JP 2005-27533 A 2005.2.3 (57) 【 要 約 】 【課題】本発明は、より発酵効率の高い有機酸の製造方法を提供することを解決すべき課 題とした。 【解決手段】有機原料を含む水性反応液に細菌の菌体またはその処理物を作用させること により該有機原料から有機酸を製造する方法において、反応後の水性反応液を回収し、回 収した水性反応液から菌体またはその処理物を分離し、分離した菌体またはその処理物を 新たな水性反応液に作用させることにより菌体またはその処理物を繰り返し使用すること を特徴とする上記方法。 【選択図】 なし (2) JP 2005-27533 A 2005.2.3 【特許請求の範囲】 【請求項1】 有機原料を含む水性反応液に細菌の菌体またはその処理物を作用させることにより該有機 原料から有機酸を製造する方法において、反応後の水性反応液を回収し、回収した水性反 応液から菌体またはその処理物を分離し、分離した菌体またはその処理物を新たな水性反 応液に作用させることにより菌体またはその処理物を繰り返し使用することを特徴とする 上記方法。 【請求項2】 細菌がコリネ型細菌、バチルス属細菌、又はリゾビウム属細菌よりなる群から選ばれるい ずれかの細菌である、請求項1に記載の方法。 10 【請求項3】 細菌が該細菌の野生型に比べて乳酸生産能が10%以下に低減化された変異株である、請 求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 乳酸脱水素酵素(LDH)が欠如した細菌を使用する、請求項1から3のいずれかに記載 の方法。 【請求項5】 反応液が炭酸イオン、重炭酸イオンまたは炭酸ガスを含有する、請求項1∼4のいずれか に記載の方法。 【請求項6】 20 有機原料を含む水性反応液に嫌気的雰囲気下で細菌の菌体またはその処理物を作用させる 、請求項1∼5のいずれかに記載の方法。 【請求項7】 有機原料がグルコースである、請求項1∼6のいずれかに記載の方法。 【請求項8】 菌体またはその処理物の繰り返し使用の回数が3回以上である、請求項1∼7のいずれか に記載の方法。 【請求項9】 有機酸がコハク酸、リンゴ酸又はフマル酸である、請求項1∼8のいずれかに記載の方法 。 30 【請求項10】 反応を終えた水性反応液の全量をそのまま次の反応に使用する、請求項1∼9のいずれか に記載の方法。 【請求項11】 有機酸の2回目以降の生産量が初回の生産量の80%以上である、請求項1∼10のいず れかに記載の方法。 【請求項12】 コハク酸の2回目以降の生産量が初回の生産量の80%以上である、請求項1∼11のい ずれかに記載の方法。 【請求項13】 40 請求項1∼12のいずれかの方法により製造される有機酸含有組成物。 【請求項14】 有機酸がコハク酸である、請求項13に記載の有機酸含有組成物。 【請求項15】 請求項1∼12のいずれかの方法により有機酸を製造する工程、及び得られた有機酸を原 料として重合反応を行う工程を含む、有機酸含有ポリマーの製造方法。 【請求項16】 有機酸がコハク酸である、請求項15に記載の有機酸含有ポリマーの製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 50 (3) JP 2005-27533 A 2005.2.3 【発明の属する技術分野】 本発明は、細菌を用いた有機酸の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来技術】 コハク酸などを発酵により生産する場合、通常、Anaerobiospirillum 属、Actinobacillus属等の嫌気性細菌が用いられている(特許文献1及び 2、非特許文献1)。嫌気性細菌を用いた場合、生産物の収率が高いが、その一方では、 増殖するために多くの栄養素を要求するために、培地中に多量のCSLなどの有機窒素源 を添加する必要がある。これらの有機窒素源の多量の添加は、培地コストの上昇をもたら すだけでなく、生産物を取り出す際の精製コストの上昇にもつながり経済的でない。 10 【0003】 また、好気性細菌を好気性条件下で一度培養し、菌体を増殖させた後、集菌、洗浄し、静 止菌体として酸素を通気せずに有機酸を生産する方法も知られている(特許文献3)。こ の場合、菌体を増殖させるに当たっては、有機窒素の添加量が少なくてよく、簡単な培地 で十分増殖できるため経済的ではあるが、目的とする有機酸の生成量や菌体当たりの生産 速度は未だ不十分であり、より優れた方法の確立が望まれていた。 【0004】 また、細菌を繰り返して培養する連続培養により、L−グルタミン酸やL−アスパラギン 酸を製造する方法も知られている(特許文献4及び特許文献5)。しかしながら、コリネ 型細菌、バチルス属細菌、又はリゾビウム属細菌などの細菌を用いて、特に嫌気的条件下 20 で細菌を繰り返して培養することによりコハク酸を製造する方法についてはこれまでのと ころ報告がない。 【0005】 【特許文献1】 米国特許第5,143,834号公報 【特許文献2】 米国特許第5,504,004号公報 【特許文献3】 特開平11−113588号公報 【特許文献4】 30 特開昭62−48394号公報 【特許文献5】 特開平5−260985号公報 【非特許文献1】 International Journal of Systematic Bact eriology (1999), 49, 207−216 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、より発酵効率の高い有機酸の製造方法を提供することを解決すべき課題とした 。 40 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、一回以上の生産に使用し た菌体を再利用することにより有機酸の生産速度及び収率が高まることを見出した。本発 明はこれらの知見に基づいて完成したものである。 【0008】 すなわち本発明によれば以下の発明が提供される。 (1) 有機原料を含む水性反応液に細菌の菌体またはその処理物を作用させることによ り該有機原料から有機酸を製造する方法において、反応後の水性反応液を回収し、回収し た水性反応液から菌体またはその処理物を分離し、分離した菌体またはその処理物を新た 50 (4) JP 2005-27533 A 2005.2.3 な水性反応液に作用させることにより菌体またはその処理物を繰り返し使用することを特 徴とする上記方法。 【0009】 (2) 細菌がコリネ型細菌、バチルス属細菌、又はリゾビウム属細菌よりなる群から選 ばれるいずれかの細菌である、(1)に記載の方法。 (3) 細菌が該細菌の野生型に比べて乳酸生産能が10%以下に低減化された変異株で ある、(1)または(2)に記載の方法。 (4) 乳酸脱水素酵素(LDH)が欠如した細菌を使用する、(1)から(3)のいず れかに記載の方法。 【0010】 10 (5) 反応液が炭酸イオン、重炭酸イオンまたは炭酸ガスを含有する、(1)∼(4) のいずれかに記載の方法。 (6) 有機原料を含む水性反応液に嫌気的雰囲気下で細菌の菌体またはその処理物を作 用させる、(1)∼(5)のいずれかに記載の方法。 (7) 有機原料がグルコースである、(1)∼(6)のいずれかに記載の方法。 (8) 菌体またはその処理物の繰り返し使用の回数が3回以上である、(1)∼(7) のいずれかに記載の方法。 【0011】 (9) 有機酸がコハク酸、リンゴ酸又はフマル酸である、(1)∼(8)のいずれかに 記載の方法。 20 (10) 反応を終えた水性反応液の全量をそのまま次の反応に使用する、(1)∼(9 )のいずれかに記載の方法。 (11) 有機酸の2回目以降の生産量が初回の生産量の80%以上である、(1)∼( 10)のいずれかに記載の方法。 (12) コハク酸の2回目以降の生産量が初回の生産量の80%以上である、(1)∼ (11)のいずれかに記載の方法。 【0012】 (13) (1)∼(12)のいずれかの方法により製造される有機酸含有組成物。 (14) 有機酸がコハク酸である、請求項13に記載の有機酸含有組成物。 (15) (1)∼(12)のいずれかの方法により有機酸を製造する工程、及び得られ 30 た有機酸を原料として重合反応を行う工程を含む、有機酸含有ポリマーの製造方法。 (16) 有機酸がコハク酸である、(15)に記載の有機酸含有ポリマーの製造方法。 【0013】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。 本発明は、細菌の菌体を用いた反応により有機酸を製造するに当たり、一回以上の製造に 使用した菌体を50%以上再利用することを特徴とする有機酸の製造方法に存する。コリ ネ型細菌を用いた嫌気的醗酵により乳酸を製造しようとした場合、菌体を繰り返して使用 するに従って乳酸の生産量は顕著に低下した。これに対し、本発明においては、菌体を繰 り返し使用しても特にコハク酸の生産量は低下しないことが見出された。 40 【0014】 本発明の方法では、有機原料を含む水性反応液に細菌の菌体またはその処理物を作用させ ることにより該有機原料から有機酸を製造する際に、有機酸の合成反応を終えた水性反応 液を回収し、回収した水性反応液から菌体またはその処理物を分離し、分離した菌体また はその処理物を新たな水性反応液に作用させることにより有機酸の製造を再度行う。上記 の通り、本発明の方法は、菌体またはその処理物を繰り返し使用することを特徴とする。 【0015】 本発明に使用される細菌は、有機酸の生産能を有すれば特に限定されないが、このうち、 Bacillus属、Rizobium属またはコリネ型細菌等の好気性細菌が好ましい 。 50 (5) JP 2005-27533 A 2005.2.3 【0016】 上記好気性細菌のうち好ましくはコリネ型細菌であり、該コリネ型細菌として好ましくは 、コリネバクテリウム属に属する微生物、ブレビバクテリウム属に属する微生物又はアー スロバクター属に属する微生物が挙げられる。このうち好ましくは、コリネバクテリウム 属又はブレビバクテリウム属に属するものが挙げられ、更に好ましくは、コリネバクテリ ウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレ ビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバ クテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagen es)又はブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)に属する微生物が挙げられる。 10 【0017】 上記微生物の特に好ましい具体例としては、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevi bacterium flavum)MJ−233(FERM BP−1497)、同M J−233AB−41(FERM BP−1498)、ブレビバクテリウム・アンモニア ゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)ATCC6872 、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutam icum)ATCC31831、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brev ibacterium lactofermentum)ATCC13869が挙げられ る。 【0018】 20 本発明の方法において用いられる上記微生物は、野生株だけでなく、UV照射やNTG処 理等の通常の変異処理により得られる変異株、細胞融合もしくは遺伝子組換え法などの遺 伝学的手法により誘導される組換え株などのいずれの株であってもよい。尚、上記遺伝子 組み換え株の宿主としては、形質転換可能な微生物であれば、親株と同じ属種であっても よいし、属種の異なるものであってもよいが、上述のような好気性細菌を宿主とするのが 好ましい。 【0019】 このうち、本反応においては、乳酸脱水素酵素の欠如した変異株を用いるとより有効であ る。コリネ型細菌の乳酸脱水素酵素の欠如した変異株の具体的な製造方法としては、特開 平11−205385号公報に記載されている方法が挙げられ、これに準じて簡単に作成 30 できる。 【0020】 本発明では菌体の処理物を使用することもできる。菌体の処理物とは、例えば、菌体をア クリルアミド、カラギーナン等で固定化した固定化菌体、菌体を破砕した破砕物、その遠 心分離上清、又その上清を硫安処理等で部分精製した画分等を指す。なお、好気性コリネ 型細菌を本発明の方法に用いるためには、先ず菌体を通常の好気的な条件で培養した後用 いることが好ましい。培養に用いる培地は、通常微生物の培養に用いられる培地を用いる ことができる。例えば、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム等の無機 塩からなる組成に、肉エキス、酵母エキス、ペプトン等の天然栄養源を添加した一般的な 培地を用いることができる。培養後の菌体は、遠心分離、膜分離等によって回収し、次に 40 示す反応に用いられる。 【0021】 本反応に上記細菌を用いるに当たっては、寒天培地等の固体培地で斜面培養したものを直 接反応に用いてもよいが、上記細菌を予め液体培地で培養(種培養)したものを用いるの が好ましい。 【0022】 これらの細菌を培養及び反応するために使用される培地の有機原料としては、本微生物が 資化しうる炭素源であれば特に限定されないが、通常、ガラクトース、ラクトース、グル コース、フルクトース、グリセロール、シュークロース、サッカロース、デンプン、セル ロース等の炭水化物;グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリア 50 (6) JP 2005-27533 A 2005.2.3 ルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、フルクトース、グリセロー ルが好ましく、特にグルコースが好ましい。 【0023】 また、上記発酵性糖質を含有する澱粉糖化液、糖蜜なども使用される。これらの発酵性糖 質は、単独でも組み合わせても使用できる。 上記炭素源の使用濃度は特に限定されないが、有機酸の生成を阻害しない範囲で可能な限 り高くするのが有利であり、通常、5∼30%(W/V)、好ましくは10∼20%(W /V)の範囲内で反応が行われる。 また、反応の進行に伴う上記炭素源の減少にあわせ、炭素源の追加添加を行ってもよい。 【0024】 10 窒素源としては、本微生物が資化しうる窒素源であれば特に限定されないが、具体的には 、アンモニウム塩、硝酸塩、尿素、大豆加水分解物、カゼイン分解物、ペプトン、酵母エ キス、肉エキス、コーンスティープリカーなどの各種の有機、無機の窒素化合物が挙げら れる。 【0025】 無機塩としては各種リン酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カリウム、マンガン、鉄、亜鉛等 の金属塩が用いられる。 また、ビオチン、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等のビタミン類、ヌクレオチ ド、アミノ酸などの生育を促進する因子を必要に応じて添加する。 また、反応時の発泡を抑えるために、培養液には市販の消泡剤を適量添加しておくことが 20 望ましい。 【0026】 本発明で用いる反応液としては、水、緩衝液、培地等が用いられるが、培地が最も好まし い。培地には、例えば上記した有機原料と炭酸イオン、重炭酸イオン又は炭酸ガスを含有 させ、嫌気的条件で反応させることができる。炭酸イオン又は重炭酸イオンは、炭酸若し くは重炭酸又はこれらの塩或いは炭酸ガスから供給される。炭酸又は重炭酸の塩の具体例 としては、例えば炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸アンモニウ ム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム等が挙げられる。そして、炭酸イオン、重炭酸イ オンは、1∼500mM、好ましくは2∼300mM、さらに好ましくは3∼200mM の濃度で添加する。炭酸ガスを含有させる場合は、溶液1L当たり50mg∼25g、好 30 ましくは100mg∼15g、さらに好ましくは150mg∼10gの炭酸ガスを含有さ せる。 【0027】 培養液及び反応液のpHは、通常、pH5∼10、好ましくはpH6∼9.5に調整し、 反応中も必要に応じて培養液のpHはアルカリ性物質、炭酸塩、尿素などによって上記範 囲内に調節する。 本反応に用いる微生物の生育至適温度は、通常、25℃∼35℃である。反応時の温度は 、通常、25℃∼40℃、好ましくは30℃∼37℃である。 【0028】 反応は、通常5時間から120時間行う。反応に用いる菌体の量は、特に規定されないが 40 、1∼700g/l、好ましくは10∼500g/l、さらに好ましくは20∼400g /lが用いられる。 【0029】 培養時は、通気、攪拌し酸素を供給することが必要である。反応時は、通気、攪拌しても 構わないが、通気せず、酸素を供給しなくても構わない。本発明で言う嫌気的条件とは、 溶液中の溶存酸素濃度を低く抑えて反応させることを意味する。この場合、溶存酸素濃度 として0∼2ppm、好ましくは0∼1ppm、さらに好ましくは0∼0.5ppmで反 応させることが望ましい。そのための方法としては、例えば容器を密閉して無通気で反応 させる、窒素ガス等の不活性ガスを供給して反応させる、炭酸ガス含有の不活性ガスを通 気する等を用いることができる。 50 (7) JP 2005-27533 A 2005.2.3 【0030】 有機酸の合成反応は、通常、培養液中のグルコース等の有機原料が消費された時点で反応 終了とすることができる。このとき、反応液中には、コハク酸、リンゴ酸またはフマル酸 等の有機酸が生成している。このうち、コハク酸が最も蓄積度が高く生産物としては好ま しい。 本発明では反応後の水性反応液を回収するが、ここで言う「反応後」とは、残存有機原料 (例えば、グルコースなど)が初期添加量の50%以下、好ましくは20%以下、さらに 好ましくは5%以下であること、あるいは残存原料濃度が5重量%以下、好ましくは2重 量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下であることを言う。 【0031】 10 本発明では、上記のようにして有機酸の合成反応を終えた水性反応液を回収し、回収した 水性反応液から菌体またはその処理物を分離し、分離した菌体またはその処理物を新たな 水性反応液に作用させることにより有機酸の製造を再度行う。回収した水性反応液からの 菌体またはその処理物の分離は、遠心分離などの当業者に公知の方法により行うことがで きる。 【0032】 また、回収した水性反応液の全量又はその一部を用いて、菌体またはその処理物を分離す ることができるが、回収した水性反応液の全量を使用することが好ましい。分離した菌体 またはその処理物は新たな水性反応液に作用させるが、ここで言う新たな水性反応液とは 、グルコースなどの有機原料を含む水性反応液のことを言う。 20 【0033】 上記の通り菌体またはその処理物を繰り返し使用した場合、有機酸の2回目以降の生産量 が初回の生産量は好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、特に 好ましくは95%以上である。特に好ましい例では、コハク酸の2回目以降の生産量は初 回の生産量の80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95 %以上である。 【0034】 本発明において、菌体またはその処理物は2回以上繰り返して使用することができる。繰 り返しの回数は好ましくは3回以上であり、その上限は有機酸が生産される限り特に限定 されず、例えば、10回、20回、30回またはそれ以上の任意の回数だけ繰り返すこと 30 ができる。 【0035】 上記した本発明の方法により得られる反応液中には、コハク酸、リンゴ酸またはフマル酸 等の有機酸が生成している。この有機酸含有組成物自体も本発明の範囲内である。有機酸 含有組成物としては、コハク酸の蓄積度が高いものが特に好ましい。 【0036】 また、反応液(培養液)中に蓄積した有機酸は常法に従って、反応液より分離・精製する ことができる。具体的には、遠心分離、ろ過等により菌体等の固形物を除去した後、イオ ン交換樹脂等で脱塩し、その溶液から結晶化あるいはカラムクロマトグラフィーにより有 機酸を分離・精製することができる。 40 【0037】 さらに本発明においては、上記した本発明の方法により有機酸を製造した後に、得られた 有機酸を原料として重合反応を行うことにより有機酸含有ポリマーを製造することができ る。 【0038】 近年、環境に配慮した工業製品が数を増す中、植物由来の原料を用いたポリマーに注目が 集まってきており、本発明において製造される有機酸は、ポリエステルやポリアミドとい ったポリマーに加工して用いることができる。また、こうした有機酸は食品添加物や医薬 品、化粧品に直接あるいは中間体として用いることができる。 以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により 50 (8) JP 2005-27533 A 2005.2.3 制限されるものではない。 【0039】 【実施例】 (実施例1) 乳酸脱水素酵素(LDH)の欠如した株MJ233AB―41LDH(−)株を、ブレビ バクテリウム・フラバムMJ233AB−41(FERM BP−1498)から特開平 11−206385号公報に従い調製した。すなわち、MJ−233株より常法により抽 出した全DNAを鋳型として、特開平11−206385号公報に記載された2つのプラ イマー(CARAARCCNG GNGARAC(配列番号1)、並びにTCNCCRT GYT CNCCNAT(配列番号2))を用いてPCR反応を行った(但し、RはA又 10 はGを示し、YはC又はTを示し、NはA、G、C又はTを示す)。得られた反応液3μ lとPCR産物クローニングベクターpGEM−T(PROMEGAより市販)1μlを 混合し、50mMトリス緩衝液(pH7.6)、10mMジチオスレイトール、1mMA TP、10mM MgCl2 及びT4DNAリガーゼ1unitsの各成分を添加し、4 ℃で15時間反応させ、結合させた。得られたプラスミド混液を用い、塩化カルシウム法 によりエシェリヒア・コリJM109(宝酒造製)を形質転換し、アンピシリン50mg を含む培地(トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl5g及び寒天1 6gを蒸留水1Lに溶解)に塗布した。 【0040】 この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを調製した。 20 このプラスミドDNA20μlに、50mM トリス緩衝液(pH7.5)、1mMジチ オスレイトール、10mM MgCl2 、100mM NaCl、制限酵素SphI及び SalI 1unitの各成分を添加し、37℃で1時間反応させた。得られたDNA溶 液からGene CleanII(フナコシ社製)を用いて300bp断片の回収を行い 、該DNA溶液10μlと、クロラムフェニコール耐性のクローニングベクターpHSG 396(宝酒造製)1μlのSphI及びSalI分解物と混合し 50mMトリス緩衝 液(pH7.6)、10mMジチオスレイトール、1mM ATP、10mM MgCl 及びT4DNAリガーゼ1unitsの各成分を添加し、4℃で15時間反応させ、結合 させた。得られたプラスミド混液を用い、塩化カルシウム法によりエシェリヒア・コリJ M109(宝酒造製)を形質転換し、アンピシリン50mgを含む培地(トリプトン10 30 g、イーストエキストラクト5g、NaCl5g及び寒天16gを蒸留水1Lに溶解)に 塗布した。 【0041】 この培地上の生育株を常法により液体培養し、培養液よりプラスミドDNAを調製した。 該プラスミドを電気パルス法によりブレビバクテリウム・フラバムMJ−233に導入し 、クロラムフェニコール5mgを含む培地(尿素:2g、硫酸アンモニウム:7g、リン 酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0 .5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・水和物:20mg、D−ビオ チン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、 及び寒天16gを蒸留水1Lに溶解)に塗布した。この培地上で生育してきた菌株の内、 40 LDH活性が10分の1以下になった株を選抜し、MJ233AB―41LDH(−)株 とした。 【0042】 尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウ ム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg 、硫酸マンガン・水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200 μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、及び蒸留水:1000mlの培地100m Lを500mLの三角フラスコにいれ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで 冷やし、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液4ml、無菌濾過した0.1%クロ ラムフェニコール水溶液5mlを添加し、前述のMJ233AB−41LDH(−)株を 50 (9) JP 2005-27533 A 2005.2.3 接種して24時間30℃にて種培養した。 【0043】 尿素:1.6g、硫酸アンモニウム:5.6g、リン酸1カリウム:0.2g、リン酸2 カリウム0.2g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.2g、硫酸第一鉄・7水和物:8 mg、硫酸マンガン・水和物:8mg、D−ビオチン:80μg、塩酸チアミン:80μ g、酵母エキス0.4g、カザミノ酸0.4g、消泡剤(アデカノールLG294:旭電 化製):0.4ml及び蒸留水:200mlの培地を1Lの発酵糟に入れ、120℃、2 0分加熱滅菌した。これを室温まで冷やした後、あらかじめ滅菌した20%グルコース水 溶液を200ml添加し、これに前述の種培養液を全量加えて、30℃に保温した。pH は2M炭酸ナトリウムで8.0に保ち、通気(反応中は反応液中の溶存酸素が2ppm以 10 下に保たれていた。)は毎分100mL、攪拌は毎分400回転で反応を行った。31時 間後にグルコースがほぼ消費されており、コハク酸が31g/L蓄積していた。 【0044】 (実施例2) 実施例1で得られた全培養液を10000rpm,10分の遠心分離により集菌し、実施 例1と同じ培地を添加して、30℃に保温した。pHは2M炭酸ナトリウムで8.0に保 ち、通気(反応中は反応液中の溶存酸素が2ppm以下に保たれていた。)は毎分100 mL、攪拌は毎分400回転で反応を行った。21時間後にグルコースがほぼ消費されて おり、コハク酸42g/L、フマル酸2.2g/L、酢酸3.7g/L、リンゴ酸0.8 g/L、ピルビン酸1.9g/L、オキザロ酢酸0.1g/Lがそれぞれ蓄積していた。 20 【0045】 (実施例3) 実施例2で得られた全培養液を10000rpm,10分の遠心分離により集菌し、実施 例1と同じ培地を添加して、30℃に保温した。pHは2M炭酸ナトリウムで8.0に保 ち、通気(反応中は反応液中の溶存酸素が2ppm以下に保たれていた。)は毎分100 mL、攪拌は毎分400回転で反応を行った。20時間後にグルコースがほぼ消費されて おり、コハク酸が47g/L、フマル酸1.3g/L、酢酸12g/L、リンゴ酸0.6 g/L、ピルビン酸2.0g/L、オキザロ酢酸0.1g/Lがそれぞれ蓄積していた。 【0046】 (実施例4∼11) 30 実施例3と同様な条件で反応させた。22時間後に反応を終了させ繰り返し使用した。各 種有機酸の生産量を以下の表1に示す。 【0047】 【表1】 40 【0048】 【発明の効果】 本発明の方法によれば、細菌を用いた有機酸の製造において、高い反応速度及び収率で目 的物を得ることができる。 50 (10) JP 2005-27533 A 2005.2.3 【0049】 【配列表】 10 20 30
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