神奈川県環境科学センター エチル ヘキサヒドロ - 国立環境研究所

神奈川県環境科学センター
S- エチル = ヘキサヒドロ -1H- アゼピン -1- カルボチオアート
(S-ethyl=hexahydro-1H-azepine-1-carbothioate)
(別名:モリネート)
N-(1- エチルプロピル )-2,6- ジニトロ -3,4- キシリジン
(N-(1-ethylpropyl)-2,6-dinitro-3,4-Xylidine)
(別名:ペンディメタリン)
2- クロロ -2',6'- ジエチル - N -( メトキシメチル ) アセトアニリド
(2-chloro-2',6'-diethyl-N-(methoxymethyl)acetoanilide)
(別名:アラクロール)
2,4- ジクロロフェノキシ酢酸
(別名: 2,4-D 、 2,4-PA )
(2,4-dichlorophenoxyacetic acid)
チオりん酸 O,O- ジメチル -O-(3- メチル -4-メチルチオフェニル )
(O,O-dimethyl-O-(3-methyl-4-methylthiophenyl)thiophosphate)
(別名:フェンチオン、 MPP )
【対象物質及び構造式】
NO 2
COCH 2 Cl
O
N
C
C2H 5
CH 3
NHCH(C2H5)2
N
CH 2OCH 3
SC 2 H 5
CH 3
molinate C9H17ONS
CAS.No. 2212-67-1
NO 2
pendimethalin
40487-42-1
C2H 5
C13H19N3O4
alachlor C14H20O2NCl
15972-60-8
S
CH 3 O
Cl
OCH 2COOH(Na)
P
O
SCH 3
CH 3 O
Cl
CH 3
2,4-D C8H6Cl2O3
94-75-7
fenthion
55-38-9
827
C10H15O3PS2
【物理化学的性状】
分子量
融点
沸点
水溶解度
logPow
(℃)
(℃)
( mg/L )
モリネート
187.3
< 25
202
970
3.21
ペンディメタリン
281.3
56
330
0.3
5.18
アラクロール
269.8
40
100
242
3.52
2,4-D
221.0
140
317
900
2.81
フェンチオン
278.3
7.5
87
7.5
4.09
神奈川県化学物質安全情報提供システムによるデータベース、国立環境研究所
化学物質データベースを参考にした。
【毒性、用途】
用途
魚毒性
目標値 *
ADI
急性毒性( LD50 )
( mg/L ) ( mg/kg/ 日) ラット経口( mg/kg )
モリネート
除草剤
B
0.005
0.0021
369
ペンディメタリン
除草剤
B
0.1
0.043
1250
アラクロール
除草剤
B
0.01
0.005
930
2,4-D
除草剤
-
0.03
0.01
375
フェンチオン
殺虫剤
B
0.001
0.0005
180
神奈川県化学物質安全情報提供システムによるデータベース、国立環境研究所
化学物質データベースを参考にした。
* 水道水質管理目標:水質管理上、検査結果を把握することが望ましいとされ
ている。
828
§1
分析法
( 1 )分析法の概要
水試料は固相抽出カートリッジを捕集管とし、吸着した物質を溶出し、内部
標準物質を添加して濃縮、転溶し LC/MS で分析する。
( 2 )試薬・器具
【試薬】
アセトニトリル
アセトン
メタノール
酢酸メチル
蟻酸
モリネート
ペンディメタリン
アラクロール
2,4-D
フェンチオン
アラクロール -13C6 100ppm
2,4-D-d6
【器具】
固相抽出用カートリッジ
溶出、濃縮用試験管
濾過フィルター
:関東化学製 LC/MS 用
:和光純薬製ダイオキシン分析用
:和光純薬製ダイオキシン分析用
:関東化学製特級
:和光純薬製特級
:和光純薬製残留農薬試験用
:和光純薬製残留農薬試験用
:和光純薬製残留農薬試験用
:和光純薬製残留農薬試験用
:和光純薬製残留農薬試験用
: CIL 製
:林純薬製
:バリアン製、 Abselut NEXUS Jr. 200mg
: GL-SPE 濃縮管 透明 0.5&1.0mL
:ワットマン製 13mmGD/X シリンジフィルタ
PVDF 0.2 μ m
( 3 )分析法
【試料の採取及び採取試料の前処理】
試料水 1000mL に蟻酸を滴下して pH3.5 に調製し 、あらかじめアセトン 5mL 、
精製水 10mL を通過させた固相抽出用カートリッジに毎分 10mL で全量通液し
て捕集する。さらに精製水 10mL を 通 液しておく。 SS 分 が多い試料はアセト
ン で 洗 浄 し た 石 英 繊 維 濾 紙 で 濾 過 し 、 濾 紙 は 精 製 水 、 ア セ ト ン そ れ ぞ れ 5mL
で洗浄し、洗液は試料水に加えて固相抽出する。精製水を同様に処理した固相
抽出カートリッジを空試験用とする。
【試験溶液及び空試験溶液の調製】
水質試料を抽出した固相抽出カートリッジから酢酸メチル 5mL で溶出させ
る(注 1 )。内標準溶液(アラクロール -13C6、 2,4-D-d5 1 μ g/mL メタノール溶
液) 10 μ L を加え、パスツールピペットで下層の水をできるだけ取り除き、
窒素ガスを吹きつけて濃縮する。ほとんど乾固するまで濃縮したものにアセト
ニトリル 1.0mL を加えて振り混ぜ、濾過フィルターをつけた注射筒に入れて濾
過したものを試験溶液とする(注 2)。空試験用のカートリッジを同様に処理し
たものを空試験溶液とし、 LC/MS/MS-SRM ( selected reaction monitoring )モードで
分析し定量する。
829
【標準溶液の調製】
標準試薬をメタノールに溶解し 1.0mg/mL の 標準原液を調製する。この標準
原液を適宜アセトニトリルで混合希釈して各対象物質濃度が 1.0 μ g/mL (アラ
クロールは 2.0 μ g/mL)の混合標準原液を調製する。この混合標準原液を適宜
希釈して 0.5 ~ 10ng/mL (アラクロールは 1.0 ~ 20ng/mL )の検量線作成用標準溶
液 と す る 。 各 濃 度 の 標 準 溶 液 に は 、 内 標 準 物 質 と し て ア ラ ク ロ ー ル -13C6 、
2,4-D-d5 を 10ng/mL の濃度となるよう添加する。
【測定】(注 3 、 4 )
〔LC / MS条件〕モリネート、ペンディメタリン、アラクロール、フェン
チオン
(LC)
機種
: Agilent 1100
カラム
:化学物質評価研究機構 L- カラム ODS
2.1 × 150mm
5μm
溶離液
: A: 水(蟻酸滴下 pH3.5 )、 B: アセトニトリル
0 → 1min A:B=99:1
1 → 25min A:99 → 1 B:1 → 99 linear gradient
25 → 32min A:B=1:99
32 → 34min A:1 → 99 B:99 → 1 linear gradient
34 → 45min A:B=99:1
0.2mL/min
カラム温度
: 40 ℃
注入量
: 10 μ L
(MS)
機種
: Applied Biosystems API3000
イオン化法
: APCI-positive
イオン源温度 :
400 ℃
ネブライザーガス:
9psi
カーテンガス
:
10psi
コリジョンガス :
5psi
ネブライザー電流:
3μA
モニターイオン
: モリネート
188 → 126
ペンディメタリン
282 → 212
アラクロール
270 → 238
フェンチオン
279 → 247
13
アラクロール - C6
276 → 244
〔LC / MS条件〕 2,4-D
(LC)
機種
カラム
溶離液
: Agilent 1100
:化学物質評価研究機構 L- カラム ODS
2.1 × 150mm 5 μ m
: A: 水(蟻酸滴下 pH3.5 )、 B: アセトニトリル
0 → 1min A:B=95:5
830
カラム温度
注入量
1 → 15min
15 → 20min
20 → 21min
21 → 30min
0.2mL/min
: 40 ℃
:5 μ L
A:95 → 1
A:B=1:99
A:1 → 95
A:B=95:5
B:5 → 99 linear gradient
B:99 → 5 linear gradient
(MS)
機種
: Applied Biosystems API3000
イオン化法
: ESI-negative
イオン源温度 :
350 ℃
ネブライザーガス:
6psi
カーテンガス
:
12psi
コリジョンガス :
5psi
イオンスプレー電圧:
-4500V
モニターイオン
: 2,4-D
219 → 161
2,4-D-d5
224 → 164
〔検量線〕
標準物質の標準液 10 または 5 μ L を LC/MS に注入して分析する。得られた
標準物質のピーク面積と内標準物質のピーク面積の比から検量線を作成する。
〔定量〕
試験溶液 10 または 5 μ L を LC/MS に注入して分析する。得られた物質のピ
ーク面積と内標準物質のピーク面積の比を検量線に照らして定量する。
〔濃度の算出〕
水質試料中の濃度 Caq ( ng/L )は次式から算出する。
Caq ( ng/L )=( W - Wb )/ V
W :検量線から求めた測定物質量( ng )
W b :空試験溶液の測定物質量( ng )
V :試料液量( L )
〔装置検出下限( IDL )〕
本分析に用いた LC/MS( Applied Biosystems API3000 )の IDL を表1に示す( 注 5 )
物質名
モリネート
ペンディメタリン
アラクロール
2,4-D
フェンチオン
IDL ( ng/mL )
0.07
0.12
0.22
0.11
0.10
試料量( mL )
1000
最終液量( mL )
1.0
831
IDL 換算値( ng/L )
0.07
0.1
0.2
0.1
0.1
〔測定方法の検出下限( MDL )、定量下限( MQL )〕
本測定方法における検出下限及び定量下限を表 2 に示す(注 6)。
空試験の結果は全項目不検出であった。
物質名
モリネート
ペンディメタリン
アラクロール
2,4-D
フェンチオン
MDL
( ng/mL )
試料量
( mL )
最終液量
( mL )
MDL 換算値
( ng/L )
0.1
0.1
0.2
0.1
0.2
1000
1.0
0.1
0.1
0.2
0.1
0.2
832
MQL 換算値
( ng/L )
0.3
0.4
0.5
0.3
0.4
注
解
(注 1 )
(注
(注
(注
(注
固相抽出管からの溶出に酢酸メチルを用いるのは、抽出管の乾燥工程
を省略するためである。水質試料を抽出した管には水分が残っており、
そのままアセトンやメタノールで溶出すると水分は溶出液と完全に混合
し、その後の濃縮で水だけ残る。また疎水性の溶媒で溶出しようとする
と、水が妨害して十分に溶出できないことがある。そのため溶出前に抽
出管を乾燥させる必要がある。酢酸メチルを用いると、溶出できるが試
験液は水と有機溶剤に分かれるため、水分を容易に除去することができ
る。除去するまでは試験液を振り混ぜない方がよい。
2 ) 濁りなどが見られないときは濾過を省略してもよい。
3 ) LC/MS の条件は、本測定に使用した機種( Applied Biosystems API3000 )
特有のものである。
4 ) 2,4-D は ESI ネガティブ、フェンチオンは APCI ポジティブに感度があ
る。他の 3 つはポジティブなら APCI 、 ESI 双方に感度があるが、一斉分
析のため 2,4-D は ESI ネガティブ、その他 4 つは APCI ポジティブで測
定することとした。最適温度などイオン源条件は、原則として最も要求
感度の低いフェンチオンに合わせている。
5 ) 装置検出下限( IDL )は、「化学物質環境実態調査実施の手引き」(平成 17
年 3 月)に従って、下表のとおり算出した。
装置検出下限(IDL)の算出
物質名
試料量(L)
最終液量(mL)
注入液濃度(ng/mL)
装置注入量(μL)
結果1(ng/mL)
結果2(ng/mL)
結果3(ng/mL)
結果4(ng/mL)
結果5(ng/mL)
結果6(ng/mL)
結果7(ng/mL)
平均値(ng/mL)
標準偏差(ng/mL)
IDL(ng/mL)
IDL試料換算値(ng/L)
S/N
CV(%)
※IDL=t(n-1,0.05)×σn-1×2
モリネート
1
1
0.5
10
0.4290
0.4836
0.4686
0.4748
0.4736
0.4628
0.4744
0.4667
0.01778
0.07
0.07
41
3.8
ペンディメタリン アラクロール
1
1
1
1
0.5
1.0
10
10
0.5067
1.0521
0.4623
1.0631
0.4735
1.1158
0.5434
1.2136
0.5003
1.1349
0.5193
1.0935
0.4655
1.0695
0.4959
1.1061
0.03026
0.05588
0.12
0.22
0.1
0.2
30
12
6.1
5.1
833
2,4-D
1
1
0.5
5
0.6071
0.5664
0.5689
0.5893
0.5256
0.5403
0.5397
0.5625
0.02926
0.11
0.1
9.9
5.2
フェンチオン
1
1
0.5
10
0.4934
0.5409
0.5653
0.5222
0.5471
0.5463
0.5047
0.5314
0.02565
0.10
0.1
10
4.8
モリネート 0.5ng/mL
ペンディメタリン 0.5ng/mL
3.0e4
アラクロール-13C6 10ng/mL
2,4-D 0.5ng/mL
Intensity, cps
Intensity, cps
2000
フェンチオン 0.5ng/mL
1000
2.0e4
1.0e4
アラクロール 1.0ng/mL
2,4-D-d5 10ng/mL
0
2
4
6
8
0.0
10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40
2
4
6
8
Time, min
12
14
16
18
20
22
24
26
28
Time, min
標準物質( IDL 測定)
(注 6 )
10
左 :APCIposi 、右 :ESInega
測定方法の検出下限( MDL ) 及び定量下限( MQL )は、「化学物質環
境実態調査実施の手引き」(平成 17 年 3 月)により、下表のとおり算出
した。
測定方法の検出下限(MDL)及び定量下限(MQL)
物質名
試料
試料量(L)
標準添加量(ng)
試料換算濃度(ng/L)
最終液量(mL)
注入液濃度(ng/mL)
装置注入量(μL)
操作ブランク平均(ng/L)①
無添加平均(ng/L)②
結果1(ng/L)
結果2(ng/L)
結果3(ng/L)
結果4(ng/L)
結果5(ng/L)
結果6(ng/L)
結果7(ng/L)
平均値
標準偏差
MDL(ng/L)
MQL(ng/L)
S/N
CV(%)
※MDL=t(n-1,0.05)×σn-1×2
※MQL=σn-1×10
モリネート
1
0.5
0.5
1
0.5
10
0
0
0.4213
0.3767
0.3844
0.3933
0.4250
0.4500
0.3745
0.4036
0.02878
0.11
0.29
60
7.1
ペンディメタリン アラクロール
河川水
1
1
0.5
1.0
0.5
1.0
1
1
0.5
1.0
10
10
0
0
0
0
0.4831
1.0360
0.4969
1.0797
0.4749
1.0740
0.4221
0.9942
0.4019
0.9682
0.4366
0.9808
0.4268
0.9660
0.4489
1.014
0.03586
0.04882
0.14
0.19
0.36
0.49
35
18
8.0
4.8
834
2,4-D
フェンチオン
1
0.5
0.5
1
0.5
5
0
0
0.5593
0.5102
0.5079
0.4881
0.5525
0.4998
0.4986
0.5196
0.02923
0.11
0.29
11
5.6
1
0.5
0.5
1
0.5
10
0
0
0.4282
0.5089
0.4596
0.5006
0.3943
0.4279
0.4931
0.4589
0.04375
0.17
0.44
10
9.5
§2
解
説
【分析法フローチャート】
固相抽出
溶 出
1000mL pH3.5
酢酸メチル 5mL
abselut NEXUS Jr.
10mL/min
水層除去
パスツールピペット
濃 縮
N2 吹きつけ
LC/MS/MS-MRM
APCI-posi and ESI-nega
835
転 溶
アセトニトリル
1mL
濾 過
0.2 μ m
【標準物質のタンデムマススペクトル】
対 象 物 質 は [ M+H ] +、 [ M-H ]- の 擬 分 子 イ オ ン を 生 じ た 。 測 定 は そ れ ぞ れ の
擬分子イオンをプレカーサーイオンとしてタンデムイオン化を行い、生じたフ
ラグメントイオンを選んで定量用モニターイオンとした。各物質のタンデムマ
ススペクトルを示す。
126.2
212.3
pendimethalin
5.0e5
molinate
NO2
O
Intensity, cps
C
SC 2H 5
m.w.187.3
188→126
1.0e5
CH 3
4.0e5
Intensity, cps
N
1.5e5
98.0
83.3
N H C H ( C2H5)2
CH3
3.0e5
NO2
m.w.281.3
282→212
2.0e5
55.4
5.0e4
1.0e5
194.2
50
100
150
m/z
50
100
162.3
alachlor
150
m/z
200
250
161.0
2,4-D
C2 H 5
1.0e5
3.0e5
COCH 2 Cl
Cl
N
Cl
C2 H 5
2.0e5
OCH 2 COOH(Na)
238.1
Intensity, cps
Intensity, cps
CH 2 OCH 3
m.w.269.8
270→238
m.w.221.0(nega)
219→161
5.0e4
1.0e5
90.1
50
100
150
200
250
50
100
150
200
m/z
m/z
247.1
fenthion
1.5e5
S
CH 3O
P
O
SCH3
Intensity, cps
CH 3O
CH 3
1.0e5
m.w.278.3
279→247
232.0
5.0e4
215.3
185.1
180
200.0
190
216.3
200
210
278.8
220
230
m/z
250
260
270
164.0
168.3
alachlor -13C6
6.0e5
240
3.0e5
2,4-D-d5
C 2H5
*
*
Intensity, cps
*
N
*
C 2H5
m.w.275.8
276→244
3.0e5
D
Cl
CH 2 OCH 3
*
4.0e5
D
COCH 2 Cl
*
Intensity, cps
5.0e5
2.0e5
O C D 2 C OO H( Na )
D
2.0e5
Cl
m.w.221.0(nega)
224→164
1.0e5
244.3
90.1
1.0e5
226.1
50
100
150
m/z
200
50
250
100
150
m/z
836
200
【添加回収率実験結果】
河川水、海水試料 1000mL に混合標準原液 10 μ L を添加して 、【試料の採取
及び採取試料の前処理】及び【試験溶液及び空試験液の調製】に従って処理し
た。無添加の試料を処理したものとの定量値の差から回収率を算出した。捕集
管を2段にし、破過の有無を調べた。後段への破過はほとんど見られず全体と
して安定して回収していた。また濾液と SS 分を個別に測定した結果、 SS 分と
ともに濾過されるのはペンディメタリンの数%のみで、他は濾液に存在してい
た。回収率と変動係数( C.V. )は下表に示すとおりであった。この結果から固相
抽出管は 1 本とした。
添加回収率(%、 n=5 )
添加 量
(ng)
前段
モリネート
ペンディメタリン
アラクロール
2,4-D
フェンチオン
10
10
20
10
10
82.4
92.1
102
95.3
86.4
河 川 水
海 水
回収率( % )
変動 係数
回収 率( % )
後段
計
(C.V.,%) 前段 後段
計
0
0
0
2.2
0
82.4
92.1
102
97.5
86.4
3.7
7.1
6.0
5.6
5.5
75.8
80.7
103
96.1
92.8
0
75.8
0
80.7
0
103
1.8 97.9
0
92.8
変動 係数
(C.V.,%)
5.7
6.3
6.4
6.6
9.1
【分解性スクリーニング試験】
pH5 、 7 、 9 に調整した精製水 500mL に混合標準原液 50 μ L を添加し、一度
に 100mL ずつ pH3.5 に調整して固相抽出、溶出して分析し、回収率を求めた。
結果を下表に示す。 pH が高い場合にペン ディメタリン、フェンチオンの回収
率がやや低くなったが、その他の物質にはほとんど変化は見られなかった。
分解性スクリーニング試験結果 初期濃度: 100 、 200ng/mL
直後
1 時間後
5 日後
暗所
明(屋内)
pH5 pH7 pH9 pH5 pH7 pH9 pH5 pH7 pH9
pH7
モリネート
78
81 82
74
81
71
80
81
89
79
ペンディメタリン
85
92 87
106 105
72
97
91
67
84
アラクロール
98 104 97
97
95
92
105
99 108
101
2,4-D
100
103 108
102 107 100
101 105
99
100
フェンチオン
101 110 99
98
99
71
91
91
79
92
837
【クロマトグラム】
モリネート 10ng/mL
2,4-D 10ng/mL
ペンディメタリン 10ng/mL
1.5e3
Intensity, cps
Intensity, cps
4.0e4
フェンチオン 10ng/mL
1.0e3
2.0e4
アラクロール 20ng/mL
2,4-D-d5 10ng/mL
5000
アラクロール-13C6 10ng/mL
0.0
2
4
6
8
0
10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40
Time, min
標準物質
アラクロール-13C6 10ng/mL
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
26
28
24
26
28
Time, min
左 :APCIposi 、右 :ESInega
ペンディメタリン
2000
モリネート
Intensity, cps
Intensity, cps
1.5e4
フェンチオン
アラクロール
2,4-D
1.0e4
1000
5000
2,4-D-d5 10ng/mL
0
2
4
6
8
0
10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40
2
4
6
8
10
12
河川水
14
16
18
20
22
Time, min
Time, min
2006 年 8 月採取
左 :APCIposi 、右 :ESInega
これは神奈川県内の河川で 8 月に採取した試料で、対象物質はいずれも検出
されている。
【検量線】
モリネート、ペンディメタリン、アラクロール、フェンチオンはアラクロー
ル 13C6 を 内 標 準 と し て APCI-positive 、 2,4-D は 2,4-D-d5 を 内 標 準 と し て
ESI-negative イオン化である。いずれも R=0.999 以上の良好な直線性を示した。
calibration curves
16
14
peak area ratio
12
10
8
6
4
2
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
ng/mL
モリネート
ペンディメタリン
アラクロール
838
2,4-D
フェンチオン
20
120
120
100
100
80
80
回収率,%
回収率,%
【試料の保存性】
1 μ g/mL の混合標準原液を 10 μ L 添加した河川水 1000mL を捕集した固相
抽出カートリッジにキャップをはめて冷蔵庫に保存した。数日ごとに分析し回
収率の変化を測定した。また抽出後の試験溶液を実験室内に置いて数日おきに
回収率の変化を調べた。カートリッジではペンディメタリンなどがやや減少傾
向にあるが、試験溶液ではほとんど変化はなく、保存性は良好であった。
60
40
60
40
20
20
0
0
0
5
モリネート
10
ペンディメタリン
15
日
アラクロール
20
25
0
30
5
10
15
20
25
日
2,4-D
モリネート
フェンチオン
ペンディメタリン
アラクロール
2,4-D
フェンチオン
保存日数が回収率に与える影響
左:カートリッジ冷蔵庫保存、右:バイアル試験溶液室温保存
【環境試料の測定例】
2006 年 8 月と 12 月に神奈川県内それぞれ 4 カ所の河川水を採取して測定し
た結果、最大濃度はモリネート 0.5ng/L 、ペンディメタリン 2.7ng/L 、アラクロ
ール 11ng/L 、 2,4-D 360ng/L 、フェンチオン 0.6ng/L であった。対象物質の中で
は 2,4-D の濃度、検出率が高かった。他の物質の 12 月採取試料の検出は痕跡
量程度でピークが観察されたものも MDL 以下であった。これらの農薬の使用
頻度が高い 6 、 7 月頃には数μ g/L 検出されるものがあった。このような試料
を定量する場合、固相抽出管からの溶出液を定容して一部を分析に供する。
【評価】
本法により 、水試料中のモリネート 、ペンディメタリン 、アラクロール 、2,4-D 、
フェンチオンの 0.1 ~ 0.2ng/L レベルの検出が可能である。
【試料の送付方法】
試料を採取した固相抽出カートリッジを密栓し、アルミホイルに包んだもの
を冷蔵して送付する。
開発担当 神奈川県環境科学センター
〒 254-0014 平塚市四之宮 1-3-39
tel ( 0463 ) -24-3311 fax ( 0463 ) -24-3300
e-mail [email protected]
環境保全部 長谷川 敦子
839
S-ethyl=hexahydro-1H-azepine-1-carbothioate (molinate)
N-(1-ethylpropyl)-2,6-dinitro-3,4-Xylidine (pendimethalin)
2-chloro-2',6'-diethyl-N-(methoxymethyl)acetoanilide (alachor)
2,4-dichlorophenoxyacetic acid (2,4-D, 2,4-PA)
O,O-dimethyl-O-(3-methyl-4-methylthiophenyl)thiophosphate (fenthion, MPP)
Abstract
An analytical procedure has been developed for the determination of pesticides (molinate,
pendimethalin, alachor, 2,4-D ( 2,4-PA ) , fenthion ( MPP )) in river water by liquid
chromatography-tandem mass spectrometry (LC/MS/MS). Ionization mode was positive
APCI (atmospheric pressure chemical ionization: for molinate, pendimethalin, alachor,
fenthion) and negative ESI(electrospray ionization: for 2,4-D). One litter of river water was
adjusted at pH3.5 with formic acid, and passed through the solid phase extraction cartridge
(Abselut NEXUS ) . The pesticides in the cartridge were eluted with 5mL methylacetate,
alachor-13C6, 2,4-D-d5 was added as an internal standard, concentrated under a gentle
nitrogen stream, and was dissolved to 1ml acetonitrile, subsequently determined by
LC/MS/MS. The recoveries from water sample, relative standard deviations ( RSD ) and
limit of quantifications ( LOQ ) were 82 ~ 102%, 3.7 ~ 7.1% and 0.3 ~ 0.5ng/L,
respectively.
Flowchart
sample
collection
extraction
water remove
concentration
solution
pure N2 gas
acetonitrile
1.0mL
river water SPE cartridge methylacetate
pH3.5
10mL/min
5mL
LC/MS/MS-SRM
APCI-posi and ESI-nega
840
filteration
物質名
モリネート
ペンディメタリン
アラクロール
2,4-D
フェンチオン
分析法フローチャート
備
考
LC/MS/MS
-SRM
水試料 1L
pH3.5
固相抽出
溶 出
10mL/min 酢酸メチル
abselut NEXUS Jr. 5mL
水層除去
パスツール
ピペット
LC/MS/MS-SRM
濾 過
転 溶
濃 縮
APCIposi and ESInega 0.2 μ m アセトニトリル
N2
1mL
841
APCIposi
ESInega
カラム :
L- カラム
ODS
長さ
150mm
内径
2.1mm
粒径
5μm
検出下限
<水質>
0.1~0.2
ng/L