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離島,種子島における過疎とその背景 : 鹿児島県熊毛郡
中種子町を事例に(卒業論文要旨)
茂野, 睦美
お茶の水地理
1995-06-24
http://hdl.handle.net/10083/12273
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Departmental Bulletin Paper
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お茶 の水地理
第36号
1
995年
離島 ,種子島におけ る過疎 とその背景
-
鹿児島県熊毛郡中種子町を事例に茂
都市-の人 口集中の続 くなか ,地方におけ る人
口減少 と,その現象に伴 う経済 ・社会的影響が問
題 とされて久 しい。 このいわゆ る 「
過疎」 の進 む
地域 として ,第-次産業 ,特に農業 を主 とした農
山村や平地 の都市部か ら地理的隔絶性を もった山
間地域な どが一般的に挙げ られ るo Lか し,海に
よって本土 と隔て られ ,全国に338を数 え る 「
離
960
年代に始 まる急激 な人 口減少 ,
島」 もまた ,1
高齢化 ,産業衰退 とい う過疎問題をかかえる地域
である。
本論文で取 り上げ る鹿児島県種子 島 も,紛れ も
ない過疎地 である。
.しか し種子島は ,藩制時代か
らの独 自の産業 ・社会構造を もち ,5
50年 間それ
を保持 して きた島であった。 また ,本 土 との隔絶
性はあるものの人 口と面積を もち,資本主義経済
の侵入 した現在 において も自主性 ・自立性を発揮
しうる立場 におかれた ,孤立大型離 島なのである。
そ こで本論文 では ,「
過疎地」 と して の種 子 島
をみ るとともに ,種子島 とい う 「
離 島」におけ る
過疎をみる ことを 目的 としている。
調査対象地域 は ,南北に細長 くのび る種 子島の
中央部 ,中種子町である。北に位置す る西之表市
が島の中心地 ,南に接す る南種子町が宇宙 ロケ ッ
トと リゾー トの町 とす ると,中種子町はサ トウキ
ビ ・甘藷を中心 とした ,まさに農業 の町である。
産業別就業者数 の約半数が第一次産業に従事 して
いることにな り,畜産 との複合経営や輸送園芸な
どに も力を入れている。 しか し 2万を越 えていた
6
年 を境に激減 し,今では 1万人余 り
人 口は昭和 3
とな ってい る。年齢別人 口構成をみ ると,1
0
代後
0
代前半が極端に少な く,新規学卒者の就
半か ら2
職 ・進学に よる島外流 出がその大 きな要因である。
人 口減少率 は緩やかにな りつつあるが ,若年層 の
野
睦
美
薄 さ,高齢化 ,脱農家が進んでいる。
この よ うな中種 子町 を ,経 済 的側面 と人 口移
動 ,そ して集落社会に焦点をあて,その特徴 と現
状をみた。
そ こには ,社会 の動 きに左右 されなが らも常に
新 しい方 向性を探 り,町を支 えて きた ,土台 とし
ての農業が あ った。 昨今 の厳 しい農 業情 勢 のな
か ,その専業的色彩の濃い農業が過疎化を促 して
いるといえるが ,過疎 問題 として よ く取 り沙汰 さ
れ るほ ど深刻な産業衰退がみ られ るわけではない。
それに もかかわ らず ,人 口減少 の とどまらない理
由には ,「
離島」 であるとい う条 件 も大 き くか か
わ っていると思われ る。すなわ ち,海 を隔ててい
るとい う隔離性が ,兼業機会に乏 しい離 島か らの
人 口流 出を促 し,また孤立性か ら くる生活上 の不
便 さは ,住民 の本土に対す る離島の意識を強めて
いるのである。
また種子島には ,離 島であるか らこそその構造
を保持 して きた ともいえる,マキを中心 とした在
来集落 と,他 の離 島な どか ら生活 の場を求めて き
た移住集落 とがある。その,血縁的 ・地縁的関係
の濃淡 ,つ ま り共同体的色彩 の濃淡が ,人 口流 出
とその形態に差を もた らして きた ことも うかがえ
た。
以上の ことか ら,離 島 としての種子島におけ る
急激 な人 口流 出 と現在 も続 く過疎化の背景がみえ
て きた。その根底には ,島 とい う環境 のなかで形
成 された社会-の資本主義経済 の侵入があった。
しか し広 い耕地面積が農業就業人 口の保持 しうる
こと,挙家離村型か ら世帯分離型 の離村形態に移
行 していることな どか ら,今後 ,種子島の過疎 の
在 り方は ,その形を変 えてゆ くのではないか と思
われ る。
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0
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