ESRの性能と温度 - TDK Product Center

MLCCよくある質問:
ESRの性能と温度
摘要
この資料では、温度による影響を中心に、ESR(Equivalent Series
Resistance、等価直列抵抗) の性能についてよくある質問を取り上
げます。温度による影響には、外的要因また内的要因の両方があ
ります。
2006 年 11 月
ESRの性能と温度
Q1. ESRとは何ですか?
A1. コンデンサのような部品を理論的に取り扱う
場合、その部品は回路に静電容量のみを付与
する“理想的”または“完全な”部品とみなされる
傾向にあります。しかし、どの物理的デバイスも
有限の電気抵抗をもつ材料からできています。
つまり、物理的部品には他の属性とともに抵抗が
含まれます。
高容量セラミックコンデンサは通常、内部電極層
数が多くなります。MLCCの各層を抵抗として考
えると、内部電極の回路モデルは並列抵抗に相
当します。並列抵抗は値が低下するので、層数
の多いMLCCはESRが低くなります。これは当然
ながら他のパラメータが等しいと仮定した場合で
す。
ESRはデバイスの複合インピーダンス Z(ω) = R
+ j X(ω) の実抵抗成分です。この複合インピー
ダンスには複数の比較的小さな静電容量が影響
する場合があります。このデバイスの理想的な動
作とのわずかなズレが、稼動条件(高周波、高電
流、温度限界)によっては重大な意味をもつ可能
性があります。
Q4. ストレスやバイアスが異なるとESRにどれくら
い影響しますか?
A4. 回路設計で考慮するべき重要なストレスや
バイアスの因子はいくつもあります。電気的には、
ESRは回路の周波数の影響を受けます。これは
EQ 1に示したESRの式から明らかです。電圧や
温度など、他のストレスはESRに影響しません。
図1は温度に伴うESRの安定性の一例です。図1
で は 、 イ ン ピ ー ダ ン ス と ESR の ど ち ら も 室 温 と
125℃で測定されています。グラフでは、ESRとイ
ンピーダンスのどちらにも温度による違いは見ら
れません。
ESRは通常、以下のような数式で表されます。
(EQ 1)
Q2. ESRの物理的構成要素とは何ですか?
A2. ESRは物理的に2つの成分から成ります。1つ
目は純粋な電気抵抗Reで、これは端子と内部電
極からなります。もう1つは強誘電性セラミック材
料によるものです。
Q3. 容量の異なるMLCCでは、ESRにどれくらい
の違いがありますか?
A3. 誘電体を比較すると、一般的に他の変数が
同じであれば、Class I誘電体はClass II誘電体よ
りESRが低くなります。しかし、Class I誘電体は誘
電率が低いため、Class II誘電体なら得られるよう
な高容量は得られません。
図1:25℃と125℃での|Z|/ESR
図1を見ると、ESRは温度によって変化していま
せん。しかし、これは回路の性能にとって温度が
重要な要素ではないという意味ではありません。
2006 年 11 月
Q5. 温度は性能にどのような影響を及ぼします
か?
A5. 温度それ自体はESRに影響しません。温度
の影響を受けるのはコンデンサの性能です。材
料の温度特性は、コンデンサの最大定格動作
温度を規定します。たとえば、X7Rの動作温度
は最大125℃、X5Rは最大85℃です。
リップル電流は、自己発熱による最大許容電流
を示します。リップル電流はESRの関数です。以
上をまとめると、ESRは温度の影響を受けません
が、回路の温度はコンデンサで処理可能なリッ
プル電流量を制限するということです。
簡単に言えば、回路環境とコンデンサの自己発
熱(リップル電流)を合わせた温度は、コンデン
サの最大定格温度を超えることはできません。
たとえばX7Rの場合、回路の動作温度が100℃
であれば、リップル電流による25℃を超える自己
発熱は許容できません。
Q6. 回路を設計する場合、どのようなことに注
意したらよいですか?
A6. この資料で強調するポイントとして、ESRそ
のものは温度の影響を受けないということが挙
げられます。図1のような周波数応答グラフを見
ると、ESRは温度によって変化せず、周波数によ
って変化することが分かります。ESRが回路の動
作にとって重要なパラメータである場合、設計エ
ンジニアは2つのパラメータを考慮する必要があ
ります。その1つは回路の動作周波数です。もう
1つは部品の全体温度です。これは部品の周囲
の外部温度と電流レベルによる内部の自己発
熱を合わせた温度です。
Q7. 全 体 温 度 ( 外 部 と 内 部 の 合 計 温 度 ) が
MLCCの最大定格温度を超えた場合、どうした
らよいですか?
A7. 回路が高温で動作し、大きなリップル電流
が発生している場合、外部温度と内部温度の一
方または両方を下げる必要があります。設計エ
ンジニアは、回路の温度を下げるオプションを
すべて調べる必要があります。外部温度を下げ
るには、ヒートシンクや冷却ファンの増設など、
簡単な対処で済みます。電気的には、リップル
電流を減らす必要があります。検討すべきオプ
ションは、平滑回路を増設してリップル電流レベ
ルを下げることです。そのほか、複数のMLCCを
並列に増設して電流を分配するというオプション
もあります。
個別のソリューションは、実際の回路やモジュー
ルの使用条件によって異なります。
Q8. ESRやリップル電流に関するTDKのリソース
には、ほかにどのようなものがありますか?
A8. ESR対策についてFAQ形式で作成した文
書がいくつかあります。幅広いトピックスを取り上
げている数例を以下に示します。
1. TDK MLCC
SRF測定」
2. TDK MLCC
Modeling for
3. TDK MLCC
ル電流」
よくある質問、「コンデンサの
アプリケーションノート、「ESR
TDK Capacitors」 (英語)
よくある質問、「MLCCのリップ
2006 年 11 月