T組 数学演習 No.6 (2005/5/25) ◎次の問題から4問を選んでレポート提出してください。ただし、♥ の問題は全員が解答すること。 提出先 :南1号館556A (部屋横のポストに投函のこと。私が在室なら私に) 提出期限:毎週火曜日午後1時20分 レポートの最初に解いた問題の番号リストを書いておいてください。学籍番号、名前 (ふりがな)、T1組かT2 組かの別を書くことも忘れずにお願いします。 ◎履修申告者の名簿が事務担当から届きました。線形代数と微積分のそれぞれで名簿に自分の名前があるかを確 認してください。線形代数と微積分で履修申告は全く別です。 [微分積分学] 授業の順番が教科書と違うようです。教科書の第2章後半, 第3章後半, 第5章の前半からの出題で す。井上先生の home page http://www.math.titech.ac.jp/ inoue/biseki-I-course05.html にある第3回、第5回、 第6回の講義録を参考にしてください。極限やテーラー展開の計算例については、このプリントでも例を挙げて います。 x − nxn + (n − 1)xn+1 x − tan−1 x cos x ♥A 14. つぎの極限を求めよ。(1) lim (tan x) (2) lim (3) lim −1 π x→1−0 x→0 sin x→ 2 −0 (1 − x)λ x−x x 1 ♥A 15. 次の関数の原点におけるテーラー展開を 4 次の項までを求めよ。(1) (2) (1 + x)x (3) √ sin x 1 − x2 π ◦ A 16. sin 29 を小数点第 5 位まで求めよ。(x = 6 での sin x のテーラーの定理を適用する。π = 3.1415926535 · · · , √ 3 = 1.7320508075 · · · は用いてよい。) 1 + bx A 17. 関数 f (x) = log(1 + x) − x が x → 0 のときに f (x) = O(x4 ) となるように a, b を定めよ。 1 + ax A 18. 関数 f (x) は x = a の近くで C n+1 級で、f (n+1) (a) = 0 とする。テーラーの定理 f (a + h) = f (a) + f (a)h + f (a) 2 f (n−1) (a) n−1 f (n) (a + θh) n h + ··· + h + h 2! (n − 1)! n! 1 が成り立つことを証明せよ。 における θ に関して lim θ = h→0 n+1 √ A 19. i = −1 を虚数単位とする。次を Euler オイラーの関係式と言う。 eix = cos x + i sin x ∞ (1)ez = 1 n z , sin z = n! n=0 ∞ (−1)n 2n+1 z , cos z = (2n + 1)! n=0 ∞ (−1)n 2n z という z = 0 におけるテーラー展開が成り (2n)! n=0 立つ (テーラーの定理における剰余項が Rn → 0(n → ∞) であるので)。eix の展開と sin x, cos x の展開を比較し て、Euler オイラーの関係式を示せ。 (2) sin z = 2 なる z を求めよ。(z が実数なら当然存在しない。) 1 [テーラー展開に関連した命題と応用例] 命題 1. 関数 f (x) は x0 を含む区間 I で C n -級であるとする。 (1) x → x0 のとき次が成り立つ。 f (x0 ) f (n) (x0 ) (x − x0 )2 + · · · + (x − x0 )n + o((x − x0 )n ) 2! n! f (x0 ) f (n−1) (x0 ) f (x) = f (x0 ) + f (x0 )(x − x0 ) + (x − x0 )2 + · · · + (x − x0 )n−1 + O((x − x0 )n ) 2! (n − 1)! f (x) = f (x0 ) + f (x0 )(x − x0 ) + (2) ある実数 ai (i = 0, 1, · · · , n) により x → x0 のときに f (x) = a0 + a1 (x − x0 ) + a2 (x − x0 )2 + · · · + an (x − x0 )n + o((x − x0 )n ) を満たすなら、ai = f (i) (x0 ) for i = 0, 1, · · · , n である。(ラージオー O についても同じく成り立つ。) i! 命題 2. f (x), g(x) は原点で C n+1 -級で f (x) = n X ai xi + O(xn+1 ), g(x) = i=0 (1) f (x), g(x) の和差積も原点で C n+1 -級で、f (x) n X 0 1 i n n X X X i n+1 @ aj bi−j A xi + O(xn+1 )。 ± g(x) = (ai ± bi )x + O(x ), f (x)g(x) = i=0 (2) f (0) = a0 = 0 なら 1/f (x) も原点で C n+1 級であり、1/f (x) = i=0 n X ci xi +O(xn+1 ) とするとき、c0 = i=0 により ci は帰納的に定まる。 (3) g(0) = b0 = 0 ならば、f (g(x)) も C n+1 -級の関数であり、g(x)i = n X j=0 0 1 j X @ ai bi,j A xj + O(xn+1 )。特に、f (xm ) = i=0 bi xi + O(xn+1 ) とする。 i=0 n X j=0 1 , ci+1 a0 = − a1 0 i P k=0 ck ai+1−k ck bi,j xj + O(xn+1 ) により bi,j を定めるとき、f (g(x)) = j=i X 55 0 i n/m 0 1 j n X X 1 @ = (−1)i bi,j A xj + O(xn+1 )。 ai xmi + O(xn+1 )、 1 + g(x) j=0 i=0 注:テーラーの定理から命題 1. が証明され、命題 1. から命題 2. が証明されます。これらの命題は、n 次の無限小 O(xn ) の記号を使っ た関数の多項式による近似 (または級数展開) の効率的な計算方法を示唆します。つまり、O(xn+1 ) の部分も Kxn+1 (K ∈ ) のような 単項式と思い、関数を多項式と同じように四則や代入を行って計算するとよいのです。計算の途中で現れる n + 1 以上の項は O(xn+1 ) に ∞ X α n 順次くり込んで無視します。基本的な関数 ex , log(1 + x), sin x, cos x などの展開や二項展開 (1 + x)α = x (ただし、α ∈ , n n=0 α α(α−1)···(α−n+1) ) から多くの関数の近似 (または級数展開) が機械的に求められます。 = n(n−1)···2·1 n p 例: (1 + x) cos x の原点でのテーラー展開を 3 次の項まで求めたい。cos x = 1− 21 x2 +O(x4 ) から (1+x) cos x = 1+x− 12 x2 − 12 x3 +O(x4 ) √ 1 3 故、二項展開 1 + t = 1 + 12 t − 18 t2 + 16 t + O(t4 ) に t = x − 12 x2 − 12 x3 + O(x4 ) = x(1 − 12 x − 21 x2 + O(x3 )) を代入し、 R R p 1 1 1 1 1 3 1 x(1 − x − x2 + O(x3 )) − x2 (1 − x + O(x2 ))2 + x (1 + O(x))3 + O(x4 ) 2 2 2 8 2 16 1 3 1 3 = 1 + x − x2 − x + O(x4 ) 2 8 16 (1 + x) cos x = 1 + となる。これから、つぎのような極限の計算が可能です。ロピタルの定理とどちらが楽でしょうか? p 1 1 3 1 1 3 1 1 lim 3 1 + x − x2 − (1 + x) cos x = lim 3 x + O(x4 ) = lim + O(x) = x→0 x x→0 x x→0 16 2 8 16 16 2 [微積演習 (2005/5/18) の小テスト問題] ex cos x の n 次導関数を求めよ。(更に a, b を定数として eax cos(bx) ではどうか?) 解:ライプニッツの公式を適用しては答えがきれいではない。推定し帰納法を用いて証明する (詳細略)。答えは次である。 8 (−4)m ex cos x > > > <(−4)m ex (cos x − sin x) √ nπ f (n) (x) = ( 2)n ex cos(x + ), または f (n) (x) = m x > 4 >−2(−4) e sin x > : −2(−4)m ex (cos x + sin x) if if if if n = 4m n = 4m + 1 n = 4m + 2 n = 4m + 3 別解: f (x) = eax cos(bx) について複素関数を使った計算方法を提示します。複素関数を扱うことに伴う数学的な厳格さは犠牲に します。複素関数の微分は実部と虚部をそれぞれ微分したものに一致します。即ち、ある複素関数 F (x) により f (x) = (F (x)) なら f (n) (x) = (F (n) (x))。今、F (x) = eax (cos(bx) + i sin(bx)) とおく。オイラーの関係式 eix = cos x + i sin x を用い 変形し、普通に n 階微分すると、F (x) = eax (cos(bx) + i sin(bx)) = eax eibx = e(a+bi)x F (n) (x) = (a + bi)n e(a+bi)x 。 p a b この実部が求める関数である。そのために、r 0, 0 θ < 2π なる r, θ を r = a2 + b2 , cos θ = , sin θ = と r r iθ (n) iθ n (a+bi)x n ax+i(bx+nθ) 定め、a + bi = r(cos θ + i sin θ) = re と極座標表示する。これから、F (x) = (re ) e = r e = rn eax (cos(bx + nθ) + i sin(bx + nθ)) f (n) (x) = rn eax cos(bx + nθ)。 = ) 5 ) [No.4(2005/5/11) 配布プリント微分積分学演習の略解] n P A 7. cos(nx) + i sin(nx) = einx = (eix )n = (cos x + i sin x)n = ik n Ck cosn−k x sink x の実部と虚部を比較して、 k=0 [ n−1 ] 2 [n] cos(nx) = 2 X n C2j cos n−2j x sin 2j x, sin(nx) = j=0 X (−1)j n C2j+1 cosn−2j−1 x sin2j+1 x。 j=0 ♥A 8. f (0, 0) = 0 であるので、 lim (x,y)→(0,0) f (x, y) = 0 を満たすなら f (x, y) は原点で連続である。 (1)x = r cos θ, y = r sin θ(r > 0, 0 5 θ < 2π) として f (x, y) = f (r cos θ, r sin θ) = r cos2 θ sin θ 故 0 5 |f (x, y)| = |r cos2 θ sin θ| < r。(x, y) → (0, 0) のとき r → 0 であるので、f (x, y) → 0。よって、連続である。 (2) 相加相乗平均の不等式から x4 + y 4 = 2x2 y 2 , |xy| 5 21 (x2 + y 2 ) であるので、x = 0 かつ y = 0 のとき 0 5 |f (x, y)| = |xy|3 x3 y 3 1 1 5 = |xy| 5 (x2 + y 2 )。この不等式は x = 0 または y = 0 のときも成り立つ。(x, y) → (0, 0) とは 4 4 2 y2 x + y 2x 2 4 p x2 + y 2 → 0 となるときであり、このとき 14 (x2 + y 2 ) → 0 故、f (x, y) → 0 となる。よって、連続である。 m (3)m を定数として直線 y = mx(x = 0) 上を原点に近づくとき lim f (x, mx) = 1+m 4 となる。m の値により極限は異なるの x→0 で lim (x,y)→(0,0) f (x, y) は存在しない。したがって、不連続である。 A 9. f (x) x→0 x (1) 0 f (0) = lim x = 0 のときの f (x) lim f (x) 3x2 sin x→0 f (x) の連続性 f (0) = lim f x(x) 1 x − x cos 0 (2) 0 4x3 sin 1 x 連続 − x2 cos 0 0 x→0 f (x) の連続性 f (0) = lim f x(x) − x3 cos 0 1 x 0 (20x3 − x) sin x1 − 8x2 cos 0 1 x 不連続 1 x 連続 収束せず x→0 ♥A 10. (1)f (x) = log(a2 −x2 ) とおく。f (x) = dk (2) dx k 1 x 連続 (12x2 − 1) sin x1 − 6x cos 収束せず x = 0 のときの f (x) lim f (x) 5x4 sin 1 x 連続 収束せず x→0 1 x (3) 0 π k) 2 2 2x x2 −a2 = 1 1 + x−a x+a dn (x2 dxn であるので、f (n) (x) = (−1)n−1 (n−1)! 2 π n) 2 sin x) = x sin(x + 故、ライプニッツの公式から sin x = sin(x + 1) sin(x + π2 (n − 2)) = (x − n2 + n) sin(x + π2 n) − 2nx cos(x + π2 n)。 π 1 dn 1 dn dn (3) dx n cos x = cos(x + 2 n) 故、 dxn (cos x cos 2x) = 2 dxn (cos x + cos 3x) = 2 cos(x + + 2nx sin(x + π n) 2 + 3n 2 π (n 2 cos(3x + 1 (x+a)n + 1 (x−a)n − 1)) + n(n − π n)。 2 2 (n+2) 2 1 (x)+ A 11. f (x) = 1+x 2 であり、(1+x )f (x) = 1 を満たす。両辺の (n+1) 次導関数はライプニッツの公式から (1+x )f (n+1) (n) 2(n + 1)xf (x) + n(n + 1)f (x) = 0。x = 0 を代入して移項して f (n+2) (0) = −n(n + 1)f (n) (0)。f (0) = 0, f (0) = 1 から、n が偶数なら f (n) (0) = 0、n が奇数なら f (n) (0) = (−1)(n−1)/2 (n − 1)!。 別解:y (n) = (n − 1)! sin(ny + π2 n) cosn y を証明して、これを応用してもよい。 3 。 A 12. y = (x2 − 1)n とおく。y = 2nx(x2 − 1)n−1 ゆえ (x2 − 1)y = 2nxy 。両辺の n + 1 次導関数を計算すると X dn+1 dk 2 dn+1−k dn+2 y dn+1 y dn y ((x2 − 1)y ) = (x − 1) n+1−k y = (x2 − 1) n+2 + 2(n + 1)x n+1 + n(n + 1) n n+1 Ck n+1 k dx dx dx dx dx dx n+1 k=0 n+1 d (2nxy) = dxn+1 n+1 X k=0 n+1 Ck dk dn+1−k dn+1 y dn y (2nx) n+1−k y = 2nx n+1 + 2n(n + 1) n k dx dx dx dx となる。ここでライプニッツの公式を使った。上の 2 式の左辺はともに等しいので、辺々引くと 0 となる。Pn (x) = Pn (x) = n+1 d y , dxn+1 Pn (x) = n+2 d y dxn+2 に注意して式を整理すると題意の等式を得る。 dn y , dxn A 13. 赤道上の西経 θ(0 5 θ 5 2π) での気圧を f (θ) とする。f (0) = f (2π) である。0 5 θ 5 π とするとき f (θ) = f (θ + π) なる θ が存在することを証明するとよい。f (0) = f (π) なら証明は終わる。f (0) = f (π) と仮定する。h(θ) = f (θ + π) − f (θ) とおく。今、f (0) < f (π) としよう。h(0) = f (π) − f (0) > 0, h(π) = f (2π) − f (π) = f (0) − f (π) < 0 となる。問題の仮 定から f (θ) は連続関数であり、h(θ) も連続関数である。中間値の定理から、ある 0 < θ0 < π が存在して h(θ0 ) = 0、即ち f (θ0 ) = f (θ0 + π) となる。よって、証明が完了する。f (0) > f (π) のときも同じく証明される。 4
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