製造方法やノウハウは特許出願すべきでない? - JRS経営情報サービス

情報番号:01011522
テーマ:製造方法やノウハウは特許出願すべきでない?
編著者:ジーベック国際特許事務所
(関連情報:01011501~01011551、01011553~01011554)
Q:製造方法やノウハウは特許出願すべきでない?
A:製造方法についての権利を取得すれば、その方法を独占的に実施すること
ができるほか、その方法によって製造された商品を独占的に販売することがで
きます。別の言い方をすれば、他人が無断でその方法を実施することやその方
法で製造された商品を販売することをやめさせることができます。
しかし、他人が無断でその商品を自社の工場で製造していたとしても、特許
権者がその工場に立ち入って、それを確認することは通常できません。そのた
め、製造方法について特許出願しても、他人に技術を教えるようなもので、権
利として役に立たないといった考え方があります。
また、ノウハウ(正確な定義はありませんが、営業秘密の一つの概念である
と考えられます。なお、営業秘密は不正競争防止法において、秘密として管理
されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の
情報であって、公然と知られていないものと定義されています)を特許出願し
た場合、権利として取得できるというメリットはありますが、その特許が公開
になった時点で秘密性が失われ、もはやノウハウではなくなってしまうという
デメリットがあります。
以上のように、製造方法やノウハウを特許出願すべきか、すべきでないかは
一概に判断できるものではありません。以下にその判断要素を記載しておきま
すので、これらを総合的に検討して判断されるのがよいでしょう。
・特許権を取得することが可能かどうか
特許性が低い発明や特許として成立しない営業ノウハウなどについては、特
許出願することにより公開されるデメリットの方が大きいと思われますので、
ノウハウとして管理されるのがよいと思います。
・他人が侵害していることを摘発することが可能かどうか
商品を分析することによりその製造方法を特定できる場合もあります。また、
近年、侵害の取得をなくし、権利者が適切に保護されるように、特許法や民事
*この情報の無断コピーを禁じます。
(株)経営ソフトリサーチ・レファレンス事業部
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訴訟法が改正され、侵害行為の立証の容易化が図られています。
従って、特許性が高い製造方法については、積極的に特許出願する方向でお
考えになるのがよいと思います。
・他人がその技術に追随することが可能かどうか
コカコーラの内容成分は特許出願されておらず、ノウハウとして管理されて
いることはよく知られています。
これは、他人がその内容成分について追随することはできないとの判断から、
出願公開され、かつ、権利の有効期限がある特許で保護するよりも、ノウハウ
として管理した方が独占状態を長く維持できるとの判断のもとでの戦略であ
ると思います(現に独占状態が100年以上維持されています)。逆に、他人
が容易に追随することができるような技術であれば、特許で保護する方がよい
と思います。
・他人に特許をとられた場合に先使用権の立証が可能かどうか
自社で既に実施している技術でも、秘密として管理されている技術の場合、
他人に特許出願され、特許をとられてしまう可能性があります。
このような場合、他人の特許出願前から実施していたことを立証できれば、
先使用権という権利が認められます。特許出願しないとの方針をとる場合は、
先使用権についても考慮しておくのがよいと思います。
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