配布資料 - 東京都環境局

東京都環境局 平成26年度 低VOC塗装セミナー
平成26年9月25日
〔重防食塗装編〕
オール水性塗装システム
および
低溶剤形省工程塗装システムの紹介
一般社団法人 日本塗料工業会
豊岡静香
紹介内容
1.オール水性塗装システム
(1)重防食用塗料の水性化における課題と取り組み
(2)塗装仕様例
(3)塗装事例の紹介
2.低溶剤形省工程塗装システム
(1)塗装仕様例
(2)塗装事例の紹介
1.オール水性塗装システム
(1)重防食用塗料の水性化における課題と取り組み
(下塗塗料)
1)溶剤形塗料と比較すると一般的に塗膜の耐水性が劣る。
2)低温や高湿度条件では乾燥が遅い。
3)塗装時あるいは塗装直後に降雨や結露等水分の影響を受けやすい。
4)鋼材面に直接塗装した場合、点錆(フラッシュラスト)が発生しやすい。
5)塗装作業性がやや劣り、膜厚を確保することが難しい。
(1)重防食用塗料の水性化における課題と取り組み
1)エマルション組成の最適化
疎水性の高いエポキシ樹脂を安定的に水分
散させるためには、多くの乳化剤が必要となる
が、塗膜中に乳化剤が残存すると耐水性の低
下が懸念される。そこで乳化剤の残存を防ぐ
ために、基体成分樹脂(コア部)と乳化成分樹
脂(シェル部)で形成されるコアシェル構造を有
するエポキシエマルションを開発した。
シェル
-Ep
-Ep
-Ep
-Ep
-Ep
コア
-Ep
-Ep
-Ep
-Ep
-Ep
-Ep
-Ep
-Ep
-Ep
:高架橋性エポキシ樹脂
-Ep
:親水性成分変性エポキシ樹脂
(1)重防食用塗料の水性化における課題と取り組み
2)硬化剤の選定
親水性成分の多い水溶性型や、親水性成分がやや少なく水溶性溶
剤に溶解する水溶性溶剤希釈型の硬化剤は、塗膜中で吸水し易く十
分な耐水性が得られない。そこで、耐水性、防食性、ポットライフに優れ
ているエマルション型を選定した。
各タイプ硬化剤の評価結果
確認項目
エポキシエマルションとの相溶性
硬化性
防食性
ポットライフ
耐水性
評価基準
○: 問題なし、×: 実用性なし
水溶性溶剤
希釈型
○
○
×
×~○
×
水溶性型
○
○
×
×~○
×
エマルション
型
○
○
○
○
○
(1)重防食用塗料の水性化における課題と取り組み
3)造膜助剤の適用
表面乾燥性、耐水性と造
膜性の両立を目指し、エマ
ルション粒子の融着を補助
する可塑剤や造膜助剤を
検討し、適切な造膜助剤を
選定して最適量添加した。
位相差顕微鏡による表面状態の観察結果
(1)重防食用塗料の水性化における課題と取り組み
4)取り組み後の性能(下塗塗料)
・溶剤形塗料と同程度の耐水性
・JIS K 5551:2008 構造物用さび止めペイントC種1号に適合
・溶剤形塗料よりも優れたばくろ防食性
4)取り組み後の性能(下塗塗料)
JIS K 5551:2008 構造物用さび止めペイントC種1号 試験結果
項目
規格
水性
溶剤
容器の中の状態
かき混ぜたとき、堅い塊がなくて一様にな る。
合格
合格
半硬化乾燥性
半硬化乾燥している。
合格
合格
塗装作業性
支障がな い。
合格
合格
塗膜の外観
正常で ある。
合格
合格
ポットライフ
規定時間後、使用できる。
合格
合格
たるみ性
たるみがない。
合格
合格
上塗り適合性
支障がな い。
合格
合格
耐衝撃性
割れ及びはがれがない。
合格
合格
付着性
分類1又は分類0。※
外観が正常である。試験後の付着性試験で
分類2、分類1又は分類0。※
さび、膨れ、割れ及びはがれがない。
合格
合格
合格
合格
合格
合格
合格
合格
合格
合格
合格
合格
耐熱性
サイクル腐食性
塗膜中の鉛の定量
0.06 以下。
(質量分率%)
塗膜中のクロムの定
0.03 以下。
量(質量分量%)
屋外暴露耐候性
さび、膨れ、割れ及びはがれがない。
※規格
説明
分類
カットの縁が完全に滑らかで 、どの格子の目にもはがれがない。
0
1
カットの交差点における塗膜の小さな はがれ。
クロス カット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2
塗膜がカットの縁に沿って 、及び/ 又は交差点において はがれている。
クロス カット部分で影響を受けるのは明確に5 %を超えるが15 %を上回ることはない。
4)取り組み後の性能(下塗塗料)
≪塗装仕様≫
下塗60 μm/中塗30 μm/上塗25 μm
素材:サンドブラスト処理鋼板(SS400)
ばくろ試験結果
(沿岸部 3年)
1.オール水性塗装システム
(2)塗装仕様例
工 程
素地調整
塗 料 名
標 準
使用量
(g/ ㎡)
塗 装
塗装間隔
方 法
( 2 0 ℃)
標準シ ンナー
希釈率
( 重量比)
3種ケレン ※ さび の発生した箇所は除去す るこ と。
直ちに
上水
現
場
第1層
( 補修)
水性エ ポキシ 樹脂塗料下塗
第2層
( 全面)
水性エ ポキシ 樹脂塗料下塗
第3層
( 全面)
水性エ ポキシ 樹脂塗料下塗
第4層
( 全面)
水性エ ポキシ 樹脂塗料中塗
第5層
( 全面)
水性ふっ素樹脂塗料上塗
240
240
240
140
120
ハケ・ローラー
24時間~
10日
0~10%
上水
24時間~
10日
0~10%
上水
24時間~
10日
0~10%
上水
24時間~
10日
0~10%
上水
ハケ・ローラー
ハケ・ローラー
ハケ・ローラー
ハケ・ローラー
0~10%
VOC排出量(g/㎡)
工程
塗料
樹脂系
膜厚(μm)
下塗 1層目
エポキシ
下塗 2層目
エポキシ
中塗
エポキシ
上塗
ふっ素
合計
VOC排出量削減率(%)
水性塗料
システム
60
60
30
25
175
7 .5
7 .5
3 .8
5 .4
2 4 .2
84
水性塗料システムのVOC排出量は24.2g/㎡
溶剤形塗料システムと比較して
VOC排出量削減率は84%
溶剤形塗料
シス テム
48 .4
48 .4
23 .3
31 .5
1 5 1 .6
-
1.オール水性塗装システム
(3)塗装事例の紹介
1)歩道橋
2)道路橋
3)鉄道橋
(3)塗装事例の紹介
歩道橋・道路橋・ 塗装実績(東京都新宿区)の一例
施工対象
年度
面積
塗装仕様
A橋
平成19年
1207㎡
オール水性(ふっ素上塗)
G歩道橋
平成20年
1300㎡
オール水性(ふっ素上塗)
M橋・T橋
平成20年
767㎡
オール水性(ふっ素上塗)
D橋・K橋・A橋
平成21年
787㎡
オール水性(ふっ素上塗)
K橋・M橋・M橋
平成22年
748㎡
オール水性(ふっ素上塗)
S橋・I橋・N橋
平成23年
659㎡
オール水性(ふっ素上塗)
S橋・O橋・T橋
平成24年
832㎡
オール水性(ふっ素上塗)
K歩道橋
平成25年
343㎡
オール水性(ふっ素上塗)
(3)塗装事例の紹介
鉄道橋 塗装実績(東京地下鉄)の一例
施工対象
年度
面積
塗装仕様
S高架橋
平成19年度
12.5㎡
オール水性(ふっ素上塗)
J橋
平成20年度
1350㎡
ECO仕様
K駅ホーム桁
平成23年度
3565㎡
ECO仕様
N駅ホーム桁
平成23年度
4390㎡
ECO仕様
S駅架道橋
平成26年度
2535㎡
ECO仕様
1)歩道橋
平成20年施工 東京都新宿区 G歩道橋
1)歩道橋
平成26年施工 東京都新宿区 K歩道橋
1)歩道橋
下塗 塗装状況
下塗 仕上がり
中塗 仕上がり
上塗 仕上がり
平成26年施工 東京都新宿区 K歩道橋
2)道路橋
平成21年施工 東京都新宿区 T橋
2)道路橋
平成22年施工 東京都新宿区 D橋
2)道路橋
平成25年施工 東京都新宿区 S橋
3)鉄道橋
塗装系 ECO1-7
厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料
厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料
水系エポキシ樹脂塗料
水系ポリウレタン樹脂塗料上塗
平成26年施工 東京都内地下鉄S駅架道橋
3)鉄道橋
平成20年施工 東京都目黒区 J橋
2.低溶剤形省工程塗装システム
低VOC・弱溶剤形厚膜
変性エポキシ樹脂塗料下塗
低VOC・弱溶剤形
シリコン変性エポキシ樹脂
下塗上塗兼用塗料
シリコン変性エポキシタイプ
アクリル変性エポキシタイプ
2.低溶剤形省工程塗装システム
(1)塗装仕様
低溶剤形省工程塗装システム
従来塗装システム
塗料種
膜厚
ふっ素樹脂塗料上塗
25μm
ふっ素樹脂塗料用中塗
30μm
変性エポキシ樹脂塗料下塗
60μm
変性エポキシ樹脂塗料下塗
60μm
塗料種
低VOC・弱溶剤形シリコン変性エ
ポキシ樹脂下塗上塗兼用塗料
低VOC・弱溶剤形厚膜変性エポキ
シ樹脂塗料下塗
4工程
2工程
コスト指数 100
コスト指数 68
膜厚
55μm
120μm
300
VOC削減率;47%
3種ケレン
5回塗り⇒3回塗り
VOC量(g/㎡)
250
200
150
上塗
中塗
下塗
下塗
補修
100
50
0
従来溶剤系
低溶剤系
低溶剤形省工程塗装システムは溶剤形塗料システムと比較して
VOC排出量削減率は47%
2.低溶剤形省工程塗装システム
(2)塗装事例の紹介
1)石油備蓄タンク
2)人道橋
3)道路橋
4)高速道路橋
(2)塗装事例の紹介
塗装実績の一例
施工対象
年度
面積
石油備蓄タンク
平成16年度
7000㎡
K橋(人道橋)
平成17年度
87㎡
高速道路 W線
平成17年度
500㎡
T橋(道路橋)
平成18年度
400㎡
T橋(道路橋)
平成19年度
400㎡
S橋(鉄道橋)
平成19年度
182㎡
1)石油備蓄タンク
平成16年施工
石油備蓄タンク
2)人道橋
300
VOC削減率;47%
3種ケレン
5回塗り⇒3回塗り
VOC量(g/㎡)
250
200
150
上塗
中塗
下塗
下塗
補修
100
50
0
従来溶剤系
平成18年施工
奥多摩内 東京都環境局所管 K橋
低溶剤系
3)道路橋
300
VOC削減率;46%
4種ケレン
4回塗り⇒2回塗り
VOC量(g/㎡)
250
200
150
100
50
0
従来溶剤系
平成19年施工
新宿区・中野区 T橋
低溶剤系
上塗
中塗
下塗
下塗
4)高速道路橋
300
VOC削減率;47%
3種ケレン
5回塗り⇒3回塗り
VOC量(g/㎡)
250
200
150
上塗
中塗
下塗
下塗
補修
100
50
0
従来溶剤系
平成18年施工
高速道路 W線
低溶剤系
おわりに
これからも環境に優しい
水性塗料、低溶剤形塗料
の開発・市場展開に
努めて参ります。