山 口農 技 セ ン タ ー 研 報 (Bull.Yamaguchi Agri Fore Gene Tec Cent)3:89-95.2012. 山 口県 にお けるナ ラ枯れ被害 の分布 と推移 ※ 杉本博 之 Distribution and Transition of」 apanese Oak Wilt in Yamaguchi Prefecture Hiroyuki SuGIMOTO Abstract:In 2007,oak wilt brOke out fOr the flrst time in Hagi city(Tamagawa area),Yamaguchi Prefectureo The distribution and transition of this disease were investigatedo We speculated that this disease prilnarily Occurred at the border between Yamaguchi and Shimane Prefectures around 2005.Only θ口artfθ υs serra″ trees were affected at the beginning,but the disease,soon spread to other species. The distribution Of Oak wilt was cOnfirmed at three areas in 2007 and had remained in thOse infected areas fOr a few years,but it dramatically spread through Hagi city (Susa area)in 2010。 The characteristics Of this disease in Ya】maguchi Prefecture were as follows:Atter a natural forest was cut down,a neighboring mature(lnore than 61 years old)was infected. This disease then spread to other surrounding fOrests that were over 41 years old。 The affected fOrest is Of a nlixed type.The rate of oak wilt is less than 7%,so the risk of deforestation is lowo HOwever, in case of when this disease shOuld Occur around houses and because θo seHa″ ′ is easy tO rot, it is necessary to take preventive measures for tree accidents. Key Words :distribution,oak wilt, P■ attυ S αυθ晨 s, Querucus serrata,transition "7ar口 キ ー ワ ー ド :カ シ ノナ ガ キ クイ ム シ 、 コナ ラ 、被 害分布 、被 害推 移 緒 1980年 以前 の被 害発 生地 域 は 1934年 に宮 崎 県及 び鹿 児 島県 で 記録 され て 以来、高知県 、 言 2009)。 日本各地 で ミズ ナ ラや コナ ラな どのブ ナ 科樹 兵庫 県、 山形 県等 と特 定 の 地 域 に断 続 的 に発 生 木 が枯損す るナ ラ枯れ 被 害 が発 生 し問題 になっ してい たが 、 1980年 以降 日本海側 を 中心 に発 生 て い る。 この被 害 は 、体長 ・ 拡大 し (伊 藤 ・ 山田、 1998)、 1999年 には二重 5111111程 度 のカ シ ノナ ガキクイ ム シ (Platypus quercivorus(Murayam 県 、奈 良県 、和歌 山県 の太 平洋 地 域 に被害 が広 a):以 下 カ シナガ )が ナ ラ類 、 シ イ・ カ シ類 の が り (伊 藤 ら、2000)、 樹木 に集 中加 害 し、そ の 時 に 体 に付着 した病原 道府 県 で被 害 が発 生 してい る (林 野庁 、20H)。 中国 五 県 では2009年 に全 県で被 害発 生が確認 さ 菌 であるナ ラ菌 (Raffaelea quercivora)を 大 量 に樹体内 に持 ち込 む こ とに よ り発 生 す る樹木 の伝染病 である (高 畑 、2008)。 カ シナガ の穿孔 被害 は50種 以 上 の樹木 で確 認 され 、そ の 内 、枯 死被害 はブナ科樹木 の 16種 であ る (ノ Jヽ 林・ 野崎 、 れ て い る。 県 内で は 1994年 に 隣県 で ある島根県 津 和野町 (旧 日原 町 )で 発 生 した コナ ラ枯 死被 害報告 を受 けて (周 藤 ら、2001)、 ナ ラ枯れ 被害 ※ 本研究の一部は第59回 日本森林学会 関西支部大 会 で 発 表 した -89- 20H年 3月 現在 では30都 山 口県 にお け るナ ラ枯 れ被 害 の 分布 と推 移 調 査 を実施 したが 、被 害 を確認 で きなか っ た (杉 本 ら、2002)。 しか しなが ら、媒介者 であるカシ 2008年 以 降 の調 査 は集 団枯 死 が前年度確認 さ れ た周辺部 (lkm程 度 )で は踏 査せず 、 日視 徳 地町 )滑 山 のア カガ シ材 で採取記録 が あ り (村 山、 1954)、 被害発 生 の 可 能性 は懸念 され て い た。こ うい う状況 の 中 で2007 既 被害地 か ら lkm以 上 離れ た 場所 は 、踏査 し 年 に萩 市 (旧 田万川 町 )で 森林組 合 の 作業員 が コナ ラ枯死木 を発 見 し、農 林総合 技術 セ ン ター 画 図 の小 班 単位 で 区分 し記録 した。 また 、現況 と森林簿デ ー タに よ り被 害傾 向 を分析 した。調 研 究員 が調 査 した 結果 、 カ シナ ガ に よる被 害 で あ り、 これ が 県 内 で の ナ ラ枯れ 被 害 の初記録 と 査 時期 は 、概 ね 枯 死 木 が確認 で きるよ うにな る ナ ガは 、山 口市 (旧 に よる枯 死 状況 か らナ ラ枯れ 被 害 と判断 した。 てナ ラ枯れ 被 害 を確認 した。被 害位 置 は森林計 8月 上旬 か ら紅 葉前 の 10月 上旬 までに実施 した。 な った。 そ こで県 内 の ナ ラ枯れ被 害対策 に資す るため、 ナ ラ枯れ の被 害分布及 び推 移 を調 査 した の で報 2ナ ラ枯れ被害終息林分の枯死率 告す る。 た め 、被 害 終息林分 でナ ラ枯れ 被 害 に よる枯 死 なお、本文 に入 るに先 立 ち 、 カ シ ノナガ キ ク イ ム シの 同定及 び 調 査 に 関 し御 助 言 い ただ い た 率 を調査 した。被 害終息林分 は 、穿入 生 存木 が ナ ラ枯れ被 害 が森 林 に与 える影 響 を調 査 す る (独 )森 林総合研 究所 九 州 支所 の 後藤 秀 章 氏 、同 翌年 以降枯 死 しに くい こ と (江 崎 ら、2002)か ら、林分 内 の 大 多数 の コナ ラが枯死 または穿入 研 究所 関西支所 の衣 浦晴 正 博 士 、 また 、調 査 に 当た り御 協力 い ただ い た 宗 野俊 平 氏 、大峙康 平 生 存木 である林分 と した。 20H年 4月 に被害終檀、 林分 2ヶ 所 で 、20m× 25mの プ ロ ッ トを設定 し、 博 士 、天 田美穂 氏 、各農 林 事務 所 の 林 業普及指 導員 の皆様 に厚 く感謝 の意 を表す る。 プ ロ ッ ト内にある胸 高直径 (以 下、直径 とす る) 5 cm以 上 の 全 て の樹木 を 、株 立 ち木 は 、最 も大 きい幹 の径 を測定 した。ナ ラ枯れ終息林分 では 、 株 立 ち木 の 全 て の 幹 が 枯 死 した もの を枯死木 と 材料 お よび方法 定義 した。被 害林分 内 のナ ラ枯れ 被害枯 死 木 の 割合 (枯 死木本数 /全 樹種本数 )を 求 めた。 1ナ ラ枯れ被害 の分 布 と推移 1)2007年 被害分布 2007年 に県 内でナ ラ枯れ 被 害 の発 生 が確認 さ 結 果 れ た こ とを受 け、被 害 全容把握 の た め 、県 内全 域 を対象 に各農林 事務所 の 林 業普及指導員 が道 路 上か ら目視 にて広 葉樹 枯 死木 を探査 し、森林 1ナ ラ枯れ被害分布 と推移 1)2007年 被害分布 県 内で初 めて の ナ ラ枯 れ被害地 は 、萩市 計画図 に位置 を記録 した。 (旧 次 に記録 簿 を基 に農 林 総合 技術 セ ン ター の研 究員 がカ シナ ガ に よる枯 死 被 害 で あ るか踏 査 し 田万川 町 )の 3ヶ 所 であ つ た (第 1図 )。 周辺林 分 の施 業履歴及 び 踏 査 か ら得 られ た被 害地 の概 た。カシナガが樹 幹 下部 に穿孔す る性 質 (松 本 、 1955;衣 浦 、 1994)か ら、 カ シナ ガ に よる枯 死 要 は 以 下 の とお りで あ る。 なお 、林齢 は森林簿 デ ー タか ら算 出 した。 被 害 の判定 は 、樹幹 下部 で排 出 され る フ ラ スの 確認 と穿入 孔 の径 (2.1∼ 2.9111111)に よ り判 断 し 1カ 所 日は最初 にナ ラ枯れ 被 害 が発 見 され た た (井 上 ら、2003)。 場所 (林 齢 47年 生 、以下、 A区 とす る)で 、 標高 は 130∼ 200mに あ り、治 山事業 に よ リマ ツ材線 虫 被 害林分 の枯 死率 は 、幹 に対 す る枯 死 率 (被 害木幹本数 /全 木幹本数 )と した。 なお 、被 害 2001∼ 2003年 に 病被害跡地 に上 層木 を残 し伐採 、 抵抗性 マ ツ を植 栽 した 現地 で あ つ た。 A区 にあ 木 は株 立 ちが 多 い た め 、株 の別 れ て い る部分 か る上 層木 は H科 12種 238本 直径 20。 1± 7.3cm(平 均 ±標 準偏差 )で 、ブナ 科樹木 は コナ ラとク リで ら地面 に向か つて垂 直 に線 を引 き、株 にあ る被 あ った。優 占樹種 は コナ ラ184本 (比 率77.3%) 直径 20.0± 7.4cm、 ヤ マ ザ クラ17本 (7.1%)直 害 も各幹 の被 害 に区分 した。 2)ナ ラ枯れ被害 の 推移 径 17.6± -90- 5。 6cm、 ク リ15本 (6.3%)直 径24.8± 8,Ocm 杉 本博 之 天然林伐採 造 林 2 1ha 第 1図 第 2図 の順 であ り、 コ ラナ が 優 占 して い た。 被 害樹種 は、穿孔被害 が ク リ、コナ ラで、枯 死 被 害 が コナ ラ ナラ あ つた。 コナ ラの枯 死 率 は 10.9%(166本 中)で あ っ た。 (枯 死率 1.7%)で あ つた。 A区 の被 害 は2007年 当年枯死 の みであ つたが 、そ の林 分 と隣接す る79 2)ナ ラ枯れ被害の推移 2007年 の 枯 死 樹 種 は コナ ラ の み で あ つ たが 、 年 生の天然林 は既 存 枯 死 木 が確 認 され 、 2007年 以前 にナ ラ枯れ被 害 が 発 生 してい た こ とが分 か 被 害 が 蔓延 す る と稀 に他樹 種 で も枯死 が発 生 し った。 た。 2009年 に B区 で ク リが 、2010年 に C区 の 隣 2ヵ 所 日は海岸 に面 した天 然林 で標高は0∼ 120 mに あ り、被 害地 の 中 で 最 も枯 死木 が 目立 つ 場 接林 分 で シ ラカ シ 、 ア ラカ シ 、 ス ダ ジ イ (部 分 所 で あ つ た。 萌芽 更新 した 樹 木 が 多 くあ り、薪 次 にナ ラ枯 れ被 害 の 分布 と推 移 を第 2図 に示 炭林 であつた と推 察 され た 。 被 害 地 は林齢 が 54 年 生 と79年 生 (以 下 、 54年 生 :Bl区 、 79年 生 す。 2008年 は既 存被 害地周 辺 部 の 3ヶ 所 で 新 た な被 害 が発 生 した。 2009年 は、 2007年 に発 生 し :B2区 とす る)の 2つ の 小班 で 構成 され てい た 被 害地 を線 で 結 ん だ三角形 の 内部地帯 に拡散 た。 隣接 地 を含 む周 辺 地域 は 、森 林公 園整備 の した。 2010年 は 旧須佐 町 まで飛 躍 的 に分布 が拡 ため、1995∼ 1997年 にか けて本 数 調整伐 や 1997 年及 び2000∼ 2001年 にか けて マ ツ材線 虫病 被 害 大 し、 2009年 の最 先端 か ら約 3.2∼ 4.Okm離 れ た 跡 地造林 が 実施 され て い た。 両林 分 の被 害樹種 は穿孔 被 害 が コナ ラ、 ス ダ ジ イ 、枯 死 被 害 が コ ナ ラで あ つ た。 各林 分 の コナ ラ枯 死率 は Bl区 で6.5%(46本 中)、 B2区 で 17.4%(46本 中 枯れ )で 枯 死 が発 生 した。 3地 域 で飛 び地 的 に被 害 が発 生 した。 そ の 内、 2地 域 (2010① 、2010② )で は被 害 に共通 点 が 見 られ た。 共通 点 は 2つ あ り、1つ 日は造林 の ため近 隣 の天然林 が 2 ha以 上 伐採 され ていた点 、 2つ 目はエ リア内 の最初 の被 害発 生地の林齢 が ) で あ った。 また、両 区 に既 存枯 死 木 が あ り、枯 死木 の折損 。腐 朽 状 況 等 か ら B2区 の 方 が Bl 61年 生 以 上 で あ っ た点 で あ る。 しか し、 島根 県 境 に近 い2010③ で は 、 島根 県 の 詳細 な被 害情報 区 よ りも古 い枯 死木 が あ る と判 断 で きた。 A区 が な く、他 の 2地 域 と同様 の 拡 大傾 向は確認 で と同様 に2007年 以前 か らナ ラ枯 れ被 害 が侵入 し きな か っ た。 なお 、 2010年 被 害地 を踏 査す る と て い た ことが分 かつた。 一 部 に既 存枯 死 木 が確認 できた。 3ヶ 所 日は山間部 の 天 然 林 (以 下、64年 生 、 C区 とす る)で あ つた。標 高 は70∼ 90mに あ り、 萌芽 更新 した樹木 が 多 く薪 炭 林 で あ っ た と推 察 最 後 に枯 死 被 害林 分 の 林齢 とそ の 箇所数 を第 3図 に示 す。 被 害発 生林 分 の林齢 は 、37年 生 の 1例 を除 いて 、41年 生以上 であった。 され た。他 と違 い 隣接 地 で 伐 採 は実施 され て い 2ナ ラ枯れ被害終息林分 の枯 死率 な いが 、約 650m離 れ た近 隣地 で造 林 の た め 、天 然林 が2.8ha伐 採 され て い た。被 害樹種 は 、穿孔 終 息林 分① で は 14科 19種 152本 直径 10,7± 5.4 cm、 終慶、 林分② では 13科 15種 63本 直径 16.7± 9.2 被害 が コナ ラ、 ス ダ ジイ 、枯 死被 害 が コナ ラで -91- 山 口県 にお けるナ ラ枯れ 被害 の分布 と推移 第 1表 調査 区 線粉① 0-20 21-40 41-60 61-80 81- 林齢 第 3図 cmが 生 育 して い た。枯 死被害 の 可能性 の あるブ 林分① で1.3% みで枯死率 (枯 死本数 )は 、終壇、 (2本 )、 終息林分② で6.3%(4本 )で あつた 林分内の コナ ラのみ調査 (第 1表 )。 なお 、終壇、 した枯死率は、約 4割 であった (杉 本、未発表)。 考 線粉② cmで あった。 ナ ラ枯れ による枯 死 木 は コナ ラの ヤブツバ キ ヒメユ ズ リハ ツバ キ トウダイ グ タプ ノキ ヨナ ラ ゴ ンズ イ モ チ ノキ シ ロダ モ ク ロキ ヤマ モ モ ハ ゼ ノキ ク ス ノキ ブナ ミツバ ウ ツ モ チ ノキ ク ス ノキ ハ イ ノキ ヤ マモ モ ウル シ ネ ズ ミモ チ ヒサカキ モ クセイ ツバ キ ク リ ブナ コナ ラ ブ ナ リョウプ リョウブ ソ ヨゴ モ チ ノキ ヒサ カ キ ツバ キ ハ ク ロキ イ ノキ スギ スギ ク ロマ ツ (枯 死 マ ツ ユ ズ リハ クロガネモチ ネ ジキ ネ ズ ミモ チ ハゼ ノキ ヒメユ ズ リハ ヤマモモ 平均胸 高直径 比率 個体数 樹種 ク ロガネモチ モ チ ノキ ウリハ ダカエ デ カエデ エ ゴ ノキ エ ゴノキ スダジイ ブナ モ ッコク ツバ キ リョウプ リョウブ モチ ノキ モ チ ノキ 枯 死 被 害 林 分 の 林 齢 (森 林 簿 デ ー タ )と 箇 所 数 ナ科樹木 が終息林分① では コナ ラ14本 (比 率9。 2 %)直 径 20.7± 7.2cm、 ク リ1本 (0。 7%)直 径 17。 7 cm、 ス ダジイ 1本 (0.7%)直 径 17.8cmで 、終壇、 林分② では コナラ13本 (20。 6%)直 径24.7± 9.6 ナ ラ枯れ被害終 ′ 自、 林分 の樹種構成 と胸高直径 20.4 15.8 11.8 9.2 (± SD)cm 6.7 ± 1.3 10.3 ± 2.9 10.5 ± 2.9 20.7 ± 7.2 5.3 15.4 5.3 8.0 5.3 12.1 ± 9.0 ± 1.4 ± 3.6 ± 2.3 ± 2.7 ± 2.2 ± 0.2 11.8 3.9 3.3 2.0 8.6 ± H.2 9.4 7.2 1.3 5.6 0.7 17.7 07 1 13 13 5 8 155 0.7 5,7 0,7 7.5 0.7 17.8 0.7 15.6 0.7 5.4 20.6 15.6 20.6 12.7 24.7 9.2 7.9 14.0 79 8.1 4 6.3 12.0± 4 6.3 158 トウダイ グ モ チ ノキ ツツジ モ クセイ ウル シ トウダイ グ ヤマモ モ 2 5 3 2.6 4.8 3.2 31.7 13.5 1.6 5.4 1.6 5.3 1.6 5.5 1.6 8.4 1.6 5.8 1.6 19.4 ± 3.6 ± ± ± ± 9.6 1.5 4.0 4.2 4.0 ± 6.7 ± 19.7 ± 3.6 う報 告 は他 県 で も同様 の 事例 が あ る (布 川 、1993 林 ・ 上 田、 2001;月 ヽ ;小 林 ・ 柴 田、 2001;月 ヽ 林 ・ 上 田、 2002;井 上 ら、 2003)。 察 また 、 カ シナ ガ が 倒 木 に集 ま る こ と (小 林 ら、 2000)や 根 株 や 1ナ ラ枯れ被害実態調査 丸 太 が カ シナ ガ の 発 生 源 に な る こ とも指 摘 され て い る (松 本 、 1955;井 上 ら、 2003)。 1)2007年 被害分布 また 、そ 2007年 に県 内で 初 めてナ ラ枯れ被 害 が発 見 さ の よ うな場 所 で ナ ラ枯 れ 被 害 が 発 生 す る条件 と れ調査 した結果 、以前 か ら被 害 が発 生 して い た して 、 そ の 周 辺 に 高 齢 林 が 存 在 す る こ とが重 要 こ とが分 か る。発 見 が遅 れ た理 由は、道 路 か ら で あ る こ とが指 摘 され てお り (ノ jヽ 林 0上 田、2002)、 の 目視探査 では死 角部分 が 確認 で きな い こ とや 県 内 の 発 生 場 所 は この 条件 に該 当 して い る。 周辺部 にマ ツ材線 虫病 に よる枯 死 木 が あ る こ と に よ り気付 かなか っ た こ とで あ る。 県内 にお け 2)ナ ラ枯 れ 被 害 の 推移 2007年 の 被 害 確 認 樹 種 は コナ ラ の み で あ つ た る最初 のナ ラ枯れ被 害 は 、枯 死 木 の 状態 か ら島 根 県境 に近 い林齢 79年 生 の B2区 周辺 に2005年 が 、 2008年 以 降 に 他 の 樹 種 で 被 害 が 発 生 して い る。 これ は カ シナ ガ の 樹 種 に 対 す る選 好性 が あ 頃 か ら被害 が発生 して い た と考 える。 被害 地 の コナ ラ枯 死 率 は林齢 が 高 い ほ ど被 害 るた め (小 林 、 2000;小 林 ・ 柴 田、 2001;小 林 ・ 上 田、 2001)、 当初 は 好 む コナ ラに穿孔 して い 率 が 高 い。 これ はカ シナ ガが大 径 木 に好 んで 穿 孔す るため、穿孔密度 が 高 くな り枯 死 率 が 高 く な る こ と (衣 浦 、 1994;小 林 ・ 柴 田、2001;小 た が 、 穿 孔 す る コナ ラが少 な くな っ た こ とに よ 林 ・ 上 田、2001)が 分 か つ てお り、調 査 地 も同 と推 察 され る。 1990年 代 に 被 害 が 発 生 した 鳥 取 様 の結果 である。 2007年 に確認 され た 3か 所 は 、 公 園整備 や造 県 で も 1994∼ 2001年 ま で の 調 査 で は 、枯 死 木 は コナ ラ と ミズ ナ ラで あ る (井 上 ら、 2003)が 、 林 の た め 、天然林 が 2 ha以 上 伐採 され 、そ の近 隣 の61年 生 以 上 の林分 (以 下、高齢 林 )で 最初 近 年 で は ス ダ ジ イ 等 の 枯 死 が 発 生 して い る (西 垣 、私信 )。 今 後 、 県 内 で も他 樹 種 へ 枯 死 が移行 に被害 が発 生 して い る とい う共 通点 が あ る。 こ の よ うに伐採 後 にナ ラ枯 れ 被 害 が 発 生 した とい して い くか 注視 す る必 要 が あ る。 り、他 樹 種 に 穿 孔 し、他 樹 種 で 枯 死 が 発 生 した 次 に 枯 死 被 害 林 分 は 主 に 41年 生林 分 以 上 で あ る。 これ ま で の 報 告 で も、 一 部 若 齢 林 へ の 被 害 - 92 - 杉本博 之 はあるが、ほ とん どが40∼ 50年 生以上であ る (伊 藤 ・ 山田、 1998)。 2010年 に飛 び地 的 に発 生 した 2ヵ 所 は 、天然 林 が 2 ha以 上 伐採 され 、 そ の 近 隣 の 高齢 林 で最 初 に被害 が 発 生 して い る とい う共通 点 が あ り、 先 に示 した よ うに カ シナ ガ の 被 害 が 発 生 しや す い条件 であ る。 また、 2007年 に発 生 した A区 周 辺 (第 2図 の 赤線 ○ )の 高齢 林 に以前 か ら被 害 2007 が発 生 して い な いか を2008年 に踏 査 したが 、 年 以前 の被 害 は確 認 で きな か つ た (杉 本 、未発 表 )。 この ことか ら、総合 的 に考察す る とナ ラ枯 れ被 害 の発 生傾 向 は、伐採 が 引 き金 とな リカ シ ナ ガが誘 引 され密 度 が 高 ま り、カ シナ ガの 好 む 高齢林 が近 隣 に あれ ば 、 まず そ こで被 害 が 発 生 し、そ して 、高齢 林 の 枯 死 木 で飛 躍 的 に密 度 が 高 ま り、周辺部 の 41年 生 以 上 の 林 分 にナ ラ枯れ 被 害 が拡大す る と考 え る。 ナ ラ枯 れ被 害 が発 生 して い る地域 で は41年 生 以 上 の 林 分 に コナ ラが と (岡 田 ら、 20H)や 県 内 の未被 害地 でカ シナ ガが生 息 してい る こ と (村 上 、 1954)等 を考 え る とナ ラ枯 れ被 害未 発 生地 域 で は、ナ ラ枯れ 被 害 の 予測 をす る こ とは困難 で あ る。 しか しなが ら、天然林 を伐採 等 した近 くに コナ ラの 高齢林 が あれ ばナ ラ枯れ被 害 の発 生 の危 険性 は高 ま る の で 、そ の よ うな箇所 で は 警戒 が必 要 で あ る。 2ナ ラ枯れ被害終息林分の枯死率 ナ ラ枯 れ被 害発 生地 域 は多樹 種 が入 り混 じる 混交林 であ る (第 4図 )。 ブナ科樹木以外 に も高 木性 樹 木 が あ り、枯 死 後数年 経過 す る と他樹種 が 林冠 を覆 うと考 え る。 第 1表 の ク ロマ ツ は全 て枯死 木 (枯 死 率 4.8%)で あ り、その枯死木周 辺 は他 樹種 が 林 冠 を覆 って お り、枯 死被 害 の林 分 へ の影響 は一時的 な もの とな ってい る。また 、 終 虐、 林分 での コナ ラ枯 死 率 は 7%以 内 と低 く、 山地崩壊 等 防 災上 の 危 険性 は少 な い と考 え る。 しか し、 コナ ラ枯 死木 は腐朽 の 進行 が 早 く、翌 あれ ば、枯 死 が発 生す る恐れ が あ る。 なお 、第 2図 等 に示す よ うに41年 生以 上 の天 然 林 は多 く 年 には枝 条 の 落 下や数年 経過 す る と幹折等 が生 あるが、目視調査 か ら コナ ラ の賦 存 割合 は低 く、 被害発 生場 所 に局地 的 に コナ ラが点在 して い る じてお り (第 4図 )、 道路際や 人家付近で被害が 発 生 した 場合 は、枝 の 落 下や倒 木 に よる被 害 を 状況 である。 避 け るた め事 故 防 止 対策 を講 じる必 要 が あ る。 長野県 では既 存被害地 か ら200km離 れ た場所 で カ シナ ガの地 域 個 体群 に よ り被 害 が 発 生 した こ 栃 図 ナ ラ枯れ被害林分 の状況 ),b:落 下 した枝条 ,c:折 損 した幹 :コ ナ ラ - 93 - 山 口県 にお けるナ ラ枯れ 被害 の分布 と推 移 たナ ラ・ カ シ類 の 枯 死 被 害 。日本林 学会大 会学術講演集 :302. 摘 衣 浦晴 正 。 1994.ナ ラ類 の集 団枯損 とカ シノナ ガキ クイ ム シの 生態 。林 業 と薬剤 130:H一 要 2007年 に県 内で初 めてナ ラ枯れ被 害 が確認 さ 20。 小林 正秀 れた の で被害分布 及 び推 移 を調査 した。 12007年 のナ ラ枯れ被害 は 、萩 市 (旧 田万川 町) の 3ヶ 所 であ つ た。踏 査 か らナ ラ枯れ 被害 は2005 年 頃 に県境 付近 で発 生 して い た と推 察 され た。 22007年 の枯 死 は コナ ラ の み で あ つ たが 、被害 が 蔓延 す る とク リ・ シ ラカ シ 0ア ラカ シ等 の他 0上 田 明 良 ・ 野 崎 愛 。 2000。 倒 木 が ナ ラ類 集 団枯 損発 生 に与 える影響 。森林応用 研 究9-2:87-92. 小林正 秀 。2000。 カ シ ノナ ガキ クイ ム シの各種 広 葉樹 丸太 へ の 穿孔 。森林応 用研 究 92: 99-103. 小林正秀 ・ 柴 田繁 。2001.ナ ラ枯 損発 生 直後 の 樹種 で も枯 死が発 生 した。 3被 害 は2009年 までは2007年 の被 害地域 内 に留 林分 にお け るカ シ ノナ ガ キクイ ム シの 穿入 須佐 町 )ま で と立 木 の被 害状況 (I)一 京 都府舞鶴市 にお ける調査結 果 ―.森 林応用研 究 10-2:73-78. ま つ て い たが 、2010年 は萩 市 (旧 飛躍的 に拡大 した。 4ナ ラ枯れ被 害 の 拡大傾 向 は 、 まず 、天然林 が 小林正 秀 ・ 上 田明 良 。 2001。 ナ ラ枯損発 生 直後 の林分 にお けるカ シ ノナガ キクイ ム シの穿 伐採 され た後 、そ の 近 隣 地 の 高齢林 分 (61年 生 以 上 )に 被害 が発 生 し、 そ の 後 、周辺部 の41年 入 と立 木 の被 害状況 (Ⅱ )一 京 都府 和知町 と 生 以 上 の林分 に被 害 が 拡 大す る。 なお 、 ナ ラ枯 京北町 にお け る調 査 結果 ―。森林応用研 究 れ被 害発 生林分 は主 に41年 生 以 上 であ った。 10-2 : 79-84. 5被 害林分 は 多樹種 が入 り混 じる混 交林 内で発 生 してお り、また、枯 死率 も 7%以 下 で あ り、 小林 正 秀 ・ 上 田明良 .2002.京 都府 内にお ける 山地崩壊等 の危険性 は低 い と考 える。 疫 51:62-71. 小林正秀 ・ 野崎愛 。 20090ナ ラ枯れ被 害 を ど う 防 ぐのか ―被 害 の メカ ニ ズム と防除法 ― 6道 路や人家付近 で被 害 が発 生 した 場合 は 、折 損被 害 が起 こ る可能性 が あ り、事故 防 止 対策 を ナ ラ類集 団枯損 の発 生要 因解析 ―。森林防 . pp17.京 都府林業試験場 。京 都 講 じる必要 がある。 松本孝介 。 1955。 と防除状況 ―兵庫 県城 崎郡 西気 村 一。森林 防疫 ニ ュー ス 4。 74-75。 引用 文 献 江崎功 二郎 0鎌 田直人 ・加 藤 賢隆・ 井 下 田寛 2002.カ シノナガ キ クイ ム シの 穿入 と枯 死 村 山醸造 。1954.山 口縣 の き くいむ し。 16-19.山 . 木拡大経過 。森林防疫 51。 口縣 林 業 振 興 推 進 委 員 会 0山 口縣 森 林 協 132-135。 布川耕 市 .2003。 新潟 県 にお け るカ シ ノナ ガキ クイ ム シの被 害 とそ の 分布 につ い て。森林 会 。山 口 ノ 山泰弘 。2011。 岡 田充弘・山内仁人・近藤道治 。 Jヽ 長 野県林業総合 セ ン ター研 究報告第 25号 。 17-27. 防疫 42.210-213. 井 上 牧雄 ・ 西垣 員 太郎 ・ 西信 介 ・ 西村 徳 義 。200 3。 カ シ ノナ ガ キクイ ムシの発生 林野庁 。2011。 「平成 22年 度森林病害 虫被害量実 績 」 に つ い て。林 野庁 ホー ムペ ー ジプ レス 1990年 代 に 鳥 取 県 で発 生 したナ ラ類 の リリー ス 周藤成 次 ・ 冨川 康 之 ・ 扇 大輔 。2001.島 根県 に お ける コナ ラの集 団枯 死 被害 とカシ ノナガ 集 団枯 死。 鳥取県林 業試験場研 究報告 40: 1-21. 伊藤進 一郎 ・ 山田利博 。1998。 ナ ラ類集 団枯損被 害 の分布 と拡大 。 日本林学会誌 80(3):2 キ クイ ム シの 寄生 ・脱 出。 島根 県林業技術 セ ン ター研 究報告 。52:110。 29-232. 伊藤 進 一 郎 ・佐 野 明・ 奥 田清 貴 0北 野信 久 ・ 秦 広志・ 篠 田仁恵 。2000。 太平洋側 に発生 し 杉本博 之 ・ 田戸裕 之 ・ 井 上 祐 一 。2002。 生物 相 互 間作用 を利 用 した病 害回避 技術 に関す る 調 査 .平 成 13年 度 山 口県林 業指 導 セ ン ター -94- 杉本博之 業務報告書 。22-23. 高畑義啓 .2008。 ナ ラ枯れ とは何 か。26‐ 44.(黒 田慶子編 .ナ ラ枯れ と里 山 の健康 。 166pp。 (社 )全 国林業改 良普及協会 。東京 ) -95-
© Copyright 2024 ExpyDoc