原小学校 遠藤俊爾(PDF形式:377KB)

国語実践3
小学校6年
「学級討論会をしよう」
話 し 合 う 能力を
能力 を 身 に 付 けさせるための討論
けさせるための 討論の
討論 の 工夫
原小学校
Ⅰ
遠藤
俊爾
ら逸脱する場面もある。
実践のポイント
そこで、話合い活動において自分の考え
討論 会を通して、話し合う能力を身
を積極的に発言し、互いの意見交流が深ま
に付けさせるために、
ることで、話し合う能力がより身に付いた
①話 合いの場の設定として、学習形
姿になることを期待したい。
態 を工夫することにより、発言す
る ことが苦手な児童にも発言する
機会をもたせた。
②話合いのテーマを精選することに
Ⅲ
指導の工夫
1
話合いの場の設定の工夫
話合いの場の設定として、学習形態を工
よ り、児童が活動への興味をもち
夫することについて考えた。話し合うこと
やすくした。
が苦手な児童の抵抗感を取り除くため、話
③発言ルールの明確化を図ることに
よ り、自分の考えを発言しやすく
し合う人数を二人から始めた。話すことが
した。
苦手な児童であっても、自分と相手しかい
ない状況に置くことにより、発言する必然
Ⅱ
性が生じ、自分の考えを表現する機会を確
指導者の願い
本学級は、国語の学習に意欲的に取り組
保することができると考えた。
むことができる児童が多く、活発に自分の
テーマを変えながら、何度か同じ相手で
考えを発言することができる。しかし、自
話合いを繰り返し、徐々に慣れてくること
分の考えを示すことができずに、一部の発
で発言することの負担を減らそうとした。
言力のある児童の考えに従ったり、自分の
次に相手を変えながら、二人組の話合いを
考えを率直に述べることができなかったり
重ねた。その後、三人組、四人組と話し合
する児童もいる。
う人数を増やすこととした。
話合い活動については、低・中学年段階
また、学級全体で取り組んだ学級討論会
から、国語科だけでなく他教科や道徳、学
でも、それぞれの立場での話合いの中に、
級活動、総合的な学習の時間においても繰
3~4人の少人数での話合い活動を取り入
り返し経験してきている 。その活動の中で 、
れることで、活発な意見交流を図ることが
発言力のある児童については、自分の考え
できるであろうと考えた。
を強い言葉や態度で押し切ろうとすること
があることから、自分の考えを言い出せな
2
話合いのテーマの精選
い児童の発言を引き出して話合いをするこ
話合いのテーマを身近な問題や既に知識
とはなかなかできない。自分の思いが強く
を有している問題を取り上げることによ
挙手せずに発言したり、他の児童が発表し
り 、児童が興味をもち 、根拠が示しやすく 、
ている途中に発言したりと、発言ルールか
話合いを深めることができるのではないか
- 63 -
ととらえた。その場で考えて話すことを多
2
指導目標
く経験させることで、根拠を明らかにする
討論会の進め方や、司会者や発表者の役
ことや理由をはっきり示すことの大切さに
割について理解し、互いの立場や意図をは
ついても身に付けさせようと考えた。
っきりさせて話したり、それぞれの発言を
しっかり聞いたりして、討論をすることが
3
発言ルールの明確化
できる。
発言のルールについては 、「集中して」
あるいは「しっかりと」発言することが課
3
題となっていた。(図1)他のグループが発
指導計画(全6時間)
時間
言しているときは、その考えについてメモ
め
あ
て
・「 学級討論会」とは何かを知り、ねらいや
を取ると把握しやすくなることや、自分の
準備、進め方について理解する。
考えとの共通点、相違点をはっきりさせて
・今 ま での 話合 いの 学 習を 振り 返 り、司 会
話し合うことが大切なことを、確認した。
者 や 発表 者の 留意 点 につ いて 考 える。 ま
また、司会者が進行することにより、発
1
た 、「学級文庫に、まんがを置くことはよ
言しているときは、その発言が終わるまで
~
いか 。」を課題として全体で話し合い、討
他の人は発言しないというルールを徹底し
2
論 会 の流 れや 進行 の 仕方 、発 表 の仕方 に
た。発言者の考えがはっきりととらえられ
ついて課題を出し合う。
るように、自分の考えをまとめるために相
○司 会 者の 進行 の仕 方 や、 発表 者 の話合 い
手の意見をしっかりと聞く態度を身に付け
の 流 れを 示し たワ ー クシ ート を もとに 、
させるためである。このことにより、話合
少人数で話合いを行う。
うと考えた。
そ れ ぞれ 資料 収集 を 行い 、グ ル ープで 発
5
表 原 稿な どの 準備 を し、 学級 討 論会が で
(
3 ・課 題 に対 する 肯定 ・ 否定 の考 え につい て
~
いがより深まり伝え合う力が高まるであろ
きるようにする。
本 ○ク ラ スを 二つ に別 け 、デ ィベ ー ト形式 で
時
学 級 討論 会を 行う 。 立場 ごと に 、少人 数
は
の グ ルー プで 検討 し 、発 表す る 。討論 を
④
聞 き 手及 び相 手側 の グル ープ は 、メモ を
)
取りながら聞く。
・討論を振り返り、成果を話し合う。
○各 グ ルー プの 司会 者 や発 表者 の 仕方に つ
6
い て 振り 返り 、今 後 司会 者や 発 表者の 立
場 に 立っ たと きに 、 より 良い 活 動がで き
るように評価を役立てるようにする。
図1
話合いの課題のワークシート
4
Ⅳ
実践の概要
実践授業の展開
(1) 話合いの場の設定の工夫
学習形態の工夫として、話し合う人数を
1
題材名
[6年]
「学級討論会をしよう」
二人から始めた。短時間であるが、テーマ
を変えながら、何度か同じ相手で話合いを
- 64 -
繰り返した。次に相手を変え、二人組の話
は必要か」など、日常生活や学校行事に関
合いを重ねた。 A さんは、今まで話合い活
連した話題とすることで、身近に感じ立場
動では、あまり積極的に自分の考えを発言
が明確にできるようにした 。B さんは 、
「何
することはなかったが 、「どうにかしなけ
回かやってみて、携帯電話など自分が考え
ればと思った 。」ことから、相手に考えを
られることだったので、話合いができてよ
伝えることができた。その後、三人組、四
かった 。」と感じるなど、9割の児童が興
人組と話し合う人数を増やした 。ここでも 、
味をもって話合いができた。
A さんは、ほとんど経験がなかった司会役
にも挑戦し 、「司会をやって、発言が出な
(3) 発言ルールの明確化
いと困ってしまった。それからは、今まで
他の立場の人が発言しているときは、そ
よりも、自分の考えを発言できるようにな
の考えについてメモを取り、正確に理解さ
った 。」と書いている。
せることで、共通点、相違点をはっきりさ
また、2回の学級討論会でも、それぞれ
せることとした。また、発言中は、他の人
の立場での話合いの中に、3~4人の少人
は発言しないということで、自分の考えを
数での話合い活動を取り入れた 。(図2)「 4
言い終わるまで発言の機会を保障した。 C
人の意見を全部聞いて、判断できた 。」「全
さんは、自分の考えをしっかりと発言する
員が考えを出してから話し合ったので、そ
のに時間がかかるが、受容的に発言を聞く
れぞれの考えがよくわかった 。」との振り
ことで 、「前より、すごく長く発表できて
返りから、グループの中では全員が発言す
よかった 。」と感想をもつなど、全員が今
ることができ、お互いの立場や意図をはっ
までより良くできたと感じている。
きりさせながら話合いを進めることに効果
的であったと考える。
討論会は、司会者及び計時係は、司会進
行用原稿に従って進行した。(図3)司会者
は「時間やルールを守ること」や 、「みん
なの様子を見て進行する」ことに気を付け
たとしていた 。「他の人の発表のじゃまを
しないで、意見をしっかり聞いていた 。」、
「たくさんの質問や意見が出て、時間がず
れたが、自分もそうだなと思う意見もあり
よかった 。」と振り返ることができた。こ
のことから、ルールを事前に明確にしてお
くことは、有効であったと考える。
図2
小グループでの話合い活動
(2) 話合いのテーマの精選
話し合うテーマを児童の興味のもてそう
な話題、あるいは今までの知識で対応でき
るような話題を設定した 。「宿題を学校で
することはよいか 」「自習の時間に、自由
帳をするのはよいか 」「小学生に携帯電話
- 65 -
図3
司会進行用の原稿
肯定側、否定側、聞き手それぞれの立場
については 、「個人の考えをしっかり話し
合 い 、 結 論 が 出 た こ と が よ か っ た 。」「 発
言を聞き逃さないように静かに聞いた 。」
「二つの主張をしっかり聞いて、メモを取
ったことで、自分の考えをまとめやすかっ
た 。」という感想だった 。以上のことから 、
お互いの立場を認め合い、小グループでの
検討も円滑に行うことができたと考える。
図5
話合いの結果を発表する児童
【課題】
○課題は、論点が曖昧になり、結論を導き
にくい二者択一のものより、共通の視点
をもたせるためにも、肯定・否定の立場
がはっきりするものを設定することが効
果的である。
○自分の考えの根拠を明確に示すところま
では困難であった。そのための資料収集
に、時間を確保することが大切である。
図4
学級討論会
時間の掲示
○説得力のある話し方について、事前の学
習でポイントを確認しておいたが、身に
Ⅴ
まとめ
付いているとはいえなかった。言葉その
本実践では、学級討論会の全体で話し合
ものはもちろんであるが、顔の表情や動
う場面に、少人数(3~4人)のグループ
作を含めた説得力についても、追究する
の話合いを取り入れ、話し合う能力の向上
ことが必要である。
を目指した。
○討論会自体は、司会者を中心に円滑に行
【成果】
われているように感じたが、討論がその
○二人組から、話し合う経験を重ねたこと
まま流れてしまった。討論の途中であっ
により、発言が苦手であった児童も、全
ても、大切なポイントとなる児童の発言
体の討論会で進んで発言することができ
は、指導者が取り上げ確認したい。
た。聞き手が受容的な態度で発言を聞い
たため発言しやすい雰囲気となった。
○修学旅行のことや携帯電話を話題にした
ことで関心が高められ、活発に意見が出
やすかった。
○学級単位の討論会の中で、それぞれの立
場の中に少人数グループの話合い活動を
取り入れたことで、児童一人一人の考え
をまとめることができ、討論会に反映さ
せることができた。
図6
- 66 -
討論会のワークシート
【資料】
実践を生かした授業案
第6学年
題材名
本時のねらい
「学級討論会をしよう」
(本時は4/6)
学級討論会において、互いの立場や主張をはっきりとらえ、話合い活
動をすることができる。
めあて
指導の工夫
児童の活動
1 前時に学んだことを確 ・前時の活動を確認することで、本時の課題 (肯)肯定側
認して、本時のめあてを
つかもう。
を明確にし、活動に取り組みやすくする。 (否)否定側
○本時のめあて
(聞)聞き手
学級討論会で、互いの立場や主張を
はっきりとらえ、話合いをしよう。
2 グループに分かれて、 ・グループの分担、テーマを司会者に確認す ・司会1、計時係1、肯定
テーマ及び話合いのルー
るよう助言し、グループ活動にすぐに取り
側発表8(図 7)、否定側発
ル、時間を確認しよう。
組めるようにする。
表8、聞き手4グループ
・肯定側発表、否定側発表、聞き手質問、回
答、肯定側まとめ、否定側まとめを行うこ
×3~4=15名(図 8)に
分かれる。
となど、話合いのルールを掲示した模造紙
やワークシートを振り返らせて確認する。
(図4)
3 学級討論会をしよう。 ・司会者及び計時係に、
学級討論会のテーマ、・テーマについて考えを理
進め方や時間を確認させ、円滑な進行がで
由や根拠とともに、グル
きるように助言する。
ープで話し合う。
○テーマ 「ペットを飼うなら犬がよい」
4 肯定側・否定側それぞ ・それぞれのグループの代表であることを意 ・小グループ(4人)で話
れの考えについて、意見
識させ、はっきりとした声で、考えの根拠
合い、次にそれぞれの立
を発表しよう。
についても話すように助言する。また、声
場(8人)で話し合う。
が小さすぎたり、大きすぎたりする児童に ・代表者を中心に話し合う。
は、声の大きさの調整をするように伝え、 ○反応例
全員に聞こえるようにさせる。
(肯)犬は、盲導犬や警察犬
など人の役に立ち、たく
ましくまじめなのでよい。
(否)犬は、散歩しなくては
いけないし、ほえてうる
さい。しつけの手間がか
かる。予防接種も必要。
ドッグフードなどお金も
図7 学級討論会 肯定側の話合い
- 67 -
かかる。
5 聞き手・相手側グルー
○反応例
プは、簡単にメモをとり、
(肯・聞)手間がかかるとい
疑問点や質問したいとこ
うことは、それだけ犬に
ろを、はっきりさせよう。
対して気持ちや愛情がこ
もっていいと思いますが、
どうですか。
(否・聞)猫などは、マイペ
ースで生きているので手
間がかからなくてよいの
図8 学級討論会 聞き手の話合い
ではないですか。
6 聞き手及び相手側グル ・聞き手及び相手側グループの質問に回答で ○反応例
ープが質問しよう。
きない場合には、教師が分かりやすい言葉 (肯)犬はしつけをするとよ
に置き換え回答しやすくさせる。
く覚えなついて、人の役
にも立つ。犬と一緒の散
歩も景色を見られる。
7 肯定側・否定側が相手 ・聞き手の話合いが円滑に行えるように、事
や質問を踏まえて、まと
前にグループリーダーを設定し、話合いの
めの発表しよう。
進行をさせ、意見をまとめさせる。話合い
に参加できない児童には、個別に助言をす
る。
8 聞き手は、自分たちの
考えをまとめるための話
合いをしよう。(図8)
9 聞き手グループ4つの ・聞き手グループ4つのそれぞれの判断につ ○反応例
代表者は、自分たちの考
いて、メモをとりながら聞くようにするこ (聞)肯定側に賛成です。理
えについて発表しよう。
とで、自分たちの考えの良かったところや
由は、盲導犬など人の役
相手の良かったところなどを確認させる。
に立つことや、しつけを
(図6)
することは大変ですが、
それだけなついてくれる
からです。
10 今日の学習について振 ・本時の学習につい
り返り、次時について確
て振り返り、グル
かめよう。
ープ内の話合いに
○反応例
・質問に答えられたのが、
うれしかった。
ついて、評価をさ
・たくさんの意見が出てき
せる。また、自己
て、聞くことも楽しかっ
評価を行い、次時
た。
の学習の意欲をも
・いつもより、落ち着いて
てるようにする。
できたのがよかった。次
(図9)
も頑張りたい。
図9 振り返りワークシート
- 68 -