未来の航空機 - 東京大学大学院航空宇宙工学専攻

航 空 イノベーション研究会
航 空 イノベーション研究会
『航空の
Future of Aviation
三菱重工HPより
未来』
三菱航空機 MRJ (2013 納入予定)
パネルディスカッション 1
「未来の航空機」
エアバスHPより
全日空HPより
ボーイング B787
航 空 イノベーション研究会
エアバス A380
航 空 イノベーション研究会
飛行機はなぜ飛ぶか?
未来の航空機はどうなるか?
次世代の機体: より安全に
より効率化
より環境にやさしい(サスティナブル)
より大型化?
20年後は:
より速く!
そして
落ちない飛行機
経済産業省HPより
では50年後は?
技術面からがんばって予測します
航 空 イノベーション研究会
技術分野で整理すると
コーディネータ 李家 賢一(東京大学)
パネリスト
空気力学
構造・材料
推進工学
エンジン
航 空 イノベーション研究会
機体を形作る
飛行力学
空気力学
構造・材料
飛行力学
推進工学
推進工学
横川 譲 (宇宙航空研究開発機構JAXA)
横関 智弘(東京大学)
原田 正志(宇宙航空研究開発機構JAXA)
姫野 武洋(東京大学)
岡井 敬一(宇宙航空研究開発機構JAXA)
思ったように飛べる
1
航 空 イノベーション研究会
本日の予定
5人のパネリストによる発表
総合討論
会場からの質疑応答
まとめ
2
2009.3.25
第2回航空イノベーション研究会シンポジウム@東京大学
パネルディスカッション「未来の航空機」
これまで目指してきたもの、50
年後は・・・
は・・・
これまで目指してきたもの、50年後
空気抵抗が小さく、揚力が大きく、静かな機体
→ 形状の工夫により追求
→ 50年後 →
話題提供:
→ 現代 ⇒ 20年後 →
50年後の空気抵抗、揚力、風切り音
過去 ⇒ 現代 →
~抵抗ゼロ・騒音ゼロへの挑戦~
抵抗ゼロ・騒音ゼロへの挑戦~
主に遷音速飛行を行うための空力設計
・「円柱胴体+翼+補助装置」が基本
・部分ごとに洗練された空力
・
・
使い方に合った効率的な空力設計
・「単純円筒胴体+翼」からの脱却
・構造もエンジンも同時に最適に設計
?
(図:NASA)
(図:NASA)
(図:三菱航空機)
(図:NASA)
宇宙航空研究開発機構(JAXA
)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
航空プログラムグループ 国産旅客機チーム
高揚力装置
(図:Boeing)
(図:Honda)
機首層流化
(図:Aerion)
(図:NASA)
横川 譲
(図:MIT/NASA)
-1-
エーリアルール
50年後
の社会で必要となるもの
50年後の社会で必要となるもの
…
„
表面ナノ加工技術の実用化
…
リブレットによる抵抗低減
…
メンテナンス性も改善
流体の制御による高性能化
流体の制御
AIAA2006-3027
AIAA2006-2858
移行
„
(図:Aerion)
(図:Boeing)
„
カタツムリの殻
„
ハスの葉
セレーションによる騒音低減
„
(図:NASA)
AIAA 2002-3159
AIAA2003-784
AIAA2004-2622
-3-
自己最適化と進化により新しい生活空間へ適応
(図:http://www.xcor.com)
しかし、極限環境で模倣できる生物は地球上に存在しない
空力性能の自己認識と最適化
モーフィング技術との融合
„
脳・神経科学/人工知能
…
動的に変化する耐熱耐圧複合材
(図:LAPCAT)
新しい環境に向けた進化
生物の皮膚のような表面素材
…
遺伝子技術
…
再生医療/生体制御技術
(図:EADS/DLR)
(図:EADS)
リブレット
(写真:「地球に謙虚に」運動)
(写真:海上技術安全研究所)
リブレットや表面波動による抵抗低減
…
ボルテックスジェネレーターによる失速防止
サメの肌、イルカの皮膚
プラズマアクチュエータ
乱流制御システム
(写真:東京大学笠木・鈴木研究室)
遺伝子技術等の応用により、利用範囲を拡大
…
ふくろうの羽
(写真:AIAA2009-697)
バス大学 Julian Vincent教授
「現在、生物学とテクノロジーの間でメカニズムが共有されている部分は 10% にすぎない」
„
(写真:National Geographic)
ふくろうの羽
…
„
特に、生体技術との融合に期待
宇宙旅行 ← コストやエコを意識した空力性能
サメの肌
MEMSによる動的な流体制御
MEMSによる動的な流体制御
…
(図:NASA)
-2-
バイオミメティックスにより空力性能が飛躍的に向上
形状設計による飛躍的な低環境負荷化の限界
新しい生活空間への適応の必要性(超高速/宇宙)
形状主体の設計
(図:CleanSky)
空力デバイス
生物の模倣:生体工学/医
生物の模倣:生体工学/医工学との融合
ウルトラエコと生活利便性の追求
…
(図:NASA)
(図:http://www.virgingalactic.com)
-5-
-4-
航空機構造の軽量化
航空機構造の軽量化
炭素繊維複合材料
複合材技術の開発・改良 1990年代~現在
1960年代:炭素繊維の発明
航空機等の構造材への適用
1970年代:炭素繊維製造のスタート
(B787, A350, etc)
B787
その他
鉄
10%
5%
チタン
15%
Courtesy of Boeing
複合材
50%
次世代材料
ナノファイバー(CNT etc.)技術
CNTの発見・製造(1990年代)
→ 複合材技術の開発
→ 数十年後・・・?
*炭素繊維をはるかに凌ぐ剛性・強度(?)
*高い機能性(熱・電気特性など)
Courtesy of GSI Creos Corporation
アルミ
20%
スマート材料
比強度・比剛性 = (強度・剛性)/(密度)
金属:比強度 <3~4×106 cm
比剛性 <3~4×108 cm
CFRP(積層材):比強度 >4~5×106 cm
比剛性 >4~5×108 cm
大幅な機体軽量化 → 燃費向上
今後は? → より効率的な適用(現状は金属の置き換え)、エンジン周辺など
*センサ(神経)、アクチュエータ(筋肉)、制御(脳)機能の統合
*自己修復機能
耐荷能力の向上、構造に作用する荷重の制御(低減) → 機体軽量化
モーフィング(Morphing)構造
形状可変構造
(飛行プロファイルに合わせた形状変化)
形状可変構造の例
→ 経済性、安全性、環境性能の向上
シームレス可変翼構造
(空気圧駆動)
テレスコピック翼構造
AIAA 2004-1888
AIAA 2004-1772
必要な構造材料技術
変形可能な構造・材料
耐荷重能力と自在な変形性能を有する
高性能アクチュエータ
高い駆動力と変形能力を有する
Bio-inspired Structures
→生物から学ぶ構造・材料
1
第2回航空イノベーション研究会シンポジウム
パネルディスカッション 「未来の航空機」
航空機が使用する舵
JAXA所有MuPAL-α
話題提供: 50年後の飛行機の乗り心地
宇宙航空研究開発機構(JAXA
)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
航空プログラムグループ
無人機・未来型航空機チーム
原田正志
エレベータは機首の上げ下げを、エルロンは左右の傾きを、ラダーは機首の
左右の向きを制御する
穏やかな風の中で飛ぶとき
突風に遭遇したとき1
発生する揚力が一様に大きくなる
穏やかな風
穏やかな風の中では航空機が
発生する揚力の分布は楕円形
をしている。
揚力の分布が楕円型のとき、
抵抗が最も小さくなる。
乗客は下から激しく突き上げられる。
翼の付け根の曲げモーメントが大きくなり
極端な場合、翼が折れる
突風に遭遇したとき2
近未来
突風に遭遇したとき3
遠未来
エルロンを左右同時に上げ、揚力を減らし、
揚力分布を付け根に集中させる事で乗り心
地を改善し、翼の破壊を防ぐ
GLA:gust load alleviation
突風の大きさは翼の場所場所で異なっている。そこで
舵面を細かく分割し、素早く、細やかに動かす事で
揚力分布を楕円に保ち、抵抗を小さくできる
更には突風のエネルギーを推進力に換える事すら出来る
技術的問題点
„ 小さくて信頼性の高いアクチュエーターがない
• 人工筋肉→生物の模倣
ライダーとは
レーザーを使ったレーダー。
離れた地点の風向風速を計測する事が出来る。
„ 突風を受けてから加速度計などで突風を推定して
いる。
• →突風の情報の取得に遅れを生じる。
• →新技術 ライダー
JAXAが開発中のライダー
未来の航空機は
• 主翼の後縁に無数の舵面があり、細やかに動かす
事が出来る。
– 舵面は小さく分割されたものではなく、生物のよう
に連続してしなやかに動くものかも知れない。
• ライダーを用いる事で事前に正確な突風の情報を
知る事が出来る。
• 上記の二つの技術で安全性と乗り心地を大幅に良
くする事が出来る。
• 追記:突風のエネルギーから推進力を生む事が出
来る。
ジェットエンジンの推進原理
出典 : 日航財団WEBページ
航空エンジンの将来像
低バイパス比 ターボファンエンジン
m
ΔV
化石燃料ジェットエンジン
代替燃料ジェットエンジン
小
大
小型大推力 ⇒ 超音速巡航機
高バイパス比 ターボファンエンジン
http://www.jal-foundation.or.jp/shintaikikansoku
/sankoushiryo_kitai.htm
T ≈ m × ΔV
推力 :
質量流量 :
平均増速 :
姫野 武洋
東京大学
宇宙航空研究開発機構 岡井 敬一
ジェットエンジンが進化してきた方向
m
ΔV
m
ΔV
大
小
以下、大量輸送用の航空エンジンを中心に説明
低燃費 ⇒ 亜音速巡航機
燃料の低炭素化・脱化石燃料
B737-200
(BPR 1.0)
想定される代替燃料の動向
B737-700
(BPR5.5)
2050 年 ~ ? 中
期
http://www.techtransfer.berkeley.edu/aviation02downloads/
経済性
と
高効率
高バイパス比
高負荷圧縮機
高温タービン
高信頼性
環境適合性
の追求
低有害排出物
低NOx、低HC
低炭素(CO2)
バイオ燃料+合成燃料 (?)
注意点:低温特性、熱的安定性、貯蔵特性
運輸部門CO2排出量
出展:国土交通省(2006年度)
ジェット燃料はケロシン(灯油)
材料
低騒音
静粛ノズル
ジェット燃料+合成燃料(石炭、天然ガス由来)
低温特性良好、不純物少
短
機体改修不要
期
耐熱合金
複合材料
タービン翼冷却
三次元翼設計
クリーン燃焼器
高負荷軸受
伝熱
空力
燃焼
潤滑
長
期
水素、メタン
低炭素、ゼロ炭素
出典 : JAXA 岡井氏資料
化石燃料ジェットエンジンの将来像
中間冷却・再生熱交換
(軽量熱交換器搭載)
Ultra high-bypass fan (UHB)
Open rotor (UDF/ATP)
超低燃費、環境適合性を指向
(高バイパス + 高効率コア)
Inter-cooling cycle
進化を支える基盤要素技術の方向性
材料
伝熱
空力
燃焼
潤滑
耐熱合金
複合材料
タービン翼冷却
三次元翼列設計
クリーン燃焼器
高負荷軸受
材料
伝熱
空力
燃焼
潤滑
出典 : Rolls-Royce
傾斜機能材料
耐熱複合材料
軽量熱交換器
非定常損失、騒音予測
触媒利用、機能性流体
磁気軸受
1
脱化石燃料
第2回航空イノベーション研究会シンポジウム
パネルディスカッション2 「未来の航空機」
(石油製品を燃料として消費すること、地球環境保全の視点)
• “厨房のかまどに紙幣をくべて煮炊きするのと似た行為だね”(元素周期表を提唱
したロシアの)メンデレーエフ、19世紀末、油田地帯を訪問した折。
•
話題提供: 脱化石燃料の視点(50年後の脱化石燃料航空機)
○ (水素燃料社会の実現に併せて)
水素を燃料とした航空機が実現
「我々の子孫は、自分たちが使うべき原料物質を燃やしてしまったとして我々を恨
むに違いない。その通りである。我々は、石油や石炭といった貴重な資源を使い
尽くそうとしているだけではなく、汚染を深刻化させ、また、地球温暖化に拍車を
かける二酸化炭素を増やしているのである」Ronald Breslow, 科学がもたらす持
続可能性(2001年2月)
(代替燃料、燃料の選択肢拡大の視点)
• 航空燃料・原油価格のガソリン燃料に対する高止まり傾向:
「技術革新によりエネルギー源の転換がすでに行われつつある自動車」と異なり、
航空機について新たな燃料が開発されつつあるとの情報がない(航空輸送産業
に与える燃油価格高騰の構造的な影響について、日本航空HP、2005年11月)
○燃料電池・電池などとの組み合わせ
により、航空機全体の電化が進む
(MEA=More Electric Aircraft)
【注意すべき点】
・地球環境へのCO2排出などの影響は研究が進んでいるが評価が確定しているとは
いえないところもある。
・代替燃料、脱化石燃料の問題は、有限な資源、地球環境問題と現実の燃料価格の
視点で議論される。燃料価格の上下に一喜一憂されない視点が重要。
・穀物由来の燃料からのバイオ燃料生成による穀物価格の高騰に見られるように一
元的な見方は好ましくない。水素燃料の精製も、原料からのコスト、環境への影
響といった全体を見渡す視点が重要。
(上2項目は「実感する化学」NTS引用)
水素燃料と水素燃料航空機
脱化石燃料航空機に至る複数のシナリオ
ジェット燃料
極超音速水素ジェット
航空機(高速化)
極超音速水素ジェット航空機(高速化)
水素燃料航空機
ジェット燃料
重量
体積
ガソリン
液体水素
宇宙輸送への展開
1988年飛行試験
(離着陸時作動)
液体水素
水素燃料エンジン
ジェット燃料
極超音速機実現に向けて
(極低温燃料のエンジン作動範囲
拡大、機体冷却への活用)
水素燃料
1.燃料消費は改善
2.空虚重量増大(大型化)
3.最大離陸重量は低減
4.揚抗比悪化
(翼が小さく構造的にも問題)
・希薄燃焼が安定して可能
・純粋燃料より、寿命が長くなる
・燃焼特性より燃焼器を小型化出来る
・冷却空気を減らすことが出来る
換え
・CO2排出しない。クリーンな燃料。
・単位質量あたりの含有エネルギ
は大きいが分子量が小さく、体積
で換算すると大きなタンクが必要。
・極低温の水素の管理が容易でない。
4:1
<エンジンとしてみた場合>
置き
<機体としてみた場合>
燃料電池
+電動モータ
小型燃料電池航空機
2次電池
電動モータ
ボーイング社
2008年燃料電池/電池飛行試験実施
電池航空機
特殊用途(監視、通信等)無人機
燃料電池航空機(大型化)
燃料電池航空機(大型化)
燃料電池旅客機実現に向けて
(極低温燃料の超電導利用、
大口径モータ、燃料電池の軽量化)
※今後の航空機は電力要求の高まり、
電動機構の増大の傾向が加速。推進系
も含めたMEA(More Electric Aircraft)の
視点が重要
1
航 空 イノベーション研究会
航 空 イノベーション研究会
ここまでのまとめ(パネリストの意見より)
・生物の応用(空気力学、構造・材料、飛行力学)
モーフィング
・燃料について
脱化石燃料?
・超高速機、宇宙航空機の実現
安全性向上
環境適合性(エコ)向上
低燃費
低排出ガス
低騒音
航 空 イノベーション研究会
航 空 イノベーション研究会
未来の航空機?
東京大学航空宇宙工学専攻の学生、
大学院生による航空機概念設計結果
Rinoie Lab., Dept. Aero. & Astro., Univ. Tokyo
航 空 イノベーション研究会
航 空 イノベーション研究会
Rinoie Lab., Dept. Aero. & Astro., Univ. Tokyo
Rinoie Lab., Dept. Aero. & Astro., Univ. Tokyo
50人乗りM1.6超音速リージョナルジェット機
1
航 空 イノベーション研究会
航 空 イノベーション研究会
Rinoie Lab., Dept. Aero. & Astro., Univ. Tokyo
Rinoie Lab., Dept. Aero. & Astro., Univ. Tokyo
125人乗りサスティナブル水素燃料航空機
無人火星航空機
航 空 イノベーション研究会
航 空 イノベーション研究会
水素燃料
タンク
本日の意見をまとめると
未来の航空機は?
疑似生物舵面
疑似生物表皮
モーフィング主翼
JAXA-SP-04-001
2