I-9 <イソニアジドとチーズ、ワイン> 論文標題:Interactions of isoniazid with foods. 著者:Hauser MJ, Baier H 出典:Drug Intelligence and Clinical Pharmacy.1982 Jul-Aug;16(7-8):617-618 医薬品:イソニアジド 食品:チーズ、ワイン 研究デザイン:症例報告 症例① 患者:26 歳、白人女性。結核治療中 服用薬:イソニアジド 300mg/日、エタンブトール 800mg/日 1978 年 2 月より イソニアジドは午前 8 時に毎日服用 症例報告:1979 年 12 月 4 日 昼食にチーズを摂取した直後、前頭部の頭痛、顔・腕・背 中の紅潮、動悸を感じ始めた。以前イソニアジドで治療中、チーズを食べた時には 起らなかった。 (検査所見:脈拍 128 回/分、血圧 148/85mmHg(通常 110/70mmHg) 、 体温 37.8 度) 2 時間以内に頭痛、紅潮は治まり、血圧は 125/70mmHg、脈拍は 96 回/分に減少 した。モノアミンやジアミンを多く含む食品の節制指導を受けていたが、その後の チーズ摂取後に症状は現われることはなかった。 症例② 患者:38 歳、白人女性。結核治療中 服用薬:イソニアジド 300mg/日 症例:治療 10 ヶ月後、スイスチーズサンドイッチとコーラを摂取直後、動悸を生じた。 〔脈拍 110 回/分、血圧 100/60mmHg(通常 90/60mmHg) 〕 顔、腕、腹部、背中、大腿部に強度の紅潮を生じたが、患者は 2 時間以内に紅斑と 頻脈は回復した。症状が現われ 3 時間後、患者は少量の赤ワインを飲み、再び軽度の 発作を生じたが、治療をすること無く 2 時間で消失した。最近のイソニアジドの服用 は午後 9 時であった。 患者はワインとチーズの自制よりイソニアジド治療の中止を選択したが、その後発 作の報告は得られていない。 考察:魚に含まれるヒスタミンがヒスタミン中毒の原因物質である事は多くの報告で示唆 されている。一方、チーズはチラミンとヒスタミンの両方を含有している。本症例では チーズ摂取後の血圧上昇は重度のものではなく、特に症例②の患者では、穏やかで短期 間のものであったことがわかる。この穏やかな血圧上昇は、チラミン由来の血圧上昇作 用の他に、ヒスタミンの血圧降下作用が働いたためと考えられる。よって、魚摂取後の 中毒症状には抗ヒスタミン薬の早期投与が有効である。しかし、チーズ摂取後の症状で は、ヒスタミンの血圧降下作用がチラミンの血圧上昇作用を緩和にすると考えられるた め、抗ヒスタミン薬の投与は不適切だと考えられる。
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