1-2 事故後初期のヨウ素 131 沈着量の分布

福島第一原子力発電所事故の対処に係る研究開発
1- 2
事故後初期のヨウ素 131 沈着量の分布
-初期航空機モニタリングデータを日米共同で開発した解析手法により評価-
131
2
I 沈着量(Bq/m )
(2011年4月3日時点)
(a)
3000 K <
1000 ‒ 3000 K
600 ‒ 1000 K
300 ‒ 600 K
100 ‒ 300 K
60 ‒ 100 K
30 ‒ 60 K
10 ‒ 30 K
≦ 10 K
(c)
4
計数率/チャンネル
10
131
(365
I
keV)
3
10
134
Cs
(796 keV)
2
10
㻟㻜㻌㼗㼙
1
10
㻞㻜㻌㼗㼙
0
10
-1
10
500
0
(b)
1000 1500 2000
3000
3
1F㻟㻌㼗㼙
(e)
(d)
4
4
計数率/チャンネル
10
10
131
134
I
3
Cs
3
10
10
2
2
10
10
1
1
10
10
0
0
10
250 300 350 400 450
10
エネルギー
(keV)
図 1- 4 モニタリングに使った
(a)航空機
と
(b)測定機材
NaI 検出器(5 cm × 10 cm × 40 cm、
3 本)を飛行機の後部に搭載し、1 秒毎
にデータを採取しました。
2500
エネルギー
(keV)
700 750 800 850 900
エネルギー
(keV)
図 1-5 スペクトルデータ
131
I と 134Cs のピーク領域をガウス・
フィッティング法で抽出し、131I と
134
Cs の 1 秒毎の測定データを求め
ました。
図 1-6 131I の沈着量分布の測定結果(2011 年
4 月 3 日時点)
(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダー
ドパック(ESRI, Co. Ltd.)で作成)
131
I 濃度の高いエリアが、1F の北西方向のほか
に、南側にも確認されました。
東京電力福島第一原子力発電所(1F)事故により、
様々
な放射性物質が広い範囲にわたって拡散されました。
私たちは、米国エネルギー省
(DOE)
が早い段階
(2011 年
3 月 17 日∼ 4 月 5 日)
で飛行機に大型 NaI 検出器を搭載
して実施した航空機モニタリング(図 1-4)の測定結果
を DOE から入手し、
エネルギースペクトルの解析を行っ
た結果、短半減期のヨウ素 131(131I;半減期:8 日)を
示すエネルギーのピーク(365 keV)が検出されるもの
があったことから、DOE と共同で 131I の地表面沈着量
を解析する手法を開発し、131I の地表面沈着量の分布を
求めて、それをマップ化しました。
131I のエネルギー・ピークが検出でき、バックグラウ
ンド放射線の影響を差し引いて面的な分布が評価でき
る 2011 年 4 月 2 日と 3 日に実施した 3 回のフライト測
定に着目し、測定データの中にわずかに含まれる 131I の
ピークを抽出しました
(図 1-5)
。また、γ 線の挙動を解
析するモンテカルロ計算コードを用いて 131I に対する検
出器の感度特性や地表面から上空までの減弱量を求める
手法を開発し、地表面の 131I の沈着量(kBq/m2)とピー
ク計数率の関係式を求めました。
このピークの抽出とモンテカルロ計算による放射線の
減弱量の解析の結果、地表面に沈着した 131I の濃度を算
出し、マップ化しました。
測定が終了した 4 月 3 日時点で評価した 131I の沈着量
の解析結果を図 1-6 に示します。また、半減期が比較
的長く、その後実施されたモニタリングでも十分に検出
されているセシウム 134(134Cs;半減期:2 年)につい
ても、比較のために 131I と同様の手法を用いて解析を行
いました。解析の結果、放射性セシウムと同様に 1F の
北西方向に高い濃度の 131I の沈着が認められました。ま
た、1F 付近では 131I が南側にも広がっている傾向が見
られました。
さらに、解析手法の妥当性を検証するため、文部科学
省原子力災害対策支援本部
(当時)
が実施した土壌データ
(2011 年 6 月 14 日)
と今回の解析結果を半減期補正し
て比較しました。その結果、地上で測定した 131I,134Cs
の沈着量は本航空機モニタリングの結果と良く一致し
ており、本手法の妥当性が確認されました。131I の地上
データは少なかったのですが、
今回開発した手法により、
131
I の詳細な分布が明らかになりました。
●参考文献
Torii, T. et al., Enhanced Analysis Methods to Derive the Spatial Distribution of 131I Deposition on the Ground by Airborne Surveys at
an Early Stage after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident, Health Physics, vol.105, no.2, 2013, p.192-200.
原子力機構の研究開発成果 2014
13