下大静脈欠損・奇静脈結合を伴った急性肺血栓塞栓症 - 日本呼吸器学会

日呼吸会誌
44(12),2006.
957
●症 例
下大静脈欠損・奇静脈結合を伴った急性肺血栓塞栓症の 1 例
北口佐也子
岩永 賢司
宮良 高維
村木 正人
上田 朋子
久保 裕一
辻
文生
東田 有智
佐野 博幸
要旨:症例は 38 歳男性.アトピー性皮膚炎を基礎疾患に有する.右角膜移植後の拒絶反応抑制目的で betamethasone
2mg!
日が投与されており,投与開始 24 日目に右側胸部痛と息苦しさを主訴に来院した.体
dl と胸部 CT にて右下葉の浸潤影を認め肺炎として加
温 37.4℃,末梢血 WBC 12,000!
mm3,CRP 6.3mg!
療開始された.入院 2 日後に意識を消失して階段から転落し,頭部外傷と出血を生じた.この時点の血圧
が 102!
55mmHg, 心拍 130!
分, 室内気吸入下 SpO2 が 76% と低かったことから急性肺血栓塞栓症を疑い,
胸腹部造影 CT を施行した.結果は,肺動脈塞栓と下大静脈の欠損,奇静脈結合を認めた.本症例では頭部
外傷と出血のためヘパリンによる抗凝固療法しか施行できなかったが,救命しえた.下大静脈欠損・奇静脈
結合を伴った稀な急性肺血栓塞栓症の 1 例を経験した.
キーワード:急性肺血栓塞栓症,下大静脈欠損症,副腎皮質ステロイド,抗凝固療法
Acute pulmonary thromboembolism,Anomalous inferior vena cava,Corticosteroid,
Anticoagulant therapy
緒
言
なった.投与開始から 24 日後の 7 月 22 日,右側胸部痛
が出現したため, betamethasone の内服を自己中止し,
下大静脈欠損症は,稀な先天奇形の一つであり,血管
7 月 25 日夕に近医を受診した.胸部単純 CT にて右下
の走行異常による血流のうっ滞をきたす可能性があるに
肺野の浸潤影を指摘され,同日に当院夜間外来を紹介受
もかかわらず,血栓症を合併した症例は少ない.
今回我々
診し,肺炎の診断で入院となった.
は,下大静脈欠損を伴い,大動脈による静脈系の圧迫と
入院時現症:身長 169cm,体重 61kg,BMI 21.3,体
副腎皮質ステロイドの投薬が契機となったと考えられる
温 37.4℃,脈拍 84!
分・整,呼吸回数 20 回!
分,血圧 126!
稀な背景を有する肺血栓塞栓症の 1 例を経験したので報
64mmHg,経皮酸素飽和度 96%(室内気)
.胸部聴診上
告する.
は右背側下部にて吸気時早期の coarse crackles を聴取.
症
例
症例:38 歳,男性.
主訴:右側胸部痛(吸気時に増悪)
,軽度呼吸困難.
心雑音は聴取せず.腹部所見に異常は認めなかった.下
肢の浮腫も無く,神経学的所見にも異常を認めなかった.
入院時検査所見(Table
1)
:末梢血検査では白血球
12,400!
µl,CRP 6.3mg!
dl と上昇が認められた.また,
既 往 歴:20 歳;ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎.32 歳;白 内 障
AST 50IU!
L,ALT 163IU!
L,ALP 461IU!
L と肝酵素
(右)
.36 歳;水疱性角膜炎(右)
.38 歳;角膜ヘルペス
の上昇も認めた.血液ガス分析では,AaDO2 は 24.8 と
(右)
,角膜移植術.
開大していた.
家族歴:特記事項なし.
嗜好歴:喫煙歴;15 本!
日×18 年.飲酒歴なし.
現病歴:2005 年 6 月,アトピー性皮膚炎による水疱
性角膜炎,その後のヘルペス角膜炎のため,右角膜移植
術を施行された.角膜移植後に拒絶反応が出現し,この
反応の抑制目的で betamethasone 2mg!
日の内服開始と
入院時胸部単純写真(Fig. 1)
:右下肺野の背側に浸潤
影を認めた.
入院時胸部 CT 検査(Fig. 2)
:右下葉 S9 から S10 にか
けて気管支透亮像を伴う浸潤影を認めた.
入院後経過:胸部 CT にて右 S9 から S10 にかけての浸
潤影を認めたため,肺炎および胸膜炎と診断し,gatifloxacin(GFLX)400mg!
日にて治療開始した.入院 2 日後
〒589―8511 大阪府大阪狭山市大野東 377―2
近畿大学医学部呼吸器・アレルギー内科
(受付日平成 18 年 3 月 27 日)
の 7 月 27 日には,WBC
12,400!
µl から 9,100!
µl,CRP
も 6.3mg!
dl から 5.7mg!
dl と改善中であった.しかし,
同日 14 時頃,意識を消失して階段から転落し,左額部・
958
日呼吸会誌
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Tabl
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眼瞼・頬部に裂創を負っているところを発見された.帰
54.4ng!
ml と上昇を認めたが,ループスアンチコアグラ
室後,意識は清明であったが,血圧 102!
55mmHg と低
ント,抗カルジオリピン抗体などの自己抗体は陰性で
下,さらに脈拍 130!
分と頻脈を認め,経皮酸素飽和度
あった.心臓超音波検査では右室拡大による左室圧排像
が 76% と低下していた.また,心電図では不完全右脚
を認め,推定右室圧は 49mmHg と右心負荷所見を認め
ブロックと SIQIIITIII を認めた.肺血栓塞栓症を疑い,胸
た.肺血流シンチグラムでは,右肺 S2,S5,S9,S10,左
腹部造影 CT(Fig. 3A,B,Fig. 4)
を施行した.
肺 S1+2,舌区,S9 において血流低下があり,多発性区域
同 CT では,両側肺動脈本幹に血栓を認め,奇静脈は
性血流欠損を認めた.肺血栓塞栓症に対して右内頸静脈
著しく拡張していた(Fig. 3A,B)
.また,両側総腸骨
より下大静脈フィルター挿入を試みたところ,下大静脈
静脈内に血栓を認めた.さらに,左右の総腸骨静脈は腹
は右腎から起始し,右房に流入して終始するという下大
部大動脈の左側に位置する半奇静脈へ流入し(Fig. 4C,
静脈欠損を認めたため,フィルター留置は中止した(Fig.
D)
,半奇静脈は腹部大動脈の背側を横切り奇静脈に流
5)
. 3 日目よりワルファリン
入し,大動脈右側を上行する大静脈奇形を認めた(Fig.
APTT 2.0 倍,PT-INR 2.0 にてコントロールした.治療
4A,B)
.急性肺血栓塞栓症であったが,発症時点の階
開始後,胸部単純写真における奇静脈の拡張は改善し,
段からの転落で頭部に裂創を負い出血,皮下血腫も伴っ
治療開始 21 日目の胸部 CT(Fig.
ていたため,積極的な血栓溶解療法が施行できず,ヘパ
動脈内,両側総腸骨静脈内の血栓はほぼ消失した.ヘパ
リン 24,000 単位!
日の投与を開始した.発症時の血液凝
リンの投与を終了し,ワルファリン 3mg!
日にてコント
固系検査では,FDP 46.4ng!
dl,TAT 80.0ng!
ml,D-dimer
ロール可能となったため,発症後 1 カ月の 8 月 27 日に
3mg!
日の投与を開始し,
3C,D)では,両肺
下大静脈欠損症を伴った急性肺血栓塞栓症
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んらかの奇形因子によりこの hepatic segment が発育せ
ず,主下静脈が多数の吻合枝を通って右の腎上方の主上
静脈(supracardial)
,すなわち奇静脈へ流れる経路が
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主流をなす1).
下大静脈欠損に伴う側副路としては奇静脈以外に半奇
静脈,まれには門脈などとの結合が報告2)されているが,
多くの場合奇静脈結合を有する.本症例では,左右の総
腸骨静脈は腹部大動脈の左側に位置する半奇静脈へ流入
し,半奇静脈は腹部大動脈の背側を横切り奇静脈に流入
し,この奇静脈と半奇静脈が下大静脈の役割を担ってい
た.
下大静脈欠損症は比較的稀な先天奇形の一つであり,
Anderson らの報告3)によると先天性心疾患 2,500 例中
15 例(0.6%)に認めたとされている.多くの場合,な
んらかの心血管奇形,内臓錯位,多脾を合併する.しか
し,合併する心疾患などの先天異常がなければ,自覚症
状,身体異常所見を欠くことが多く,成人では検査中に
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同症が発見されることが多い1).他の報告における下大
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肢静脈血管造影検査 600 例中 8 例(1.3%)
,山口らの報
静脈欠損症の頻度は,Muelheims らの報告4)によると下
,蒔田ら
告5)によると心血管造影 350 例中 7 例(2.0%)
の報告6)によると健診受診者 9,035 例中 2 例(0.02%)に
退院となった.以後,平成 17 年 12 月現在,ワルファリ
ン 3mg!
日投与中であるが,肺血栓塞栓症の再発は認め
ていない.
認めたとされている.
下大静脈欠損症における下半身の静脈血は奇静脈を経
由して障害なく心臓へ還流することが可能であるが,側
考
察
副血行路を介しているため,血管の走行異常により血管
抵抗が増加するとともに静脈圧が上昇し,下肢からの静
下大静脈欠損症は,胎生期における静脈系の発育障害
脈血のうっ滞を来たして血栓形成の契機となる可能性が
が成因である.胎生第 5 週になると,静脈は右側優位と
ある.Ruggeri らの報告7)では,若年者の下大静脈欠損
なって発達し,通常肝静脈は右側の主下静脈(subcar-
症では,血栓性素因なしに約 5% の確率で深部静脈血栓
dial)と連絡する.これが hepatic segment であり,な
症を発症する可能性があるとされている.本邦における
960
日呼吸会誌
牛川らの報告8)では,下大静脈欠損症に血栓症を合併し
44(12),2006.
かったが,救命し得た.
た症例は 12 例のみと,報告例は少ないが,40 歳以下が
引用文献
12 例中 8 例(66%)を占め,Ruggeri らの報告7)と同様
に比較的若年での発症例が多い.しかし,牛川らの報告
1)髙山眞一,渡辺明規,横山幸房.下大静脈奇静脈結
における発症者は全例が男性であった.以上より,本症
合.日本臨床別冊(領域別症候群) 1996 ; 13 : 59―
例においても下大静脈欠損に伴う静脈系走行異常が血栓
62.
形成の一因となったと考えられる.
本症例における急速な症状発現,発症後の胸部単純写
真での著しい奇静脈拡張,心臓超音波検査における右心
負荷所見は,急性肺血栓塞栓症を示唆する所見である.
しかし,肺血流シンチグラムにおける多発性区域性血流
欠損は,発症前より臨床症状として発現しない程度の肺
血栓塞栓症を繰り返していた可能性も考えられる.この
背景として,大動脈による静脈系の圧迫に加えて,副腎
2)髙山眞一,渡辺明規,横山幸房.下大静脈欠損症.
日本臨床別冊(領域別症候群) 1996 ; 13 : 63―66.
3)Anderson RC, Adams PJR, Burke B. Anomalous inferior vena cava with azygos continuation (infrahepatic interruption of the inferior vena cava). J Pediatr 1961 ; 59 : 370―383.
4)Muelheims GH, Mudd JG. Anomalous inferior vena
cava. Am J Cardiol 1962 ; 9 : 945―952.
5)山口昂一,高宮 誠,渡辺伸之,他.下大静脈欠損
皮質ステロイドの投薬が血栓形成の契機となったと考え
症 7 例について.臨床放射線 1970 ; 15 : 94―105.
る.副腎皮質ステロイド投薬中の患者において血栓症が
6)蒔田 修,片平和博,森下愛文,他.健診で異常を
誘発されやすいことはよく知られているが,血栓形成の
指摘された下大静脈奇静脈結合の 2 例.臨床放射線
メカニズムに関しては不明な点が多い.副腎皮質ステロ
1994 ; 39 : 745―748.
イド投薬中に血栓症を発症した症例では,血液凝固第
7)Ruggeri M, Tosetto A, Castaman G. Congenital ab-
VIII 因子などの凝固因子活性,さらに PAI-1 などの抗
sence of the inferior vena cava : a rare risk factor for
線溶活性が増加していることが報告されている9)10).副
idiopathic deep-vein thrombosis. Lancet 2001 ; 357 :
腎皮質ステロイドが血管内皮細胞などに作用し,これら
の因子の分泌を促進していることが考えられている.
急性肺血栓塞栓症の急性期治療は,ヘパリンによる抗
441.
8)牛川憲司,板垣英二,丸山雅弘,他.糖尿病を合併
し広範な深部静脈血栓症を来した下大静脈欠損症の
一例.杏林医会誌 2005 ; 36 : 74―82.
凝固療法が第一選択となる11).血栓溶解療法の適応に関
9)Kyrle PA, Minar E, Hirschl M. High plasma levels of
しては,日本循環器学会のガイドラインによると,血行
factor VIII and the risk of recurrent venous throm-
動態的に不安定な,もしくは心エコーにて右心系の拡大
boembolism. N Engl J Med 2000 ; 343 : 457―462.
を認めるような広汎な急性肺血栓塞栓症に対して行わ
10)Morange PE, Aubert J, Peiretti F. Glucocorticoids
れ,本症例においても適応となる12)13).しかし本症例に
and insulin promote plasminogen activator inhibitor
おいては,頭部打撲後の出血と皮下血腫を認めたため,
1 production by human adipose tissue. Diabetes
血栓溶解療法の禁忌症例であり,施行できなかった.治
1999 ; 48 : 890―895.
療抵抗例においては,血栓破砕・吸引療法の適応を考え
る必要があるが,本症例では抗凝固療法のみで改善を認
めた.
11)江里健輔,松崎益徳.急性肺動脈血栓塞栓症予防・
診療マニュアル.文光堂,2001 ; 52―58.
12)安藤太三,鷹儀成二,小川 聡,他.肺血栓塞栓症
および深部静脈血栓症の診断・治療・予防に関する
結
語
今回,下大静脈欠損・奇静脈結合を伴い,大動脈によ
ガイドライン.
Circulation Journal 2004 ; 68 Supplement 4 : 57―101.
13)Jerjes-Sanchez C, Ramirez-Rivera A, de Lourdes
る静脈の圧迫と副腎皮質ステロイド投薬が契機となって
Garcia M, et al. Streptokinase and heparin alone in
発症したと考えられる急性肺血栓塞栓症の症例を経験し
massive pulmonary embolism : a randomized con-
た.発症時に外傷を負ったため,積極的な血栓溶解療法
trolled trial. J Thromb Thrombolysis 1995 ; 2 : 227―
が施行できず,抗凝固療法のみにて治療せざるを得な
229.
下大静脈欠損症を伴った急性肺血栓塞栓症
961
Abstract
A case of acute pulmonary thromboembolism accompanied by anomalous inferior vena cava with
azygous continuation
Sayako Kitaguchi, Takayuki Miyara, Tomoko Ueda, Fumio Tsuji, Hiroyuki Sano,
Takashi Iwanaga, Masato Muraki, Hirokazu Kubo and Yuji Tohda
Department of Respiratory and Allergic Medicine, Kinki University School of Medicine
A 38-year-old man with atopic dermatitis presented with right chest pain and dyspnea. Previously, he had received 2mg of betamethasone daily, to prevent rejection of the right transplanted cornea, for 24 days. His body
temperature was 37.4℃, peripheral leucocyte count measured 12,000!
mm3, and C-reactive protein was 6.3mg!
dl.
A computed tomogram of the chest revealed infiltration in the right lower lung field, and he was then treated for
pneumonia. The second day he fell down one flight of stairs due to a syncopal attack and received a head injury.
At this point his vital blood pressure was 102!
55mmHg, heart rate was 130!
min and SpO2 under breathing room
air was 76%. These findings indicated possible acute pulmonary thromboembolism. Enhanced computed tomography revealed pulmonary arteries occluded by massive thrombosis and anomalous inferior vena cava with azygous
continuation. To decrease the risk of further cerebral bleeding, anti-coagulation therapy was administered with
only 24,000IU!
day of heparin. Following treatment, the patient completely recovered. We reported this rare case
of acute pulmonary thromboembolism accompanied by anomalous inferior vena cava with azygous continuation.