通算７６号薬草通信通算７6 号平成１７年 5 月薬草園の今薬草園では岐阜薬大の学生さんが薬用植物学の課題をまとめるために訪れて薬草を観察しています。また薬草の観察だけに止まらず薬草園の説明ボランティア活動についてもレポートが求められていて，実社会の先輩であるボランティアの方々とコミュニケーションを重ねています。薬草園が研究のための植物園として活用されるだけでなく，大学外の人々のためにも活用される意義についても勉強できることでしょう。本年は薬草園の管理をしてくださっている方々の努力で大変立派に整備されています。また，これからの時期は植物が活発に活動し生長する時期ですので薬草園の一番良い時期です。是非薬草園を訪れてください。薬草園説明ボランティアの勉強会からケシの花：栽培が禁止されているケシが約 2000 本名古屋市の中川区で，自生しているのが昨年見つかり愛知県医薬安全課で除去した騒ぎがありました。ケシにはモルヒネなど麻薬成分が含まれていて栽培が禁止されている種類と麻薬成分が含まれず花の観賞用に栽培可能な品種がそれぞれ数種類あります。戦前にはケシの栽培は禁止されていなかったとかで日本の各地で栽培されていました。この時の種が埋土種子として土中に潜んでいて時々発芽しているのか，また知らずに毎年自生していたものの種が発芽したものか判りませんが栽培禁止のケシが毎年あちこちで出現するようです。本年も岐阜薬大薬草園の比較的近くにも疑わしいケシが見られたとのお話もありました。また栽培可能なケシの群生の中に時々栽培の禁止されているケシが混じっていることもあるそうです。ケシについては薬草園ボランティアの可児さんが詳しく調べて資料（図あり）を作成していますので興味のある方は薬草園を訪れて可児さんに説明して戴くと良いと思います。余談ですがケシから抽出される鎮痛薬のモルフィネは末期癌の疼痛の鎮痛薬としてこれ以上に効くものはないそうで今も利用されています。不思議なことにケシの抽出物アヘンには習慣性など麻薬中毒の強烈な副作用が知られていますが，強い疼痛で悩んでいる時にモルフィネを使用しても麻薬中毒のような副作用は殆ど現れないそうです。日本ではケシ以外に，コカインの原料のコカ，薬草を楽しむ会大麻の原料の麻の栽培が禁止されています。注意してください：山野草間違って食べないで！間違って毒草を食べた死亡事故が発生しました。長野県駒ヶ根市の山林で食べることのできる山野草と間違えてバイケイソウ又はコバイケイソウを採取し生で食べたと思われる事故です。山野草を料理する場合はくれぐれも詳しい人に確認してから食べるようにしましょう。以前にも紹介しましたがスズランや福寿草は見かけによらず強烈な毒をもっていますので特に注意し下さい。植物の科学ほうれん草は立てて保存を：ほうれん草，小松菜，春菊，アスパラガス，ネギ等は野菜が傷ついたときなどに発生するエチレンというガスに曝されると鮮度が落ちてしまいます。このような野菜はなるべく自然の生えている状態に近い形で保存するとエチレンの発生が少なくなるので鮮度良く保存できます。根の方を下に向けた自然な形で保存する方が横に寝せて保存するよりエチレンの発生が少なく鮮度を保てるようです。ほうれん草などの野菜は産地から出荷される際にダンボールに詰めるときは，根を下に立てて詰められています。家庭の冷蔵庫でも立てて保存すると長持ちするそうです。 2008 年に種無し枇杷が発売される：枇杷の美味しい時期ですが種が大きいので，煩わしいものです。昨年千葉県農業総合研究センターで種無し枇杷が開発されました。果肉は普通の枇杷の 2 倍もあり，果肉は柔らかくジューシーで美味しいとのこと。この種無し枇杷は 2008 年に市場にでる予定で「希房」と名づけられました。ただ，放っておいて種無しの枇杷が生るのではなく，種無しスイカと同じように実を大きくするために植物ホルモンのジベレリン処理などを行う必要があるようです。「薬草通信」への質問やご意見等は [email protected] までお願いします。