金融アドバイザーから一言 「メリットとデメリットを十分に比較検討した上で、銀行の提案を聞いてみましょう」 になります。個人が受け取る配当 %の「益金不参入」扱い 先月号では、「銀行の事業承継対策提案の裏側~資産管理会社の提 案を受けたことはありませんか?~」と題して、銀行の事業承継提案 金は未上場企業であれば総合課税 又は の裏側について解説しました。事業承継が多くの中小企業にとって深 刻な課題になりつつある昨今、銀行は融資とセットで資産管理会社の 設立を積極的に提案している実態があるということを理解して頂けた のではないでしょうか。 それでは、果たして資産管理会社を設立することは事業承継にとっ てメリットの方が大きいのでしょうか? それともデメリットの方が 大きいのでしょうか? 今回はメリットとデメリットを簡潔に整理し てみたいと思います。 生する毎に大株主が分散していき ナー一族の株式を集約することで、 ず はメリットについて 見て 銀行の担当者がアピールするポイ 事業会社の株式の分散防止に繋が ま ントだと思いますので、話を聞い り、経営の安定に寄与するという ます。そこを資産管理会社にオー たことがある方も多いかもしれま 利点があります。 みましょう。これらの点は、 せん。 【メリット②】 配当や株式評価に対する 税効果 【メリット①】 事業会社株式の分散防止 となることを考えると、特にその 他の収入が多い大株主にとっては 税制メリットは少なくありません。 もうひとつ、資産管理会社の株式 %相当額を控除 の評価計算において、事業会社の 株式の含み益の することが可能になります。つま り、株式の相続税評価額の抑制に も繋がります。 【メリット③】 オーナー一族への所得分散 資産管理会社から、オーナー家 族に給与を支給することで所得を 分散することが可能になり、相続 税の支払い資金の確保に繋がりま す。また、資産管理会社から後継 者に給与を支給することで、後継 者の株式買い取り資金の確保にも 繋がり、後継者の資金負担を減ら 必要があります。そうすると、利 益分だけで数億円規模となるオー 事業会社自体の株主の分散を防 止できる一方で、資 産 管理会社の 理会社の資産構成をどのように見 理的な事業計画に基づいて資産管 す。このような場 合において、合 の相続税評価額が高くなりがちで く、一般の評 価会社に対して株 式 資 産 管 理 会 社 は「 株 式 保 有 特 定 会 社 」に該 当 する可 能 性が 高 * の設立の場合は資金が不要) 。 要があります(ただし現物出資で 負担が発生することも考慮する必 達をする必要があり、そこに金利 資金がないわけですから、資金調 らに、資産管理会社には設立時に ナーが少なくありません。納税資 株主が相続発生とともに分散して 直すかが論点として想定されます。 株主の分散や経営権の分散 【デメリット❷】 資産管理会社が事業会社から 受け取る配当金の課税は、100 が発生する場合、相続税・贈与税 オーナーが経 営 する事 業 会 社 の大株主が個人の場合、相続が発 すことが可能になります。 ます。 いきます。その結果、株 主間での 上場会社の場合、上場会社株式を 前回も述べましたが、銀行の提 案が悪いといっているわけではな 等の納税資金の準備が課題になり * 上、大 き な 3つのメリット 資産管理会社の運営方針の対立が 売却し資産管理会社の株式比率の いで す。ただ、こ ういったメリッ 立場ではあまり強調したくないデ メリットを見ていきましょう。 【デメリット❶】 資産管理会社株式の換金性 はありません。 上場企業の場合は容易で こともあるかもしれません。それ て対策をしたけど、結局意味がな 較・検討しないと、手間だけかけ ます。例えば、オーナー 時にも幾つか課題があり 上記は資産管理会社設 立後の論点ですが、設立 て解説しました。 てくるかもしれません。 側にある、少し違った結論が見え 聞いてみると、担当者の言葉の裏 片隅に置きながら、銀行の提案を けです。このよう なことを、頭の 出るというケースさえあり得るわ かったというお粗末な結果になる * 上、 大 き な 3つの どころか対策をしたことが裏目に の株式を資産管理会社に ます。 ■ 移動する際に、オーナー 以 デ メ リット につい 金が重く圧し掛かるわけです。さ 起きやすくなったり、運営に関心 引き下げを行うことは流動性の観 た。それでは、ここからは銀 行の 実は、資産管理会社株式は、事 業会社の株式に比べて換金性が低 の無い株主が増加して行く危険性 株主の分散や経営権の分散 くなるのです。したがって、事 業 トとデメリットの両方を十分に比 について簡 単に解 説しまし 42 次回は、その他の事業承継対策 についてお話していきたいと思い は株式の利益分に対して %の譲 渡 益 税 を 払 う 20 【デメリット❷】 50 点から難しくはないのですが、未 以 % が高くなるのです。 【お問い合わせ先】株式会社ZUU [email protected] 承継や相続時に、当該株式の移転 【プロフィール】 冨田和成(とみた・かずまさ)…株式会社ZUU 代表取 締役社長兼CEO。大学在学中にソーシャルマーケティ ングにて起業。2006年に一橋大学を卒業後、野村證券 株式会社に入社。支店営業にて同年代のトップセールス や会社史上最年少記録を樹立し、最年少で本社の超富 裕層向けプライベートバンク部門に異動。その後シンガ ポールへの駐在とビジネススクールへの留学やタイへ の駐在を経て、本店ウェルスマネジメント部で金融資産 10億円以上の企業オーナー等への事業承継や資産運 用・管理などのコンサルティングを担当。2013年3月に 野村證券を退職し、2013年4月株式会社ZUUを設立、 現在に至る。
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