液体中に生成されたレーザプラズマの電子密度特性 1.はじめに 現在

液体中に生成されたレーザプラズマの電子密度特性
指導教員
山田 諄
R02145 松 本 悠 希
教授
R02166 山 口
津田 紀生 助教授
剛
1.はじめに
現在までに、レーザ光を固体及び気体に集光照射し生成したプラズマの研究は多数行われている。
しかし、液体中に生成されたプラズマに関する研究は、ほとんど行われていない。よって、本研究では
YAGレーザによって液体中に生成されたプラズマの特性を解明
することを目的とした。
YAGレーザ
本研究の応用として、ダイオキシン等の液体中の汚染物質の除
去が考えられる。また、汚染物質の代用として溶質にNaClを使
スプリッター
フォトダイオード
用しているため、レーザメスによる人体への影響を解明する基礎
フィルター
データとしても有用である。
集光レンズ
本年度は、レーザ干渉計を用いてプラズマの電子密度を測定し
た。
ミラー2
スプリッター1
Arレーザ
2.プラズマ生成過程
本研究では、プラズマの初期電子は多光子電離過程と呼ばれる
同時に多数の光子を吸収することにより直接電離が生じる現象
によって供給される。その後、逆制動放射で加速された電子と中
性原子の衝突によって、カスケード電離が起きてプラズマが生成
されると考えられる。
分光器
ミラー1
スプリッター2
オシロスコープ
図1.電子密度測定装置
14
2
光強度 2.70×10 [W/m ]
波長 1064[nm]
NaCl 濃度 0[%]
0.02
電圧[V]
3.実験方法
実験では、YAGレーザの基本波である1064nmと第2高調波
である532nmの発振波長を用いた。YAGレーザを焦点距離60
mmの集光レンズで集光し、プラズマを生成した。
液体を入れる容器は、内寸75mm×45mm×70mmのアクリル
製のものを使用した。水溶液には溶媒に超純水・溶質にNaCl
を使用し、濃度を0∼24%で混ぜ、濃度による変化を測定した。
次に、電子密度の実験装置を図1に示す。電子密度は、アル
ゴンイオンレーザでマッハツェンダー干渉計を構成し、プラズ
マ中と空気中に伝搬させたレーザ光を分光器のスリット上で
干渉させ、干渉波形をオシロスコープで観測し、その位相差の
変化から測定した。その干渉波形図を図2に示す。また、測定
する際に集光レンズと超純水で満たされた容器をXステージ
に載せ、前後に動かすことにより密度分布を求めた。
0
–0.02
–0.04
0
10
–6
[1×10 ]
時間[s]
10
10
25
波長 532[nm]
14
2
光強度 1.07×10 [W /m ]
–3
4.測定結果
図3に、波長532nmにおける電子密度の測定結果を示す。
横軸は、光軸方向の位置であり、プラズマが最初に出来た位置
を0として測定した。密度は、焦点位置で一番高くなり、外れ
るにつれて減少する傾向である。また、焦点位置からレーザの
進行方向には0.5mm程成長し、後方には1mm程成長すること
が確認できた。
次に、電子密度の濃度依存性を検討する。焦点位置付近にお
ける濃度変化による密度の違いは見られなかった。しかし、濃
度が高くなると、光軸方向にプラズマが増大し、さらに焦点以
外の密度は、濃度が高くなるにつれて増加することが分かっ
た。
電子密度 [m ]
図2.干渉波形例
26
Laser
10
24
–1
NaCl 濃度[%]
0
12
24
0
測定位置 [mm]
図3.電子密度分布
1