論点整理エビデンス・情報提供の呼びかけについて(PDF - 経済産業省

「持続的成長への競争力とインセンティブ
~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト
「論点整理 エビデンス・情報提供の呼びかけ」について
「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築
~」プロジェクト(座長:伊藤邦雄 一橋大学教授、事務局:経済産業省・企業
活力研究所)では、企業が持続的に成長するための競争力強化に向けた課題と
それを支える資本市場のあり方を検討するため、このたび「日本の論点」を世
界に発信し、国内外の関係者からエビデンス(データや事例などの事実や分析)
や参考とすべき情報の提供を広く求めます。
本プロジェクトは、企業経営者や長期投資家、市場関係者等が集まり、国際的
にも大きな議論となっている資本市場や企業のショートターミズム(短期主義)
の問題、企業と投資家の対話(エンゲージメント)の課題、企業開示・報告の
あり方等を日本の文脈で捉え、客観的な事実を基に問題の所在やインセンティ
ブ構造を明らかにすることを目指しています。また、これらの問題の克服を企
業の収益力や持続的な成長につなげるための方策を検討しています。
本年 7 月のプロジェクト開始から 4 回にわたる全体会合での議論を経て、本プ
ロジェクトとして特に検討すべき事項を「論点整理」としてまとめました。
(別
添)
今後、国内外からのエビデンス・情報の提供を求めるとともに、以下の 3 つの
分科会を設立し、それぞれの論点について更に掘り下げ、事実に基づく分析・
検討を行います。
<第一分科会> 企業価値創造の実態分科会
<第二分科会> 投資コミュニティ分科会
<第三分科会> ショートターミズムと開示分科会
これらの検討を基に、年末から年初にかけて中間報告をまとめ、再度意見募集
を行い、2014 年 3 月末を目処に最終報告をとりまとめる予定です。
本プロジェクトの背景
現在、金融危機の反省から、欧米諸国を中心に、投資家や企業の短期主義是正
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やコーポレート・ガバナンスの強化とともに、企業と投資家の対話(エンゲー
ジメント)や企業開示・報告のあり方の見直し等が、国際的な議論となってい
ます。
例えば、英国では、昨年、英国企業の長期的なパフォーマンスを向上させるた
めの資本市場や投資家の役割について分析と提言等を行った「ケイ報告(Kay
Review)」が公表され、EU 全体の議論にも影響を与えています。
米国においても「アクティビスト」あるいは「物言う株主」の存在感が高まる
中で、株主と経営陣の対話のあり方、年金基金等長期的な機関投資家との関係
をどのように構築するかといったことが議論されています。
企業と投資家の対話の基礎となる情報開示や報告の分野でも新たな動きが見ら
れます。財務報告については、米国や EU におけるディスクロージャー・フレ
ームワークの検討など、開示内容や方法を合理化するための議論が進んでいま
す。さらに、狭義の財務情報にとどまらず、経営戦略やリスク情報等の非財務
情報も含め、企業の中長期的な価値創造を伝えるための報告のあり方も検討さ
れています。今年末に向けて国際的な枠組みづくりが進められている「統合報
告」もその一つと言えます。
我が国においても、マクロ経済環境が好転しつつある中で、企業が中長期的な
収益構造を確固たるものにし、そのような企業への投資を通じて資本市場にお
いても持続的な利益を得られるような好循環を生み出していくことは、今後の
成長に向けた課題です。
上述のように、世界的に議論となっている中長期的視点での企業経営や資本市
場のあり方、財務情報だけでない企業価値の評価、株主を含む様々なステイク
ホルダーとの関係などは、日本の課題でもあります。これらの論点は、日本企
業が本来志向する経営のあり方を考える上でも重要であり、今日的な課題とし
て改めて検討する意義は大きいと考えます。
現在、日本の市場関係者のみならず、グローバルに投資を行う海外機関投資家
等も、今後の日本市場の先行きや企業と投資家との関係のあり方に多大な関心
と期待を持って、情報収集や評価を進めています。
こうした中で、国際的な課題を日本の文脈で検討し、それを日本国内での閉じ
た議論にとどめることなく、検討の過程を通じて海外の機関投資家を含む世界
の関係者に対し、積極的に問いかけ、発信し、対話を行うことも非常に重要で
す。
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このような国際的な議論と日本の課題を背景として、
「持続的成長への競争力と
インセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトが立ち上
げられました。
エビデンス・情報提供の方法
今後の検討を進めるにあたり、別添で挙げた論点に関するエビデンス(データ
や事例などの事実や分析)や参考とすべき情報を、お寄せいただきたいと考え
ています。
○ 提出期限:2013 年 12 月 10 日(火)
○ 提出方法:下記宛先まで、郵送、FAX又は電子メールでご提出ください。
〒100-8901
東京都千代田区霞が関1-3-1
経済産業省経済産業政策局企業会計室
「企業と投資家の望ましい関係構築」プロジェクト担当
FAX
e-mail
宛
03-3501-5478
callforevidence@meti.go.jp
○ その他:
・氏名及び住所(法人又は団体の場合は、名称、代表者の氏名及び主たる事
務所の所在地)、並びに連絡先(電話番号又は電子メールアドレス)を明記
ください。必要に応じ、当方から提出のエビデンス・情報の内容を確認さ
せて頂く場合がございます。
・提出のエビデンス・情報は住所及び連絡先を除き公表する場合があります
ので、あらかじめご承知おきください。
・公表の際に匿名を希望される場合は、エビデンス・情報提出時にその旨お
書き添えください。
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(別紙)
論点整理
~エビデンス・情報提供の呼びかけ(Call for Evidence and Information)~
平成 25 年 10 月 16 日
本プロジェクトでは、企業が持続的に成長するための競争力強化に向けた課題
とそれを支える資本市場のあり方を検討しています。これまでの議論の結果を
踏まえ、論点整理として、以下に記載した14の論点を設けました。
これらの論点について、現状の把握・分析等を行うに当たり、広く国内外の関
係者からのエビデンス(データや事例などの事実や分析)や参考となる情報(以
下「エビデンス等」)の提供を求めます。
(1)持続的成長の定義
本プロジェクトの趣旨に照らし、「(持続的)成長」、「競争力」とはどのよ
うな定義のもとで用いるべきか。また、その評価軸はどう考えるべきか。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① 企業の「(持続的)成長」、「競争力」とはどのような定義で用いられている
か
②「成長」、「競争力」における評価軸は何か
(2)持続的成長企業のすがた
持続的成長企業とはどのような企業か。持続的に成長している企業の共通
項は何か。また、持続的成長を行うに当たっての課題は何か。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① 持続的成長企業の事例
② 持続的に成長している企業の共通項
③ 日本企業の持続的成長とはどのような「かたち」で行われているか。その特
徴はどのようなものか(収益率、中長期的な傾向と短期的な変動、R&Dの
実施手法、資金効率)
(*この論点整理において「日本企業」と言う場合、日本を主たる拠点とする
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企業、典型的には日本市場に上場する企業などを緩やかに捉えています。)
④ 持続的成長を行う上での企業側・投資家側の制度・慣行上の課題としてどの
ようなものがあるか
⑤ 日本企業のM&Aの特徴、成果はどのように評価できるか。例えば、国内と
海外案件の違い、実施後の効果検証、M&Aに関する(企業内の)専門家育
成状況の実態等
(3)経営者のインセンティブ
日本企業における経営者のインセンティブとなっているものは何か。それ
は、持続的企業の成長を促すものとなっているか。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① 経営者の報酬(業績連動報酬の割合等)の体系。また、それは企業や投資家、
市場関係者の評価軸と合っているか
② 金銭的な報酬以外のインセンティブとしてどのようなものがあるか(使命感
等)。また、それは企業や投資家、市場関係者の評価軸と合っているか
(4)資本効率と経営規律の課題
日本企業における資本政策や経営規律は、企業の持続的成長、価値創造と
の関係でどのように認識され、機能しているか。また、日本企業のマネジメ
ントシステムは、持続的成長に寄与しているか。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① 企業経営における資本コストやROE等の位置づけ、これらと経営規律や価
値創造との関係
② 資本効率の一環としての現金保有等の現状、適正水準
③ 企業のマネジメントシステムの機能の状況、評価。例えば、取締役会の構成、
社外役員、委員会設置会社の現状や現状に対する評価
④ 政策投資(所謂持合株式)に対する考え方、現状、企業の持続的成長、価値
創造との関係
⑤ 機関投資家による議決権行使が経営(取締役会の構成、経営者の業務執行に
おける意思決定等)に与える影響
(5)価値創造における経営者と投資家の同期化・非同期化
企業の価値創造において、経営者側の問題意識、経営方針、利害、インセ
ンティブ等は、投資家側の問題意識や評価等と同期しているか。
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(6)投資家側のインセンティブ
投資家(アセットオーナー、運用機関)における報酬等インセンティブの構
造はどうなっているか。それは投資コミュニティや企業の評価軸と合っている
か。企業の持続的成長や投資受益者の中長期的な利益に合致しているか。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① アセットオーナーにおける報酬や評価等のインセンティブの構造、運用機関
や受益者、企業等の関係者との関係(それぞれのインセンティブに関連して)
、
その前提としての制度や慣行。企業の持続的成長や投資受益者の中長期的な
利益に合致しているか
② 運用機関における報酬や評価等のインセンティブの構造、アセットオーナー
や企業等の関係者との関係(それぞれのインセンティブに関連して)
、その前
提としての制度・慣行。企業の持続的成長や投資受益者の中長期的な利益に
合致しているか
(*この論点整理において「投資コミュニティ」とは、アセットオーナー、運
用機関、アナリスト等の市場関係者全体を指しています。)
(7)アナリストの発展に向けた課題
投資コミュニティにおけるアナリストの役割やモチベーション、インセンテ
ィブ構造の現状はどうなっているか。どのように理解、評価されるか。これら
は、企業の持続的成長やそれを支える資本市場の実現にどう貢献しているか。
アナリストが役割を果たし、発展していくための課題は何か。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① アナリスト(セルサイドアナリスト、バイサイドアナリスト)それぞれの果
たしている役割と求められる役割
② アナリストの報酬体系、その他のインセンティブ
③ アナリストと企業の持続的成長との関係について、現状・あるべき姿・課題
④ アナリスト活動の実態と評価。アナリストレポート、投資格付け、投資評価
方法
(8)アセットオーナーの体制
アセットオーナーにおける社内体制等は、現状どのようなものか。また、そ
れは企業の持続的成長とそれを支える資本市場の実現にどの寄与しているか。
その前提としての制度・慣行は何か。
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特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① アセットオーナー機関における役員・運用担当者の経歴や専門性
② アセットオーナーにおける投資先企業及び運用機関の評価方法
(9)中長期投資の促進
日本の資本市場において、中長期的な投資を行う投資家層の現状と評価は
どのようなものか。中長期投資を行う主体としてどのような者が期待される
か。中長期投資を阻害している、または、中長期的投資を促す制度や慣行と
してはどのようなものがあるか。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① 中長期投資家も含む日本の資本市場の厚みについての現状、評価
② 日本における中長期投資を行う個人投資家に関する現状。この層を拡大
する必要性の有無。これを拡大、充実、強化する場合の障害、課題、方
策等
③ 日本における機関投資家等による中長期集中投資に関する現状。この層
を拡大する必要性の有無。これを拡大、充実、強化する場合の障害、課
題、方策
④ 中長期投資を促す観点からのインデックスの現状と新たなインデックス
のあり方
⑤ 中長期投資のインセンティブ、逆インセンティブとなっている制度や慣行等
(10)利益相反
投資コミュニティの各当事者(アセットオーナー、運用機関、アナリスト
等)における利益相反の現状と課題。その前提としての制度・慣行。これが
中長期的投資や企業の持続的成長に対し、どのように影響しているか。また、
利益相反による問題を回避するためどのような方策がとられているか。
(11)ショートターミズム(企業・投資家・市場関係者の短期志向)
ショートターミズムは、どのように理解されているか、また、どのように
理解すべきか。その問題点と原因、構造はどのようなものか。企業・投資家・
市場関係者それぞれの時間軸の関係は、企業の持続的成長とそれを支える資
本市場の実現の観点から見て、整合的になっているか。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
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① ショートターミズムとはどのような定義で用いられているか
② アセットオーナー、運用機関、アナリスト等市場関係者、投資コミュニティ
における時間軸の現状
③ 企業における時間軸の現状
④ それぞれの時間軸における短期化傾向の程度。それをもたらす要因となる制
度、慣行、事業環境等。投資家等のショートターミズムが企業活動に与える
影響等、相互の関係の現状とそれをもたらす構造
(12)現行開示における課題
現行の企業等の情報開示に関する現状とその前提となる制度・慣行の現状と
課題として、どのようなものがあるか。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① 現状の企業の情報開示に対するニーズ、現状、課題。国際的な動向と実態に
関する比較
② 四半期開示(四半期報告書、四半期決算短信)が投資家や企業の活動に与え
る影響。特にショートターミズムとの関係について
③ 利用者のニーズと企業の持続的な成長の観点からの現行の開示制度の評価
と課題
(13)中長期的な対話に向けた開示
投資コミュニティと企業が中長期的な対話を行うために、どのような説明や
情報開示が求められているか。それを阻害する制度・慣行の現状と課題、改善
のための方策はどのようなものか。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① 企業側の開示姿勢の現状と評価
② 中長期的投資を行うに当たり、投資家として必要な情報・開示の現状と課題
③ 持続的な成長と中長期的な投資に関する対話をする上で、特に重要な事項と
説明のあり方の現状と課題
④ 中長期的な対話を行う手段として、現状行われている統合報告のような取り
組みの現状と評価。どのような形や内容での(統合)報告が望ましいか
(14)対話・エンゲージメントのあり方
企業と投資家等の対話、エンゲージメントの現状はどのようになっているか。
どのようなあり方が望ましいか。効果的な対話を行うに当たって障害となって
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いる制度や慣行等は何か。
特に、以下の点についてエビデンス等を提供頂きたい。
① 企業と投資家等の視点の共通点と相違点
② 企業と投資家等の言葉の理解や使い方の違い、その共通化にあたっての
課題
③ 様々な対話の場(IRミーティング、株主総会等)に関する現状と企業、
投資家それぞれの評価と課題
④ 企業と投資家等の対話・エンゲージメントの質の現状と課題
⑤ 対話の質を向上するための取り組み(教育、トレーニング等)の現状と
あり方
⑥ 対話を阻害する制度や慣行等
以上
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