ESR と放射線照射を利用した OH ラジカル消去能評価法

平成26年度 研究成果発表会
平成 26 年度
研究成果発表会
ESR と 放 射 線 照 射 を 利 用 し た OH ラ ジ カ ル 消 去 能 評 価 法
○ 中 川 清 子 *1)、 関 口 正 之 *1)
1. 目 的 ・ 背 景
生 体 内 で は 、 代 謝 の 過 程 や 紫 外 線 の 暴 露 な ど に よ り 、 OH ラ ジ カ ル な ど の 活 性 酸 素 種 が
生成され、発ガンを引き起こすことが知られている。このため、活性酸素種を除去する機
能を持つ抗酸化物質を含んだ食品が付加価値の高い食品として注目され、抗酸化作用の評
価 に 関 す る 需 要 が 高 ま っ て い る 。 DMPO( 5,5-ジ メ チ ル -1-ピ ロ リ ン -N-オ キ シ ド ) な ど の ス
ピントラップ剤で活性酸素種をトラップし、抗酸化物質の添加によるラジカル量の減少を
ESR( 電 子 ス ピ ン 共 鳴 ) で 測 定 す る 手 法 は 、 特 定 の 活 性 酸 素 種 を 生 成 さ せ て 測 定 で き る こ
と 、実 際 の 生 体 内 で の 反 応 系 に 近 い こ と な ど の 理 由 に よ り 正 確 な 評 価 法 と 期 待 さ れ て い る 。
ESR に よ る 抗 酸 化 能 評 価 で は 、 一 般 的 に 過 酸 化 水 素 水 を 水 銀 ラ ン プ な ど の 紫 外 線 で 光 分 解
し て OH ラ ジ カ ル を 生 成 さ せ る 。し か し 、ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 な ど の 抗 酸 化 物 質 が 300 nm 以
下の紫外線を吸収すると正確な評価ができない。そこで、水の放射線分解を利用して OH ラジ
カルを生成する手法を検討した。
3
2.5
[DMPO-OH]0/[DMPO-OH]t
2. 研 究 内 容
(1)実験方法
DMPO 水 溶 液 及 び 抗 酸 化 物 質 を 溶 解 し た 水 溶
液を亜酸化窒素でバブリングした後、液体クロ
マトグラフのポンプで混合してフローし、直径
1 cm の 照 射 野 で X 線 照 射 し た 。X 線 は 450 kV、
10 mA と し 、 照 射 時 間 と 線 量 は 送 液 の 速 度 で 制
御 し た 。照 射 し た 試 料 は 、扁 平 セ ル に 導 入 後 ESR
測 定 し 、 生 成 し た DMPO-OH ラ ジ カ ル を 定 量 し
た。
2
1.5
1
◇ thymidine
○ mannitol
△ coumaric acid
0.5
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
[scavenger]/[DMPO]
図 1.
抗 酸 化 物 質 添 加 に よ る DMPO-OH
生成の競争反応プロット
(2)結果及び考察
送 液 速 度 :4 mL/min( 照 射 線 量 :0.5 Gy 程 度 )、 DMPO 濃 度 :50 uM の 条 件 で 、 抗 酸 化 物 質
と し て p-ク マ リ ン 酸 ・ チ ミ ジ ン ・ マ ン ニ ト ー ル を 添 加 し た と こ ろ 、 添 加 量 の 増 加 に 伴 っ て
DMPO-OH の 生 成 量 が 減 少 し た 。
DMPO と OH ラ ジ カ ル の 反 応 速 度 を k 1 、 抗 酸 化 物 質 と OH ラ ジ カ ル の 反 応 速 度 を k 2 、 抗
酸 化 物 質 無 添 加 及 び 濃 度 [S]で 添 加 し た 時 の DMPO-OH の 生 成 濃 度 を そ れ ぞ れ [DMPO-OH] 0 、
[DMPO-OH] t と す る と 、 [DMPO-OH] 0 /[DMPO-OH] t = 1+k 2 [S]/k 1 [DMPO]と 表 さ れ る 。 図 1 に
[DMPO-OH] 0 /[DMPO-OH] t を 抗 酸 化 物 質 と DMPO の 濃 度 比 に 対 し て プ ロ ッ ト し た 。 図 1 の
傾 き か ら 抗 酸 化 物 質 の OH ラ ジ カ ル と の 反 応 速 度 比 が 得 ら れ 、 パ ル ス ラ ジ オ リ シ ス 法 で 得
られた反応速度定数の比とほぼ同様の傾向が認められた。
3. 今 後 の 展 開
水 の 放 射 線 分 解 と 組 み 合 わ せ た ス ピ ン ト ラ ッ ピ ン グ ESR 法 に お い て 、パ ル ス ラ ジ オ リ シ
ス 法 と 同 等 な 精 度 で OH ラ ジ カ ル 消 去 能 の 評 価 が 可 能 で あ る こ と が 分 か っ た 。 今 後 、 さ ら
に照射系を改良し、活性酸素消去能測定が可能な試験の実施につなげていく予定である。
*1)バ イ オ 応 用 技 術 グ ル ー プ
H25.4~ H26.3【 基 盤 研 究 】 ESR と 放 射 線 照 射 を 利 用 し た 活 性 酸 素 消 去 能 の 評 価 法
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