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2010年度 定期問題 量子力学II
理工・材料機能工学科 2010年7月29日 3限目
試験時間85分 出題者:岩谷素顕 1枚目/4枚中
学籍番号
持込許可: 関数電卓・定規
評
点
氏名
注意事項:答えを導出する過程(計算式)も記述すること。答えには、必要に応じて単位をつけること。
1. 図1のように、左から右へ進行する質量mの電子が、ポテンシャル障壁V0を越えて右側へ行く確率、即ち透過率を、以下の
手順に従って求めなさい ただし電子の波動関数をϕとし 電子のエネルギーはE>V
手順に従って求めなさい。ただし電子の波動関数をϕとし、電子のエネルギ
はE>V0として計算しなさい。また、領域2は無限
として計算しなさい また 領域2は無限
遠まで続いているとして計算しなさい。(計:20点)
E>V0 縦軸:エネルギー
(1) 領域1,2のシュレーディンガー方程式を導出しなさい。 ただし、領域1の波動関数をϕ1、領域
2の波動関数をϕ2として計算しなさい。(5点)
(2) 領域1,2の波動関数の一般解を求めなさい。 (5点)
(3) 入射波の振幅に対する反射波と透過波の振幅の比を求めよ。 (5点)
(4) E>V0の時の透過率T,反射率Rを求めなさい。ただし、下記の確率の流れ密度S(x,t)の式を
V0
( )
使って良い。(5点)
h ⎛
∂ψ ( x, t )
∂ψ * (x, t ) ⎞
x
S (x,t ) =
−ψ ( x, t )
⎜ψ * (x, t )
⎟
2im ⎝
∂x
∂x
⎠
0
領域1
領域2
図1
(1) 領域1,2のシュレーディンガー方程式は、
h2 2
∇ ϕ1 = Eϕ1
2m
領域1
−
領域2
⎛ h2 2
⎞
⎜⎜ −
∇ + V0 ⎟⎟ϕ 2 = Eϕ 2
⎝ 2m
⎠
(2) 領域1の波動関数の一般解は、
ϕ1 (x ) = A exp(ikx ) + B exp(− ikx )
領域2の波動関数の一般解は、
⎛
2mE ⎞
⎜k =
⎟
⎜
h 2 ⎟⎠
⎝
⎛
2m(E − V0 ) ⎞
⎜ k′ =
⎟
2
⎜
⎟
h
⎝
⎠
ϕ 2 (x ) = C exp(ik ′x )
(3) 境界条件より
x=0の時、値が連続
ϕ (0 ) = A + B = C
x=0の時 傾きが一致
x=0の時、傾きが一致
∂ϕ (x )
= ik ( A − B ) = ik ′C ⇔ k ( A − B ) = k ′C
∂x x =0
入射波と反射波および透過波の振幅比は、
C
B
および
A
A
B k − k′
=
A k + k′
C
2k
k ( A − C + A) = k ′C ⇔ =
A k + k′
⎛
2mE ⎞
⎜k =
⎟
⎜
h 2 ⎟⎠
⎝
k ( A − B ) = k ′( A + B ) ⇔
⎛
2m(E − V0 ) ⎞
⎟
⎜ k′ =
⎟
⎜
h2
⎠
⎝
(4) 確率の流れ密度を計算すると、
S ( x,t ) =
(
hk
2
2
A −B
m
)
(x<0)
S ( x,t ) =
hk ′ 2
C
m
(x>0)
したがって、透過率Tおよび反射率Rを計算すれば
2
S 反射 B
(
k − k ′)
R=
=
=
S 入射 A 2 (k + k ′)2
2
k′ C
S
4kk ′
T = 透過 =
=
2
S 入射 k A
(k + k ′)2
2
⎛
2m(E − V0 )
2mE ⎞
⎟
⎜ k′ =
,k =
2
⎜
h
h 2 ⎟⎠
⎝
2010年度 定期問題 量子力学II
理工・材料機能工学科 2010年7月29日 3限目
持込許可: 関数電卓・定規
試験時間85分 出題者:岩谷素顕 2枚目/4枚中
注意事項:答えを導出する過程(計算式)も記述すること。答えには、必要に応じて単位をつけること。
2. 水素原子の動径方向の波動関数は以下の式で与えられる。
1
3
⎛ 2 ⎞ 2 ⎡ (n − l − 1)! ⎤ 2 ⎛ 2r ⎞
⎛ r ⎞ 2l +1 ⎛ 2r ⎞
⎟⎟ ⎢
⎜
⎟
⎜⎜ −
⎟⎟ Ln +l ⎜⎜
⎟⎟
Rn ,l (r ) = −⎜⎜
exp
⎥
3
⎜ na ⎟
na
na
na
{
(
)
}
2
n
n
l
!
+
0 ⎠
⎝ 0⎠ ⎣
⎝
⎝ 0⎠
⎦ ⎝ 0⎠
l
Lはラゲールの多項式と呼ばれ
k
⎛ 2r ⎞
⎜⎜
⎟
{
(
)
}
+
n
l
!
n −l −1
na0 ⎟⎠
k +1
⎝
2 l +1 ⎛ 2r ⎞
⎟⎟ = ∑ (− 1)
Ln +l ⎜⎜
(n − l − 1 − k )!(2l + 1 + k )!k!
⎝ na0 ⎠ k =0
2
と記述される。以下の問に答えなさい。
と記述される
以下の問に答えなさい
(1) 水素原子における2p軌道の動径方向の波動関数を求めなさい。(8点)
(2) 2p軌道の電子について存在確率が極大となるrを求めなさい。 (8点)
(1) 2p軌道の動径方向の波動関数は
3
⎛ 1 ⎞2 1 ⎛ r ⎞
⎛ r ⎞
⎜⎜ ⎟⎟ exp⎜⎜ −
⎟⎟
R2,1 (r ) = ⎜⎜ ⎟⎟
a
a
⎝ 0⎠ 2 6⎝ 0⎠
⎝ 2 a0 ⎠
(2) 2p軌道の場合
r=0で極小
極
dP2,1 ( r )
dr
r3
= 4π
24 a05
r=4a0で極大
極大
⎛
⎛ r ⎞
r ⎞
⋅ ⎜⎜ 4 − ⎟⎟ exp⎜⎜ − ⎟⎟
a0 ⎠
⎝
⎝ a0 ⎠
2010年度 定期問題 量子力学II
理工・材料機能工学科 2010年7月29日 3限目
持込許可: 関数電卓・定規
試験時間85分 出題者:岩谷素顕 3枚目/4枚中
学籍番号
氏名
注意事項:答えを導出する過程(計算式)も記述すること。答えには、必要に応じて単位をつけること。
3. NaのD線は図3のように589.592nmおよび588.995nmの二つに分離して観測される。下記の問に答えなさい。
ただし、スピン軌道相互作用によって変化するエネルギーは下記の式(1)で解けるとし、NaのD線は3p軌道から3s軌道の遷移に
ただし、スピン軌道相互作用によって変化するエネルギ
は下記の式(1)で解けるとし、NaのD線は3p軌道から3s軌道の遷移に
よって得られる発光であると言うことを利用して計算しなさい。
発光スペクトルを波長分解
589.592[nm]
ΔE =
λ
2
h 2 { j ( j + 1)-l (l + 1)-s(s + 1)} ・・・(1)
① 2p軌道がどのように分離するのかを図を用いて説明しなさい。(10点)
② NaのD線の分離幅は何eVか? (5点)
( )
③ 励起準位のスピン軌道相互作用パラメータλを求めなさい。(4点)
588.995[nm]
波長
図3
①
2p軌道は、スピン軌道相互作用がない場合、6重縮退しているが、スピン軌道相互作用によって、4つの状
p
態と2つの状態に分かれる。また、分離するエネルギーは下記のようになる
m j = − j, − j + 1, ⋅ ⋅ ⋅ ,j
エネルギーは同じで量子状
態が異なる6個の状態
3 1 1 3
=6重縮退
m j = − , − , , 4重縮退
2
1
l = 1, s =
2
ml = −1,0, + 1
λ
2
j=
3
2
j=
1
2
h2
2重縮退
2
1 1
m j = − , − λh
2 2
1 1
ms = − , +
2 2
スピン軌道相互作用がな
いと仮定した場合(λ 0)
いと仮定した場合(λ=0)
②
2 2 2
スピン軌道相互作用がある
場合(λ≠0)
588.995[nm] ⇒ 2.10503 [eV]
589.592[nm] ⇒ 2.1029 [eV]
物理定数表
ΔE=2.10503-2.1029=2.13[meV]
③ 1 λh 2 − (− λh 2 ) = 3 λh 2 = 2.13[meV ]
2
2
λ=2.05×1046 [[1/Js2]
物理量
記
号
値
単位
電子の静止質量
m0
9.108×10-31
kg
電子の素電荷
e
1.602×10-19
C
プランク定数
h
6.626×10-34
J・s
ボルツマン定数
kB
1.380×10-23
J/K
光速
c
2.998×108
m/s
真空の誘電率
e0
8.854×10-12
F/m
アボガドロ数
NA
6.022×1023
/mol
ボーア半径
a0
5.292×10-11
m
エネルギー換算
1eV =1.6022x10-19J
2010年度 定期問題 量子力学II
持込許可: 関数電卓・定規
理工・材料機能工学科 2010年7月29日 3限目
試験時間85分 出題者:岩谷素顕 2枚目/4枚中
4. 水素原子中のp 軌道電子の角運動量演算子のx 成分 lˆx の対角化について考える。以下の問に答えなさい。
ただし、球面調和関数 Yl ,m と lˆx は、以下の関係があることを使って良いとする。
l
h
lˆxYl,ml =
2
(
(l-ml )(l + ml + 1) ⋅ Yl,m +1 + (l + ml )(l-ml + 1) ⋅ Yl,m −1 )
l
(1) lˆx の行列を求め,エルミート行列であることを確認しなさい(5点)
(2) lˆx の三つの固有値を求めなさい(5点)
(3) (2)で求めた、三つの固有値それぞれの固有ベクトルを決めなさい。 (5点)
(4) ユニタリー行列Uおよびそのエルミート共役行列U†を求めなさい。 (5点)
(5) lˆx を対角化しなさい。 (5点)
l