財政融資資金の運用事務等 システム - 財務省

財政融資資金の運用事務等
システム
刷新可能性調査報告書
(エクゼクティブサマリー)
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エクゼクティブサマリー
1. 本調査の目的およびその範囲
本調査は、e-Japan 重点計画 2003 に基づく、「財務省電子政府構築計画」を受けて、平成 17 年
度までに各レガシーシステムに関わる見直し方針を策定することを目的として、これまでのオー
プン化の取り組みの確認、及び現状レガシーシステムの刷新可能性について調査検討するもので
あり、主な内容として以下を含んでいる。
1. 平成 15 年度までのオープン化の経過。
2. 多角的な刷新可能性に関する検討と刷新案の策定。
3. 刷新に際し発生する概算コストの算出と現状構成で運用した場合の比較。
また、対象範囲としては、電子政府構築計画におけるレガシーシステム見直しのための財務省行
動計画(アクションプラン)の「3. 財政融資資金の運用事務等システム」に該当するもので、
平成 10 年度にメインフレーム上で運用されていた機能でかつオープン化されながらも一部メイ
ンフレームに機能を依存するものである。具体的には、GS8900 メインフレーム上に(一部)残
る以下の業務機能を実現する各システムを指す。
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預託金管理業務
財投債管理業務
有価証券管理業務
本省貸付金管理業務
地方貸付金管理業務
決算経理業務
帳票出力システム
収益シミュレーション
加えて、本報告書は先に発表された「レガシーシステム見直しのための財務省行動計画(アクシ
ョンプラン)」の方針及び項目に準拠する形でまとめられている。
2. これまでのオープン化への取り組みについて
ユーザビリティの観点などから安定性・信頼性を担保しつつ、早くからオープン化技術を取り入
れ、以下のシステムについて、利便性の向上や運用費用の削減、短期導入などを実現してきた。
その経緯について振り返ることで、オープン化のメリットについて再考したい。
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ALM システム
収支分析システム
データウェアハウスシステム
財投債管理エントリ機能
帳票作成指示機能
財投運用管理システム
(上記システムについての)一般競争入札の実績について
これまで以上のシステムにおいてオープン化を行ってきたことによって、
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・ 運用時間に左右されずに帳票作成作業等が可能。
・ 自由度の高い抽出機能による、容易なデータの二次利用。
・ ホストのコマンドを意識しない、ユーザビリティの高い画面操作。(下図参照)
などを実現し、オープン化のメリットを享受してきた。また、このオープン化は入出力インター
フェース部分に限って行ったことから、既存のホストコンピュータの信頼性を担保しながら可能
にしたのである。しかしながら、
・ メンテナンスを行うサーバが増えることによる、運用負荷の増大。
・ Windows クライアントのため、ウィルスなどの影響を受ける。
などのデメリットが発生したことも事実である。従って刷新可能性を検討する際には、目的とメ
リットを明確にする必要がある。
また、このインターフェース機能の部分オープン化に伴い、調達においてはハードウェアとソフ
トウェアのアンバンドルを実現しており、それによって早くから一般競争入札に移行できたこと
を付け加えておく。
3. 刷新可能性について
刷新案を検討するに当たって、まずは既存のホストコンピュータ上の機能や現状の運用方法を鑑
みてマーケットの技術(技術水準面、実装実績面)で実現可能かどうか、刷新可能であるかの検
討を行った。
現状のホストコンピュータの機能は以下の様に分けられ、分析の結果、その特性ごとに異なる手
法での移行が合理的である。
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機能概要・特徴
刷新方向性
財政融資資金事務に関わる帳
票編集・印刷機能。大量バッ
チ集計処理とフォームオーバ
ーレイ1機能による多彩な帳票
編集・印刷を実現。
当該機能のオープン化は、市場に豊富に
ある電子帳票ツールを活用することで安
定性を担保しつつ、容易な実施が期待で
きる。
エントリ(登録)処理機能/演算ロ
ジック
長年の実績と改良により、精度
の高い演算技術をAPL処理ロ
ジック2が提供している。またA
IMによるトランザクションデ
ータ保証も実現されている。
リホスティングの手法を用い、ロジック
そのものをオープン系プラットフォーム
で動作させることにより、容易かつ安定
性および信頼性を確保した刷新が期待で
きる。
マスタ DB システム機能
大量の業務データ、処理データ
群を保持している。システム全
体の安定稼動に加え、データの
同期・保全の確保からも、高信
頼性が要求され、これを実現し
ている。
マスタ DB のオープン化は、現段階では
難しい。しかしながら、データと業務ロ
ジックを完全に切り離し、業務形態に則
したデータ構造、データモデル、システ
ムマップを描くことで、将来的なオープ
ン化に向けて対応を検討する必要があ
る。
運用者担当者による業務オペレーシ
ョン機能
財政融資資金に係る煩雑な業務
オペレーション(絞り込み、演
算、並べ替え、テーブル結合、
帳票再作成、統計解析など)が
存在する。利便性の高い操作環
境を実現している。
現状の演算ロジックやデータ構造の棚卸
を実施し、運用担当者のオペレーション
への習熟期間を設けることが重要であ
る。リホスティングを一部進めながら、
既存のシステムを並行運用することで、
利便性を担保しつつ刷新化が期待でき
る。
対象機能
帳票編集・印刷機能
これまでの刷新可能性分析の結果をまとめると、実行可能性が高いのは、民間での出荷実績が
豊富で技術として成熟している電子帳票管理ツールを利用した帳票編集・印刷部分のオープン化
であり、次いで金融機関でのホストのオープン化に本格的な活用が始まったリホスティングによ
るエントリ処理機能の刷新の順となる。また、マスタ DB の刷新については、演算ロジック(ア
プリケーション処理ロジック)のリホスティング中に、演算ロジックそのものやデータベース構
造の解析を行いつつ、ロジックとデータの完全分離を実施しつつ、Linux ベース等のオープンプ
ラットフォームの強化、技術発展にあわせて段階移行を行うことが現実解であると結論づけられ
る。
4. 刷新サービス検討及び概算費用算出
今回、刷新可能性調査の結果を考えると、「リライト」「リホスティング」に加え、演算ロジッ
クそのものやデータベース構造など既存資産の棚卸を並行して行っていかなければならず、単純
な「リライト」や「リホスティング」サービスでなく、既存資産の棚卸を含めた総合的なマイグ
レーションサービスの選択が現実的であると結論づけられる。加えて、このようなレガシーマイ
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フォームオーバーレイ : あらかじめ見出しや罫線などのフォームデータ(帳票などの書式データ)をプリンターに登録し、あとで入力したデータをフ
ォーム重ねて印刷する機能。帳票印刷には必須の機能といえる。
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APL 処理ロジック : アプリケーション処理ロジックの意。本ケースでは、財政融資資金事務における処理プロセスおよびそのプロセスで発生する
演算処理のルールを指す。
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グレーションサービスはメインフレームベンダだけでなく、サードパーティベンダも豊富に提供
しているので、調達も広く公正に行うことが可能である。
多くのベンダが提供するサービスメニューを参考にして作業工程を検討すると、アセスメント、
マイグレーション、検証/運用支援の三工程に分かれる。導入にかかる各工程での工数は以下の
通りである。
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アセスメント
マイグレーション
検証/運用支援
合計
253 人月
407 人月
315 人月
975 人月
この工数に、仮に SE 単価を 100 万円/.人月と設定すると、刷新概算費用は約 10 億円となる。こ
の数値は単純機能移行にかかる金額であり、リエンジニアリングを想定したコンサルティングな
どの工程は含まれていない。
5. 今後の業務システムの方向性
各 IT ベンダがオープン化技術への投資を加速し、アプリケーションのコンポーネント化、すな
わちサービス化を促進させている。それに伴い、メインフレームベンダでないサードパーティベ
ンダも「オープン化手法」を次々と発表し、金融機関ホストコンピュータのオープン化事例も、
規模や業務範囲に差異はあるが、散見されるようになってきた。しかしながらホストコンピュー
タの問題が即時解決できると考えるのは早急である。特に以下の点に配慮する必要がある。
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長年をかけて積み上げてきたシステムを変更することは必ずリスクを伴う。また「オープ
ン化」のみを目的として、今までの資産の棚卸をせず、単にオープン化技術を採用するの
は、運用費用の増大など今よりも状況を悪化させる可能性がある。しかしながら一方で、
現状のシステムを維持しつづけることにより、サポート体制の弱体化や技術者の減少など
のリスクが増大する可能性も存在する。特にホストコンピュータに関しては、IT ベンダ
にもユーザにもこの技術を有した人材が確実に減少している。
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そこで、次世代技術に刷新するタイミングを見計らわないと、組織にとってはシステム全
体がブラックボックス化する可能性がある。現時点の各社動向を鑑みると、その本格的な
着手のタイミングは各ベンダのオープン化技術が出揃う、2007 年(平成 18 年度頃)が想
定される。その時点までにリスクと移行メリットを総合的に判断し、ホストコンピュータ
が持つ膨大な資産を継続的に利用可能なものへと変革できるように、準備を進めるべきで
あると考える。
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また、オープン化への刷新技術も成熟してきており、移行ツールなどを活用して部分的に
刷新することで、安全性や信頼性を担保しながら移行することが可能になってきている。
以上のような観点から、ホストコンピュータを今すぐに全てオープン化するのではなく、新たにオ
ープン化されたシステム基盤への刷新について、全体最適化の観点から新規システム開発も鑑みて、
検討を開始すべきと考える。
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移行計画案
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