エレクトロニクスのルーツ - TDK

dab00046 98.12.29 5:17 PM ページ 1 (1,1)
TDK Science Information Vol.Ⅲ
境界はワンダーランド
通常は雲の中の負の電荷と、地表に誘導される正の電荷と
の間に起こる放電が落雷ですが、雲の中の正負両電荷の間
に放電が起こることもあり、それを雲放電と呼びます。
エレクトロニクスのルーツ
雷雲は夏に多く発生します。しかし、季節を問わず前線の通
過にともなって雷が起こることがあり、雪雲の中でも雷が落
ちることがあります。
るようにリング状の電界が新たに発生します。こ
摩擦電気はエレクトロニクスのルーツです。
たとえば、雷も摩擦電気による自然現象ですが、
摩擦というのはありふれた現象でありながら、
ミクロ的には未解明の謎の多い境界現象なのです。
うして、電界が磁界を生み、磁界が電界を生む
という連鎖が、空間に伝わっていきます。これが
ぎりですが、持続的な火花放電を起こせば、電
磁波を通信として利用することができます。真空
摩擦という境界現象
プラスチックの下敷を髪の毛でこすり、頭の上
にかざすと髪の毛が逆立ちます。子供たちが面
があることが知られるようになったからです。や
管が発明されるまでの20世紀初頭の無線通信
がてイオウやガラスなどを用いた摩擦起電機が
は、火花放電式送信機によるものでした。
擦はありふれた現象でありながら、ミクロ的には
白がってする理科実験のひとつです。これはよく
アメリカのフランクリンは、有名な凧揚げ実験に
いまだ解明されていない謎の多い境界現象で
知られているように摩擦電気(静電気)による現
よって、雷が電気現象であることを証明しました。
す。身近な自然現象も、摩擦という面からとらえ
象です。異なる物体を摩擦すると、その境界で
雷も摩擦電気による自然現象です。激しい上昇
なおすと、意外な発見があるかもしれません。
電子の移動が起き、電子が飛び出した側が正電
気流によって動き回る雷雲中の氷晶どうしの摩
(文/吉岡安之)
荷、電子を受け取った側が負電荷を帯び、両者
擦が、正負の電荷分布をつくるといわれます。
負に帯電していて、直下の地面に正電荷を誘導
芝のベース生地に接着剤を塗布しておき、高電
します。落雷とは空気の絶縁破壊が起きて、地面
圧をかけて発生させた静電気のクーロン力で、
と雷雲の正負の電荷が、放電によって中和され
大量のナイロン毛を吸いつけて接着・植毛してい
る現象です。
絶縁破壊が起こるしくみは、およそ次のように
雷サージという過電圧が生じ、それが屋内に侵
作用したとしか考えられません。そこで、実験を
空気の乾燥した冬季は、セーターを脱ぐときパ
説明されています。空気を構成する窒素や酸素
入して、電話機やテレビなどの電子部品を破壊
繰り返すうちに、この目に見えない作用は、マク
は電気的に中性なので、そのままでは電気を通
してしまうことがあります。地上に落雷しない雲
スウェルが理論的に予測していた電磁波によるも
がまとわりついたりすることが多くなります。これ
すことはできません。しかし、高い建物や尖った
内放電や雲間放電でも、ラジオやテレビの音声
のであることを突き止めたのです。
も摩擦電気によるものです。柔軟仕上げ剤や静
金属の先などに強い電界が生まれると、空気中
や画像に悪影響を及ぼします。雷放電にともな
電気防止用スプレー剤は、繊維の表面に電気を
にわずかに存在する電子が、クーロン力によって
ってノイズとなる電磁波が発生するからです。
通しやすい膜をつくり、正負の帯電をショートさ
引き寄せられ、しだいに加速されて、運動エネル
1888年に電磁波の存在を確かめた有名なヘ
電子ライターをつけるとブツンという雑音が入り
せるはたらきをします。
ギーが大きくなっていきます。こうして加速された
ルツの実験というのも、火花放電を利用したもの
ます。圧電材料の電気火花が生む電磁波のノイ
天然樹脂の化石であるコハク
(琥珀)
を摩擦す
電子が、窒素や酸素などの気体分子に衝突する
でした。電磁波の存在はマクスウェルによって、そ
ズです。テレビの画像に白点がちらつくことがあ
ると、チリや灰を吸い寄せる現象は、紀元前の
と、気体分子は正の電荷をもつイオンと、負の電
の20年以上も前に理論的に予測されていました
ります。これは身近な電気製品のモータのブラ
昔から知られていました。英語の電気(electricity)
荷をもつ電子に電離します。電離によって飛び出
が、電磁波を発生する装置も検知する装置もな
シに発生する火花、あるいは自動車やオートバ
はギリシャ語のコハク
(electron)
に由来します。し
した新たな電子は、同じように電界によって加速
く、長らく仮説にとどまっていたのです。
イの点火プラグに発生する火花などが原因です。
かしその吸引作用から、摩擦電気と磁気が混同
され、別の気体分子に衝突して電子を飛び出さ
ヘルツの実験装置は偶然がきっかけとなって考
ではいったい、火花放電がなぜ電磁波を生み
された時代は長く続きました。
せます。衝突するごとに電子の数はネズミ算式に
案されました。いつものようにライデンびん(蓄電
出すのでしょうか? 火花放電とは電界の急激
増えていき、雷放電の道筋をつけるのです。
器)に静電気を充電していたとき、ヘルツは別の
な変動(電気的な振動)
を意味します。電磁誘導
充電ずみのライデンびんの電極間に火花が発生
の法則により、電界が変動すると、その電界を
することに気づきました。空間を隔てた2つのラ
取り巻くようにリング状の磁界が発生します。ま
イデンびんには、火花放電によって何らかの力が
た、磁界が発生することによって、磁界と直交す
磁気と区別されるようになった摩擦電気に、科
火花放電が電磁波を生む理由
パの知識人です。それまで物を吸い寄せる作用
と思われていた摩擦電気に、火花を起こす作用
磁石の歴史と文化
第1章 人類と磁石の出会い
第2章 磁石に魅せられた科学者たち
第3章 磁性の謎解きと20世紀の磁石
技術の“境界領域 ”に挑む
TDKのファイン・エレクトロニクス
チパチという音がしたり、歩くたびにスカートなど
学的な関心を示し出したのは、18世紀ヨーロッ
マグネットワールド
雷雲の雲底は水っぽいあられ粒が多く、通常、
用は人工芝の製造にも利用されています。人工
るのです。
楽しくたどる、磁石の歴史と
文化をめぐる冒険!!
本シリーズを執筆している
吉岡安之の書き下ろし単行本。
全国の書店にて好評発売中!
エレクトロニクスのルーツは摩擦電気です。摩
考案され、放電火花によって火薬やアルコールな
どを点火する実験も試みられるようになりました。
はクーロン力によって引き合います。この吸引作
● 好評発売中 ●
電磁波です。ライデンびんの火花放電は一回か
落雷が起きたとき、付近の電灯線や電話線に
フェライトコア、マグネット、磁気ヘッド、インダクタ、トランス、EMI対策部品、電源、セラミックコンデンサ、
TDKは 圧電製品、センサ、高周波部品、半導体、PCカード、太陽電池、電波暗室、光ディスク、FA機器の総合メーカーです。
火花放電が電磁波を生み出すことは、簡単に
確かめられます。たとえば、AMラジオの近くで、
「境界はワンダーランド」はインターネットでもご覧になれます。
TDKホームページ http://www.tdk.
co.
jp/
低電圧化・省電力化が進むバッテリ駆動型ハンディ電
子機器にとって、近年、脅威が高まっているのは身近
な静電気放電です。たとえばインタフェースケーブルを
接続するときなど、指先とコネクタの間で静電気放電
が発生すると、異常電圧が侵入してリセットがかかって
しまったり、最悪の場合はICや制御回路部品が破壊さ
れてしまうこともあります。このため静電気放電による
異常電圧を吸収し、その波高値を回路や素子の最大許
容電圧以下に抑制するための備えの強化が不可欠と
なっています。
TDKのチップバリスタAVR−Mシリーズは、理想的な
サージ吸収特性を示す希土類酸化亜鉛系セラミックス
を採用した最新鋭・極小の積層チップバリスタ。従来
のビスマス酸化亜鉛系バリスタと異なり非対称劣化が
なく、静電気放電、サージ、インパルスノイズなどの異
常電圧に対し、強力かつ安定した吸収特性を示すのが
特長です。デジタルムービー、デジタルカメラ、携帯
電話、ノートパソコン、DVD、ゲーム機などのハンデ
ィ機器のI
C、
I/Oライン、電源ラインの保護・誤作動防
止に絶大な威力を発揮します。
わたしたちの身近にある磁石を、歴史的・文化的な
背景を混じえて紹介した、楽しい磁石のガイドブッ
クです。知ってるようで意外と知らない磁石の素顔
を分かりやすく解説。磁石の魅力や驚きを、存分に
発見することでしょう。
監修・編者/TDK株式会社 佐藤 博
著者/吉岡安之
問合せ/日刊工業新聞社
TEL.03-3222-7131(販売)
判型/A5判・269頁
定価/2310円(税込み価格)
〒103-8272 東京都中央区日本橋1-13-1
TDK株式会社/V宣伝企画部
制作/FACE
1999.2.N