JP 2008-273938 A 2008.11.13 (57)【要約】 【課題】低アディポネクチン血症、インスリン抵抗性亢 進等に由来する各種疾患(例えば、メタボリックシンド ローム、糖尿病およびその合併症、非アルコール性脂肪 肝炎(NASH)およびそれに由来する肝疾患、子宮内 膜癌、閉経後乳癌、白血病、大腸癌、胃癌、前立腺癌等 の癌)の治療・予防に役立つ食品、医薬製剤、飼料を提 供する。 【解決手段】オリーブ葉エキスを有効成分とするアディ ポネクチン、特には高分子量アディポネクチンの産生促 進剤。該剤としては、食品、医薬製剤、または飼料が挙 げられる。 【選択図】図1 10 (2) JP 2008-273938 A 2008.11.13 【特許請求の範囲】 【請求項1】 オリーブ葉エキスを有効成分とするアディポネクチン産生促進剤。 【請求項2】 食品、医薬製剤、または飼料である、請求項1記載のアディポネクチン産生促進剤。 【請求項3】 アディポネクチン産生促進効果に基づく機能表示を付した食品である、請求項1または 2記載のアディポネクチン産生促進剤。 【請求項4】 アディポネクチンの産生促進が、分子量300kDa以上の高分子量アディポネクチン 10 の産生促進である、請求項1∼3のいずれか1項に記載のアディポネクチン産生促進剤。 【請求項5】 低アディポネクチン血症の予防または治療剤である、請求項1∼4のいずれか1項に記 載のアディポネクチン産生促進剤。 【請求項6】 インスリン抵抗性改善剤である、請求項1∼4のいずれか1項に記載のアディポネクチ ン産生促進剤。 【請求項7】 メタボリックシンドロームの予防または治療剤である、請求項1∼4のいずれか1項に 記載のアディポネクチン産生促進剤。 20 【請求項8】 糖尿病およびその合併症の予防または治療剤である、請求項1∼4のいずれか1項に記 載のアディポネクチン産生促進剤。 【請求項9】 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびそれに由来する肝疾患の予防または治療 剤である、請求項1∼4のいずれか1項に記載のアディポネクチン産生促進剤。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明はオリーブ葉エキスを有効成分とするアディポネクチン産生促進剤に関し、特に 30 は高分子量アディポネクチンの産生を促進するアディポネクチン産生促進剤に関する。本 発明は食品、医薬製剤、飼料等に好適に適用される。 【背景技術】 【0002】 アディポネクチンは、脂肪細胞から特異的に産生および分泌されるタンパク質であり、 循環器系疾患、糖尿病、肥満などの生活習慣病と密接に関連することが知られている。血 中アディポネクチン濃度が低下した病態である低アディポネクチン血症は、上記疾病の根 本的な原因の1つであると考えられ、低アディポネクチン血症の治療・予防は、低アディ ポネクチン血症に起因する上記疾患や生活習慣病の予防・治療に有用である。また、低ア ディポネクチン血症下ではインスリン抵抗性が増大することから、インスリン抵抗性の亢 40 進も上記疾患や生活習慣病の原因の1つと考えられている。よってインスリン抵抗性を改 善することも上記疾患や生活習慣病の予防・治療に有用である。 【0003】 さらに最近、アディポネクチンがメタボリックシンドロームの発症・進展において中心 的な役割を担っていること、血中アディポネクチン濃度の低下が非アルコール性脂肪性肝 炎(NASH)、肝線維化の進展を促進すること、およびメタボリックシンドロームの病 態として内臓脂肪蓄積、インスリン抵抗性、動脈硬化惹起性リポタンパク異常、血圧高値 、高尿酸血症等が挙げられること、また、メタボリックシンドロームは軽度ではあるが全 身性易炎症性状態、発癌や炎症性疾患の発症と関連づけられて注目されていること、等が 報告されている(例えば、非特許文献1∼2参照)。肥満・インスリン抵抗性に関連した 50 (3) JP 2008-273938 A 2008.11.13 発癌としては、子宮癌、閉経後乳癌、白血病、大腸癌、胃癌、前立腺癌などが挙げられ、 これらが低アディポネクチン血症と密接に関連しているとの報告もされている。したがっ て低アディポネクチン血症の治療・予防、インスリン抵抗性の改善は、メタボリックシン ドローム等の上記疾病の予防・治療にも有用である。 【0004】 上記状況下にあって、血中でのアディポネクチンの産生を促進する成分の研究・開発が 進められている。これまでアディポネクチンについては、特許文献1において大豆サポニ ンを有効成分とするアディポネクチン分泌促進組成物が提案され、特許文献2ではプロア ントシアニジンを有効成分とする血中アディポネクチン量増加剤が提案され、特許文献3 ではHMG−CoA還元酵素阻害剤を有効成分として含有するアディポネクチン産生増強 10 剤が提案されている。 【0005】 そしてさらに、アディポネクチンの中でも特に高分子量アディポネクチンが上記疾病と 関連性が高いことが報告されている(例えば、非特許文献3∼4参照)。 【0006】 アディポネクチンは血中において、67kDa以下の低分子量多量体アディポネクチン (LMW:low molecular weight)、136kDaの中分子量多量体アディポネクチン( MMW:middle molecular weight)、300kDa以上の高分子量多量体アディポネク チン(HMW:high molecular weight)の3種類の多量体構造をとって存在する。低分 子量アディポネクチンはおもに3量体のアディポネクチンからなり、3量体アディポネク 20 チンはアミノ末端39位のシステイン残基どうしのジスルフィド結合により6量体の中分 子アディポネクチンやそれ以上(12∼18量体)の高分子量多量体アディポネクチン( =高分子量アディポネクチン)を形成している。 【0007】 ヒトアディポネクチン遺伝子変異のうち、84番目のアミノ酸であるグリシンがアルギ ニンに置換したG84Rと、90番目のアミノ酸であるグリシンがセリンに置換したG9 0Sでは、HMWの形成のみが阻害され、MMWおよびLMWの形成は阻害されない。G 84RまたはG90Sのアディポネクチン遺伝子変異を有するヒトでは、低アディポネク チン血症に加え糖尿病を有しており、インスリン抵抗性改善作用にはHMWアディポネク チンが重要であることが明らかとなっている。また、肥満やメタボリックシンドロームの 30 基盤であるインスリン抵抗性においては、HMWアディポネクチンが特に低下しているこ とが報告されている。 【0008】 高分子多量体アディポネクチンは、総アディポネクチンに比べ、チアゾリジン誘導体投 与によるインスリン抵抗性の改善とより相関が認められている。また、メタボリックシン ドロームの各因子に関しては、高分子量多量体アディポネクチンとインスリン感受性、内 臓脂肪の減少、糖脂質代謝と有意に相関している。 【0009】 以上のように、高分子量多量体アディポネクチンが、糖尿病・メタボリックシンドロー ムの病態形成に最も重要な役割を担っていることが明らかとなってきているが、血中の高 40 分子量多量体アディポネクチンを増加させるものとしては、チアゾリジン誘導体、フィブ ラート剤などの医薬品成分のみで、安全に毎日摂取できる食品成分に関してはそのような 報告は未だない。 【0010】 一方、従来、オリーブ葉エキスにはオレウロペインやヒドロキシチロソール等のフェノ ール成分が含まれていることが知られている。オリーブ葉エキスの作用としては、血糖降 下作用(αアミラーゼ阻害、αグルコシダーゼ阻害)(例えば、特許文献4参照)、血中 中性脂肪低下作用、血中コレステロール低下作用(例えば、特許文献5参照)、血糖値上 昇抑制、糖尿病発症抑制(例えば、特許文献6参照)、血圧低下作用および抗動脈硬化作 用などが報告されているが、オリーブ葉エキスにアディポネクチン産生促進効果があると 50 (4) JP 2008-273938 A 2008.11.13 いうことに関する報告は、本発明者らが知る限りにおいて、これまでなされていない。 【0011】 【非特許文献1】田村、外1名、「アディポネクチンと発癌」、アディポサイエンス、フ ジメディカル出版、2005年、第2巻、第2号、p.122−127 【非特許文献2】河田、外3名、「内臓脂肪蓄積を基盤とした消化器病態とその発症機序 −アディポサイトカイン、特にアディポネクチンを中心に−」、日消誌、日本消化器病学 会、平成17年11月、第102巻、第11号、p.1384−1391 【非特許文献3】熊田、外1名、「メタボリックシンドロームの病態診断−高分子量アデ ィポネクチン」、日本臨床、日本臨床社、2006年、第64巻、増刊号9、p.536 −539 10 【非特許文献4】堀越、「高分子量アディポネクチン」、医学のあゆみ、医歯薬出版株式 会社、2006年4月、第217巻、第1号、p.156−162 【特許文献1】特開2006−143609号公報 【特許文献2】特開2006−182706号公報 【特許文献3】特開2005−232150号公報 【特許文献4】特開2002−010753号公報 【特許文献5】特開2004−352626号公報 【特許文献6】特開2005−176770号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 20 【0012】 上記従来の事情に鑑み、アディポネクチンの産生をより強く促進し得る物質が解明でき れば、アディポネクチンの血中濃度の低下、インスリン抵抗性の亢進等に起因する種々の 疾患、例えばメタボリックシンドローム、糖尿病やその合併症、動脈硬化、消化器疾患等 の種々の病態を治療・予防し得る医薬製剤、例えば脂肪肝改善剤等や、食品、飼料の開発 に可能性が開かれる。 【0013】 すなわち、本発明は、アディポネクチンの産生を促進し得る物質の解明と、このアディ ポネクチン産生促進物質に基づく各種疾患の治療・予防に役立つ医薬製剤、食品、飼料の 開発を課題とする。 30 【課題を解決するための手段】 【0014】 上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、オリーブ葉エキスがア ディポネクチン産生促進効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。 【0015】 すなわち本発明は、オリーブ葉エキスを有効成分とするアディポネクチン産生促進剤を 提供する。 【0016】 また本発明は、食品、医薬製剤、または飼料である、上記アディポネクチン産生促進剤 を提供する。 40 【0017】 また本発明は、アディポネクチン産生促進効果に基づく機能表示を付した食品である、 上記アディポネクチン産生促進剤を提供する。 【0018】 また本発明は、アディポネクチンの産生促進が、分子量300kDa以上の高分子量ア ディポネクチンの産生促進である、上記アディポネクチン産生促進剤を提供する。 【0019】 また本発明は、低アディポネクチン血症の予防または治療剤である、上記アディポネク チン産生促進剤を提供する。 【0020】 50 (5) JP 2008-273938 A 2008.11.13 また本発明は、インスリン抵抗性改善剤である、上記アディポネクチン産生促進剤を提 供する。 【0021】 また本発明は、メタボリックシンドロームの予防または治療剤である、上記アディポネ クチン産生促進剤を提供する。 【0022】 また本発明は、糖尿病およびその合併症の予防または治療剤である、上記アディポネク チン産生促進剤を提供する。 【0023】 また本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびそれに由来する肝疾患の 10 予防または治療剤である、上記アディポネクチン産生促進剤を提供する。 【発明の効果】 【0024】 本発明はアディポネクチンの産生促進効果が高いため、それを利用した機能剤や飲食品 を提供することができ、アディポネクチンが関与する種々のインスリン抵抗性の改善、血 中アディポネクチン濃度の改善により、メタボリックシンドローム、糖尿病やその合併症 、動脈硬化、消化器疾患等の種々の病態の治療・予防に役立ち、脂肪肝治療・予防剤等と しての効果も期待される。 【発明を実施するための最良の形態】 【0025】 20 以下、本発明について詳述する。 【0026】 本発明で用いるオリーブ葉エキスは、モクセイ科オリーブ属(Olea)に属する植物の葉 を抽出したエキスをいう。オリーブ属に属する植物としては、オリーブ(O. europaea) 、クリソフィア種(O. chrysophylla)等が挙げられる。本発明ではオリーブ(O. europa ea)が好ましく用いられる。 【0027】 オリーブ葉エキスは、オリーブの葉を必要により乾燥した後、抽出溶媒に一定期間浸漬 するか、あるいは加熱還流している抽出溶媒と接触させ、次いで濾過し、濃縮して得るこ とができる。抽出溶媒としては、通常抽出に用いられる溶媒であれば任意に用いることが 30 でき、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレン グリコール、グリセリン等のアルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素 、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒を、それぞれ単独あるいは組み合わせて用いること ができる。上記溶媒で抽出して得た抽出液をそのまま、あるいは濃縮したエキスを用いる か、あるいはこれらエキスを吸着法、例えばイオン交換樹脂を用いて不純物を除去したも のや、ポーラスポリマー(例えばアンバーライトXAD−2)のカラムにて吸着させた後 、メタノールまたはエタノールで溶出し、濃縮したものも使用することができる。また分 配法、例えば水/酢酸エチルで抽出した抽出物等も用いられる。 【0028】 なお、オリーブ葉エキスは「オピエース」、「オラリス」(以上、いずれもエーザイフ 40 ードケミカル(株)製)等として市販されており、これら市販品を用いることもできる。 【0029】 本発明のアディポネクチン産生促進剤は医薬製剤としてヒトおよび動物に投与すること ができる他、各種飲食品、飼料(ペットフード等)に配合して摂取させることができる。 【0030】 本発明のアディポネクチン産生促進剤を医薬製剤として用いる場合、低アディポネクチ ン血症の予防または治療剤、インスリン抵抗性改善剤、メタボリックシンドロームの予防 または治療剤、糖尿病およびその合併症の予防または治療剤、癌(子宮内膜癌、閉経後乳 癌、白血病、大腸癌、胃癌、前立腺癌等を含む)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH )およびそれに由来する肝疾患の予防または治療剤等(例えば、脂肪肝予防剤、等)とし 50 (6) JP 2008-273938 A 2008.11.13 て好適に用いられる。 【0031】 医薬製剤は、経口的にあるいは非経口的(静脈投与、腹腔内投与、等)に適宜に使用さ れる。剤型も任意で、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤や、内 服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、または、注射剤などの非経口用液体製剤など、 いずれの形態にも公知の方法により適宜調製することができる。これらの医薬製剤には、 通常用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面 活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を 適宜使用してもよい。 【0032】 10 本発明医薬製剤において、有効成分であるオリーブ葉エキスの投与量(実分)は、その 種類、その剤型、また患者の年令、体重、適応症状などによって異なるが、例えば経口投 与の場合は、成人1日1回∼数回投与され、1日あたり10mg∼1000mg程度、あ るいはオリーブ葉エキス300mg/日(オレウロペインとして102.6mg/日)投 与するのが好ましい。 【0033】 本発明のアディポネクチン産生促進剤を飲食品、飼料等として用いる場合、一般の飲食 品の他、低アディポネクチン血症の予防・治療、インスリン抵抗性改善、メタボリックシ ンドロームの予防・治療、糖尿病およびその合併症の予防・治療剤、癌(子宮内膜癌、閉 経後乳癌、白血病、大腸癌、胃癌、前立腺癌等を含む)、非アルコール性脂肪性肝炎(N 20 ASH)およびそれに由来する肝疾患の予防・治療等の生理機能をコンセプトとし、その 旨を表示した機能性飲食品、疾病者用食品、特定保険用食品等に応用することができる。 【0034】 飲食品の形態としては、例えば、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状、固形状、または 、液体状に任意に成形することができる。これらには、食品中に含有することが認められ ている公知の各種物質、例えば、結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味 剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製 剤などの賦形剤を適宜含有させることができる。 【0035】 本発明の飲食品中に含まれる有効成分であるオリーブ葉エキスの含有量(実分)は、そ 30 れらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができ、例えば、0. 03∼0.1質量%程度とすることができる。特に、保健用飲食品等として利用する場合 には、本発明の有効成分を所定の効果が十分発揮されるような量で含有させることが好ま しい。従ってこのような場合には、本発明の飲食品は、オリーブ葉エキスを含有し、血中 アディポネクチン量の増加、あるいはメタボリックシンドロームなどの予防または改善等 に用いられるものである旨の表示を付した飲食品とすることができる。 【実施例】 【0036】 以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定 されるものではない。 40 【0037】 実施例1 遺伝的に2型糖尿病を発症するKK−Ayマウスに高脂肪食を摂取させることによって 、肥満、2型糖尿病の発症に加え、血中アディポネクチン濃度も低下する(Tsuchida A e t al, Diabetes. 2005 :3358-3370)。そこでKK−Ay/TaJclマウス(オス、5 週齢、日本クレア社製)12匹を用いて、1週間の予備飼育後、群間の平均体重がほぼ同 等になるようにコントロール群(6匹)とオリーブ葉エキス摂取群(6匹)に群分けを行 った。 【0038】 コントロール群には、脂肪分約30質量%含む高脂肪食(固形飼料。オリエンタル酵母 50 (7) JP 2008-273938 A 2008.11.13 (株)製)を自由摂取させた(Maeda N et al, Nat Med. 2002 :731-737)。オリーブ葉 エキス摂取群には、上記高脂肪食(オリエンタル酵母(株)製)に、オリーブ葉エキス( 「オピエース」;エーザイフードケミカル(株)製)を該高脂肪食に対し0.57質量% (w/w)(実分)の配合割合となるよう添加したオリーブ葉エキス添加高脂肪食(固形 飼料)を自由摂取させた。 【0039】 上記各飼料を各群2週間自由摂取させて飼育した後、両群ともエーテル麻酔下において 尾静脈より採血を行い、定法に従って血清を調製した。血清中のアディポネクチン濃度は 、アディポネクチン測定用ELISAキット(大塚製薬製)を用いて測定した。結果を図 1に示す。図1の結果から明らかなように、オリーブ葉エキス摂取群ではコントロール群 10 に比べ、有意に血中アディポネクチン濃度が増加(P<0.05)した。この結果より、 オリーブ葉エキスを摂取することにより、アディポネクチンの産生が促進され、高脂肪食 摂取によるインスリン感受性の低下が抑制され、血糖値が低下したと考えられる。 【0040】 すなわちオリーブ葉エキスが、アディポネクチンの血中濃度の低下、インスリン抵抗性 の亢進等に起因する種々の疾患、例えば、メタボリックシンドローム、糖尿病やその合併 症、動脈硬化、消化器疾患等の種々の病態に対し、優れた予防・治療効果を有することが 裏付けられた。 【0041】 実施例2 20 血中アディポネクチン濃度は、ヒトの肥満度を表す指数であるBMI(body mass inde x。ボディマス指数)と逆相関し、日本人男性では約6μg/ml、女性では約9μg/ mlが平均値と報告されている。日本肥満学会によると、BMIが22の場合が標準体重 、BMIが25以上の場合を肥満としている。 【0042】 そこで、BMI25以上の男女で、血中アディポネクチン値が平均以下の21名を被験 者として、オリーブ葉エキス含有サプリメント(試験試料)を1日3回食前に1錠ずつ8 週間摂取させた後の血清中の総アディポネクチン濃度および高分子多量体アディポネクチ ン濃度を測定した。 【0043】 30 (被験者) 下記表1に示す構成による。 【0044】 【表1】 40 【0045】 (試験試料) 50 (8) JP 2008-273938 A 2008.11.13 下記オリーブ葉エキス含有サプリメントを用いた。なお含有量はタブレット3錠中の含 有量を示す。 (配 合 成 分) (mg/3錠) オリーブ葉エキス 300(純分) 海藻ポリフェノール(注1) 100 赤ショウガエキス 15 (注1):仏産アスコフィラム・ノドサムと呼ばれるヒバマタ科の褐藻から抽出したフロ ロタンニンと呼ばれるポリフェノールの一種。 【0046】 (試験方法) 10 試験試料(サプリメント)を1日3回、食前に1錠ずつ、8週間経口摂取し、試験開始 時(0週)、4週間後、および8週間後に採血を行い、定法に従って血清を調製し、血清 中の総アディポネクチン濃度および高分子多量体アディポネクチン濃度を測定した。測定 にはヒト多量体アディポネクチン分別測定キット(第一化学薬品)を用いた。結果を図2 に示す。 【0047】 図2(a)は血中総アディポネクチン量、図2(b)は血中高分子多量体アディポネク チン量を示す。図中、横軸は週を示す。これらの図から明らかなように、血中総アディポ ネクチン濃度は摂取8週間後に、高分子量多量体アディポネクチン濃度は摂取4週間後お よび8週間後にともに有意な増加が認められた。 20 【0048】 この実施例2により、医薬品以外で、ヒトにおけるオリーブ葉エキス摂取による血中ア ディポネクチン濃度増加、特には高分子多量体アディポネクチン濃度増加が初めて確認さ れた。このことから、本発明のアディポネクチン産生促進剤は、食品等として用いること が可能で、これら食品を摂取することによって、血中の高分子多量体アディポネクチンを 増加させることができ、メタボリックシンドローム、糖尿病やその合併症、動脈硬化、消 化器疾患等の種々の病態に対し、優れた予防・治療効果が期待される。 【0049】 以下にさらに処方例を示す。なお各処方例中、エキス配合量は純分(実分)を示す。 【0050】 30 実施例3:サプリメント(タブレット3錠中) (配 合 成 分) (mg) オリーブ葉エキス 300 レスベラトロール(注2) 2 赤ショウガ 15 (注2):ブドウの果皮部・新芽や赤ワイン、ピーナッツの薄皮などに多く含まれるポリ フェノールの一種。 【0051】 実施例4:サプリメント(タブレット3錠中) (配 合 成 分) (mg) 40 オリーブ葉エキス 300 生コーヒーエキス(注3) 100 赤ショウガ 15 (注3):コーヒー豆、アカネ科コーヒーノキの種子より含水エタノールで抽出したエキ ス。 【0052】 実施例5:サプリメント(ソフトカプセル3錠中) (配 合 成 分) (mg) コエンザイムQ10 100 黒胡椒抽出物 4 50 (9) JP 2008-273938 A 2008.11.13 Lーカルニチン酒石酸塩 100 イソフラボンアグリコン 30 ビタミンB1 20 ビタミンB2 12 イソロイシン 10 ロイシン 20 バリン 10 オリーブ葉エキス 10 【図面の簡単な説明】 【0053】 【図1】実施例1におけるコントロール群とオリーブ葉エキス摂取群での血中アディポネ クチン濃度を示すグラフである。 【図2】実施例2におけるヒトでの血中アディポネクチン濃度を示すグラフである。図2 (a)は血中総アディポネクチン濃度を、図2(b)は高分子多量体アディポネクチン濃 度を、それぞれ示す。 【図1】 【図2】 10 (10) JP 2008-273938 A 2008.11.13 フロントページの続き (51)Int.Cl. FI A23K 1/16 (2006.01) A23K テーマコード(参考) 1/16 304C (72)発明者 中島 優哉 神奈川県横浜市金沢区福浦2−12−1 株式会社資生堂リサーチセンター(金沢八景)内 Fターム(参考) 2B150 AB10 DD44 DD56 4B018 MD48 MD61 ME03 MF01 4C088 AB64 AC05 BA08 CA05 CA06 CA07 CA08 CA09 CA14 MA52 NA14 ZA70 ZA75 ZC21 ZC33 ZC35 10
© Copyright 2024 ExpyDoc