パルサー表面近傍での電場遮蔽機構 / 木坂 将大

パルサー表面近傍
での電場遮蔽機構
木坂 将大
(東大宇宙線研) 寺澤 敏夫, 浅野 勝晃 Contents
1. Introduc2on 2. 電場遮蔽についての進展 3. 粒子の逆流の効果 4. まとめ
1. Introduc2on
回転駆動型パルサー
回転エネルギーを源として、粒子や 電磁波を放出するシステム。 Bs ⇠ 1012 G
M ⇠ 1.4M
R ⇠ 10km
光度曲線
γ線 電波 Gaensler & Slane (2006)
Abdo et al. (2010)
パルサー磁気圏
Force-­‐free 近似
j⇥B
⇢e E +
= 0,
c
粒子加速なし
E·B=0
c (B · ⇤ ⇥ B E · ⇤ ⇥ E)B
c
E⇥B
j=
(⇤ · E)
+
2
4
B
4
B2
Maxwell 方程式
B
=
t
cr ⇥ E
⇥E
= cr ⇥ B
⇥t
4 j
パルサー磁気圏
ある電荷密度 ρe, 電流密度 jのとき、電場が遮蔽される。 この条件への調整過程が粒子加速、生成と放射の要因。
-­‐2RLC 電荷密度 電流密度 0 2RLC Bai & Spitkovsky (2010)
-­‐RLC 0 RLC
-­‐RLC 0 RLC
パルサー磁気圏
ある電荷密度 ρe, 電流密度 jのとき、電場が遮蔽される。 この条件への調整過程が粒子加速、生成と放射の要因。
-­‐2RLC 電荷密度 電流密度 0 要求される個数密度の最小値 |⇢GJ |
⇠ 1011 (B12 /P0 )cm
e
2RLC 3
nISM
Bai & Spitkovsky (2010)
-­‐RLC 0 RLC
-­‐RLC 0 RLC
パルサー磁気圏
ある電荷密度 ρe, 電流密度 jのとき、電場が遮蔽される。 この条件への調整過程が粒子加速、生成と放射の要因。
-­‐2RLC 電荷密度 電流密度 0 要求される電流と電荷が同程度 (JB ~ ρGJc) のときの電場遮蔽機構の理解が目的。 2RLC Bai & Spitkovsky (2010)
-­‐RLC 0 RLC
-­‐RLC 0 RLC
2. 電場遮蔽についての進展
プラズマのスケール
一次元で考える (L << rpc) ・荷電粒子は磁力線に沿って運動する。 ・解く電磁場は磁力線に沿う方向の電場E||のみ。
L rpc プラズマのスケール
force-­‐free近似から要求される電荷密度をρGJ, 電流密度をjBとする。
r · Ek = 4⇡(⇢e
⇢GJ )
@Ek
= 4⇡(jB
@t
j)k
要求されるρGJ, jBからずれると、回復させるよう 電場E||が発生。
jB = (c/4⇡)r ⇥ B
磁気圏の全体構造を解くことで得られる磁場のねじれに 対応する平均の電流密度。ここではパラメーターとする。
ρ = ρGJ, j = jBの流れ jB = 0.5ρGJc の電流密度が要求されているとする。
jB
NS
0
x
L
ρ = ρGJ, j = jBの流れ jB = 0.5ρGJc の電流密度が要求されているとする。
jB
NS
0
x
L
n = ρGJ/e, v = 0.5c の粒子を 注入すると要求を満たせる。
p/mc0.5
E|| 0
0
x
L
ρ = ρGJ, j = jBの流れ jB = 0.5ρGJc の電流密度が要求されているとする。
jB
NS
0
x
L
v ≠ 0.5cの粒子を注入すると、
<v> = 0.5c, <n> = ρGJ/eの振動
パターンを作る。
v ~ c n = 0.5ρGJ/e
p/mc0.5
v = 0.1c n = 5ρGJ/e
E|| 0
0
x
L
Numerical set-­‐up
e-­‐ NS
+
p
JB
ρGJ
Timokhin (2010) Timokhin & Arons (2013) Chen & Beloborodov (2013)
電場の初期条件
Ek (zi ) = 4 [eN (zi )
運動方程式
eEk (zi )
dpi
=
dt
mc
⇥GJ zi ]
Ek (0, 0) = 0
電場の時間発展
⇥Ek
= 4 (jB
⇥t
j)
ρ = ρGJ, j = jBの流れ jB = 0.5ρGJc の電流密度が要求されているとする (sub-­‐GJ)。
jB
NS
0
x
L Timokhin & Arons (2013)
fast-­‐cold par2cles + slow hot par2cles
5
p/mc
0
⇢e = ⇢fast + ⇢slow = ⇢GJ
j = jfast + jslow = jB
“slow-­‐hot” “fast-­‐clod” ρfast = 0.5ρGJ ρslow = 0.5ρGJ -­‐5
<vslow> = 0
0 x L vfast = c
ρ = ρGJ, j = jBの流れ jB = 2ρGJc の電流密度が要求されているとする。
jB
NS
0
x
L
v = c, n = 2ρGJ/e の粒子の注入で j = jB に できるがρe = 2ρGJ ≠ ρGJ となってしまう。
p/mc
1
E|| 0
0
x
L
ρ = ρGJ, j = jBの流れ jB = 2ρGJc の電流密度が要求されているとする。
jB
NS
0
x
L
v = c, n = 2ρGJ/e の粒子の注入で j = jB に できるがρe = 2ρGJ ≠ ρGJ となってしまう。
p/mc
1
E||が発展 → 粒子加速 → γ線放射 →e±対生成 → ρe ⇒ ρGJへの調整 E|| 0
0
x
L
Numerical set-­‐up
Timokhin (2010) Timokhin & Arons (2013) eEk (zi )
dpi
=
dt
mc
frad
曲率放射の 反作用
Magne2c pair crea2on
γ + B → e-­‐ + e+ + B
ρ = ρGJ, j = jBの流れ jB = 2ρGJc の電流密度が要求されているとする。
jB
NS
0
x
L
p-­‐
p+
Timokhin & Arons (2013)
ρ = ρGJ, j = jBの流れ jB = 2ρGJc の電流密度が要求されているとする。
jB
NS
0
x
L
p-­‐
p+
Timokhin & Arons (2013)
ρ = ρGJ, j = jBの流れ jB = 2ρGJc の電流密度が要求されているとする。
jB
NS
0
x
L
p-­‐
p+
p-­‐
Timokhin & Arons (2013)
p+
おそらく加速領域以外のすべてで粒子の分布は2成分。 3. 粒子の逆流の効果
観測からの示唆 (Young pulsars)
γ線 Takata et al. (2004)
電波 Abdo et al. (2010)
Closed zone
γ-­‐ray
観測からの示唆 (Young pulsars)
γ線 電波 Abdo et al. (2010)
γ-­‐ray
Closed zone
γ-­‐ray
観測からの示唆 (Young pulsars)
γ線 25
Tb > 10 K
Radio
電波 Abdo et al. (2010)
γ-­‐ray
Closed zone
粒子の加速領域は 比較的外側。表面 近傍では電波観測 されるが、電場は 遮蔽されている?
γ-­‐ray
観測からの示唆 (Young pulsars)
γ線 25
Tb > 10 K
Radio
電波 Abdo et al. (2010)
γ-­‐ray
Closed zone
粒子の加速領域は 比較的外側。表面 近傍では電波観測 されるが、電場は 遮蔽されている?
γ-­‐ray
粒子の逆流の効果
NS
= j/c⇥GJ
OG
αNS, 0 < βNS < 1 αB < 0 αOG < 0 , βOG ~-­‐1
上の図のような状況を考える。
粒子の逆流の効果
NS
= j/c⇥GJ
OG
αNS, 0 < βNS < 1 αB < 0 αOG < 0 , βOG ~-­‐1
上の図のような状況を考える。以下を満たせば遮蔽される。
⇢ = ⇢GJ →(↵OG / OG ) + (↵NS /
J = JB →↵OG + ↵NS = ↵B
αOG, βOG, αB を決めると αNS, βNS が得られる。 NS )
=1
粒子の逆流の効果
NS
= j/c⇥GJ
OG
αNS, 0 < βNS < 1 αB < 0 αOG < 0 , βOG ~-­‐1
上の図のような状況を考える。以下を満たせば遮蔽される。
⇢ = ⇢GJ →(↵OG / OG ) + (↵NS /
J = JB →↵OG + ↵NS = ↵B
NS )
αOG, βOG, αB を決めると αNS, βNS が得られる。 粒子生成なし での遮蔽条件
↵B ↵OG
0<
1
1 + ↵OG
→ αeffとする。
=1
粒子の逆流の効果
αNS
1
-­‐1
= j/c⇥GJ
青:αeff < 0 (an2-­‐GJ) 白:0 < αeff < 1 (sub-­‐GJ) 赤:αeff > 1 (super-­‐GJ)
βOG = -­‐1
0 αOG
十分光速の粒子を流入させ ても、任意の電流密度に対し て粒子生成なし (ガンマ線の 放出なし)で電場を遮蔽する ことはできない。 αB=0
αB=一定
slow-­‐hot 粒子の注入
外側から2成分の粒子を流入させる。 表面からの粒子と合わせて調整を行う。
NS
OG
jNS, 0 < βNS < 1
jB
jB < 0 jfast < 0 , βfast~ -­‐1
ρslow,+ + ρslow,-­‐ = 0 <βslow,±> ~ 0
kTslow ~ mc2 ρGJ
slow-­‐hot 粒子の注入
外側から2成分の粒子を流入させる。 表面からの粒子と合わせて調整を行う。
NS
OG
jB < 0 jfast < 0 , βfast~ -­‐1
ρslow,+ + ρslow,-­‐ = 0 <βslow,±> ~ 0
電場の初期条件
2 kT
~
m
c
slow
E (z ) = 4 [eN (z ) ⇥ z ]
jNS, 0 < βNS < 1
k
i
i
運動方程式
eEk (zi )
dpi
=
dt
mc
GJ i
電場の時間発展
⇥Ek
= 4 (jB
⇥t
j)
slow-­‐hot 粒子の注入
イオンが流出する場合、粒子の塊を形成する。 観測される電波放射の起源である可能性がある。
pp+ ,in
mp c
5
0
10
pe ,out 0
me c -­‐10
10
+
pe ,out
0
me c
-­‐10
0
x
L
slow-­‐hot 粒子の注入
周期は系のcrossing 2meの数倍程度(~0.1μs)
1200
ncloud/nGJ = 0.4 ncloud/nGJ = 0.6 ncloud/nGJ = 0.8 ncloud/nGJ = 1.0 ncloud/nGJ = 1.5 ncloud/nGJ = 2.0 10
1000
8
800
n
n
nGJ 6
600
4
400
2
200
0
0
8 10 12 14 16 18 203
8000
10000
12000
14000
t
16000
18000
20000
SK &Terasawa prep.
10 !pe
電波放射への示唆
イオンを相対論的速度まで加速するので、 e±は最大で γ ~ 102 – 103まで加速可能。 塊のサイズは ~ 10-­‐2L = 10λpe程度。
Lradio
◆
⇣  ⌘2 ⇣
⌘4 ✓ R
cur
27
⇠ 5.0 ⇥ 10
10
102
107 cm
8
⌫c ⇠ 7.2 ⇥ 10 Hz
✓
102
◆3 ✓
Rcur
107 cm
◆
2
erg s
1
1

: mul2plicity Rcur : curvature radius
まとめ
・パルサー磁気圏のプラズマはforce-­‐freeに向かう 方向への電荷と電流が課されており、調整の 過程で粒子加速、生成と放射が起こる。 ・磁気圏からの粒子の流れは、電流、電荷を調整 する2成分で構成される。 ・2成分が相互作用する可能性のある領域の 一つが、中性子星の表面近く。周期的な不安定 で粒子の塊が形成される状況がありうる。 ・マグネター、中性子星連星合体直前のねじれた 磁場中や、粒子生成を含めた計算の準備中。