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バセドウ病の
アイソトープ治療
平成19年4月
すみれ甲状腺グループ 岡本泰之
バセドウ病の3大治療
„
抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール)
• 軽~中等度の機能亢進症であれば2ヶ月で正常化する
1.5~2年の服薬で約半数の患者は寛解する
• 副作用の頻度が高い
I内用療法(アイソトープ治療)
„ 131
• 機能正常化に3ヶ月~1年程度かかる(それまで、抗甲状
腺薬の併用で機能は正常化できる)
• 10年後には半数が甲状腺機能低下症になる
„
手術
• 手術後直ちに効果が得られる
• 入院が必要。創痕が残る。反回神経麻痺や副甲状腺機
能低下症などの手術合併症のリスクがある
用いるラジオアイソトープの種類
127
„ ヨウ素( 53 I)の放射性同位元素を用いる
123
„ 53 I(ヨウ素123)・・・検査用
• γ崩壊:励起された原子核が電磁波(γ線)を放出する
質量数と原子番号を変えない崩壊
131
„ 53
I(ヨウ素131)・・・検査および治療用
• β崩壊:中性子1個が陽子1個に変わると同時に電子(β
線)を放出する
131
131
• 53 I → 54 Xe + e• 残存している過剰なエネルギーをγ線として放出する
131I(ヨウ素131)カプセル
放射性ヨウ素の比較
放射線の種類と用途
半減期 吸収線量*
rad / 0.1 mCi
甲状腺 全身
123I γ線(画像化、カウント) 13時間
1.3 0.003
131I
γ線(画像化、カウント)
β線(細胞破壊)
組織飛程 2mm
8日
134 0.008
*正常の成人の標準的な条件で計算
100 rad = 1 Gy, 1 mCi = 37MBq
甲状腺細胞に対する放射線の影響
„
間期死
• 大量の放射線(数十Gy)を浴びると、細胞の機能は失わ
れ、細胞は壊れてそのまま死に至る
• 分裂と分裂の間の休止期(間期)に起こる死
„
増殖死
• 分裂を続けている細胞に中程度の線量を当てると、1~
数回分裂した後、分裂をやめてしまう
• DNA損傷による
• 細胞の代謝は継続しつつ分裂能を失った状態
• 甲状腺細胞は分裂が遅く、治療から10~20年以上たっ
て機能低下を伴う萎縮を起こすことがある
なぜ放射性ヨウ素が検査や
治療に用いられるのか?
ヨウ素は甲状腺ホルモン合成に利用
される、すなわち甲状腺に取り込ま
れるから
甲状腺の働きを理解する
I-
2Na+
I-
NIS
TPO
2Na+
T4
DIT
DIT
DIT
DIT
T3
T4
MIT
TPO
サイログロブリン
T4
加水分解
サイログロブリン
DIT
T3
MIT
MIT
MIT
T3
I
サイログロブリン
Pendrin
DIT
DIT
T3
T4
MIT
血管
甲状腺濾胞細胞
コロイド
通常用量での代謝
„
„
„
経口投与後完全に吸収され、19分から急速に血中
濃度上昇
血中の131Iは直ちに体液中に拡散
選択的に甲状腺に取り込まれ、残りは速やかに腎
から排泄
機能亢進症に131Iを投与した場合の有効半減期
甲状腺
5.7日
甲状腺以外の臓器
0.32日
甲状腺摂取率70%、生物学的半減期20日、物理学的半減期8日として計
算
放射性ヨード摂取率の時間経過
50
機能亢進症
40
機能亢進症(rapid turnover)
% 30
摂
取
率 20
健常人
機能低下症
10
0
0
12
24
時間
36
48
アイソトープ治療の実際
どのような患者が対象になるか
„
„
„
甲状腺腫が大きいなど、活動性が強く、抗甲
状腺薬治療によって甲状腺機能が正常化し
ない
抗甲状腺薬に対して副作用が出現したため、
内服継続ができない
アイソトープ治療か手術のどちらかを選ぶ
どのような患者が対象になるか
(続き)
„
„
2年以上抗甲状腺薬を続けているが、寛解に
至らない。甲状腺機能はコントロールできて
いる
下記の3つの選択肢から選ぶ
•
•
•
抗甲状腺薬継続
アイソトープ治療
手術治療
アイソトープ治療の問題点
„
甲状腺機能を正常に保つことが難しい
• アイソトープの量を多くすれば、甲状腺機能はす
ぐに正常になるが、しばらくすると低下してくる
• 機能低下にならないように量を控えると、機能亢
進がなかなか良くならない
• 治療後5年で約5割の方は、薬を飲まなくても機
能がほぼ正常の状態になる
しかし5年後に機能が正常な例でも、その後、年
に1~2%の割合で機能低下症が増えていく
少量投与と中等量投与における
治療成績の比較
75Gy/g (503例)
30Gy/g (418例)
60%
60%
40%
40%
20%
20%
0%
0%
亢進
正常
低下
亢進
正常
低下
中等量投与(一定量)と甲状腺重量別
投与における治療成績の比較
75Gy/g (503例)
重量別sliding (251例)
60%
60%
40%
40%
20%
20%
0%
0%
亢進
正常
低下
亢進
正常
低下
患者指導
検査および治療スケジュール
„
検査7日前 ヨード制限食開始
• 海草類( のり、わかめ、昆布、ひじき) を含む食
品、寒天、貝類、赤身の魚(かつお、さば、まぐ
ろ)などの摂取を控えて下さい。昆布だしや、寒天
を使用したプリン、ヨーグルトなども控えて下さい。
• 塩は岩塩を使用することをお勧めします。
• ヨードを含む医薬品やサプリメントの使用を控え、
ルゴール液、ヨード含有うがい液、ヨード造影剤な
ども使用できません。
検査4(~2)日前 抗甲状腺薬中止
検査当日
検査用放射性ヨード[131]投与
検査翌日
24時間摂取率測定
シンチグラム
72時間摂取率測定
投与量計算
治療用放射性ヨード[131]発注
治療用放射性ヨード[131]投与
検査3日後
検査7~10日後
投与(2~)4日後 抗甲状腺薬再開
投与7~14日後
ヨード制限食解除
(甲状腺重量と摂取率に基づいて投与量を計算する場合)
治療用アイソトープ内服後の
注意事項
„
„
„
服用したアイソトープのうち甲状腺に取り込まれな
かったものは、ほとんど尿中に排出されます。ほん
の少し、汗や唾液からも出ます。
この放射線は人体に悪影響を及ぼしませんが、微
量の放射線が出ていることをご本人に認識していた
だく必要があります。
以下に述べる注意は、被ばくを他人に与えないエチ
ケットと考えてください。ご本人に対して安全な治療
法ですから、他人に危険を及ぼすことはありません。
注意事項
1.
2.
3.
3日間は充分に水分を摂りましょう。早くアイソトー
プを体外へ出すためです。
3日間はお手洗いで排泄後はできれば2度水洗を
流してください。男性の場合、尿の飛散による汚染
を軽減させるため、便座に座り排尿することをお勧
めします。
3日間は、風呂は最後にお入りください。汗に少量
のアイソトープが出るからです。ただし、シャワーだ
けの場合は最初に入っても結構です。
注意事項(続き)
4.
5.
6.
3日間は可能なら、一人で寝てください。3日間は
キスやセックスはさけてください。唾液や体液に少
量のアイソトープが出るからです。
7日間は子供や妊婦と親密に接触(距離1メートル
以内)すること、近くで長時間過ごす(添い寝など)
ことなどは避けてください。15分以上子供を抱かな
いようにしましょう。
7日間は公共の乗り物では他の人と距離1メートル
以上をあけ、6時間以上同じ席では過ごさないよう
に努めてください。
注意事項(続き)
7.
少なくとも6ヶ月間は避妊をしてください。放射性
ヨードの大部分は1ヶ月もすると身体から消失しま
すが、絶対に安全であるために避妊期間は4ヶ月
間としています。
最後に
„
バセドウ病のアイソトープ治療は
•
•
•
„
簡便
安全
患者の身体的、経済的、時間的負担が少ない
とても優れた治療法です