全地連「技術 e-フォーラム 2004」福岡 【45】 丘陵に分布する N 値 50 の凝灰岩における杭の支持力について 日本地下水開発株式会社 ○黒沼 覚 山谷 睦 秋山純一 1. 本調査地の土層構成は,深度 13 m~ 16 m付近まで はじめに 山形県の尾花沢盆地周縁に発達する新第三系の凝灰 第四系の堆積物(火山灰質粘性土・砂,凝灰質粘性 岩・凝灰質砂岩からなる丘陵において,施設の建設工事 土・砂)よりなる。軟岩層は,暗緑灰色を呈する凝灰 に先立ち,ボーリング調査を実施した結果,丘陵の基盤 岩および砂質凝灰岩の軟岩である。本層上部は強風化 として分布する凝灰岩・凝灰質砂岩は N 値 50 以上を を受けている。風化部以深は比較的硬質であり,コア 示した。当該建物の基礎工は,本層を支持層としたプレ は棒状に採取される。 ボーリング最終打撃工法による杭基礎(PHC 杭)で設 計された。試験杭で支持力確認した結果,支持力公式で 求めた支持力よりも著しく小さくなる現象が発生した。 3. 支持力公式 ここでは,№ 3 孔で支持層を軟岩(砂質凝灰岩)と 本報告では N 値より算定する支持力と杭打ち記録から した支持力を算定する。建築基礎構造設計指針,道路橋 求める支持力を比較・検討した事例を紹介する。 示方書・同解説については,軟岩についての規定がない ため,支持層の砂質凝灰岩を砂質土として取り扱う。比 2. 土層構成 較に用いた支持力公式は以下に示す式である。 本調査では,機械ボーリングを深度 12 m~ 18 mま で計 3 孔実施し,1 m毎に標準貫入試験を実施した。 機械ボーリング結果から作成した土層構成を一覧して表 2.1に,土層想定断面図を図2.1に示した。 ①建築基礎構造設計指針,②道路橋示方書・同解説 Ra = 1 3 ×{(300 × N × Ap)+(2N × Ls ×ψ)} ・・・・式 3.1 ③鉄道構造物等設計標準・同解説 表2.1 土層構成区分 土層構成一覧表 深度 N値 分布 平均 柱状図 ・・・・式 3.2 概 要 土層名 記号 (m) 表土層 FS 0.40 ~ 1.20 第四系 粘土・砂 層など V S C 13.60 3 ~ ~ 15.90 50 14 16.41 ~ 20 18.35 ~ 以深 50 45 新第三系 軟岩層 WR Ra = 0.3 ×{(100 × N × Ap)+(2N × Ls ×ψ)} - - 粘性土および砂質粘性 土よりなる。 以下に,a)杭長 16 mで先端支持力のみの場合と,b) 杭長 21 mで,5 m摩擦を考慮する場合の各算定式で求 めた支持力算定結果を表3.1に示した。ここで,a)は当 火山灰質粘性土や凝灰 質砂などからなり所々 固結している。 風化した塊状の凝灰 岩。上部は風化が強い。 初設計の杭基礎で支持層に 1 m程度根入れしたもの, b)は試験杭の結果,所定の支持力が出なかったことか ら,杭基礎の見直し資料とするため,暫定的に 5 m程 度支持層に根入れした試験杭に対応するものである。 表3.1 支持力公式による支持力算定結果表 算定式 ①建築 ②道路橋 ③鉄道 式 3.1 諸条件 350 350 350 杭長(m) 16 16 16 30 30 50 支持力 Ra( kN)先端のみ 288 288 144 b)設定条件 杭径(㎜) 350 350 350 杭長(m) 21 21 21 50 40 50 杭先端の平均 N 値 N 摩擦を考慮する長さ Ls(m) 土層想定断面図 式 3.3 a)設定条件 杭径(㎜) 杭先端の平均 N 値 N 図2.1 式 3.2 支持力 Ra( kN)摩擦考慮 5 5 5 663 531 309 全地連「技術 e-フォーラム 2004」福岡 4. 杭打ち記録から求める支持力との比較・検討 い値を示し,②道路橋で算出した値と③鉄道で算出した ここでは,実施した試験杭の杭打ち記録から求めた支 値の中間値に多く分布する傾向がみられた。 持力と,N 値より推定する支持力を比較・検討する。 杭打ち記録から求めた支持力公式は,以下に示す式で ①建 築 ③鉄 道 試験杭平均値 式4.1 700 ある。 ②道路橋 試験杭の支持力 試験杭±標準偏差 600 ④建築基準法施工令式 F 2 WH = 5 S+ 0.1 支持力(kN) Ra = 500 ・・・・式 4.1 5 S + 0.1 400 300 ここに,Ra:長期応力に対する杭の許容支持力, 200 F:ハンマーの打撃エネルギー,S:杭の貫入量 100 W:ハンマーの重量,H:ハンマーの落下高さ 0 1 4.1 2 先端支持力のみの比較・検討 試験杭の杭長 16 mの支持力を支持力公式による支持 図4.2 3 根入れ深度(m) 4 5 根入れ長ごとの比較図 力と比較して図4.1に示す。 試験杭支持力平均値で比較すると,周面摩擦力による 支持力増加率は,支持力公式による支持力増加率とほぼ 400 ①建 築,②道路橋 試験杭の支持力 試験杭±標準偏差 ③鉄 道 試験杭平均値 試験杭-標準偏差×0.5 同じであることがわかる。 前項で推定した式 4.1 と比較すると,式 4.1 は試験杭 300 支持力平均値-標準偏差×(0.25 ~ 0.65)であった。 支持力(kN) 試験杭平均値 197kN 200 以上のことから,前項で提唱した式 4.1 を当該地に分 布する新第三系の凝灰岩・凝灰質砂岩の杭周面摩擦力を 考慮した支持力公式として採用することが出来る可能性 100 試験杭平均値-標準偏差×0.5 165kN が高い結果であった。 5. 0 1 2 3 図4.1 4 5 6 7 試験杭№ 8 9 10 11 12 杭長16mでの支持力比較図 まとめ 以上の結果より,以下に示すことが推察された。 ①新第三系の凝灰岩・凝灰質砂岩を支持層とする場合, 建築基礎構造設計指針で推奨する支持力公式で算定する 図4.1より,先端支持力だけで比較すると,杭打ち記録 から求めた試験杭の支持力の平均値は 197kN,標準偏 支持力は,実際には支持力不足となるケースが多いこと に留意が必要である。 差が 64kN で,①建築および②道路橋で算出した 288kN ②このようにローカルソイル的な軟岩については,基 と③鉄道で算出した 144kN の値の中間値に多く分布す 準書に示されている支持力公式は適合しないことがある。 る傾向がみられた。建築基礎構造設計指針を参考に,試 ③今後の課題として,他地域に分布する同様な凝灰岩 験杭支持力平均値-標準偏差 ×0.5 = 165kN から,当該 においての比較・検討することにより,今回の比較・検 地に分布する新第三系の凝灰岩・凝灰質砂岩の支持力公 討で導き出した式 4.1 の整合性を確認,検討を加える 式は以下に示す式が提唱される。 ことが必要であろう。 ⑤当該地に適応する支持力公式 当該地のような凝灰岩質の軟岩の N 値の評価について ④今回は,支持力公式の見直しを中心に検討したが, Ra = 1 も今後検討したい。 ×{(103 × N × Ap)+(2N × Ls ×ψ)} 3 ・・・・式 4.1 《引用・参考文献》 4.2 周面摩擦力を考慮した根入れ長ごとの比較・検討 支持層に 1 mから 5 mまで根入れした場合の試験杭 の支持力を周面摩擦力を考慮した支持力公式による支持 力と比較して図4.2に示す。 図4.2より,周面摩擦力を考慮すると,杭打ち記録から 求めた試験杭の支持力は,①建築で算出した値より小さ 1)日本建築学会:建築基礎構造設計指針,p.173 ~ 326, 2001. 2)日本道路協会:道路橋示方書・同解説「Ⅰ共通編 Ⅳ 下部構造物編」,p.348 ~ 433,2002. 3)鉄道総合技術研究所編:鉄道構造物等設計標準・同解 説「基礎構造物・抗土圧構造物」,p.201 ~ 263,1997.
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