研究会通信No.2

2008 年 8 月 20 日
西 三 河 野 生 生 物 研 究 会通 信 № 2
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西三河野生生物研究会通信№2
事務局:小鹿登美
〒 446-0001
安 城 市 里 町 雁 戸 塚 40番 地 3
ブログサイト http://west-mikawa-wildlife.justblog.jp/blog/
愛知県豊田市琴平町のほ乳類二題
杉山時雄
愛知県豊田市琴平町にある通称「琴平ふ
く ろ う 谷 」 は , 2000 年 に 高 速 道 路 の 東 海
環状線の建設時にオオタカが繁殖している
ことから,当時の道路公団が僅かながら環
境保全のために残してくれた場所である。
その「ふくろう谷」は,出来上がった当
初は,草木も生えていない荒れ地に池が数
十ヶ所できていたところで,毎月第一日曜
日に草刈りなどの作業をして管理してい
る 。今 は 程 よ い 環 境 が 保 た れ る よ う に な り ,
数多くの生物が戻ってきている。
写真1 カヤネズミ (2007年 12月 1日 豊 田 市 琴 平 町 )
2007 年 12 月 1 日 の 作 業 日 に 葦 原 が 生 え
る池を草刈り中にカヤネズミ 2 頭とアカネ
ズミ?と思われる 1 頭を捕獲した。また,
カヤネズミの巣 2 ヶ所も見つけた。捕獲し
たカヤネズミ 2 頭とアカネズミ 1 頭は写真
撮 影 後 放 獣 し た 。( 写 真 1 ・ 2 )
2008 年 4 月 6 日 同 じ く 作 業 日 の 休 憩 中
に,一頭のコウモリが飛んでいるのを観察
した。アブラコウモリより少し大きく感じ
た た め に ,ア ブ ラ コ ウ モ リ で は な い と 思 い ,
写真2 アカネズミ (2007年 12月 1日 豊 田 市 琴 平 町 )
しばらく飛んでいる姿を追い続けていた。
何度か視界から消えたが,見つけてから数
分後に調整池の外壁に止ったのを確認し,
近づいて撮影を試みた。意外に警戒心がな
く,思いのほか近づくことが出来た。撮影
した数分後に,再び飛び去った。しばらく
は飛び回っていたが,数分後に視界から消
え て い な く な っ た 。( 写 真 3 )
写真を本会事務局の小鹿登美さんに送り
確認してもらったところ,ヒナコウモリに
間違いないとの回答をもらっているので報
写真3 ヒナコウモリ(2008年 4月 6日 豊 田 市 琴 平 町 )
告する。
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2008 年 8 月 20 日
西 三 河 野 生 生 物 研 究 会通 信 № 2
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ヒナコウモリ と カヤネズミ について
小鹿 登美
同定者は,子安和弘氏(愛知学院大学歯学部解剖学講師・歯学博士)です。コウモリは,特に
3月 ∼4月に かけて 確認 される 場所 が,冬眠 から目 覚め る上 で,冬眠 場所 という 推測 もで きるの で,
貴重 なデー タに なると のこ とで す。
ヒ ナ コ ウ モ リ は 繁 殖 場 所 と 冬 眠 場 所 が 異 な り ( 構 成 集 団 も 異 な る ), 見 つ け にく い 冬 眠 場 所 の
情報 はコウ モリ の保存 のた めに も大切 です 。
カ ヤ ネ ズ ミ は ,国 内 に 生 息 す る ネ ズ ミ 科 1 7 種 の 中 で 最 も 小 さ い 。 地 上 部 1 ∼ 2 m の 高 さ に 複 数
のイ ネ科な どで 球形の 巣を つく る珍し い種 で,愛 知県 でも 絶滅危 惧種 (VU)に属 します 。
愛知県の第二次レッドリスト(植物)の新分類群について
花井隆晃
植 物 と し て は 2001 年 に 発 刊 さ れ た 「 レ
ると,コフキイワギボウシの名の園芸種が
ッドデータブックあいち」以来の改定とな
イワギボウシの変種または品種として掲載
る 「 第 二 次 レ ッ ド リ ス ト 」 が 今 年 の 3 月 26
さ れ て い る 。「 第 二 次 レ ッ ド リ ス ト 」 の 学
日に公表された。
名もイワギボウシの変種として扱われてい
概要についてはウェブサイトにあるファ
るが,果たして同一のものだろうか。
イルを参照していただきたい。ここでは維
コミゾソバは,最近愛知みどりの会で創
管束植物リストの備考の欄に「新分類群」
刊された「シデコブシ」という雑誌で詳し
と書かれた,比較的耳なじみのない植物に
く 掲 載 さ れ て い る 。 主 軸 は 長 さ 15 ∼ 80( ∼
ついて微力ながら解説をする。
120cm) と 普 通 の ミ ゾ ソ バ に 比 べ る と 小 型 で
「第二次レッドリスト」で「新分類群」
ある。ミゾソバには地面に向かって伸びる
と さ れ た の は オ オ ミ ヤ マ ウ ズ ラ ( CR), コ
閉鎖化序枝が見られるが,コミゾソバには
フ キ イ ワ ギ ボ ウ シ( EN),コ ミ ゾ ソ バ( VU),
みられないことがキーキャラクターとなっ
ト ヨ ボ タ ニ ソ バ ( VU), ヒ メ ボ ン ト ク タ デ
ている。その他,葉の側裂片の先がほとん
( VU) の 5 種 で あ っ た 。
ど円形になることや,小花の数が少なく花
オオミヤマウズラは,今年の日本植物分
序が小さいことも特徴として挙げられてい
類学会第 7 回大会において,芹沢氏によっ
る。愛知県と岐阜県中南部には点在してい
てポスター発表された植物である。大会の
るようだが,その他は全国的にみても限ら
研究発表要旨集によると,ミヤマウズラに
れた場所にしか分布していない植物であ
よ く 似 て い る が , 全 体 が 大 型 で , 高 さ が 30
る。丘陵地∼山地の,やや貧栄養の,しか
∼ 40cm, 葉 身 も 長 さ 5 ∼ 7cm に も な る 。
し極度に貧栄養ではない湿地の,林縁や林
花 序 は ミ ヤ マ ウ ズ ラ よ り も ま ば ら で , 10
内 に み ら れ る 。「 第 二 次 レ ッ ド リ ス ト 」 の
∼ 20mm 間 隔 で つ く 。 東 海 地 方 の 丘 陵 地 に
学 名 は「 Persicaria sp.」と な っ て い る が ,
「シ
分布し,湧水湿地の周縁部に成立した湿性
デ コ ブ シ 」 で 「 Persicaria mikawana」 と 命 名
の林内でみられるようである。
された。
コフキイワギボウシは,今のところいず
トヨボタニソバは金沢大学の須山・植田
れかの大会や雑誌等で発表されたものを確
両 氏 が 2006 年 の 日 本 植 物 学 会 第 70 回 大 会
認できていない。インターネットで検索す
にて口頭発表した植物である。大会要旨集
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2008 年 8 月 20 日
西 三 河 野 生 生 物 研 究 会通 信 № 2
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------によると,ミヤマタニソバに非常によく似
花期はボントクタデに比べて早い。また,
ているが,茎が立ち上がらないことや,長
ボントクタデはヒメボントクタデとヤナギ
細い花梗の先に一つの花が付くこと,地下
タデの交雑に起源する複二倍体の可能性を
に花を付けることなどで区別される。花が
示唆している。
地下に潜る様は「落花生のようだ」と書か
以上,これらの情報が皆様の植物採集の
れている。まだ雑誌等で発表されたものを
際の一助となり,新分類群の種について多
確認していないが,いずれどこかの雑誌に
くの情報が集まることを願う。
<参考資料>
掲 載 さ れ る と 思 わ れ る 。「 第 二 次 レ ッ ド リ
ス ト 」 で は 「 Persicaria
sp.」 と な っ て い る
レッドデータブックあいち(2001 年
愛知県)
が , 大 会 要 旨 集 で は 「 Persicaria geocarpica」
Joufnal of Plant Research Vol.119 Supplement
と名付けられている。
( 2006 年
ヒメボントクタデは,今年の日本植物分
The Botanical Society of Japan)
日本植物分類学会第 7 回大会
研究発表要
類学会第 7 回大会においてポスター発表さ
旨 集 ( 2008 年
日本植物分類学会)
れた植物である。大会の研究発表要旨集に
シデコブシ 第 1 巻第1号(2008 年 愛知みどりの会)
よると,葉鞘と葉鞘縁毛の長さの比や茎の
愛知県 HP: http://www.pref.aichi.jp/0000013869.html
毛の本数,葉裏の毛の数,縁毛の長さ,花
序中軸の太さがボントクタデと異なる。開
三河昆虫研究会
(旧額田町役場)で
が「森の総合駅
(旧額田町役場)で
三河昆虫研究会が
「森の総合駅」
」
昆虫展示会を開催
今年も旧額田町役場で三河昆虫研究会が展示会を行って
いました。昨年も同じ時期に展示したが,今年で 2 年目に
なります。大平先生をはじめ,山崎さん,鈴木栄二さん,
杉坂美典さんらの写真や標本が出品されてました。
岡崎市役所額田支所
〒 444-3696
電 話 : 0564-82-3101
岡 崎 市 樫 山 町 字 山 ノ 神 21 番 地 1
http://www.city.okazaki.aichi.jp/yakusho/ka2900/ka000.htm
書籍の紹介
「生 息 地 復 元 の た め の 野 生 動 物 学 」
M.L.モリソン
梶
光一・神崎伸夫
監修
著
朝 倉 書 店 , 4,300円
発 行 年 : 2007年 9月
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2008 年 8 月 20 日
西 三 河 野 生 生 物 研 究 会通 信 № 2
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------本 書 は 「 生 息 地 復 元 の た め の 野 生 動 物 学 ( 原 題 : Wildlife
Restoration)」 と 題 さ れ た 専 門 書 で す 。 原 文 は Michael L. Morrison と
いうこの分野の泰斗によって執筆された,生態復元の科学と実践
シリーズの第 1 作となる専門書です。
米国でこのような優れた著書が生み出された背景には,生物多
様性の喪失とリンクした生息地の破壊が深刻な問題となっている
こ と で す 。 生 態 復 元 が 21 世 紀 の 生 態 学 と 環 境 保 護 の 根 本 原 理 の
一つになることを投げかけており,具体的に,個体群,生息地,
評価,モニタリング,サンプリング法,保護区の設計などという
内容になっています。
(文責:小鹿登美)
「写真でわかるシダ図鑑」
著
者:池畑
怜伸
発 行 年 : 2006年 8月
発行所:トンボ出版
ISBN4-88716-154-9
「きれいな花の咲く植物は大好きだけど,シダはちょ
っ と ・・ ・ 」 と い う 方 ,「 シ ダ は 好 き だ け ど , 同 定 に は 自 信
が な い ・・・」 と い う 方 に お 勧 め し ま す 。 シ ダ に は 立 派 な 図
鑑がいくつもありますが,写真を多用している点,最初
にしっかりと用語について解説されている点,身近なシ
ダを中心に取り上げている点では,シダの入門書として
大いに力を発揮することと思います。また,著者の体験
談などを含んだ各種の解説は,読み物としても面白く,飽きさせません。
発 行 は 2006 年 と や や 古 い で す が , 非 常 に 面 白 い 本 で す の で 紹 介 さ せ て い た だ き ま し た 。
(文 責 : 花 井 隆 晃 )
三 河 本 宮 山 昆 虫 誌 」 三河昆虫研究会編
三河昆虫研究会副会長の山崎隆弘氏が大変な労力と時間
をかけられ,ついに「三河本宮山昆虫誌」ができあがりま
した。今回は,プリンターで出力したものを製本してあり
ますが,とても立派な仕上がりになっています。内容も山
崎さんを中心に,多くの方が執筆しており,とても充実し
た 内 容 に な り ま し た 。 限 定 100 部 作 成 で す が , 昆 虫 文 献 の
「 六 本 脚 」 で も 20 部 程 度 を 販 売 を す る そ う で す 。 と に か く
僅 少 ,ご 希 望 の 方 は 早 め に 手 配 さ れ る こ と を お 勧 め し ま す 。
問い合わせは,三河昆虫研究会事務局までお願いします。
(文責:小鹿
亨)
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