2001 年から 2011 年 7 月期実績
の大きさが改めて魅力的であると感じられるだろ
までの J-REIT 市場全体における分配金総額は約
う。同期間における TOPIX に対する超過リターン
1.2 兆円。2011 年 9 月末時点の J-REIT 市場全体
は価格指数が +20.5%、配当込みのトータルリター
の時価総額が 3.2 兆円であることを勘案すると、
ンが +67.1%であり、同様にトータルリターンの超
この 10 年弱の期間で投資家に分配した分配金の
過収益の大きさが見てとれる。
大きさには感嘆するところである。
このように、J-REIT は「インカムゲイン」の積み
このように、過去 10 年間を振り返ると、J-REIT
上げによりTOPIX を大きく上回るトータルリターン
市場は投資家に魅力的なインカムゲインを分配して
29
ARES53.indb 29
11.12.5 5:27:22 PM
J リート 10 周年記念企画
きたとともに、不動産売買市場にも大きな影響を与
資発表日の終値=発行価格の条件価格」とできる
えてきた。今後はさらに市場規模を拡大させること
ようにすることも考え方の一つとして挙げられよう。
により、より一層幅広い投資家に利益を還元して
また、資金調達手段の多様化についても今後一
いくとともに、日本の不動産市場および日本経済
層議論していくことが求められよう。この点につい
全体に活性化をもたらすことに期待したい。具体
ては、
「投資家に信頼される不動産投資市場確立
的には、J-REIT 市場の規模が時価総額 10 兆円、
フォーラム」のとりまとめ等で指摘されているように、
取得価格総額 20 兆円にまで拡大することを望む。
J-REIT も転換投資法人債(転換 社債・CB)や、
この数値を実現するためには既存投資主の利益
既存投資主への新投資口予約権の付与(ライツ・
を損なわずに(一口当たり収益性を損なわずに)、
増資を継続的に実行しながら物件取得を重ねてい
くことが必要である。そのために円滑な資金調達
と優良物件の確保が必要となる。本稿では、これ
イシュー)の導入についての議論があった。
転換投資法人債(CB)の
導入の是非
らを着実に実行していくための論点について整理
したい。
円滑なエクイティファイナンス
を実行するために
転換投資法人債の導入に関しては、例えば投資
口への転換価格を現在の一口当たり純資産額に設
定した場合、投資口価格が同水準を上回り、投資
口へと転換されていけば、一口当たり純資産を毀
損させずに増資を実行したことと同じ効果を持つ。
最近のJ-REIT による公募増資の状況を見ている
また、投資口価格の上昇局面で投資口へと転換さ
と、増資発表前後で投資口価格が軟調に推移する
れていくことが予想されていくことから、需給悪化
ことがしばしば見受けられる。一口当たりの収益
を要因とした投資口価格の下落を懸念せずにすむ
性が低下する増資であった場合は REIT のマネジ
と思われ、有効な資金調達手段と考えられる。こ
メントに責任があるためやむを得ない。これは
れにより、円滑に LTV を低下させることも実現し
REIT のマネジメント力の資質が問われよう。一方、
よう。
一口当たりの収益性が損なわれないにも関わらず、
一方、発行体側の予期せぬタイミングで投資口
公募増資の発表前後に投資口価格が下落する場合
へと転換されることも予想されることから、決算発
も多い。この点に対しては「REIT の公募増資では
表時に公表される予想一口当たり分配金が希薄化
有効な物件取得により一口当たりの収益性は毀損
により未達となるリスクはある。一口当たり純資産
しない」という認識を広くアピールすべきであろう。
の毀損はないものの、一口当たり分配金を重視す
また、REIT は投信法上の商品であり、金商法
る投資家にとっては必ずしも歓迎されるとは限らな
で定めるインサイダー取引規制の対象ではない。こ
い(増資発表により投資口価格が大きく変動するこ
の点も投資口価格の不自然な値動きの一因として
とと比較すると良いとは考えるが)。
考えられる。法整備の再検討も必要であろう。また、
また、現在の J-REIT 市場における主要な投資
公募増資発表から発行価格の条件決定日まで一定
家は REIT 特化型投信や地方銀行等である。現
の期間があるため、REIT が想定する調達額に達
在の REIT 特化型投信は東証 REIT 指数をベン
せずに、結果として一口当たりの収益性の低下に
チマークとし、投資口への投資に特化しているケー
つながる場合もある。この点に関しては、
「公募増
スが多い。これらの REIT 特化型投信が転換投
30
ARES53.indb 30
11.12.5 5:27:22 PM
10 年を迎える JREIT 市場のこれまでの歩みと今後
資法人債を保有できる体制になるかは定かでない
全性を高めたり、優良物件の取得機会を得ること
点は懸念される。また、転換投資法人債が投資口
ができる。2009 ~ 2010 年にかけてシンガポール
に転換されなければ「社債 + α」としての価値に
や欧州の REIT 市場ではライツ・イシューを導入し
とどまるため、東証 REIT 指数に連動しないこと
た増資が活発であった。
も想定される。J-REIT 市場が下落局面であった
一方、ライツ・イシューの導入に良い点ばかりが
場合は、価格下落リスクが抑制されるためむしろ
あるわけではない。ライツ・イシューが付与された
メリットとなり得る場合もあるが、上昇局面であっ
増資に対して既存投資主が応じなければ、もちろ
た場合はデメリットとなることもあろう。また、地方
ん既存投資主は利益を希薄化されてしまう。その
銀行等でも投資口(エクイティ)と投資法人債(デッ
増資のタイミングで投資家側の資金の余力があると
ト)を運用するセクションが分離されているケース
も限らない。また、ライツ・イシューが横行すれば、
が多いと思われる。転換投資法人債を発行するた
REIT 側の都合が優先されてしまい、投資家側は
めに、投資家側の運用体制も抜本的に見直す必要
自身の持分を希薄させないために増資に「応じざ
性がある点を課題点として挙げることができよう。
るを得ない」という状況に陥る可能性がある。つ
新投資口予約権(ライツ
・イシュー)
の導入の是非
まり、REIT 側に「一口当たり純資産や一口当たり
収益性を希薄化しても問題ない」というモラルハ
ザードが生じてしまう可能性がある。したがって、
ライツ・イシューは「増資をしなければ財務健全性
「既存投資主への配慮」という観点では、REIT
が増資を実行する際に、既存投資主に対して新投
が著しく損なわれてしまう」という緊急事態の時に
だけ導入されるような倫理観も必要である。
資口予約権(ライツ・イシュー)を付与することを
導入する点も引き続き議論すべきであろう。一口当
たり純資産を下回る水準で増資を実行する場合、
円滑なデット調達
既存投資主の立場からすると、一口当たり純資産
や一口当たり収益性が希薄化してしまうため、ディ
J-REIT が安定的な運営をしていくためや資産
スカウント増資は許容しづらい。一方、REIT 側の
規模を拡大させていくためには、円滑にデットをリ
立場からすると、財務健全性を高めるために LTV
ファイナンスすることや新規にデットを調達すること
を引き下げることや優良な物件を取得するために増
が重要である。
資が必要な場合がある。筆者は既存投資主の利
2008 年から 2009 年にかけて、リーマンショック
益を毀損するようなディスカウント増資は極力回避
やニューシティ・レジデンス投資法人の破綻に伴い、
すべきと考えているが、やむを得ないこともあろう。
J-REIT のデットファイナンス、とりわけリファイナン
そこで有効な資金調達手段の一つとして考えられ
スが困難となり、円滑な運営に支障をきたす事例
るのがライツ・イシューである。既存投資主がライツ
・
が相次いだ。当時は投資法人債のリファイナンスを
イシューの行使によりディスカント増資に対して従
乗り切るために官民一体となった「不動産市場安
来持分相当分を応じることができれば、実質的な
定化ファンド」の創設等により何とかリファイナンス
利益の希薄化を回避することができよう。このよう
問題を乗り切ることができたが、一方でデットコス
なライツ・イシューができれば投資口価格水準に関
トの大幅上昇により一口当たり分配金が大きく減
わらず、REIT は増資を実施することにより財務健
少する REIT も相次いだ。
31
ARES53.indb 31
11.12.5 5:27:22 PM
J リート 10 周年記念企画
この教訓を生かし、各 REIT はデットの返済期
動産を売却する際は売却益相当分に対する課税が
限の長期化、分散化をより進める必要があろう。
減免もしくは繰り延べられるという制度を取り入れ
また、各金融機関に対しては、
「REIT は定期的な
ることも有効と言えよう。また、一定規模以上の
金利返済は安定的に行う一方で、内部留保をあま
優良物件を REIT に供給する際には REIT への現
り持たない主体であることから早急な元本返済能
物出資が認められる制度を導入すること、導管性
力には乏しい」という収益特性、バランスシート構
要件を緩和し、REIT の投資口を保有する代わり
造を正しく理解していただく必要があろう。
に物件を REIT に供給すること等も考えられる。
2011 年 9 月末時点における J-REIT 市場全体の
開発と保有の役割を不動産ディベロッパーと REIT
有利子負債残高は約 3 兆 8,000 億円である。また、
にそれぞれ役割分担させやすいビジネスモデルを
同資金の出し手の割合は大手メガバンク 3 行が
構築することが求められよう。
30%強、信託銀行が 25%程度の一方、地方銀行
また、公的セクターが保有するインフラ施設等
は 7%程度にすぎない。全産業での貸出総額のう
が REIT に組み込まれやすいようになれば、公的
ち地方銀行が占める割合が約半数であることと比
セクターの財務健全性の向上、J-REIT 市場の拡
較すると、J-REIT 向け融資の割合は非常に小さい。
大に寄与するものと考えられる。ヘルスケア施設等
今後は J-REIT に対する地方銀行の積極的な融資
用途を拡大させて多種多様なタイプの物件に投資
を期待する。また、投資法人債の円滑な発行も引
をしていくことや、アジア地域をはじめとする海外
き続き課題として挙げられよう。
不動産ポートフォリオの構築も有効な資産規模拡
筆者が掲げた「J-REIT 市場全体で取得価格総
大策として考えられる。例えば、米国 REIT 市場
額 20 兆円」を達成するためには LTV が 50%であ
では 2011 年 8 月末時点においてヘルスケア REIT
れば有利子負債は 10 兆円が必要であり、現状水
は FTSE NAREIT All Equity REIT Index ベー
準から約 6 兆円の新規デットマネーが必要である。
スで、12 銘柄あり、全体に占める時価総額の割合
は 12.6%に達する。
優良物件の確保に向けて
シンガポール REIT 市場に目を向けると、例え
ば物流施設型 REIT である「Mapletree Logistics
Trust」の 2010 年 12 月末時点の国別投資比率(ア
資産規模を拡大していくことや良質なポートフォ
セットバリューベース)はシンガポールが 44.0%、
リオを築いていくためには「優良物件を適正な価格
日本が 26.4%、香港が 19.1%、中国が 5.2%、マレー
で取得する」という点が今後の J-REIT 市場の発
シアが 3.6%、韓国が 1.4%、ベトナムが 0.2%であ
展に欠かせない。日本のビジネス地区の中心であ
る。また、サービスアパートメントを中心とした賃
る東京の丸の内・大手町エリアに立地する大型オ
貸住宅に特化した「Ascott Residence Trust」の
フィスビルを見渡すと、J-REIT が保有する物件は
ポートフォリオはアジアのみにとどまらず、欧州等
グローバル・ワン不動産投資法人の「大手町ファー
の物件にも投資をしている。
ストスクエア」の一部やジャパンリアルエステイト投
これまでは安定資産である日本の不動産を輸出
資法人の「三菱 UFJ 信託銀行本店ビル」の一部
していたのであれば、今後は成長著しいアジア市
等を保有するにすぎない。優良物件を保有する主
場の勢いを取り込むためや国際分散投資を実行す
体が REIT に不動産を売却するインセンティブが
るために「不動産を輸入する」ことも重要かと考え
働く仕組みが重要と考える。例えば、REIT に不
られる。
32
ARES53.indb 32
11.12.5 5:27:23 PM
10 年を迎える JREIT 市場のこれまでの歩みと今後
投資口を売却していることが背景にあるのだろう
投資家層の拡大に向けて
が、これは投資口の長期保有が浸透していないこ
とが一因であろう。J-REIT を保有する大きなメリッ
トは分配金を長期にわたって獲得することだという
前述したように、J-REIT は長期的に保有すれば
インカムゲインの積み上げにより TOPIX 等に比較
点を販売主体である証券会社がしっかりと啓蒙し
ていく必要がある。
して高いパフォーマンスを上げてきた。これは長期
仮に東証 REIT 指数が 1,200 ポイントに回復し
的に運用を行うタイプの投資家にとって非常に有効
た場合でも現在の J-REIT 市場では時価総額は 4
なアセットクラスである。しかしながら、一般的に
兆 2,000 億円弱である。時価総額を 10 兆円に拡
長期的な運用を行うと言われている年金や個人投
大させるためには、今後の新規上場や公募増資等
資家に J-REIT 投資が浸透していないことも事実
により新たに 5 兆円以上のエクイティファイナンスが
であると言わざるを得ない。
必要となる。つまり今後 10 年でこの数値を達成す
不動産証券化協会(ARES)が実施したアンケー
るためには年間 5,000 億円程度のエクイティファイ
ト調査によると、国内年金の不動産、REIT への
ナンスを継続的に行っていく必要があるのである。
投資は広く浸透しているという状況には至っていな
J-REIT 市場が拡大していくためには既存投資
い。2010 年度の「実物不動産あるいは不動産証券
家の拡大に加え、新規の投資家層が充実していく
化商品への投資を行っている」年金の比率は 34%
必要がある。そのために、各主体がそれぞれの役
であり、全体の 3 分の 1 程度にとどまっている。
割をしっかりとこなしていくことが重要である。す
「J-REIT への投資を実施している」年金の割合は
なわち、各 J-REIT は着実な運用を行い安定した
11%にすぎない。年金が J-REIT に投資しない主
分配金を出していくこと、成長していくこと。投資
な理由は、市場規模が十分に大きくないことから
口を販売する証券会社は目先の収益ではなく投資
もたらされる流動性の少なさやボラティリティの高
家の長期的な運用をサポートするために誠実な理
さが指摘できる。年金資金を取りこんでいくために
解と営業活動を行うこと。ARES や証券取引所等
も市場規模を拡大させていくことが重要であろう。
は J-REIT 市場の健全な発展のために幅広い投資
また、弊社の試算によると、2011 年 6 月末時点
家層に啓蒙活動を行うこと。当局は J-REIT 市場
の J-REIT 市場全体における投資主構成で個人投
の健全な発展のために税制等の制度改善に取り組
資家の比率は 10%程度にとどまっている。また、
むこと等である。
東京証券取引所のデータによる最近の J-REIT 市
筆者も J-REIT 市場の拡大、活性化の一役を担
場における投資部門別売買状況を見ると、個人投
うために、今後も J-REIT 市場に真摯に向き合っ
資家は恒常的な売り越し主体となっている。基本
ていく所存である。
的には公募増資を引き受けた個人投資家が市場で
とりい ひろし
大和総研及び大和証券 SMBC(現・大和証券 CM)において年
金運用コンサルティング業務の一環として不動産投資分析業務に
従事した後、2006 年より REIT 専門のアナリスト業務に従事。
2010 年 10 月より現職。
(社)日本証券アナリスト協会検定会員、(社)不動産証券化協会認
定マスター
33
ARES53.indb 33
11.12.5 5:27:23 PM