街路における飽和交通流率に関する研究 - 社会交通工学科 - 日本大学

平成 15 年度
日本大学理工学部交通土木工学科
卒業論文概要集
街路における飽和交通流率に関する研究
A Study on the Saturation Flow Rate at Signalized Intersections
指導教授 安 井
一 彦
0127 堀
1.研究の背景と目的
井 篤 史
9154
宮 﨑
剛
2,100
交通渋滞は,主に信号交差点の交通容量の不足が原
因で発生している。需要の多い信号交差点の交通容量
(
1,900
P
C
U
/飽
青和
1交
時 通 1,700
間流
/率
1
車
線
1,500
を適切に把握することが,今後ますます必要になって
くる。飽和交通流率とは,青現示のとき流入部におい
て十分な需要がある場合に,停止線を通過できる最大
流量のことであるが,信号交差点の交通容量は,交差
y = -492.08x2 + 3316.6x - 3689.2
R2 = 0.753
サンプル
同じ車線幅員の飽和交通流率の平均
)
点流入部の信号制御方法とその飽和交通流率によって
サンプル数:38
近似曲線
決定される。また,既存交差点ごとの構造が類似して
0
0
2.6
2.8
いても影響要因が飽和交通流率の値に大きく影響する
3.0
車線幅員(m)
3.2
3.4
3.6
図−1 直進車線における飽和交通流率と
ことが指摘されている。
車線幅員の関係
そこで本研究では,その影響要因が飽和交通流率と
(2) 左折車線
どのような関係にあり,影響を与えているかを過去の
1)
交差点の調査データ を用いて分析を行った。
図−2より,左折車線では,車線幅員 2.8mと車線
2.研究概要
幅員 3.9m以上の交差点で,飽和交通流率に大きな差
本研究では,まず過去の交差点の研究からの調査デ
があることが解る。しかし,左折車線でのサンプルは
ータを整理した。そして,その結果から車線種類別毎
非常に少ないことから,この結果は確かなものとは言
(直進車線,左折車線,右折車線,直進・左折車線,
えない。
2,200
直進・右折・左折車線など)に,飽和交通流率が車線
幅員,右折率・左折率などの影響要因により,どのよ
(
P
1,800
C
U
/飽
青和
1交
1,400
時通
間流
/率
1
車
1,000
線
うに変動するかについて分析した。また,影響要因か
ら車線種類別毎に飽和交通流率の基本値を補正し,理
論値を算出する。そして,理論値と実測値の分析を行
った。
3.飽和交通流率と影響要因の関係
)
直進車線,左折車線,右折車線(右折現示あり),直
サンプル
サンプル数:3
0
0
進・左折車線,直進・右折・左折車線は飽和交通流率
2.9
3.4
3.9
車線幅員(m)
4.4
4.9
と車線幅員の関係を分析し,右折車線(右折現示なし)
図−2 左折車線における飽和交通流率と
では,飽和交通流率と対向直進交通量の関係を分析し
車線幅員の関係
た。車線種類別の飽和交通流率と影響要因の関係を図
5.4
(3)右折車線(右折現示なし)
−1∼図−4に示す。
図−3より,右折車線(右折現示なし)では,対向
(1) 直進車線
直進交通量が多いほど,飽和交通流率が低くなってい
図−1より,直進車線では,飽和交通流率は車線幅
る。これは,対向直進車の交通量が少なく,車頭間隔
員 3.0mまで上昇し,それ以上の値は少しばらつきが
が開いているときに右折しやすいことから,飽和交通
見られるが,ほとんど変化していないことがわかる。
流率が大きくなることがわかる。また,右折する運転
このことから,車線幅員は車線幅員 3.0mまでの飽和
者それぞれの状況判断が,飽和交通流率に影響を与え
交通流率に影響していることが考えられる。
ていると考えられる。
83
平成 15 年度
日本大学理工学部交通土木工学科
卒業論文概要集
2,000
P
1,600
C
U
/飽
青和
1交
1,200
時通
間流
/率
1
車
800
線
︵
︵
y = 3E-05x2 - 2.0908x + 2926.1
R2 = 0.5361
2,000
P
C
U
/
青 1,800
理
1
論
時
値
間
/
1
車 1,600
線
サンプル数:5
︶
サンプル数:15
︶
サンプル
理論値,実測値の平均
サンプル
近似曲線
0
0
400
0
500
0
700
900
1,100
1,600
1,800
2,000
実測値(PCU/青1時間/1車線)
図−5 直進車線における理論値と実測値の関係
対向直進交通量(台/青1時間)
図−3 右折車線(右折現示なし)における
(2)右折車線(右折現示なし)
右折車線(右折現示なし)では,対向直進車交通量
飽和交通流率と車線幅員の関係
の影響を受ける。この場合の他の影響要因を含まない
(4)直進・左折車線
交通容量を用いた理論値と実測値を比較すると,理論
図−4より,直進・左折車線では,車線幅員が広く
なるほど飽和交通流率は高くなり,車線幅員が広いと
値より実測値が大きい。
直進車が左折車の影響を受けにくくなることがわかる。
(3)直進・左折車線
このことから,車線幅員が狭く,左折率が高い交差点
直進・左折車線では,理論値の平均は 1,817PCU
では,左折のための低速走行により直進車も影響を受
/青1時間/1車線となり,実測値の平均は 1,474P
けることによって,飽和交通流率が低くなると考えら
CU/青1時間/1車線となった。理論値の平均と実
れる。
測値の平均を比較すると,理論値は実測値より 343P
1,800
CU/青1時間/1車線大きい。
y = -55.436x2 + 623.76x + 42.336
R2 = 0.3856
(4)直進・右折・左折車線
(
サンプル数:20
P
1,600
C
U
/飽
青和
1 交 1,400
時通
間流
/率
1
車
1,200
線
直進・右折・左折車線では,理論値の平均は 1,642
PCU/青1時間/1車線となり,実測値の平均は
1,466PCU/青1時間/1車線となった。理論値の平
均と実測値の平均を比較すると,理論値は実測値より
左折率0-20%
左折率40-60%
左折率20-40%
176PCU/青1時間/1車線大きい。
同じ車線幅員の飽和交通流率の平均
近似曲線
5.まとめ
)
0
0
2.6
2.8
3.0
3.2
車線幅員(m)
3.4
本研究では,飽和交通流率と影響要因の関係につい
3.6
図−4 直進・左折車線における飽和交通流率,
て分析を行った。その結果,飽和交通流率と車線幅員
車線幅員,左折率の関係
の関係では,車線幅員が増加すると飽和交通流率も増
加し,右折車線(右折現示なし)では,対向直進車交
4.飽和交通流率の理論値と実測値の関係
車線種類別に車線幅員,大型車混入率,左折率,右
通量が増加すると飽和交通流率は減少ことが明らかと
折率の補正値を用いて,飽和交通流率の基本値を補正
なった。飽和交通流率の理論値と実測値の関係では,
することで理論値を算出した。飽和交通流率の理論値
右折車線(右折現示なし)以外では,実測値より理論
と実測値の関係を図−5に示す。
値が高くなり,右折車線(右折現示なし)は低くなる
(1)直進車線
ことが明らかとなった。
今後は,更にデータを蓄積した分析をすることが必
図−5より,直進車線では,理論値の平均は 1,925
PCU/青1時間/1車線となり,実測値の平均は
要だと考えられる。
1,768PCU/青1時間/1車線となった。理論値の平
参考文献
均と実測値の平均を比較すると,理論値は実測値より
1)
坂本
泰教・新谷
学:休平日別飽和交通流率の
特性に関する研究他,卒業研究,1997.
157PCU/青1時間/1車線大きい。
84