計測工学講義 第6回目 担当:西野信博 A3-012号室 [email protected] 1 プラズマ実験装置NSTX(Princeton) 目 次 • 前回演習の答え • 第2章 スペクトル解析 – フーリエ展開とフーリエ変換 – 相関関数とパワースペクトル 2 前回の演習 • 計算問題 – 区間(-π,π)で定義された次の関数f(x)のフーリエ級数展開を求 めよ。 1.0 f ( x) 1.0 • x 0 0 x 次に,区間(-∞,∞)で定義された次の関数f(x)のフーリエ変換を求 めよ。 0 1.0 f ( x) 1.0 0 x x 0 0 x x 3 解答例 1 • フーリエ級数展開 0 1 n x n x ( n cos n sin f ( x) ) 2a a n 1 a a n a f ( x) cos a n a a f ( x) sin n x dx a n x dx a • この式に,a=として,f(x)の表式を入れると 4 各項の係数を計算する • 定義区間でf(x)を使って計算すると 0 1 2a 2 1 f ( x)dx 2 1 1 dx 2 0 0 0 0 1dx 0 n f ( x) cos nxdx cos nxdx cos nxdx 0 0 0 0 n f ( x) sin nxdx sin nxdx sin nxdx 2 sin nxdx 4 2 2 n odd cos nx 0 1 cos n n n n 0 n even 5 すると • 区間(-π,π)では、cosの項は消え,sinの奇数項が残る。 f ( x) 4 sin x sin 3 x sin 5 x 3 5 1 6 解答例 2 • フーリエ変換 1 F (k ) 2 1 ikx f ( x)e dx 2 0 1 ikx ikx e dx e dx 2 0 1 1 ikx 0 1 1 ikx e e 0 2 ik 2 ik 1 1 1 i k ik 1 e e 1 1 cos k 2i k 2i k i k i (cos k 1) k 2つの方法で,なぜ,答えが違うのか考えてみよ 7 授業の流れ • 本章では,すでにスペクトル解析の基礎となる数学的手 法であるフーリエ級数,フーリエ変換について学んだ。 • 本授業では,相関の概念とその数学的手法である自己 相関関数を導入し,自己相関関数の性質を説明する。 8 2-2 相関関数とスペクトル • 不規則現象の解析に用いられるものに相関関数があ る。文字通り,変量間の相関を表すものであり,異 なった変量間の相関を表すのが相互相関関数,同一 変量の異なった時刻の相関を示すのが自己相関関数 である。 • では,相関とはいったいどのようなものか,以下で 説明しよう. • 変量の関数を視覚化するには,平面で点をプロット すると都合がよい。 9 例 2変量のグラフ • 下図のように二つ変量x,yをとり,それを(x,y)座標とみな してプロットする. • 例1:x=国語の試験結果とy=数学の試験結果 • 例2:x=広島の地面のゆれとy=東京の地面のゆれ y y x x 10 正と負の相関 • 例えば,ある高校で国語の試験結 果と数学の試験結果が右の図の ようになったとする. • すると,国語の成績の良い人がお おむね数学の成績も良い人になっ ている。 • このような相関を正の相関という. • 図にはないが,逆に,国語の成績 の良い人がおおむね数学の成績 が悪いと負の相関という. y 100 50 100 x 50 11 相関がない場合 • 例えば,ある時間毎に計測した広 島と東京の地面のゆれをそれぞれ x,yにプロットする。そして,右の図 のような結果を得たとしよう. • この例では,先ほどのような明確 な正または負の相関が見られない. • このような場合を相関がない,また は,弱い相関という。 • また,正または負の相関がある場 合,直線状にデータが並ぶ方が強 い相関という. y 10 単位:gal 10 0 x 0 12 相関度 • 2つの変量の相関を,相関度 y xy rx E E 2 x x x xy ry E E 2 y y • などで表わす。 • もし,x,yを同じ様に扱うのなら r E xy E x E y 2 2 C E xy • で表す。(はアンサンブル平均) 13 自己相関関数 • 変数tに関する変量x(t)により, C (t , ) E x(t・ ) x(t ) • で定義される関数を自己相関関数という。τは隔た り時間又はラグ(タイムラグ)という。 • 右辺のアンサンブル平均を時間平均でおきかえ C ( ) x (t ) x (t ) 1 lim T T T 2 x(t ) x(t )dt T 2 • で表す事ができる場合(エルゴード仮定)が多い。 14 自己相関係数 • C(τ)をC(0)で規格化したR(τ) 2 R ( ) C ( ) / C (0) x(t ) x(t ) / x (t ) • を自己相関係数という。 • では,自己相関関数はどのような役割があるのだろう か? • 例として,三角関数の自己相関関数を求めてみよう。 但し,α,ωは定数 x (t ) cos t 15 自己相関関数の計算 • 定義に従って,積分を計算すると T /2 1 C ( ) lim cos t cos (t ) dt T T T / 2 • cos (t ) cos t cos • を使うと,被積分関数は sin t sin cos t cos cos t sin t sin • また, cos t 2 (1 cos 2 t ) / 2 cos t sin t sin 2 t / 2 2 • より C ( ) 2 2 cos 16 自己相関関数の役割 • すなわち,自己相関関数は周波数成分ωを抽出すること ができ,その係数は振幅の2乗の形である。 – 振幅の2乗はパワーであった. • 時系列データなどの自己相関関数を取ると,周波数成分 がすべて残る(分けていない)が,パワーの形である. • 一方,時系列データなどのスペクトルは,フーリエ変換で 求められる. – スペクトルとは周波数成分ごとの振幅(強さ)である. • すると,パワーのスペクトルと自己相関関数は何か関係 がありそうである。 17 自己相関関数の特徴と性質 1. 偶関数 2. τ=0で最大値をとる 3. 不規則現象では,τが大きい程相関が悪くなる 4. 自己相関関数の微分について 5. 変量の微分との相関について 18 偶関数 • 証明 1 C ( ) lim T T 1 lim T T T 2 x(t ) x(t )dt T 2 T 2 t t ' x(t ' ) x(t ')dt ' T 2 T T • ところで, T の時, であるから 2 2 • ∴ C ( ) C ( ) 19 τ=0で最大値をとる • 証明 以下の恒等式を展開する 1 lim T T T 2 x(t ) x(t ) dt 0 2 T 2 1 2 1 2 1 lim x (t )dt lim x (t )dt 2 lim x(t ) x (t )dt 0 T T T • 第一,二項は共にC(0)であり,第三項はC(τ)である から • C(0) ±C(τ) ≧0 • ∴ C(0) ≧|C(τ)| 20 不規則現象では,τが大きい程相関が悪くなる • 変動のスケールが大きい(ゆっくり)している現象ほど,同 じτでもC(τ)は大きいことは前のcosωtの計算例からも明 らかである。 • τは変動のスケールを表している. • すなわち, • 不規則現象=変動のスケールが小さい長周期成分が 小さい • ∴ τが大きいほど相関が悪い 21 続き • 三角関数の信号に誤差(雑音,ノイズ)が入ったとする. • この時,理想的な雑音として,白色雑音がある. – 白色雑音とはあらゆる周波数の成分が等しく含まれている理 想的な雑音として定義される. • 今,信号f(t)を f (t ) A sin t n(t ) とする。 • 自己相関関数は 1 C ( ) lim T T T 2 A sin t n(t ) A sin (t ) n(t ) dt T 2 • 被積分項を展開すると,第1項同士の積は三角関数の 自己相関関数,交差項は三角関数とノイズの積,最後 がノイズの自己相関関数となる 22 自己相関関数とノイズフィルター • 第1項は三角関数からすぐ求まる • 雑音n(t)は,信号とは相関がないので • A sin t・n(t ) の項は→0となる筈 A sin (t )・n(t ) • 後に述べるように, n(t ) n(t ) の項は n2 ( ) • ∴ A2 C ( ) cos n 2 ( ) 2 ( ) はディラックのδ関数 • すなわち,自己相関関数はノイズフィルターのように 働く 23 自己相関関数の微分 • 自己相関関数は偶関数であるから • C(τ)=C(‐τ) • 両辺をτで微分 • C’(τ)=‐C’(τ) • すると,τ=0の時 • C’(0)=0 24 変量の微分との相関 • 自己相関関数の定義式をτで微分 C ( ) lim 1 T T 2 x(t ) x(t )dt T 2 1 C '( ) lim x(t ) x '(t )dt T • ∴ 変量の微分との相関は自己相関関数の微分に等しい。 • また, 1 C '( ) lim T T 2 T 2 x(t ' ) x '(t ')dt ' 25 続き • 2回微分は 1 C ''( ) lim x '(t ) x '(t ') dt ' T 1 lim x '(t ) x '(t ' ) dt T • よって,微分した関数の自己相関関数は,もとの関数の 自己相関関数の2回微分の反対符号となる。 26 演習 • • • • 水の電気抵抗と空気の電気抵抗が違う事を利用して,空気の泡を正弦波的に混入さ せた水の流速を測る実験を行った。図1に示すように,まず,測定したい円筒内の流 れの中に,電極対を何箇所かに入れて、電圧をかける。そして、電極間に流れるわ ずかな電流を測定し、電極間の抵抗を測った。 その結果、図2に示す2つの抵抗値の時間変化が得られた。以下の問題に答えよ。 (1)この二つの信号の関係を求めるのに,何を使用すればよいか? 代表的な演算 方法を具体的に説明せよ。 (2)測定中は水の流速が変動しないとして,電極対1と2の距離を30㎝とした時,水 の平均流速はどの程度か? 3.5 緑:電極対1 青:電極対2 電極対2 抵抗値(MΩ) 30㎝ 3 2.5 2 1.5 1 0.5 電極対1 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 Time (s) 図1 円筒内に入れられた電極対 図2 抵抗値の時間変化 1
© Copyright 2025 ExpyDoc