MLCC よくある質問 コンデンサの測定 コンデンサの電気的パラメータの測定に関するよくある質問 摘要 この資料では、コンデンサの電気的特性(静電容量、誘電正接、品質係数、絶縁 抵抗)を測定する基本的技術についてご紹介します。 コンデンサはどのように測定したらよいですか? はじめに: この資料では、静電容量、誘電正接、品質係数、絶縁 抵抗の測定の基本を紹介します。 Q1. 静電容量と誘電正接はどのように測定するとよいで すか? A1. 静電容量と誘電正接を正しく測定するポイントは計 器設定にあります(表 1)。 クラス 静電容量 周波数 1,000pF 以下 1MHz ±10% 1,000pF 超 1kHz ±10% 1,0uF 以下 1kHz ±10% 10uF 超 120Hz ±10% Class I Class II 電圧 1.0 ± 0.2 Vrms 1.0 ± 0.2 Vrms 0.5 ± 0.2 Vrms 表 1: 静電容量範囲別とクラス別の 周波数および電圧の設定値 電圧設定値は高容量コンデンサにとって非常に重要で す。容量計によっては、試験部品への印加電圧が十分 でないため、静電容量の測定値が低くなります。 値によって異なる周波数点で標準を設定します(表 1)。 10uF を超える静電容量は、タンタルコンデンサの範囲 内で検討されました。そのため、セラミックコンデンサの 容量範囲がタンタルコンデンサの容量範囲にまで増加 するのに伴い、業界ではセラミックコンデンサにタンタル 測定の周波数基準を取り入れました。 印加電圧もコンデンサの静電容量によって決まります。 一般に、10uF 以下の場合、印加電圧は 1.0 ± 0.2 Vrms です。ただし、10uF を超えると、印加電圧は 0.5 ± 0.2 Vrms です。高静電容量コンデンサのインピーダ ンスは非常に低いので、測定するために十分な電流を 供給するには、電源に 1.0 ± 0.2 Vrms で供給したとき より多くの電流が必要です。したがって、印加電圧を下 げれば、電源から高静電容量コンデンサを正確に測定 するために十分な電流を供給できるようになります 3。 Q3. 容量計は静電容量を Cp または Cs として測定しま す。違いは何ですか? A3. インピーダンス計で測定できるのは、並列静電容量 Cp と直列静電容量 Cs のどちらかです 4。回路モデル はコンデンサの静電容量の値によって決まります(図 1)。 周波数の設定値も重要です。静電容量は周波数によっ て変わるので、工業規格では試験周波数を 1MHz、 1kHz、120Hz のいずれかに定めています(表 1)。 EIA Class Ⅱコンデンサの経時変化についての認識も 重要です。Class Ⅱ材料の場合、静電容量は経時的に 減少します 1 。したがって、静電容量は最後の加熱時 (TOLH)2 から 1000 時間後に交差内とする業界慣例が 受け入れられています。 Q2. 試験周波数/電圧を変えて静電容量を測定する必 要があるのはなぜですか? A2. 容量計の周波数設定値は、主に部品の寄生成分 によって決まります。部品の測定精度を高めるため、測 定周波数を部品の SRF(Self-Resonant Frequency、自 己共振周波数)から離します。業界ユーザは静電容量 図1:インピーダンス等価回路 C が小さくインピーダンスが高いとき、C と Rp との並列 インピーダンスは Rs より著しく高くなります。そのため、 静電容量を測定する容量計の設定は Cp にしてくださ い。C が大きくインピーダンスが低いとき、C と Rp との 並列インピーダンスはさほど高くなりません。そのため、 静電容量を測定する容量計の設定は Cs にしてくださ い。インピーダンス設定を選択する場合の経験則として、 コンデンサのインピーダンス値が 10kΩより高い場合は Cp、10Ωより低い場合は Cs を使用するとよいでしょう。 Q4. どのような機能が付いた容量計を選択するとよいで しょうか? A4. 容量計の最も重要な機能は、印加電圧と測定周波 数です。電圧と周波数の範囲が、表 1 に示す設定に対 応していることを確認してください。1uF を超える MLCC の場合、容量計のインピーダンスが重大な問題となりう ることに注意してください。高容量(1uF 超)コンデンサ を測定する場合、内部インピーダンスを切り替えられる 容量計が必要になることもあります 5。 容量計によってはレベルモニタ機能を備えています。こ の機能は OSC レベルや DC バイアスの出力レベルを 監視するものです。 容量計の測定精度、速度、静電容量範囲も重要です。 静電容量測定の場合、測定精度は 0.07%以内としてく ださい。容量計でコンデンサを測定する場合、特に高 速測定機器の場合は測定時間を十分にとってください。 測定対象コンデンサの容量は、容量計の静電容量範 囲内にしてください。 Q5. “浮遊容量”とは何ですか? A5. 浮遊容量とは一種の測定誤差で、取り付け具やピ ンセットの先端の接点間の静電容量と定義されます。取 り付け具が開いていると、コンデンサの測定値に浮遊容 量が加わります。ただし、開放補正が正しく行われると、 取り付け具によって生じる浮遊容量は正確に補正され ます。 Q6. 補正とは何ですか?どうして必要なのですか? A6. 補正とは、取り付け具やピンセットなどから生じる残 留寄生振動など、測定中に加わる誤差を補償する方法 です。 コンデンサを測定する場合、電気接点を設けるために 取り付け具やピンセットが必要とされます。ただし、取り 付け具には寄生インピーダンスとアドミタンスがあり、望 ましくないインピーダンスやアドミタンスが測定値に加わ る可能性があります。したがって、寄生成分の補正が必 要です。 補正は一般に 3 つのステップ(開放、短絡、負荷)があ ります。開放補正を行うと、寄生アドミタンスが補正され ます。短絡補正を行うと、寄生インピーダンスが補正さ れます。負荷補正によって 50・負荷測定の基準点が設 定されます。 他の測定エラーが表示値に著しく影響する可能性のあ る低静電容量(1000pF 未満)測定にとって、補正が最も 重要であることは明らかです。 Q7. どうすれば Q 値を正確に測定できますか? A7. Q 値(Quality Factor、品質係数)はコンデンサがど の程度、理論的に純粋なコンデンサのように動作する かを計る尺度です 6。Q 値は誘電正接(DF)の逆数です。 通常は静電容量値 が 330pF 以下の場合の Q 値が報 告されます。 正確な Q 値は、個別の静電容量範囲に対応する精密 インダクタンスコイルを使用した Q メータから得られます。 多くの場合、0.5~330pF の範囲で測定するには複数 のコイルが必要です。静電容量が 330pF より大きい場 合、Q 値は誘電正接の逆数です(式 1)。 (式 1) Q8. コンデンサの絶縁抵抗はどのように測定するとよい でしょうか? A8. IR(Insulation Resistance、絶縁抵抗)は、コンデン サの誘電体が漏れ電流にどの程度耐えられるかを示し ます。IR は誘電体そのものの抵抗です 6。IR は漏れ電 流によって測定します。漏れ電流と印加電圧が分かれ ば、絶縁抵抗はオームの法則によって計算できます。 漏れ電流の基本的な測定方法は 2 通りあります。1 つ は電流計をコンデンサと電源に直列につなぐ方法です (図 2)。 例: 定格電圧: 16V 公称静電容量: 100,000pF(または 0.1 uF) IR 限界 = 10,000MΩまたは 100MΩ uF/0.1uF の どちらか小さい方 = 10,000MΩまたは 1,000MΩの どちらか小さい方 図 2: コンデンサと直列につないだ電流計 もう 1 つは、まず電圧計を抵抗と並列につなぎ、次にコ ンデンサと電源に直列につなぐ方法です(図 3)。 ゆえに、IR 限界 = 1,000MΩ 結論: コンデンサの寄生パラメータの測定は、想像以上に難 しいものです。しかし適切な方法を使用し、業界標準を 正しく理解すれば、静電容量、誘電正接、品質係数、 絶縁抵抗は正確に測定できます。 参考: 図 3: 抵抗と並列、コンデンサと直列につないだ電圧計 1 つ目の方法は通常、1uF 未満のコンデンサに適用し ます。低容量コンデンサの漏れ電流は小さいので、低 電流計で電流を正確に測定できます。漏れ電流が大き いと、帯電コンデンサの不安定さとノイズのために電流 計は正確に測定できません。したがって、高容量コンデ ンサにはもう 1 つの方法を適用します 7。 Q9: MLCC の IR 限界はどのように計算するとよいです か? 絶縁抵抗には部品の定格電圧に応じて 2 つの限界が あります(表 3)。 定格電圧 25V~50V 6.3V~16V IR の限界式 10,000MΩと 500MΩ・uF の どちらか小さい方 10,000MΩと 100MΩ・uF の どちらか小さい方 表 3: IR の限界式 1. TDK MLCC よくある質問 、「コンデンサの静電 容量」、S. Maloy 、1999 年 2. IEC-384-9 (1988), Appendix A 3. TDK MLCC Application Notes, “MLCC Measurement Procedure for |Z| and ESR vs. Frequency”, M.Waldrip (1999) 4. HP 4291A RF Impedance/Material Analyzer Operating Manual Set, 1994, page 11-7 ~ 11-9 5. TDK MLCC よくある質問 、「静電容量の測定: 高容量 MLCC 測定のヒント」 、R. Tse、2000 年 6. “Glossary of Capacitor Terms”, Ray Ostlie (1989) 7. Keithley Switching Handbook, 3rd Edition, 1995, Page 4-12
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